在職老齢年金とは
在職老齢年金は、老齢厚生年金の受給者が働いて一定の収入を得るとき、年金の一部または全部が支給停止される仕組みです。基本月額と総報酬月額相当額の合計で調整します。

1級の年金問題では、式を覚えるだけでなく、どの期間や給付にどの調整を当てるかが重要です。生年月日、加入歴、配偶者の年齢、就労状況を時系列に並べ、基礎年金と厚生年金を分けて考えます。
基本の仕組み

2026年4月以降の在職老齢年金を例にします。基本月額(加給年金額・経過的加算額を除く報酬比例部分の月額)が10万円、総報酬月額相当額が60万円のとき、合計70万円は支給停止調整額65万円を5万円上回ります。
よって支給停止額は(10+60−65)÷2=2万5,000円、調整後の老齢厚生年金は月7万5,000円です。総報酬月額相当額は標準報酬月額にその月以前1年間の標準賞与額の合計÷12を加えた額で、手取り給与とは異なります。
老齢基礎年金は在職老齢年金による支給停止の対象外なので、この計算には含めません。65万円は2026年度の基準であり、2025年度の51万円など過去問の基準へそのまま置き換えないでください。加給年金、振替加算、繰上げ・繰下げも、開始・終了の要件と併給調整を個別に確かめます。
加入歴を三つの計算に分解

1級の応用編や実技では、老齢基礎年金、老齢厚生年金の報酬比例部分、経過的加算と加給年金額を同じ事例で計算します。基礎年金は原則20歳以上60歳未満の国民年金の納付・免除等の月数、報酬比例部分は厚生年金の加入月数と報酬、経過的加算は厚生年金の定額部分相当額から対応する老齢基礎年金相当額を引いたものです。
老齢基礎年金=満額×(保険料納付済月数+免除月数×反映割合)÷480です。2026年度の満額は年847,300円(1956年4月2日以後生まれ)です。2009年4月以後の免除期間は、全額免除2分の1、4分の3免除8分の5、半額免除4分の3、4分の1免除8分の7を反映し、学生納付特例・納付猶予の期間は追納しなければ反映しません。
報酬比例部分は2003年3月までの平均標準報酬月額×7.125/1000×月数と、2003年4月以降の平均標準報酬額×5.481/1000×月数を原則合算します。実際の問題では生年月日や再評価率・指定された乗率を優先します。厚生年金の20歳前・60歳後の月数を基礎年金の480月の分子に機械的に含めない点が重要です。
経過的加算=定額単価×厚生年金加入月数(上限480月)−老齢基礎年金満額×1961年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金加入月数÷480です。20歳前や60歳以後の厚生年金期間は後ろの控除側に入らないため、その月数分が経過的加算として年金額に上乗せされます。定額単価は問題文の数値を使います。
加給年金額は、受給者の厚生年金加入期間20年以上と、生計を維持する65歳未満の配偶者または18歳到達年度末までの子(障害等級1・2級なら20歳未満)で判定します。2026年度の配偶者の加給年金額は243,800円で、受給者の生年月日に応じた特別加算を含めると最大423,700円です。配偶者自身が加入期間20年以上の老齢厚生年金等を受け取れる場合は支給停止されます。
| 計算部分 | 主に使う期間・情報 |
|---|---|
| 老齢基礎年金 | 20~60歳の納付済月数と免除月数×反映割合 |
| 報酬比例部分 | 2003年3月以前/4月以後の報酬と月数 |
| 経過的加算 | 定額単価×厚年月数(上限480月)−基礎年金満額×1961年4月以後の20~60歳の厚年月数÷480 |
| 加給年金額 | 受給者・配偶者・子の条件 |
| 在職老齢年金 | 基本月額と総報酬月額相当額 |
在職定時改定・繰下げ・振替加算

