日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月8日 PartI PartII・PartI)の概要
設例の顧客の相談内容および問題点
事業承継・相続 · 経営承継 / 事業承継税制の特例措置 / 遺産分割 / 納税資金対策
設例のAさんの相談内容および現状における問題点について整理し、簡潔にまとめなさい。
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解答
相談内容として「長男Cさんと二男Eさんへの事業承継の進め方」「事業承継税制(特例措置)の活用の適否」「孫への学費支援」「設備の即時償却・税額控除の適用」等があり、問題点として「兄弟間での経営権の分散・対立リスク」「X社株式等の集中と遺留分侵害リスク」「高額な相続税の納税資金不足」「工場敷地等の権利関係と小規模宅地等の特例適用の可否」などが挙げられる。
解説
オーナー企業の事業承継では、次の3つをバランスよく解決する必要があります。1つ目は、後継者に自社株式などを集めて経営権を安定させることです。2つ目は、他の相続人に配慮し、遺留分と遺産分割の対策をすることです。3つ目は、多額の相続税を払うための納税資金を確保することです。
解き方
- 設例を読み、Aさんが直接相談したいこと(相談内容や意向)を、事業承継・資産承継・税務の視点から拾い出します。
- 所有財産の中身や親族の構成を分析し、かくれているリスク(経営権の分散、遺留分の侵害、納税資金の不足など)を体系的に整理します。
答えの内訳
- 顧客の相談内容:①長男Cさんと二男Eさんによる事業承継のあり方や、事業承継税制(特例措置)の適用の検討。②長女Dさんの子ども(孫)に対する進学費用の支援方法。③導入を計画している生産性向上設備に対する税制優遇措置(即時償却または税額控除)の活用方法。
- 設例において、Aさんは長男と二男の兄弟による共同承継の意向を持ちつつ経営対立の懸念を抱いていること、特例承継計画の提出期限を意識していること、孫の高校・大学入学に伴う学費支援を検討していること、5,000万円の設備投資を計画していることが明記されています。
- 顧客の問題点:①経営承継における問題:兄弟承継による意思決定の停滞や経営権分散リスク、特例承継計画の提出期限(2026年3月末)。②株式承継・遺産分割の問題:総資産9億円のうちX社株式が4億8,000万円と過半を占め、後継者に株式を集中させると他の推定相続人(妻Bさん、長女Dさん)の遺留分を侵害するおそれがある。③納税資金の問題:相続税額が約2億9,000万円と高額であるのに対し、現預金は1億円であり納税資金が不足する懸念がある。④自社利用土地等の問題:X社工場敷地や月極駐車場の権利関係および小規模宅地等の特例適用の検討が必要。
- 総資産の半分以上が自社株であり、特定の相続人に集中させると遺産分割で揉める要因となります。また、現預金1億円に対して試算上の相続税額が2億9,000万円に達するため、納税原資の確保が不可欠です。
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覚えるポイント
- 事業承継の相談では「経営承継」「財産承継(株式・事業用資産)」「遺留分・遺産分割」「納税資金対策」の4大論点を網羅的に確認する。
間違えやすいところ
- お客様が自分で気づいている相談事項を並べるだけになり、納税資金の不足や遺留分の侵害といったかくれているリスク(問題点)の分析を見落とすことです。
出題の前提:2025年度(2026年2月実施)金融財政事情研究会 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 実技試験(資産相談業務)PartI 設例
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月8日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
相談内容および問題点を解決するための提案・方策
事業承継・相続 · 事業承継税制 / 中小企業経営強化税制 / 教育資金の一括贈与非課税 / 役員退職金
設例の相談内容および問題点を解決するために、FPとしてどのような提案・方策が考えられるか整理しなさい。
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解答
