代理や契約の効力、不動産の権利、賃貸借の更新・終了を学びます。区分所有と登記では、対象となる権利や手続、改正の適用時点を区別します。
仕組みを理解する
民法総則
民法の意思表示とは、契約などの法律効果を生じさせようとする意思を外部に示すことです。無効・取消しや代理の効果は、要件ごとに判断します。

契約の効力を判断するときは、誰がどんな意思で行動したかを確認します。無効と取消しも区別が必要です。
行為能力と意思表示

未成年者が法定代理人の同意なく契約した場合、原則としてその契約を取り消せます。最初から無効になるわけではありません。単に権利を得る・義務を免れる行為、処分を許された財産の処分、営業を許された営業に関する行為は、同意がなくても取り消せません。
意思能力がない状態でした意思表示は無効です。制限行為能力を理由とする取消しとは効果が違うため、「無効」か「取り消せる」かを区別します。
当事者間で取り消せるかと、第三者へその効果を主張できるかは別の問題です。第三者が善意であればよいのか、善意無過失まで必要なのかは、意思表示の種類ごとに違います。
意思表示の問題は、心裡留保・通謀虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫に分けます。心裡留保は原則有効、通謀虚偽表示は当事者間で無効、錯誤と詐欺・強迫は取消しの問題です。「無効」と「取り消せる」を入れ替えた肢に注意します。
第三者の保護も同じではありません。通謀虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できず、錯誤・詐欺による取消しは善意無過失の第三者に対抗できません。強迫による取消しには第三者保護の規定がなく、善意無過失の第三者にも対抗できます。
| 意思表示 | 当事者間の効力 | 保護される第三者 |
|---|---|---|
| 心裡留保 | 原則有効。相手方が真意でないと知り又は知り得たときは無効 | 善意の第三者を保護 |
| 通謀虚偽表示 | 無効 | 善意の第三者を保護 |
| 錯誤 | 要件を満たせば取消し | 善意無過失の第三者を保護 |
| 詐欺 | 取消し | 善意無過失の第三者を保護 |
| 強迫 | 取消し | 保護規定なし(善意無過失の第三者にも対抗できる) |
代理と無権代理

代理では代理権の範囲内で本人のためにすることを示した意思表示が、原則として本人へ効果を生じさせます。代理人自身が買主などの契約当事者になるわけではありません。
代理権のない者が代理人として契約すると無権代理となり、本人が追認しない限り本人に効果は生じません。本人が追認すれば、原則として契約時に遡って効力が生じます。相手方は、本人に追認するかの催告ができ、善意であれば本人の追認前に契約を取り消せます。
表見代理は、無権代理でも相手方を保護して本人に効果を及ぼす例外です。代理権授与の表示、権限外の行為、代理権消滅後の行為の3類型があり、いずれも相手方の善意無過失が中心の要件です。表見代理が成立しなくても、相手方は要件を満たせば無権代理人に履行又は損害賠償を請求できます。
代理人が自分や第三者の利益を図る目的で権限内の行為をした場合(代理権の濫用)、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、無権代理とみなされます。
時効の援用と期間

時効は、期間が経ったことだけで裁判所が自動的に扱うものではありません。当事者の援用が必要で、完成猶予・更新の事由があれば期間の進行も変わります。
取得時効は、所有の意思をもって平穏・公然に占有を続けた場合に成立し、占有開始時に善意無過失なら10年、それ以外は20年です。債権の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年のいずれか早い方で完成します。
相続と代襲相続

相続では、配偶者は常に相続人となり、子・直系尊属・兄弟姉妹が順位に従って相続します。相続人が引き継ぐのは財産だけでなく債務も含むため、単純承認・限定承認・放棄を区別します。相続放棄をした者は、初めから相続人でなかったものとみなされます。
子が相続開始以前に死亡したとき(同時死亡を含む)や、相続欠格・廃除で相続権を失ったときは、その子の子が代襲相続します。相続放棄は代襲原因ではありません。兄弟姉妹が相続人となる場合の代襲は甥・姪までで、再代襲はしません。
遺産分割前に相続財産である賃貸不動産から生じた賃料債権は、各共同相続人が相続分に応じて取得します。後の遺産分割でその不動産を一人が取得しても、既に生じた賃料債権の帰属を当然には変えません。
| 子の相続権を失う原因 | 子の子が代襲するか | 判断の理由 |
|---|---|---|
| 相続開始以前の死亡(同時死亡を含む) | する | 民法887条2項の代襲原因 |
| 相続欠格・廃除 | する | 民法887条2項の代襲原因 |
| 相続放棄 | しない | 初めから相続人でなかった扱い |
相続に関連する配偶者の居住権

配偶者居住権は、被相続人が所有し、相続開始時に配偶者が住んでいた建物に、配偶者が無償で住み続けられる権利です。遺産分割・遺贈等で取得し、期間は原則として終身です。建物の所有権とは別の権利で、配偶者は譲渡できず、所有者の承諾がなければ第三者に賃貸できません。配偶者居住権の登記をすれば第三者に対抗でき、所有者は配偶者に登記を備えさせる義務を負います。
配偶者短期居住権は、相続開始時に無償で住んでいた配偶者が、一定期間そのまま住み続けられる権利で、遺産分割や遺言がなくても当然に成立します。遺産分割をする場合は、帰属が確定した日と相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日までです。登記はできず、譲渡もできません。
| 権利 | 成立・期間 | 注意 |
|---|---|---|
| 配偶者居住権 | 遺産分割・遺贈等で取得し、原則として終身 | 譲渡不可。登記すれば第三者に対抗できる |
| 配偶者短期居住権 | 相続開始時に無償で居住していれば当然に成立。遺産分割をする場合は帰属確定日と相続開始から6か月のいずれか遅い日まで | 登記・譲渡はできない |
不在者の財産管理