65歳以上70歳未満で厚生年金に加入して働く受給者は、毎年9月1日を基準日として前年9月から当年8月までの加入期間を反映し、10月分から老齢厚生年金が改定されます(在職定時改定、2022年4月導入)。退職して資格を喪失したときの退職改定とは別の仕組みです。
繰下げは1952年4月2日以後生まれなら75歳まで可能で、1か月0.7%の増額(最大84%)です。繰下げ待機中は加給年金も支給されず、加給年金額は増額されません。在職老齢年金で支給停止される部分も増額の対象外です。
70歳到達後(80歳到達前)に繰下げの申出をせず、さかのぼって本来の受給を選ぶと、請求の5年前に繰下げの申出があったとみなして増額した年金の5年分が一括で支払われます(2023年4月施行)。
配偶者が65歳になると加給年金は終わり、1926年4月2日から1966年4月1日までに生まれた配偶者には老齢基礎年金に振替加算が付きます。配偶者自身の厚生年金加入期間が20年以上ある場合は付かず、生年月日が若いほど額は少なくなります。
障害・遺族年金の併給調整、離婚分割、育児期間の特例

障害厚生年金は報酬比例部分で計算し、1級は1.25倍、加入月数が300月未満なら300月とみなします。1・2級には配偶者の加給年金額が付き、3級には最低保障額(2級の障害基礎年金の4分の3)があります。障害基礎年金の1級は2級の1.25倍で、子の加算が付きます。
遺族厚生年金は死亡者の報酬比例部分の4分の3です。65歳以後に自分の老齢厚生年金を受けられる配偶者は、①その4分の3の額と、②4分の3の額の3分の2+自分の老齢厚生年金の2分の1の、いずれか多い額を求めます。自分の老齢厚生年金を全額受け、①②の多い額がそれを上回る差額だけを遺族厚生年金として受けます。
65歳以後は1人1年金の例外として、老齢基礎年金と遺族厚生年金、障害基礎年金と老齢厚生年金または遺族厚生年金を組み合わせられます。老齢基礎年金と障害厚生年金は組み合わせられないため、障害厚生年金3級だけの人は、障害厚生年金か、老齢基礎年金+老齢厚生年金かを選びます。
離婚時の年金分割は婚姻期間中の厚生年金の標準報酬を分ける制度で、基礎年金は分割しません。合意分割は按分割合の上限が2分の1で、合意または裁判所の決定が必要です。3号分割は2008年4月以後の第3号被保険者期間を合意なしで2分の1ずつ分けます。請求期限は2026年4月1日以後の離婚等なら5年、それより前の離婚等なら2年です。
3歳未満の子を養育する期間に標準報酬月額が下がっても、申出により養育開始前の従前の標準報酬月額で年金額を計算します(養育期間標準報酬月額特例)。保険料は下がった標準報酬月額で負担します。産前産後休業・育児休業期間の厚生年金保険料は、事業主の申出で本人負担分・事業主負担分とも免除され、年金額では納付した期間として扱われます。
| 65歳以後の組合せ | 併給の可否 |
|---|---|
| 老齢基礎年金+老齢厚生年金 | 可 |
| 老齢基礎年金+遺族厚生年金 | 可(老齢厚生年金を先に全額受け、遺族厚生年金は差額) |
| 障害基礎年金+老齢厚生年金 | 可 |
| 障害基礎年金+遺族厚生年金 | 可 |
| 老齢基礎年金+障害厚生年金 | 不可 |
試験に出る
- 在職老齢年金の支給停止額は(基本月額+総報酬月額相当額−支給停止調整額)÷2で求める。
- 老齢基礎年金は在職老齢年金による支給停止の対象外。計算に含めない。
- 支給停止調整額は年度で変わる。2026年度は65万円、2025年度は51万円。
- 総報酬月額相当額には標準賞与額の月割り分等が含まれ、手取り給与とは違う。
- 加給年金・振替加算・繰上げ繰下げは、開始終了の要件と併給調整を個別に確認する。
- 経過的加算=定額単価×厚生年金加入月数(上限480月)−老齢基礎年金満額×1961年4月以後の20歳以上60歳未満の厚生年金加入月数÷480。
- 65歳以後の遺族厚生年金は自分の老齢厚生年金を全額受けたうえでの差額支給。老齢基礎年金と障害厚生年金は併給できない。
- 離婚時年金分割の請求期限は、2026年4月1日以後の離婚等なら5年、それより前の離婚等なら2年。
重要な言葉
- 基本月額
- 老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額を12で割った月額。加給年金額と経過的加算額は含めない。