①経営承継:長男Cさんを代表取締役、二男Eさんを取締役とする役職・役割分担の明確化や種類株式(無議決権株式等)の活用。②自社株承継:事業承継税制(特例措置)の活用(特例承継計画の策定・提出)および株価引下げ対策。③遺産分割・遺留分対策:遺言書の作成、民法特例(除外合意・固定合意)の活用、代償金の準備。④納税資金・相続税軽減:役員退職金の支給による株価引下げと納税原資の確保、生命保険の活用、小規模宅地等の特例(特定同族会社事業用宅地等・特定居住用宅地等)の適用検討。⑤孫への支援:都度の都度贈与または教育資金の一括贈与非課税制度の活用。⑥設備投資:中小企業経営強化税制等の適用確認。
解説
事業承継の提案では、いろいろな方法を組み合わせて考えることが必要です。自社株式を後継者に集めて経営を安定させ、遺言や民法の特例で親族間の公平を保ちます。さらに、役員退職金や小規模宅地等の特例を使い、相続税の負担と納税資金のバランスを整えます。
解き方
- 誰に経営権を渡すかを決めます。代表権を集める方法や、会社での役割分担、株式の承継のしくみを検討します。
- 遺留分でもめないようにするための法的な手だて(遺言、民法の特例)と、教育資金を贈与する方法をまとめます。
- 自社株式の評価を下げる方法、役員退職金の活用、小規模宅地等の特例の要件を確認し、納税の対策を決めます。
- 設備投資で使える税制優遇(中小企業経営強化税制など)の適用手続きを整理します。
答えの内訳
- 事業承継・経営権対策の提案:長男Cさんを後継者(代表取締役)として議決権を集中させ、二男Eさんには営業部門を統括する役員として処遇するなど役割を明確にする。議決権制限株式(無議決権株式)の活用や、事業承継税制の特例措置(法人版)を活用した贈与・相続税の全額納税猶予を検討し、期限までに特例承継計画を提出する。
- 兄弟での経営権分散を防ぐため、代表権・議決権を筆頭後継者に集約しつつ、二男の能力を活かす組織設計を行います。事業承継税制の特例措置の適用には計画提出期限の遵守が必須です。
- 遺産分割・遺留分対策および孫への支援の提案:自社株や工場敷地を長男に承継させる公正証書遺言を作成し、経営承継円滑化法における遺留分の民法特例(除外合意・固定合意)の適用を検討する。孫への学費支援は、都度必要な金額を贈与(生活費・教育費の非課税)するか、祖父からの教育資金の一括贈与非課税特例の信託等を活用する。
- 株式や不動産が特定の後継者に集中することで生じる遺留分トラブルを未然に防ぐため、遺言および民法特例の手続きを検討します。また学費支援は暦年都度贈与や特例措置が有効です。
- 納税資金対策・相続税軽減策の提案:Aさんの勇退時に適正な役員退職金を支給して株式評価額を引き下げるとともに、Aさんの手元納税資金および妻・長女への代償財産を確保する。X社工場土地について特定同族会社事業用宅地等の適用要件(無償返還届出書や相当の地代の収受状況等)を確認し、自宅土地には特定居住用宅地等の適用を検討する。
- 役員退職金の支給は損金算入による株価引下げと受取人の納税原資確保に直結します。また、小規模宅地等の特例(400㎡まで80%減額等)を確実に適用できる権利関係を精査します。
- 設備投資に関する税制提案:導入予定の5,000万円の設備について、中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定等を受け、中小企業経営強化税制(即時償却または取得価額の税額控除)の適用を受けることを検討・助言する。
- 高収益企業であるX社において、5,000万円の設備投資に対する即時償却または税額控除の適用は、法人税負担の大幅な軽減と資金繰り改善に寄与します。
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覚えるポイント
- 事業承継対策では「株式の集中」「納税猶予(特例承継計画)」「役員退職金(株価引下げ+納税資金)」「小規模宅地等の特例」の連携が定石となる。
間違えやすいところ
- 事業承継税制を使うことだけに終始し、役員退職金の支給で株価を下げる方法や、他の相続人への代償資金・遺留分への配慮を提案から漏らすことです。
出題の前提:2025年度(2026年2月実施)金融財政事情研究会 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 実技試験(資産相談業務)PartI 設例
