相続対策とは
相続対策とは、遺産分割・納税資金・税負担の三つを並行して考え、家族が分けられ・払える・引き継げる計画を整えることです。

相続対策は、遺産分割、納税資金、税負担の三つを並行して考えます。税額が小さくても、現金がなく納税できない、家族が分け方に合意できないなら実行が難しくなります。
| 目的 | 代表的な方法 | 確認する条件 |
|---|---|---|
| 分割 | 遺言・代償分割・資産組替え | 居住、事業継続、他の相続人との公平 |
| 納税資金 | 預金・死亡保険金・換金可能資産 | 納税期限、受取人、現金化の時期 |
| 税負担 | 小規模宅地等・贈与・事業承継 | 対象者、利用状況、時期、継続要件 |
基本の仕組み

財産が自宅5,000万円と預金500万円に偏っている家族では、自宅を引き継ぐ人に代償金や納税資金が必要となることがあります。評価額を下げる対策だけ進めると、かえって手元資金を減らす場合もあります。
生前贈与、保険、遺言、資産の組替え、事業承継等を、家族の希望と時期に合わせて比較します。一次相続での配偶者の税負担だけでなく、その後の二次相続、住まい、収入の確保まで見通します。
相続財産の評価では現預金、上場株式、生命保険、不動産を同じ方法で測りません。上場株式は、課税時期の終値と、課税時期の属する月・前月・前々月の終値の月平均額のうち最も低い価額です。土地では路線価方式・倍率方式や利用状況を確認します。
死亡保険金の非課税枠は、受取人や法定相続人の数などの条件に従います。保険金の受取りは分割前の生活費・納税資金の準備に役立つ一方、他の相続人との公平や契約者・被保険者・受取人による課税の違いも確認します。
贈与や売買で移す場合と、相続で移る場合では、評価時点、税、登記費用、管理権限が変わります。節税額だけを比較せず、移転後に生活資金が残るか、後継者が経営を続けられるかを確認します。自社株の移転でも事業計画と資金調達を組にして考えます。
相続・贈与の改正は、贈与の日と相続開始日の両方を年表にします。例えば2024年以後の相続時精算課税では年110万円の基礎控除が設けられ、相続時に加算する額もその控除後の残額で考えます。
相続時精算課税は、贈与の年の1月1日で60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選択できます。一度選択すると、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。別の贈与者からの贈与は暦年課税のままなので、贈与者ごとに併用関係を確認します。
三つの目的に手段を対応させる

遺産分割のためには遺言、代償分割、共有を避ける資産構成などを検討します。納税資金には預金、死亡保険金、換金しやすい資産等を準備します。税負担には小規模宅地等の特例、生前贈与、事業承継税制等を検討します。同じ手段が三目的すべてに効くとは限りません。
路線価方式では路線価に奥行価格補正等を反映し、倍率方式では固定資産税評価額に倍率を掛けます。小規模宅地等の特例は利用区分・取得者・面積上限と減額割合を判定してから適用します。自宅敷地、貸付事業用、事業用を同一条件として扱いません。
一次相続と二次相続を続けて見る

配偶者の税額軽減を一次相続で最大限使うだけでは、二次相続時の相続人の数・基礎控除・配偶者の財産増加を見落とします。配偶者の住居と生活費を守りつつ、次に誰へ何を渡すかを表にします。保険金の受取人と非課税枠、贈与の加算期間、相続時精算課税の年110万円基礎控除も、相続開始日と受贈者ごとに確認します。
土地の評価と小規模宅地等の特例

借地権は自用地評価額×借地権割合、貸宅地(底地)は自用地評価額×(1-借地権割合)、貸家建付地は自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)です。貸家は固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)で、借家権割合は30%です。
例えば自用地評価額1億円、借地権割合60%、賃貸割合100%なら、貸家建付地は1億円×(1-0.6×0.3×1)=8,200万円です。
特定居住用と特定事業用等は合計730㎡まで併用できます。貸付事業用を含むときは、特定居住用の面積×200/330+特定事業用等の面積×200/400+貸付事業用の面積が200㎡以下となるよう調整します。
配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に住んでいた被相続人所有の建物に、遺産分割・遺贈等により無償で住み続けられる権利です。存続期間は原則終身で、第三者に対抗するには登記が必要です。
配偶者居住権の評価額は、建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数-存続年数)÷残存耐用年数×存続年数に応じた複利現価率です。敷地利用権は、土地の時価-土地の時価×存続年数に応じた複利現価率で評価します。
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% | 配偶者は無条件。同居親族は申告期限まで居住・保有。持ち家のない別居親族にも要件あり |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% | 事業を承継し申告期限まで継続・保有(相続前3年以内に事業に供した宅地等は原則除外) |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% | 申告期限に同族会社の役員である親族が取得・保有 |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% | 貸付事業を承継し申告期限まで継続・保有(相続前3年以内に新たに貸し付けた宅地等は原則除外) |
民法の相続分・遺留分を確認する