従来の住所・居所を去って財産管理人がいない不在者については、利害関係人等の請求により家庭裁判所が財産管理人を選任するなど必要な処分を行います。財産管理人が保存・管理の範囲を超えて不動産を処分するには、家庭裁判所の許可が必要です。所有者不明土地管理制度とは、管理対象と要件が異なります。
試験に出る
- 未成年者の契約は「当然無効」ではなく「取消し」が原則。無効との区別を問う正誤問題に注意します。
- 取消しや無効を第三者に主張できるかは、意思表示の種類ごとに第三者の要件(善意か、善意無過失か)が変わります。
- 無権代理と表見代理は別制度。表見代理は相手方保護のための例外で、要件を混同させる選択肢に注意します。
- 時効は期間経過だけで自動的に成立せず、援用が必要。取得時効と消滅時効は目的や起算点が異なります。
- 代理の効果は本人に帰属する点、代理人自身が契約当事者になるわけではない点が問われます。
重要な言葉
- 制限行為能力
- 未成年者や成年被後見人など、単独で契約すると取消しの対象になり得る者のこと。
- 表見代理
- 代理権が実際になくても、相手方保護のため本人に効果を及ぼすことがある制度。
- 時効の援用
- 時効の効果を受けるために当事者がそれを主張すること。期間経過だけで自動的には成立しない。
確認問題
確かめよう未成年者の同意のない契約はいつでも当然無効?
いいえ。原則として取消しの問題で、例外もあります。
未成年者が法定代理人の同意なくした契約は、原則として取り消すことができる。
時効は期間が経過すれば、援用しなくても裁判所が自動的に認める。
AがBの詐欺によって土地をCに売却し、その後に詐欺を理由として契約を取り消した。取消し前にCから土地を買い受けたDが詐欺の事実を知らなかったのであれば、知らなかったことに過失があっても、AはDに取消しを対抗できない。
AがBに強迫されて土地をBに売却し、Bがその土地を善意無過失のCに転売した後、Aが強迫を理由に売買契約を取り消した。この場合、AはCに取消しを対抗できない。
通謀虚偽表示による無効を対抗できない第三者として保護されるには、善意であれば足り、無過失までは要求されない。
無権代理人がした契約を本人が追認した場合、別段の意思表示がなければ、契約は追認をした時から将来に向かって効力を生じる。
無権代理人と契約した相手方は、契約時に代理権がないことを知らなかったときは、本人が追認をしない間であれば契約を取り消すことができる。
所有の意思をもって平穏・公然に他人の土地の占有を始めた者は、占有開始時に善意であれば、過失があっても10年間の占有で所有権を時効取得する。
被相続人の子が相続を放棄した場合、その子の子(被相続人の孫)が代襲して相続人となる。
配偶者短期居住権は、遺産分割や遺言がなくても成立するが、登記をして第三者に対抗することはできない。
配偶者居住権を取得した配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なくても、その建物を第三者に賃貸することができる。
不在者の財産管理人が、保存・管理の範囲を超えて不在者の土地を売却するには、家庭裁判所の許可を得る必要がある。
未成年者が法定代理人の同意なく契約した場合の原則は?
表見代理が問題となるのはどのような場合?
意思表示に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
Aの代理人と称するBが、代理権がないのにA所有の土地をCに売却した。この場合に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
債権の消滅時効について、債権者が権利を行使することができることを知った時から何年間行使しないと時効によって消滅するか(人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権を除く)。
Aが死亡した。Aには配偶者Fと子B・Cがいたが、BはAより先に死亡しており、Bには子Dがいる。Cは相続を放棄し、Cには子Eがいる。Aの相続人となる者の組合せとして正しいものはどれか。
契約の効力を判断するときは、誰がどんな意思で行動したかを確認します。とも区別が必要です。
がの同意なく契約した場合、原則としてその契約を取り消せます。最初から無効になるわけではありません。単に権利を得る・義務を免れる行為、処分を許された財産の処分、営業を許された営業に関する行為は、同意がなくても取り消せません。
がない状態でした意思表示は無効です。制限行為能力を理由とする取消しとは効果が違うため、「無効」か「取り消せる」かを区別します。
当事者間で取り消せるかと、へその効果を主張できるかは別の問題です。第三者がであればよいのか、善意無過失まで必要なのかは、意思表示の種類ごとに違います。
意思表示の問題は、心裡留保・通謀虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫に分けます。心裡留保は原則有効、通謀虚偽表示は当事者間で、錯誤と詐欺・強迫はの問題です。「無効」と「取り消せる」を入れ替えた肢に注意します。
第三者の保護も同じではありません。通謀虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できず、錯誤・詐欺による取消しはの第三者に対抗できません。強迫による取消しにはの規定がなく、善意無過失の第三者にも対抗できます。
代理ではの範囲内で本人のためにすることを示した意思表示が、原則として本人へ効果を生じさせます。代理人自身が買主などの契約当事者になるわけではありません。
代理権のない者が代理人として契約するととなり、本人が追認しない限り本人に効果は生じません。本人が追認すれば、原則としてに遡って効力が生じます。相手方は、本人に追認するかのができ、善意であれば本人の追認前に契約を取り消せます。
は、無権代理でも相手方を保護して本人に効果を及ぼす例外です。代理権授与の表示、権限外の行為、代理権消滅後の行為の3類型があり、いずれも相手方のが中心の要件です。表見代理が成立しなくても、相手方は要件を満たせば無権代理人に履行又は損害賠償を請求できます。
代理人が自分や第三者の利益を図る目的で権限内の行為をした場合()、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、とみなされます。
時効は、期間が経ったことだけで裁判所が自動的に扱うものではありません。当事者のが必要で、完成猶予・更新の事由があれば期間の進行も変わります。
は、所有の意思をもって平穏・公然に占有を続けた場合に成立し、占有開始時に善意無過失なら、それ以外はです。債権の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年のいずれか早い方で完成します。
相続では、配偶者は常に相続人となり、子・直系尊属・兄弟姉妹が順位に従って相続します。相続人が引き継ぐのは財産だけでなく債務も含むため、単純承認・限定承認・放棄を区別します。相続放棄をした者は、ものとみなされます。
子が相続開始以前に死亡したとき(同時死亡を含む)や、相続欠格・廃除で相続権を失ったときは、その子の子がします。は代襲原因ではありません。兄弟姉妹が相続人となる場合の代襲は甥・姪までで、再代襲はしません。
配偶者居住権は、被相続人が所有し、相続開始時に配偶者が住んでいた建物に、配偶者が無償で住み続けられる権利です。遺産分割・遺贈等で取得し、期間は原則としてです。建物の所有権とは別の権利で、配偶者は譲渡できず、所有者の承諾がなければ第三者に賃貸できません。配偶者居住権のをすれば第三者に対抗でき、所有者は配偶者に登記を備えさせる義務を負います。
配偶者短期居住権は、相続開始時に無償で住んでいた配偶者が、一定期間そのまま住み続けられる権利で、遺産分割や遺言がなくても当然に成立します。遺産分割をする場合は、帰属が確定した日と相続開始からを経過する日のいずれか遅い日までです。登記はできず、譲渡もできません。
従来の住所・居所を去って財産管理人がいない不在者については、利害関係人等の請求により家庭裁判所が財産管理人を選任するなど必要な処分を行います。財産管理人が保存・管理の範囲を超えて不動産を処分するには、が必要です。所有者不明土地管理制度とは、管理対象と要件が異なります。
物権
物権変動とは、売買などによって物権が移ることをいい、不動産では登記を備えないと第三者へ権利を主張できません。

土地を買ったことと、その権利を第三者へ主張できることは別の問題です。登記が必要な場面を考えます。
登記で対抗できる相手

Aが同じ土地をBとCへ二重に売った場合、原則として先に登記を備えた側が相手へ所有権を対抗できます。契約日の早さだけでは決まりません。
登記がなければ対抗できない民法177条の第三者は、登記がないことを主張する正当な利益を持つ者に限られます。二重譲渡の後の買主はこれに当たり、先の売買を知っていた(悪意)だけなら、先に登記を備えれば優先します。ただし、信義則に反するほどの背信的悪意者には、登記がなくても対抗できます。無権利者や不法占拠者も、ここでいう第三者に当たりません。
解除前の第三者は、民法545条1項ただし書で保護されますが、判例上は登記を備えている必要があります。解除後の第三者とは、民法177条により先に登記した側が優先する対抗関係になります。取消しも、取消し後の第三者とは対抗関係です。権利取得と解除・取消しの時間の順序を書き出して判断します。
取得時効でも、時効完成前に所有者から取得した第三者に対しては、時効取得者は登記なしで所有権を主張できます。時効完成後に取得した第三者とは対抗関係となり、先に登記した側が優先します。
| 第三者が現れた時期 | 関係 | 優劣の決め方 |
|---|---|---|
| 解除前 | 民法545条1項ただし書 | 第三者は登記を備えれば保護 |
| 解除後・取消し後 | 対抗関係(民法177条) | 先に登記した側が優先 |
| 時効完成前 | 時効取得者と当事者の関係 | 時効取得者は登記なしで対抗できる |
| 時効完成後 | 対抗関係(民法177条) | 先に登記した側が優先 |
抵当権などの担保