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月8日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
顧客への具体的な提案内容とその理由・留意点
事業承継・資産承継 · 事業承継方針の決定 / 事業承継税制の特例措置 / 遺留分に関する民法特例 / 教育資金の一括贈与
設例のAさん一家およびX社における相談内容・問題点を踏まえ、顧客に対して優先的に提案すべき具体的な方策、ならびにその提案理由と留意点について述べなさい。
解答・解説を表示
解答
長男Cさんへの経営権(株式)の集中と二男Eさんの処遇整理、法人版事業承継税制(特例措置)の活用、遺留分への配慮、および孫への教育資金贈与等を提案する。
解説
事業承継では、経営を安定させるために、後継者へ議決権を集めるのが原則です。そのうえで、後継者以外の相続人との公平性の確保や遺留分対策、納税資金対策をまとめて考えて提案することが大切です。
解き方
- 長男Cさんと二男Eさんの長所を生かしながら、経営権が分かれるリスクを避ける承継の形(一本化と役割分担)を決めます。
- 自社株式の評価額を確かめたうえで、事業承継税制の特例が使えるかどうかや、続けるための要件で気をつける点を整理します。
- 他の相続人(妻Bさん、長女Dさん、二男Eさん)の生活基盤や遺留分に配慮し、遺言の作成や教育資金の贈与などの多面的な提案をまとめます。
答えの内訳
- 優先提案1:経営権の集中と役割分担の明確化:後継者を長男Cさんに一本化して議決権株式を集約し、二男Eさんには営業・マーケティング部門の役員等として適切な権限と待遇を与える役割分担を提案する。
- 兄弟で株式を分散所有すると、将来の経営方針の対立時に会社運営がデッドロックに陥る危険があります。そのため代表権と議決権株式は専務として社内外の信望が厚い長男Cさんに集中させることが基本となります。商社勤務経験のある二男Eさんには営業担当役員として活躍してもらい、適正な役員報酬や業績連動給与等で報いる体制を構築することが望ましいです。
- 優先提案2:事業承継税制(特例措置)の適用検討:法人版事業承継税制(特例措置)の適用を検討し、贈与税・相続税の納税猶予制度を活用して早期の自社株承継を進めることを提案する。
- Aさんの保有するX社株式は4億8,000万円と多額であり、通常の承継では多額の納税資金が必要となります。特例措置を活用することで全株式に係る納税猶予(実質免除)が受けられます。留意点として、特例承継計画の提出期限や承継期限、適用後の役員就任要件・雇用確保要件、将来の組織再編や譲渡時の認定取消リスクを十分に精査・説明する必要があります。
- 優先提案3:遺留分対策および民法特例の活用:公正証書遺言の作成に加え、経営承継円滑化法に基づく民法の特例(除外合意・固定合意)や代償金の準備を提案する。
- 自社株や工場土地等の多額の財産を長男Cさんに承継させると、長女Dさんや二男Eさんの遺留分を侵害するおそれがあります。推定相続人全員の合意による民法特例(除外合意や固定合意)の活用を検討するとともに、死亡退職金や生命保険金を活用した代償分割原資の確保、遺言書による分割指定を確実に実施することが重要です。
- 優先提案4:生前贈与(教育資金非課税特例)と生産性向上設備投資の活用:来年進学予定の孫に対する教育資金の一括贈与非課税制度の利用と、今期予定している5,000万円の設備投資に係る税制優遇措置(中小企業経営強化税制等)の適用を提案する。
- 孫への教育支援として「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」(受贈者1人あたり最大1,500万円)を活用すれば、贈与税非課税でAさんの相続財産を早期に圧縮できます。また、計画中の5,000万円の生産性向上設備投資については中小企業経営強化税制等の要件を確認し、即時償却または税額控除を選択することで当期の税負担軽減を図るべきです。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 後継者への株式集中と二男・長女への遺留分対策(民法特例・遺言・代償金)はセットで検討する。
- 事業承継税制(特例措置)は税負担をゼロにできる強力な制度だが、認定取消要件などのリスク説明が必須となる。
間違えやすいところ
- 兄弟仲が良いからといって株式を半分ずつにして承継させると、将来、経営方針が食い違ったときに行き詰まるリスクを見落としやすいです。
