日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartI)の概要
不動産オーナーの所得税・相続税対策および同居新築・国際相続へのアドバイス
不動産・相続・事業承継 · 不動産所得対策(法人化) / 二世帯住宅・小規模宅地等の特例 / 教育資金贈与 / 国際相続(海外不動産) / 公正証書遺言と遺留分 / FPの職業倫理
地方都市在住のAさん(65歳)は、多額の不動産所得(年間3,000万円超)に伴う所得税・住民税の負担に悩んでいる。家族は妻Bさん(63歳)、長女Cさん(37歳、持家・子2人)、長男Dさん(35歳、同居・今秋結婚予定)、二女Eさん(25歳、米国留学中・米国籍未取得)の4人である。長男Dさんの結婚に伴う住居(二世帯住宅への建替えか敷地内別棟新居か、名義や建築資金の負担方法)、長女Cさんへの教育資金援助、二女Eさんが居住する米国マンションの無償貸与および相続時の取扱い、総額6億3,500万円(相続税見込額約1億7,000万円)の資産に係る円滑な遺産承継について相談を受けた。FPとして検討すべき「相談内容と問題点」「解決策・提案」「優先提案とその理由・留意点」「FPと職業倫理」について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
顧客の相談内容および問題点を整理し、不動産管理会社の設立による所得分散、二世帯住宅の建築に伴う小規模宅地等特例の活用、教育資金の一括贈与非課税制度等の利用、米国不動産のプロベート回避策や公正証書遺言の作成による遺留分配慮を提案する。提案にあたっては各税制の要件や留意点を確認し、弁護士・税理士等専門家と連携しつつ顧客利益を最優先とする職業倫理を遵守する。
解説
不動産オーナーの対策は、所得税・贈与税・相続税をまとめて一緒に考えることが大切です。持っている間は法人化などで所得税や住民税の負担を軽くします。生前に親族を支援するときは贈与税がかからないようにし、相続のときは小規模宅地等の特例を使えるかどうかや二世帯住宅の登記の形を選びます。さらに海外の財産の相続手続(プロベート対策)や、遺留分に配慮した遺言と納税資金の対策を、関連させて解決します。
解き方
- お客さまであるAさんの家族構成、持っている資産(国内と海外の不動産、預貯金)、毎年の所得の状況、家族それぞれの希望やライフプラン上の要望を整理します。
- 不動産所得にかかる累進課税、長男の新しい住まいの建て方による贈与税や小規模宅地特例への影響、長女への教育資金の支援、二女のアメリカの不動産の権利関係など、各テーマのリスクと要件をくわしく調べます。
- 法人化による所得分散、二世帯住宅の建築(単独名義か共有名義)、教育資金贈与の特例、公正証書遺言などの具体的な方策を考えます。そして税理士法や弁護士法などの決まりを守り、専門家と一緒に取り組みながら提案をまとめます。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①不動産所得が多額で所得税・住民税の負担が大きい点、②長男Dさんの結婚に伴う新居確保(建替えか別棟か、資金負担と名義、贈与税や小規模宅地等特例への影響)、③長女Cさんの子(孫)への教育資金援助の方法、④二女Eさんが無償居住する米国マンションの税務上の取扱いおよび相続時の法的手続(プロベート等)、⑤約1億7,000万円に及ぶ相続税の納税資金確保および遺留分に配慮した資産承継の準備、が問題点として挙げられる。
- Aさんは高額な不動産所得による累進課税負担に加え、長男の住居計画における贈与税リスクや将来の小規模宅地等特例適用の可否、長女への資金援助、米国不動産の国際相続手続きの複雑さ、遺言書作成に伴う遺留分侵害リスクなど、所得税・贈与税・相続税にまたがる多面的な課題を抱えています。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①不動産管理会社(法人)の設立による所得分散と役員報酬・退職金の活用、②自宅敷地での同居に向けた二世帯住宅の建築(区分所有登記を避け単独または共有名義とし小規模宅地等特例の適用要件を充足)、③直系尊属からの教育資金一括贈与非課税特例または都度贈与の活用、④米国不動産の承継手続(トラスト等の活用によるプロベート回避)の検討と外国税額控除の確認、⑤生命保険を活用した納税資金・代償資金の準備および公正証書遺言の作成による円滑な資産承継、が考えられる。
- 所得税の軽減には法人化による所得分散が効果的です。長男の住宅建築では区分所有に起因する小規模宅地特例の適用除外や名義による贈与税課税を防止する設計が必要です。教育資金は非課税制度の活用、米国不動産はプロベート対策を検討し、相続対策として公正証書遺言と生命保険の活用を総合的に講じます。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案】二世帯住宅への建替えと同居の推進、不動産管理会社の設立、公正証書遺言の作成。【理由】二世帯住宅(区分所有登記なし)とすることで将来長男が同居親族として小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額)を適用でき、大幅な相続税圧縮が可能となる。法人化により個人の所得税負担を軽減しつつ相続財産の蓄積を抑制できる。【留意点】二世帯住宅を敷地内別棟とすると生計別とみなされ特例対象外となるリスクがある。また、建物をAさん全額負担で建て長男単独名義にすると贈与税が課されるため共有またはAさん名義とする。法人化には設立・維持コストや物件移転コストが生じる点、遺言作成時は長女・二女の遺留分侵害に配慮する必要がある。
- 敷地が500㎡と広大であるため、特定居住用宅地等の適用が受けられるか否かで相続税評価額に大きな差が生じます。敷地内に別棟を新築して長男夫婦が独立生計を営むと原則として同居親族の特例を受けられなくなるため、完全分離型であっても区分所有登記を行わない二世帯住宅を選択することが税務上極めて有利です。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:①顧客第一主義(顧客の意向や家族関係に配慮し中立公正に最善策を提案する)、②守秘義務の厳守(相談を通じて知り得た顧客や家族の個人情報・資産状況を厳重に管理・保護する)、③法令遵守と他士業・専門家との協業(具体的な税務申告・税務相談は税理士法に抵触するため税理士と連携し、登記手続きは司法書士、遺言書作成や米国法の相続・プロベート対応は弁護士と連携してプランニングを行う)、④インフォームド・コンセント(各対策のメリットだけでなくデメリットやコスト、リスクを十分に説明し納得・同意を得る)が重要である。
- FPは顧客の最善の利益を優先し、守秘義務を守る倫理的義務があります。また、具体的な税額計算や申告書作成は税理士法、法的手続きの代理は弁護士法・司法書士法等に抵触するため、これらを遵守し各士業と連携して業務を遂行することが求められます。
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覚えるポイント
- 二世帯住宅で小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受ける場合、区分所有登記をしてはならず、単独所有または共有名義とする必要がある。
- 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置は信託等を通じて受贈者1人あたり最大1,500万円まで非課税となる。
- 米国の不動産は原則として検認手続(プロベート)が必要となるため、生前トラスト(信託)や合意管轄の確認など事前の承継対策が重要となる。
間違えやすいところ
- 親が建築資金を全部出したのに、その建物を子どもの名義にすると、出したお金は子どもへの贈与とみなされ、多額の贈与税がかかります。
- 親の敷地の中に子ども夫婦のための別棟を建てると、子どもが別生計と判断され、親の敷地全体について同居親族としての特定居住用宅地等の特例を受けられなくなります。
出題の前提:2026年6月1日現在施行の税制・関係法令に基づく実務相談業務。
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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