所有権は物を支配する権利、抵当権は占有を移さず不動産から優先弁済を受ける担保権です。不動産物権変動の対抗には登記が基本となります。
抵当権が付いても、所有者は不動産を使い続けられます。抵当権者は、債務不履行があったときに競売し、その競売代金から優先弁済を受けます。抵当権者が所有権を取得するわけではなく、抵当権が付いたまま売買されても、売買だけで抵当権は消えません。
抵当権の順位は、原則として登記の前後で決まります。順位の変更は関係する抵当権者全員の合意と登記で順位そのものを入れ替えます。順位の譲渡は譲り受けた者が譲り渡した者より先に配当を受け、順位の放棄は両者を同順位として、2人の配当額の合計を債権額の割合で分けます。
所有権と地上権などの権利が同一人に帰属すると、原則として混同で消滅します。ただし、その権利が第三者の権利の目的となっているときなどは消滅しません。
共有物の決め方

共有では各共有者に持分があり、保存・管理・変更のどれに当たるかで決定方法が違います。小さな補修と建物の取り壊しを同じ多数決として扱わず、具体的な行為と法の条件を照合します。
共有物の保存行為は各共有者が単独ででき、管理行為と軽微な変更は持分価格の過半数、形状・効用の著しい変更は全員の同意が必要です。建物の賃貸借は3年以内、土地は5年以内なら管理行為として過半数で決められます。
共有者が持分を放棄したときは、その持分は他の共有者に帰属します(国庫ではありません)。相続人なく死亡したときも、特別縁故者への分与がなければ同様です。無権利者が不実の登記をしているときは、各共有者が単独で抹消を請求できます。一方、他の共有者が無断で共有物を占有していても、少数持分の共有者が当然に明渡しを請求できるわけではありません。
所在等不明の共有者がいるときは、裁判所の決定を得て、その者以外の共有者の同意や持分価格の過半数で変更・管理を決めたり、その持分を取得したりできます。
| 共有物への行為 | 原則の決め方 | 例 |
|---|---|---|
| 保存 | 各共有者が単独でできる | 修繕、不法占拠者への妨害排除 |
| 管理 | 持分価格の過半数 | 利用方法の決定、短期の賃貸借 |
| 軽微な変更 | 持分価格の過半数 | 形状・効用の著しい変更を伴わないもの |
| 形状・効用の著しい変更 | 全員の同意 | 建物の建築・取壊し等の大きな改変 |
占有・相隣関係・用益物権

占有権は物を事実上支配する状態を保護し、所有権の有無とは別に判断します。占有の訴えには、占有を妨害されたときの占有保持の訴え、妨害のおそれがあるときの占有保全の訴え、占有を奪われたときの占有回収の訴えの3つがあります。占有回収の訴えは、侵奪の時から1年以内に提起します。
隣地との関係では、隣地使用・境界標や囲障・越境した竹木の枝や根など、所有権を行使する際の調整規律があります。地上権・永小作権・地役権などの用益物権は他人の土地を利用する権利で、抵当権等の担保物権とは目的が違います。
| 権利・制度 | 何を守るか | 例 |
|---|---|---|
| 所有権 | 物の使用・収益・処分 | 対抗要件として登記を検討 |
| 占有権 | 事実上の支配 | 占有回収は侵奪から1年以内 |
| 用益物権 | 他人の土地の利用 | 地上権・地役権等 |
| 担保物権 | 債権の回収確保 | 抵当権・先取特権等 |
| 相隣関係 | 隣接する土地の利用調整 | 隣地使用・越境した枝等 |
立木など登記以外の対抗方法

土地の所有権は登記で対抗するのが原則です。一方、立木は、立木法による登記のほか、樹皮を削って所有者名を記すなど、外から権利関係が分かる明認方法でも第三者に対抗できます。土地・建物・立木を一律に「登記以外は不可」とせず、対象物ごとに対抗方法を分けます。
試験に出る
- 二重譲渡では契約日の先後ではなく登記の有無で優劣が決まるのが原則。例外として背信的悪意者が問われます。
- 不動産物権変動の対抗要件は登記。引渡しや契約だけでは第三者に対抗できません。
- 抵当権は占有を移さずに優先弁済を受ける担保権で、所有権を取得するものではない点を区別します。
- 抵当権が付いた不動産を売買しても、担保は原則として消えずに残ります。
- 共有物の保存・管理・変更は決定方法が異なり、単独・持分価格の過半数・全員の同意の違いが問われます。
- 解除・取消し・取得時効では、第三者が現れたのがその前か後かで、登記の要否が変わります。
重要な言葉
- 対抗要件
- 第三者に権利の変動を主張するために必要な要件。不動産では原則として登記。
- 背信的悪意者
- 二重譲渡で、単なる悪意を超えて信義則上保護されない者。この者には、登記のない先の買主でも対抗できます。
- 抵当権
- 債務不履行のときに競売代金から優先弁済を受けられる、占有を伴わない担保権。
- 持分
- 共有で各共有者が持つ割合。変更・管理・保存で決定方法が異なる。
確認問題
確かめよう二重売買では契約が先なら必ず優先?
いいえ。登記の有無などが重要です。
二重譲渡では、契約を先に結んだ者が必ず所有権を対抗できる。
抵当権が設定された不動産を売買しても、抵当権は当然には消滅しない。
Aが土地をBに売却した後、同じ土地をCにも売却した。CがAB間の売買を知っていた場合には、Cが先に所有権移転登記を備えても、BはCに所有権を対抗できる。
土地の所有者は、所有権移転登記を備えていなくても、その土地の不法占拠者に対して所有権を主張して明渡しを求めることができる。
AがBに土地を売却した後、Bの代金不払いを理由にAが契約を解除した。解除前にBから土地を買い受けたCは、所有権移転登記を備えていなくても、Aに所有権を主張できる。
BがA所有の土地を時効取得した場合、時効完成後にAから土地を譲り受けて登記したCに対しても、Bは登記なしで所有権を主張できる。
共有物の保存行為は、他の共有者の同意がなくても、各共有者が単独ですることができる。
共有建物について期間5年の賃貸借契約を締結することは、持分価格の過半数で決することができる。
共有者の一人がその持分を放棄したときは、その持分は国庫ではなく他の共有者に帰属する。
占有回収の訴えは、占有を奪われた時から3年以内に提起しなければならない。
立木は、立木法による登記をしていなくても、明認方法を施せば、その所有権を第三者に対抗することができる。
二重譲渡で第三者の優劣を決める基本的な基準は?
抵当権の内容として正しいものは?
AがBに甲土地を売却して代金を受け取ったが、所有権移転登記はまだAに残っている。Bが登記なしで甲土地の所有権を対抗できる相手はどれか。
甲土地の競売代金6,000万円を、一番抵当権者A(債権2,000万円)、二番抵当権者B(債権2,000万円)、三番抵当権者C(債権3,000万円)に配当する。AがCに抵当権の順位を放棄していた場合、Cが受ける配当額はいくらか。
共有に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
物権に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
土地を買ったことと、その権利を第三者へ主張できることは別の問題です。が必要な場面を考えます。
Aが同じ土地をBとCへ二重に売った場合、原則として先にを備えた側が相手へを対抗できます。契約日の早さだけでは決まりません。
登記がなければ対抗できない民法177条のは、登記がないことを主張する正当な利益を持つ者に限られます。二重譲渡の後の買主はこれに当たり、先の売買を知っていた(悪意)だけなら、先に登記を備えれば優先します。ただし、信義則に反するほどのには、登記がなくても対抗できます。無権利者や不法占拠者も、ここでいう第三者に当たりません。
解除前の第三者は、民法545条1項ただし書で保護されますが、判例上はを備えている必要があります。解除後の第三者とは、民法177条により先に登記した側が優先するになります。取消しも、取消し後の第三者とは対抗関係です。権利取得と解除・取消しの時間の順序を書き出して判断します。
取得時効でも、時効完成前に所有者から取得した第三者に対しては、時効取得者はで所有権を主張できます。時効完成後に取得した第三者とは対抗関係となり、先に登記した側が優先します。
所有権は物を支配する権利、は占有を移さず不動産からを受ける担保権です。不動産物権変動の対抗には登記が基本となります。
抵当権が付いても、所有者は不動産を使い続けられます。抵当権者は、があったときに競売し、そのから優先弁済を受けます。抵当権者が所有権を取得するわけではなく、抵当権が付いたまま売買されても、売買だけで抵当権は消えません。
抵当権の順位は、原則としてで決まります。順位の変更は関係する抵当権者全員の合意と登記で順位そのものを入れ替えます。順位の譲渡は譲り受けた者が譲り渡した者より先に配当を受け、順位の放棄は両者をとして、2人の配当額の合計を債権額の割合で分けます。
所有権と地上権などの権利が同一人に帰属すると、原則としてで消滅します。ただし、その権利が第三者の権利の目的となっているときなどは消滅しません。
共有では各共有者にがあり、保存・管理・変更のどれに当たるかで決定方法が違います。小さな補修と建物の取り壊しを同じとして扱わず、具体的な行為と法の条件を照合します。
共有物の保存行為は各共有者が単独ででき、管理行為と軽微な変更は、形状・効用の著しい変更はが必要です。建物の賃貸借は以内、土地は5年以内なら管理行為として過半数で決められます。
共有者が持分を放棄したときは、その持分はに帰属します(国庫ではありません)。相続人なく死亡したときも、特別縁故者への分与がなければ同様です。無権利者が不実の登記をしているときは、各共有者が単独で抹消を請求できます。一方、他の共有者が無断で共有物を占有していても、少数持分の共有者が当然に明渡しを請求できるわけではありません。
占有権は物を事実上支配する状態を保護し、所有権の有無とは別に判断します。占有の訴えには、占有を妨害されたときの占有保持の訴え、妨害のおそれがあるときの占有保全の訴え、占有を奪われたときの占有回収の訴えの3つがあります。占有回収の訴えは、侵奪の時からに提起します。
土地の所有権は登記で対抗するのが原則です。一方、立木は、立木法による登記のほか、樹皮を削って所有者名を記すなど、外から権利関係が分かるでも第三者に対抗できます。土地・建物・立木を一律に「登記以外は不可」とせず、対象物ごとに対抗方法を分けます。
債権・契約
契約不適合責任とは、引き渡された物の種類・品質・数量などが契約内容に合わないときに、買主が追完請求・代金減額・損害賠償・解除を求められる責任です。