- 事業承継税制のよい点だけを強調し、続けるための要件や将来の制約などの注意点の説明を怠ってしまいます。
出題の前提:2025年度実施のFP1級実技(資産相談業務)の出題基準および現行の会社法・租税特別措置法に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月8日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
FPとしての職業倫理と実務上の留意点
FP倫理・コンプライアンス · 顧客第一主義 / 守秘義務の遵守 / インフォームド・コンセント / 士業連携・法令遵守
設例の相談業務にあたり、ファイナンシャル・プランナー(FP)として遵守すべき職業倫理と実務上の留意点について述べなさい。
解答・解説を表示
解答
顧客第一主義、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)、および税理士法・弁護士法等の関連法規の遵守(士業との適正な連携)が求められる。
解説
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、高い倫理観を持ってお客様の利益を最優先に行動します。そのうえで、関連する法律を守り、専門の士業と適切に協力して、信頼性の高い助言をしなければなりません。
解き方
- お客様第一主義や守秘義務など、FP業務の土台となる基本的な倫理観を確認します。
- 提案を実行するにあたり、十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)を行い、各士業だけができる業務を侵さない体制を整理します。
答えの内訳
- 1. 顧客第一主義:Aさんおよび家族全体の利益・想いを最優先に尊重し、中立・公正な立場から最適な提案を行う。
- 特定の金融商品や手法の導入を誘導するのではなく、Aさんが望む「兄弟が力を合わせた会社の発展」と「家族円満な資産承継」の実現を第一に考えたプランニングを行います。
- 2. 守秘義務の遵守:相談過程で知り得たAさんの家族関係、資産状況、およびX社の財務・技術情報などの秘密を厳格に保持する。
- 非上場会社であるX社の財務情報や機密性の高い研究開発体制、Aさんの財産額や親族間の心情などプライバシーに関する情報を第三者に漏洩させない徹底した管理が求められます。
- 3. インフォームド・コンセント(十分な説明と同意):提案内容についてメリットだけでなく、デメリットや将来のリスクについても分かりやすく説明し、納得と同意を得る。
- 事業承継税制(特例措置)の適用要件や将来の制約、株式集中に伴う他の兄弟への配慮などについて丁寧に説明し、Aさんや後継者候補が十分に理解・納得した上で意思決定できるように支援します。
- 4. 関連法令の遵守と専門家(士業)との連携・協業:税理士法、弁護士法、司法書士法等の法規制を厳格に遵守し、自らの独断で行わず各専門資格者と適切に連携する。
- 税務申告書作成や個別具体的な税額計算(税理士業務)、遺言書作成指導や紛争性のある遺産分割交渉(弁護士業務)、登記手続き(司法書士業務)は各士業の独占業務であるため、FPの職掌範囲を逸脱せず、税理士や弁護士等と連携して業務を遂行します。
覚えるポイント
- FPの4大職業倫理:「顧客第一主義」「守秘義務」「インフォームド・コンセント」「法令遵守(士業連携)」。
- 税法上の個別具体的な計算や書類作成をFP自身が行うと税理士法違反となるため注意する。
間違えやすいところ
- お客様への説明で節税のメリットばかりを強調し、事業承継税制などの取り消しリスクや手続きの義務の説明を怠ることです。
- 専門家の独占業務の範囲(税理士法第52条や弁護士法第72条)を軽視し、FPの範疇を超えた個別の法的助言を行ってしまうことです。
出題の前提:日本FP協会の倫理規程および金融財政事情研究会のFP技能士行動規範に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月8日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月8日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月8日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