遺留分は兄弟姉妹以外の相続人にあり、全体で相続財産の2分の1(直系尊属だけが相続人なら3分の1)に各人の法定相続分を掛けます。遺留分侵害額請求は金銭の支払を求める権利で、相続開始と侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、相続開始から10年で行使できなくなります。
遺留分の算定では、相続人への贈与は原則として相続開始前10年以内の特別受益に当たるもの、相続人以外への贈与は1年以内のものを基礎に加えます。
相続人でない被相続人の親族(子の配偶者など)が無償で療養看護等をした場合は、相続人に特別寄与料を請求できます。協議が整わなければ、相続開始と相続人を知った時から6か月、相続開始から1年以内に家庭裁判所へ請求します。特別寄与料は遺贈で取得したものとみなされ、相続税の2割加算の対象です。
遺産分割に期限はありませんが、相続開始から10年を経過すると、原則として特別受益・寄与分を主張できず法定相続分等で分けます。
| 相続人の組合せ | 配偶者の法定相続分 | 他の相続人の法定相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 2分の1 | 2分の1を子で等分 |
| 配偶者と直系尊属 | 3分の2 | 3分の1を直系尊属で等分 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 4分の1を兄弟姉妹で等分(父母の一方のみ同じ兄弟姉妹は2分の1) |
試験に出る
- 遺産分割・納税資金・税負担を並行して考える点。
- 自宅に偏った財産では代償金や納税資金が必要になる点。
- 生前贈与・保険・遺言・事業承継を家族の希望と時期で比較する点。
- 上場株式や土地など、財産ごとに評価方法が異なる点。
- 死亡保険金の非課税枠の条件と、相続時精算課税が暦年課税と自由に切り替えられない点。
- 貸家建付地の評価式と小規模宅地等の限度面積の調整計算。
- 遺留分の割合、遺留分侵害額請求・特別寄与料の期間制限。
重要な言葉
- 遺産分割
- 相続財産を相続人で分ける手続。
- 納税資金
- 相続税を申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに納めるために用意する資金。
- 路線価方式
- 路線価を基に土地を評価する方法。
- 相続時精算課税
- 贈与時は年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除を超える部分に20%で課税し、相続時に贈与財産を加算して相続税で精算する制度。
- 貸家建付地
- 所有する土地に建てた家屋を他人に貸している場合の、その土地。自用地より借地権割合×借家権割合×賃貸割合の分だけ低く評価する。
- 小規模宅地等の特例
- 被相続人等の居住用・事業用の宅地等について、限度面積までの評価額を80%または50%減額する特例。
- 遺留分
- 兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の取り分。侵害されたときは金銭の支払を請求できる。
- 特別寄与料
- 相続人でない親族が無償で療養看護等をして財産の維持・増加に貢献した場合に、相続人へ請求できる金銭。
確認問題
確かめよう提案を「税がいくら減るか」だけで終えていませんか。
「誰が住み続けるか」「誰が現金を払うか」「次の相続で何が起きるか」を説明できる計画にします。
相続対策では、税額を減らせば納税資金や分割の合意は考えなくてよい。
相続時精算課税では、2024年以後、年110万円の基礎控除が設けられた。
相続対策で並行して考える三つは?
土地の評価方法に該当するものは?
相続対策は、、、税負担の三つを並行して考えます。税額が小さくても、現金がなく納税できない、家族が分け方に合意できないなら実行が難しくなります。
財産が自宅と預金に偏っている家族では、自宅を引き継ぐ人に代償金や納税資金が必要となることがあります。評価額を下げる対策だけ進めると、かえって手元資金を減らす場合もあります。
、保険、遺言、資産の組替え、事業承継等を、家族の希望と時期に合わせて比較します。一次相続での配偶者の税負担だけでなく、その後の、住まい、収入の確保まで見通します。
相続財産の評価では現預金、上場株式、生命保険、不動産を同じ方法で測りません。上場株式は、課税時期の終値と、課税時期の属する月・前月・前々月の終値の月平均額のうち最も低い価額です。土地では・や利用状況を確認します。
の非課税枠は、受取人や法定相続人の数などの条件に従います。保険金の受取りは分割前の生活費・納税資金の準備に役立つ一方、他の相続人との公平や・被保険者・受取人による課税の違いも確認します。
贈与や売買で移す場合と、相続で移る場合では、評価時点、税、、管理権限が変わります。節税額だけを比較せず、移転後に生活資金が残るか、後継者が経営を続けられるかを確認します。自社株の移転でもと資金調達を組にして考えます。
相続・贈与の改正は、贈与の日との両方を年表にします。例えば2024年以後のでは年110万円の基礎控除が設けられ、相続時に加算する額もその控除後の残額で考えます。
出典・参考資料
試験の公式案内と、この記事の参考にした学習資料です。
- 日本FP協会:2級・3級FP技能検定 試験要綱 ↗
- きんざい:FP技能検定 ↗
- 国税庁:相続税の税率と総額の計算 ↗
- 国税庁:贈与財産の加算と税額控除(暦年課税) ↗
- 国税庁:相続時精算課税の選択 ↗
- 国税庁:取引相場のない株式の評価 ↗
- 中小企業庁:事業承継税制と経営承継円滑化法 ↗
- 国税庁:配偶者の税額の軽減 ↗
- 日本FP協会:1級 試験範囲の細目(2026年9月確認) ↗
- 中小企業庁:法人版事業承継税制(特例措置)と特例承継計画の提出期限 ↗
- 国税庁:相続税がかかる場合 ↗
- 国税庁:新たに信託を設定した場合 ↗
- 国税庁:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) ↗
- 国税庁:No.4614 貸家建付地の評価 ↗
- e-Gov:民法(遺留分・特別の寄与) ↗
編集:Pinternet Works · 更新日:
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