契約どおりの物が届かなかった場合、すぐにすべて同じ救済が使えるわけではありません。不適合の内容と請求の条件を分けます。
契約不適合ごとの救済

注文した設備の性能が契約を満たさないなら、追完請求、代金減額、損害賠償、解除などを検討します。売主の責任や履行の催告の要否は請求ごとに確認します。
契約不適合は種類・品質・数量などが契約内容に適合しない問題です。債務不履行一般の規律と、買主の通知など売買の特則を組み合わせます。
「不具合がある」と「契約に適合していない」は同じとは限りません。合意した品質や内容が判断基準になります。
買主が追完を求めても、売主は買主に不相当な負担を課さない限り、買主が請求した方法と異なる方法で追完できます。代金減額は、原則として相当期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないときに請求できます。追完が不能なときなどは催告は不要です。
損害賠償は、売主に帰責事由がないときは請求できません。これに対し、追完請求・代金減額・解除は売主の帰責事由がなくても行使できます。逆に、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、買主は追完請求・代金減額・解除ができません。
種類・品質の不適合については、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、原則としてその不適合を理由とする請求ができなくなります。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知り又は重大な過失で知らなかったときは、この制限はありません。数量の不適合にはこの通知期間の制限がありません。宅建業者が自ら売主となる場合の特約制限とも分けて考えます。
| 売買の契約不適合 | 主な要件 | 見落としやすい区別 |
|---|---|---|
| 追完 | 契約内容に適合させる請求 | 修補・代替物など |
| 代金減額 | 原則として催告後。追完不能等は催告不要 | 損害賠償とは要件が異なる |
| 損害賠償 | 売主に帰責事由がないときは請求できない | 不適合だけで当然に認められない |
| 解除 | 催告解除・無催告解除の要件を確認 | 売主の帰責事由は不要。不適合が軽微なら催告解除できない |
| 種類・品質の不適合の通知 | 知った時から1年以内に通知 | 売主が悪意・重過失なら制限なし。数量の不適合は対象外 |
保証・個人根保証

保証は、主債務者が払わないときに別の者が代わって履行する仕組みです。保証契約は、書面又は電磁的記録でしなければ無効です。これは通常の保証にも連帯保証にも共通します。
個人根保証は、賃貸借から生じる一切の債務のように、一定範囲の不特定の債務を個人が保証する契約で、極度額を定めなければ無効です。特定の売買代金債務の保証には、この極度額の要件はありません。
連帯保証人には、「まず主債務者に請求せよ」という催告の抗弁権や、「まず主債務者の財産から執行せよ」という検索の抗弁権がありません。主債務者の委託を受けた保証人から請求があれば、債権者は主債務の履行状況に関する情報を遅滞なく提供しなければなりません。
履行遅滞と相殺

履行遅滞の責任が始まる時期は、期限の種類で異なります。確定期限がある債務は期限が到来した時、不確定期限がある債務は期限到来後に履行の請求を受けた時か期限の到来を知った時のいずれか早い時、期限の定めがない債務は履行の請求を受けた時からです。不法行為による損害賠償債務は、判例上、不法行為の時から遅滞となります。
相殺するには、原則として双方の債権が同種の目的で、自分の債権(自働債権)が弁済期にあることが必要です。相手方の債権(受働債権)は、期限の利益を放棄すれば弁済期前でも相殺できます。悪意による不法行為や人の生命・身体の侵害による損害賠償債務は、加害者側からこれを受働債権として相殺できません。被害者側から相殺することはできます。
| 債務の種類 | 遅滞となる時期 |
|---|---|
| 確定期限がある | 期限が到来した時 |
| 不確定期限がある | 期限到来後に請求を受けた時か、到来を知った時の早い方 |
| 期限の定めがない | 履行の請求を受けた時 |
| 不法行為による損害賠償 | 不法行為の時(判例) |
連帯債務と相対効