- 総報酬月額相当額
- その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12を加えた額。手取り給与とは異なる。
- 支給停止調整額
- 在職老齢年金の支給停止を判定する基準額。年度ごとに見直される。
- 経過的加算
- 65歳からの老齢厚生年金に上乗せされる、定額部分相当額と老齢基礎年金相当額の差額。20歳前・60歳以後の厚生年金期間を年金額に反映させる。
- 在職定時改定
- 65歳以上70歳未満の在職受給者の老齢厚生年金を、毎年9月1日の加入状況で10月分から改定する仕組み。
確認問題
確かめようある年齢を境に年金額が変わるとき、その理由として何が考えられますか。
加入期間の増加・給付開始・加算の終了です。金額の横に変化の原因を書き、制度改正と本人の年齢変化も区別します。
老齢基礎年金も在職老齢年金による支給停止の対象になる。
在職老齢年金の支給停止額は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額を超えた分の半分で計算する。
65歳以後、障害厚生年金3級だけを受給している人は、老齢基礎年金と障害厚生年金を併せて受け取れる。
2026年度の在職老齢年金で、基本月額10万円・総報酬月額相当額60万円のときの支給停止額は?
在職老齢年金の支給停止計算に含めないものは?
65歳の妻が、夫の死亡により遺族厚生年金を受ける。夫の報酬比例部分の年金額は120万円、妻自身の老齢厚生年金は80万円。遺族厚生年金として支給される額は?
1級の年金問題では、式を覚えるだけでなく、どの期間や給付にどの調整を当てるかが重要です。、加入歴、配偶者の年齢、就労状況を時系列に並べ、と厚生年金を分けて考えます。
2026年4月以降の在職老齢年金を例にします。基本月額(加給年金額・経過的加算額を除く報酬比例部分の月額)が10万円、総報酬月額相当額がのとき、合計70万円は支給停止調整額を5万円上回ります。
は在職老齢年金による支給停止の対象外なので、この計算には含めません。65万円は2026年度の基準であり、2025年度のなど過去問の基準へそのまま置き換えないでください。加給年金、振替加算、繰上げ・繰下げも、開始・終了の要件と併給調整を個別に確かめます。
出典・参考資料
試験の公式案内と、この記事の参考にした学習資料です。
- 日本FP協会:2級・3級FP技能検定 試験要綱 ↗
- きんざい:FP技能検定 ↗
- 日本年金機構:老齢年金の受給要件と仕組み ↗
- 厚生労働省:iDeCoの概要 ↗
- 国民年金基金連合会:iDeCoの特徴 ↗
- 日本年金機構:2026年4月以降の在職老齢年金の計算方法 ↗
- 厚生労働省:確定拠出年金制度の拠出限度額 ↗
- 日本FP協会:1級 試験範囲の細目(2026年9月確認) ↗
- 日本年金機構:年金額改定の確認 ↗
- 日本FP協会:FP実務の6ステップ ↗
- 日本税理士会連合会:税理士の業務 ↗
- 日本司法書士会連合会:司法書士の業務 ↗
- 日本土地家屋調査士会連合会:調査・測量と表示登記 ↗
- 日本FP協会:2025年9月1級実技試験問題 ↗
- 協会けんぽ:傷病手当金のよくある質問 ↗
- 日本年金機構:加給年金額と振替加算 ↗
- 日本年金機構:令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました ↗
- 日本年金機構:令和8年4月分からの年金額等について ↗
- 日本年金機構:離婚時の年金分割の請求期限が改正されました ↗
- 厚生労働省:2025年の確定拠出年金制度改正 ↗
- 財務省:令和7年度税制改正の大綱(退職所得控除の調整規定の見直し) ↗
- 国税庁:退職金を受け取ったとき(退職所得) ↗
- 中退共:制度の特色(掛金・国の助成) ↗
- 厚生労働省:社会保険適用拡大特設サイト ↗
- 厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ(令和8年8月改定) ↗
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