連帯債務者の一人について生じた事由は、原則として他の連帯債務者に効力が及びません(相対効)。2020年施行の改正で、履行の請求・免除・時効の完成は相対効になったため、旧法の知識で判断しないようにします。
例外として他の連帯債務者にも効力が及ぶ(絶対効)のは、弁済など債権を満足させる事由と、更改・相殺・混同です。相殺できる債権を持つ連帯債務者が相殺しないうちは、他の連帯債務者はその者の負担部分の限度で履行を拒めます。当事者の合意で、相対効の事由の効力を他の債務者に及ぼすこともできます。
| 一人について生じた事由 | 他の連帯債務者への効力 |
|---|---|
| 履行の請求・免除・時効の完成・時効の完成猶予や更新 | 原則及ばない(相対効) |
| 更改・相殺・混同 | 及ぶ(絶対効) |
| 弁済 | 弁済した範囲で全員の債務が消滅 |
事務管理・必要費・先取特権

事務管理は、法律上の義務がないのに他人のために事務を処理する場合の制度です。請負人が自分の請負契約の履行として工事をしたときは、それだけで建物所有者に対する事務管理は成立しません。
賃借人が賃貸人の負担に属する必要費(雨漏りの修理など)を支出したときは、賃貸人に直ちに償還を請求できます。有益費は、賃貸借の終了時に、価格の増加が現存する場合に限り、賃貸人の選択で支出額か増価額を償還させます。
不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額について成立します。効力を保存するには、工事を始める前に費用の予算額を登記する必要があります。賃借人が請負人に発注した工事の代金を、請負人が当然に賃貸人へ請求できるわけではありません。
典型契約と債務引受

売買は財産権の移転と代金支払、請負は仕事の完成と報酬、委任は法律行為の事務処理、準委任は法律行為以外の事務処理を目的とします。委任・準委任の受任者は、無償でも善良な管理者の注意義務を負い、特約がなければ報酬を請求できません。
委任は、各当事者がいつでも解除できます。ただし、相手方に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がない限り損害賠償が必要です。委任者・受任者の死亡や破産手続開始、受任者の後見開始で委任は終了します。
債務引受には、元の債務者も債務を負い続ける併存的債務引受と、元の債務者が債務を免れる免責的債務引受があります。どちらも債権者と引受人の契約でできます。債務者と引受人の契約でする場合は、債権者の承諾が必要です。免責的債務引受を債権者と引受人の契約でするときは、債権者が債務者に通知した時に効力が生じます。
| 類型 | 中心となる義務 | 区別 |
|---|---|---|
| 売買 | 財産権移転と代金支払 | 契約不適合責任 |
| 請負 | 仕事の完成と報酬 | 完成した仕事の不適合 |
| 委任・準委任 | 事務の処理と善管注意義務 | 法律行為かそれ以外か |
| 併存的債務引受 | 引受人が加わる | 元の債務者は残る |
| 免責的債務引受 | 引受人が代わる | 元の債務者は免責される |
試験に出る
- 追完請求・代金減額・損害賠償・解除はそれぞれ要件が異なり、常にすべてが直ちに使えるわけではありません。
- 売主の帰責事由が必要なのは損害賠償だけで、追完・代金減額・解除には不要です。種類・品質の不適合では、知った時から1年以内の通知も問われます。
- 「不具合」と「契約不適合」は同じではなく、合意した品質・内容が判断の基準になります。
- 連帯保証と通常保証は扱いが異なり、個人根保証では極度額の定めが重要です。
- 相続では権利だけでなく債務も承継され、単純承認・限定承認・放棄を区別します。
重要な言葉
- 契約不適合
- 引き渡された物の種類・品質・数量などが契約内容に適合しないこと。
- 追完請求
- 契約に適合させるため、修補や代替物の引渡しなどを求めること。
- 個人根保証
- 個人が一定の範囲で継続的な債務を保証するもので、極度額の定めが要件となる。
確認問題
確かめよう追完請求と損害賠償は同じ要件で必ず認められる?
いいえ。請求ごとに条件を確認します。
契約不適合があれば、買主は催告なしに必ず直ちに解除できる。
相続では、被相続人の権利だけでなく債務も承継の対象になる。
契約不適合を理由とする代金減額請求や解除は、売主に帰責事由がなければすることができない。
買主が引き渡された土地の数量不足を知ってから1年以内に売主へ通知しなかったとしても、数量不足を理由とする代金減額請求ができなくなるわけではない。
売主が引渡しの時に品質の不適合を知っていた場合でも、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、買主は不適合を理由とする請求ができない。
個人が、建物賃貸借から生じる賃借人の一切の債務を保証する契約は、極度額を定めなければ効力を生じない。
連帯保証人は、債権者から請求を受けたとき、まず主たる債務者に催告するよう請求することができる。
連帯債務者の一人に対して債権者が履行の請求をすると、他の連帯債務者についても時効の完成が猶予される。
連帯債務者の一人が債権者に対する反対債権で相殺を援用したときは、その範囲で他の連帯債務者の債務も消滅する。
悪意による不法行為の被害者は、加害者に対する損害賠償債権を自働債権として相殺することができない。
不確定期限のある債務は、期限到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
建物の賃借人が雨漏りの修理費用(必要費)を支出したときは、賃貸借の終了を待たずに直ちに償還を請求できる。
債務者と引受人との契約で免責的債務引受をするには、債権者の承諾が必要である。
契約不適合で買主が求められるものに含まれないのは?
個人根保証で特に重要となる条件は?
売買の契約不適合責任に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
A・B・Cが債権者Dに対して900万円の連帯債務(負担部分は各3分の1)を負っている。次の記述のうち、正しいものはどれか。
売買の目的物の種類・品質に関する契約不適合について、買主が売主に通知しなければならない期間は、原則として買主が不適合を知った時からいつまでか。
委任・債務引受に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
契約どおりの物が届かなかった場合、すぐにすべて同じ救済が使えるわけではありません。の内容と請求の条件を分けます。
注文した設備の性能が契約を満たさないなら、、代金減額、損害賠償、解除などを検討します。売主の責任やの要否は請求ごとに確認します。
は種類・品質・数量などが契約内容に適合しない問題です。一般の規律と、買主の通知など売買の特則を組み合わせます。
「不具合がある」と「契約に適合していない」は同じとは限りません。合意したや内容が判断基準になります。
買主が追完を求めても、売主は買主に不相当な負担を課さない限り、買主が請求した方法と異なる方法で追完できます。代金減額は、原則として相当期間を定めて追完をし、その期間内に追完がないときに請求できます。追完が不能なときなどは催告は不要です。
損害賠償は、売主にがないときは請求できません。これに対し、追完請求・代金減額・解除は売主の帰責事由がなくても行使できます。逆に、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、買主は追完請求・代金減額・解除ができません。
種類・品質の不適合については、買主が不適合を知った時からに売主へ通知しないと、原則としてその不適合を理由とする請求ができなくなります。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知り又は重大な過失で知らなかったときは、この制限はありません。の不適合にはこの通知期間の制限がありません。宅建業者が自ら売主となる場合の特約制限とも分けて考えます。
保証は、主債務者が払わないときに別の者が代わって履行する仕組みです。保証契約は、又は電磁的記録でしなければ無効です。これは通常の保証にもにも共通します。
は、賃貸借から生じる一切の債務のように、一定範囲の不特定の債務を個人が保証する契約で、を定めなければ無効です。特定の売買代金債務の保証には、この極度額の要件はありません。
連帯保証人には、「まず主債務者に請求せよ」というや、「まず主債務者の財産から執行せよ」というがありません。主債務者の委託を受けた保証人から請求があれば、債権者は主債務の履行状況に関する情報を遅滞なく提供しなければなりません。
履行遅滞の責任が始まる時期は、期限の種類で異なります。確定期限がある債務は期限が到来した時、不確定期限がある債務は期限到来後に履行の請求を受けた時か期限の到来を知った時のいずれか早い時、期限の定めがない債務はを受けた時からです。不法行為による損害賠償債務は、判例上、から遅滞となります。
相殺するには、原則として双方の債権が同種の目的で、自分の債権()が弁済期にあることが必要です。相手方の債権()は、期限の利益を放棄すれば弁済期前でも相殺できます。悪意による不法行為や人の生命・身体の侵害による損害賠償債務は、加害者側からこれを受働債権として相殺できません。被害者側から相殺することはできます。
連帯債務者の一人について生じた事由は、原則として他の連帯債務者に効力が及びません()。2020年施行の改正で、履行の請求・免除・時効の完成は相対効になったため、旧法の知識で判断しないようにします。
例外として他の連帯債務者にも効力が及ぶ()のは、弁済など債権を満足させる事由と、です。相殺できる債権を持つ連帯債務者が相殺しないうちは、他の連帯債務者はその者の負担部分の限度で履行を拒めます。当事者の合意で、相対効の事由の効力を他の債務者に及ぼすこともできます。
賃借人が賃貸人の負担に属する(雨漏りの修理など)を支出したときは、賃貸人に直ちに償還を請求できます。は、賃貸借の終了時に、価格の増加が現存する場合に限り、賃貸人の選択で支出額か増価額を償還させます。
不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額について成立します。効力を保存するには、工事を始める前に費用のを登記する必要があります。賃借人が請負人に発注した工事の代金を、請負人が当然に賃貸人へ請求できるわけではありません。
売買は財産権の移転と代金支払、請負は仕事の完成と報酬、委任は法律行為の事務処理、準委任は法律行為以外の事務処理を目的とします。委任・準委任の受任者は、無償でもを負い、特約がなければ報酬を請求できません。
委任は、各当事者が解除できます。ただし、相手方に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がない限り損害賠償が必要です。委任者・受任者の死亡や破産手続開始、受任者の後見開始で委任は終了します。
債務引受には、元の債務者も債務を負い続ける併存的債務引受と、元の債務者が債務を免れる免責的債務引受があります。どちらも債権者と引受人の契約でできます。債務者と引受人の契約でする場合は、が必要です。免責的債務引受を債権者と引受人の契約でするときは、債権者が債務者に通知した時に効力が生じます。
賃貸借・借地借家法
借地借家法とは、土地や建物を借りる人を保護するため、民法の賃貸借よりも借主に有利な特則を定めた法律です。

部屋の契約期間が終わったからといって、いつでも貸主が自由に明渡しを求められるわけではありません。契約類型を先に見ます。
普通借地と定期借地

借地借家法は土地・建物の賃借人を保護する特則を置きます。普通借地・定期借地、普通借家・定期借家を、更新と終了条件で比較します。
普通借地権の存続期間は30年以上で、期間を定めなかったときや30年より短く定めたときは30年になります。更新後の期間は、最初の更新が20年以上、2回目以降が10年以上です(定めなければそれぞれ20年・10年)。
期間満了時に建物があり借地権者が更新を請求したときは、借地権設定者が遅滞なく正当事由のある異議を述べない限り、契約は更新されます。更新されずに終了したときは、借地権者は建物の買取りを請求できますが、債務不履行による解除で終了した場合は請求できません。
借地権は、借地権の登記がなくても、借地上に借地権者本人名義で登記した建物があれば第三者に対抗できます。配偶者や子の名義で登記した建物では対抗できません(判例)。
定期借地権には、①一般定期借地権(50年以上)、②事業用定期借地権(10年以上50年未満)、③建物譲渡特約付借地権(30年以上)の3類型があります。一般定期借地権は、更新・建物の築造による延長・建物買取請求をしない特約を公正証書による等書面(電磁的記録を含む)で定めます。
事業用定期借地権は、専ら事業用の建物(居住用を除く)を所有する目的に限り、公正証書で設定しなければなりません。30年以上50年未満では更新・延長・買取請求をしない特約を定めることができ、10年以上30年未満ではこれらの規定が法律上当然に適用されません。賃貸マンションなど居住用建物の所有を目的とすることはできません。
| 契約 | 期間・方式 | 更新・終了 |
|---|---|---|
| 普通借地権 | 30年以上(定めがなければ30年)。方式の制限なし | 最初の更新20年以上、以後10年以上。更新拒絶には正当事由 |
| 一般定期借地権 | 50年以上。公正証書による等書面(電磁的記録を含む) | 更新・延長・買取請求をしない特約 |
| 事業用定期借地権 | 10年以上50年未満。専ら事業用の建物に限り、公正証書 | 30年以上は特約で排除、30年未満は当然に更新等の規定なし |
| 建物譲渡特約付借地権 | 30年以上。方式の制限なし | 30年以上経過後に建物を地主へ相当の対価で譲渡して終了 |
普通借家と定期借家

普通建物賃貸借で期間を1年未満と定めると、期間の定めがない賃貸借とみなされます。期間の定めがある場合、期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前と同一の条件で更新されたものとみなされます。ただし、更新後は期間の定めがないものになります。
期間の定めがない普通建物賃貸借は、賃貸人から解約を申し入れると6か月後、賃借人から申し入れると3か月後に終了します。賃貸人の更新拒絶の通知や解約申入れには、いずれも正当事由が必要です。
契約書に「更新なし」と一行書けば必ず定期借家になるわけではありません。定期建物賃貸借は、公正証書による等書面(電磁的記録を含む)で契約し、さらに賃貸人が契約前に、更新がなく期間満了で終了することを記載した書面を交付して説明しなければなりません。この説明がなければ、更新がない旨の定めは無効です。
定期建物賃貸借は1年未満の期間でも設定できます。期間が1年以上なら、賃貸人は期間満了の1年前から6か月前までに終了を通知しなければ、終了を賃借人に対抗できません。この期間を過ぎて通知したときは、通知の日から6か月後に対抗できるようになります。床面積200㎡未満の居住用建物では、転勤・療養などやむを得ない事情があれば賃借人から中途解約でき、申入れから1か月で終了します。
賃料は、事情の変化で不相当になれば増減を請求できます。一定期間増額しない特約は有効ですが、普通建物賃貸借や借地で減額しない特約をしても、減額請求は否定されません。定期建物賃貸借では、賃料改定に関する特約があれば増減請求の規定は適用されません。造作買取請求権を排除する特約は、普通・定期のどちらでも有効です。
居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡したときは、事実上の夫婦や養親子と同様の関係にあった同居者が、反対の意思を表示しない限り賃借人の権利義務を承継します。取壊し予定の建物の賃貸借で、取壊し時に終了する旨の特約は、取壊しの事由を記載した書面でします(公正証書に限りません)。
| 比較軸 | 普通建物賃貸借 | 定期建物賃貸借 |
|---|---|---|
| 契約の方式 | 制限なし(口頭でも可) | 書面(電磁的記録を含む)と事前の説明書面 |
| 1年未満の期間 | 期間の定めがないものとみなす | 有効 |
| 更新 | 法定更新あり。賃貸人の更新拒絶には正当事由 | なし。1年以上なら1年前から6か月前までに終了通知 |
| 賃料を減額しない特約 | 無効(減額請求できる) | 賃料改定の特約があれば有効 |
| 賃借人からの中途解約 | 期間の定めがある場合は特約が必要 | 200㎡未満の居住用でやむを得ない事情があれば可 |
対抗要件と賃貸人の地位

建物の賃借権は、賃借権の登記がなくても、建物の引渡しを受けていれば第三者に対抗できます。これは普通建物賃貸借でも定期建物賃貸借でも同じです。
対抗要件を備えた賃貸建物が譲渡されると、賃貸人の地位は賃借人の承諾なしに譲受人へ移ります。譲受人が賃料を請求するには、所有権移転登記を備える必要があります。敷金返還債務や費用償還債務も譲受人に承継されます。ただし、譲渡人と譲受人が賃貸人の地位を譲渡人に留保し、譲受人が譲渡人に賃貸する旨を合意したときは、賃貸人の地位は移転しません。
敷金は、賃貸借が終了して建物が明け渡された時に、未払賃料などを差し引いて返還されます。明渡しが先で、明渡しと敷金返還は同時履行の関係に立ちません。
修繕は原則として賃貸人の義務ですが、賃借人の責めに帰すべき事由で必要になった修繕は、賃貸人の義務ではありません。賃借人は、修繕が必要な旨を賃貸人に通知し又は賃貸人がそれを知ったのに相当の期間内に修繕されないとき、又は急迫の事情があるときに、自ら修繕できます。
賃借人が賃貸人の承諾なく賃借権を譲渡・転貸したときは、賃貸人は原則として解除できます。ただし、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、解除できません(判例)。
試験に出る
- 普通借家では、期間満了だけで当然に終了するのではなく、更新拒絶には正当事由などが必要です。
- 定期借家は更新がなく、書面等による契約と、契約前の説明書面の交付・説明を満たすことで成立します。
- 借地権は借地権者本人名義の建物登記、建物賃借権は引渡しで第三者に対抗できる点が問われます。
- 普通借地・定期借地、普通借家・定期借家は、更新の有無と終了条件で比較します。
- 契約書に「更新なし」と書くだけでは定期借家にならず、法律の手続が必要です。
- 貸主が自由に明渡しを求められるかは契約類型によって異なります。
重要な言葉
- 普通借家
- 更新があり、更新拒絶には正当事由などが必要となる一般的な建物賃貸借。
- 定期借家
- 書面等による契約と事前の説明書面の交付により、更新のない契約として成立する建物賃貸借。
- 正当事由
- 普通借地・普通借家で、貸主が更新拒絶や解約申入れをするときに必要な正当な理由。自己使用の必要性や立退料の提供などを総合して判断する。
確認問題
確かめよう普通借家で期間満了だけなら必ず退去?
いいえ。更新拒絶の要件などを確認します。
普通借家では、期間が満了すれば貸主は正当事由がなくても明渡しを求められる。
契約書に「更新なし」と記載すれば、方式を満たさなくても定期借家になる。
普通借地権の存続期間を当事者が20年と定めた場合、その存続期間は20年となる。
借地権者が借地上に自己名義で登記した建物を所有していれば、借地権の登記がなくても、土地の譲受人に借地権を対抗できる。
事業用定期借地権は、賃貸マンションの所有を目的とする場合でも、公正証書で契約すれば設定することができる。
一般定期借地権の特約は、公正証書に限らず、書面(電磁的記録を含む)で定めればよい。
借地権の存続期間が満了して契約が更新されなかったときは、借地権者は借地権設定者に対し、建物を時価で買い取るよう請求できる。
普通建物賃貸借で期間を10か月と定めた場合、その期間の満了により契約は当然に終了する。
定期建物賃貸借は、期間を1年未満と定めても有効である。
期間の定めがない普通建物賃貸借で、賃貸人が正当事由のある解約の申入れをしたときは、申入れの日から3か月で契約が終了する。
普通建物賃貸借に賃料を減額しない旨の特約があれば、賃借人は経済事情が変動しても賃料の減額を請求できない。
定期建物賃貸借で賃料の改定に関する特約がある場合には、借賃増減請求の規定は適用されない。
賃貸借が終了した場合、賃借人は敷金の返還を受けるまで建物の明渡しを拒むことができる。
賃借人が修繕の必要を賃貸人に通知したのに、賃貸人が相当の期間内に修繕しないときは、賃借人は自ら修繕することができる。
普通借家の更新拒絶で問題となるのは?
期間の定めがある普通建物賃貸借で、賃貸人が契約を更新しない旨の通知をしなければならない期間はどれか。
Aは、B所有の床面積150㎡の建物を居住目的で期間3年の定期建物賃貸借として借りている。次の記述のうち、正しいものはどれか。
借地権に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
賃貸人の地位と転貸に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
部屋の契約期間が終わったからといって、いつでも貸主が自由にを求められるわけではありません。契約類型を先に見ます。
は土地・建物のを保護する特則を置きます。普通借地・定期借地、普通借家・定期借家を、更新と終了条件で比較します。
普通借地権の存続期間はで、期間を定めなかったときや30年より短く定めたときは30年になります。更新後の期間は、最初の更新が、2回目以降がです(定めなければそれぞれ20年・10年)。
期間満了時に建物があり借地権者が更新を請求したときは、借地権設定者が遅滞なくのある異議を述べない限り、契約は更新されます。更新されずに終了したときは、借地権者はを請求できますが、債務不履行による解除で終了した場合は請求できません。
借地権は、借地権の登記がなくても、借地上にで登記した建物があれば第三者に対抗できます。配偶者や子の名義で登記した建物では対抗できません(判例)。
定期借地権には、①一般定期借地権()、②事業用定期借地権()、③建物譲渡特約付借地権()の3類型があります。一般定期借地権は、更新・建物の築造による延長・建物買取請求をしない特約を公正証書による等書面(電磁的記録を含む)で定めます。
事業用定期借地権は、専ら事業用の建物(居住用を除く)を所有する目的に限り、で設定しなければなりません。30年以上50年未満では更新・延長・買取請求をしない特約を定めることができ、10年以上30年未満ではこれらの規定が法律上当然に適用されません。賃貸マンションなど居住用建物の所有を目的とすることはできません。
普通建物賃貸借で期間を1年未満と定めると、賃貸借とみなされます。期間の定めがある場合、期間満了のに更新しない旨の通知をしなければ、従前と同一の条件で更新されたものとみなされます。ただし、更新後は期間の定めがないものになります。
期間の定めがない普通建物賃貸借は、賃貸人から解約を申し入れると、賃借人から申し入れるとに終了します。賃貸人の更新拒絶の通知や解約申入れには、いずれも正当事由が必要です。
契約書に「更新なし」と一行書けば必ずになるわけではありません。定期建物賃貸借は、公正証書による等書面(電磁的記録を含む)で契約し、さらに賃貸人が契約前に、更新がなく期間満了で終了することを記載したを交付して説明しなければなりません。この説明がなければ、更新がない旨の定めは無効です。
定期建物賃貸借は1年未満の期間でも設定できます。期間が1年以上なら、賃貸人は期間満了の1年前から6か月前までに終了を通知しなければ、終了を賃借人に対抗できません。この期間を過ぎて通知したときは、通知の日から6か月後に対抗できるようになります。床面積の居住用建物では、転勤・療養などやむを得ない事情があれば賃借人から中途解約でき、申入れからで終了します。
賃料は、事情の変化で不相当になれば増減を請求できます。一定期間増額しない特約は有効ですが、普通建物賃貸借や借地で減額しない特約をしても、減額請求は否定されません。定期建物賃貸借では、賃料改定に関する特約があれば増減請求の規定は適用されません。を排除する特約は、普通・定期のどちらでも有効です。
建物の賃借権は、賃借権の登記がなくても、建物のを受けていれば第三者に対抗できます。これは普通建物賃貸借でも定期建物賃貸借でも同じです。
対抗要件を備えた賃貸建物が譲渡されると、賃貸人の地位は賃借人の承諾なしに譲受人へ移ります。譲受人が賃料を請求するには、を備える必要があります。敷金返還債務や費用償還債務も譲受人に承継されます。ただし、譲渡人と譲受人が賃貸人の地位を譲渡人に留保し、譲受人が譲渡人に賃貸する旨を合意したときは、賃貸人の地位は移転しません。
敷金は、賃貸借が終了して建物が明け渡された時に、未払賃料などを差し引いて返還されます。明渡しが先で、明渡しと敷金返還はの関係に立ちません。
賃借人が賃貸人の承諾なく賃借権を譲渡・転貸したときは、賃貸人は原則として解除できます。ただし、賃貸人に対すると認めるに足りない特段の事情があるときは、解除できません(判例)。
区分所有法
区分所有法とは、マンションのように建物を複数の住戸に分けて所有する場合の、専有部分・共用部分・敷地利用権の関係と管理方法を定めた法律です。

マンションの自室と廊下では、管理や変更の決め方が異なります。誰の所有で、誰が意思決定するかを整理します。
専有部分・共用部分・敷地利用権

区分所有法では専有部分・共用部分・敷地利用権を区別します。2026年4月1日施行の改正で集会決議などの規律が見直されたため、決議の種類ごとに改正後の要件を確認します。
専有部分は構造上・利用上独立した部分、廊下・階段などは共用部分です。共用部分は原則として区分所有者全員の共有で、各共有者の持分は、規約に別段の定めがない限り、専有部分の床面積の割合によります(人数で等分するのではありません)。規約に特別の定めがあれば、管理者が共用部分を所有すること(管理所有)もできます。
共用部分の持分は、区分所有法に別段の定めがある場合を除き、専有部分と分離して処分できません。敷地利用権も、規約に別段の定めがない限り、専有部分と分離して処分できません。規約と集会の決議は、区分所有者の特定承継人(買主など)にも効力を生じます。
2026年改正後の集会決議

2026年4月1日施行の改正で、建替え決議など区分所有権の処分を伴う決議を除き、集会の決議は出席者の多数決によることになりました。書面・電磁的方法・代理人で議決権を行使した者も出席者に数えます。施行日以後に招集手続が開始された集会から、改正後の規律が適用されます。
普通決議は、法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決します。特別決議のような法律上の出席要件(定足数)はありません。
規約の設定・変更・廃止や共用部分の変更(形状・効用の著しい変更を伴わないものを除く)などの特別決議は、区分所有者と議決権の各過半数が出席し、出席者とその議決権の各4分の3以上で決します。出席要件と多数決要件を分けて確認します。
共用部分の変更の賛成割合は、規約で2分の1を超える割合まで下げられます。共用部分の瑕疵で他人の権利を侵害するおそれがある場合の瑕疵除去や、バリアフリー化のための変更なら、出席者の各3分の2以上で決議できます。
建替え決議は、出席者ではなく区分所有者と議決権の各5分の4以上で決します。耐震性や火災に対する安全性の不足、外壁の剥離・落下の危険、給排水管の劣化、バリアフリー基準への不適合という客観的事由があれば、各4分の3以上に緩和されます。建替え決議の集会の招集通知は、会日の少なくとも2か月前に発します。
裁判所の決定を受けた所在等不明区分所有者は、全ての決議の母数から除かれます。古い過去問の「全区分所有者を分母とする」説明を、改正後の決議へそのまま当てはめないようにします。
| 決議事項 | 2026年4月以降の原則 | 注意 |
|---|---|---|
| 普通決議(共用部分の管理など) | 出席した区分所有者と議決権の各過半数 | 法律上の定足数なし。規約で別段の定め可 |
| 特別決議(規約の設定・変更・廃止、使用禁止・競売請求など) | 区分所有者・議決権の各過半数が出席し、出席者・出席議決権の各4分の3以上 | 改正前は全区分所有者の各4分の3 |
| 共用部分の変更(著しい変更) | 特別決議と同じ出席要件で、出席者の各4分の3以上 | 瑕疵による危険・バリアフリー化なら各3分の2以上。軽微な変更は普通決議 |
| 建替え決議 | 区分所有者・議決権の各5分の4以上(出席者ではない) | 客観的事由があれば各4分の3以上 |
集会の手続

集会の招集通知は、会日の少なくとも1週間前に、会議の目的である事項と議案の要領を示して発します。この期間は規約で伸ばせますが、2026年4月以降は短縮できません。区分所有者全員の同意があれば、招集手続を省略して集会を開けます。
区分所有者が通知を受ける場所を管理者に通知していないときは、専有部分の所在場所あてに通知すれば足ります。管理者は、集会で毎年1回一定の時期に事務の報告をしなければなりません。
議事録は議長が作成し、書面で作成したときは議長と集会に出席した区分所有者2人が署名します(出席者全員ではありません)。
共同利益に反する行為

区分所有者が建物の保存に有害な行為など共同の利益に反する行為をし、又はそのおそれがあるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、行為の停止・結果の除去・予防の措置を請求できます。訴訟で請求するには集会の普通決議が必要です。
専有部分の使用禁止請求、区分所有権の競売請求、占有者に対する引渡し請求は、特別決議で決し、あらかじめ相手方に弁明の機会を与えなければなりません。
試験に出る
- 専有部分と共用部分で、管理・変更の決定方法が異なる点が問われます。
- 共用部分の変更などは、行為の種類に応じて集会決議の要件が変わります。
- 2026年4月1日施行の改正で集会決議の母数が見直されました。2026年度試験は改正後の規律で判断します。
- 改正後は、普通決議が出席者と出席議決権の各過半数、規約変更などの特別決議が区分所有者・議決権の各過半数の出席を前提に出席者の各4分の3以上です。建替え決議は出席者ではなく全区分所有者(所在等不明者を除く)の各5分の4以上のままです。
- 所在等不明区分所有者は、裁判所の決定により全ての決議の母数から除外できます。
- 古い過去問の「全区分所有者を分母とする」説明を、改正後の決議にそのまま当てはめないよう注意します。
- 特別決議では、定足数(出席要件)と多数決要件が別に定められており、混同させる選択肢に注意します。
重要な言葉
- 専有部分
- マンションで各所有者が単独で所有する住戸部分。
- 共用部分
- 廊下や階段など、区分所有者が共同で利用・管理する部分。
- 敷地利用権
- 専有部分を所有するために必要な、建物の敷地を利用する権利。
確認問題
確かめよう廊下の工事を一住戸の所有者だけで自由に決められる?
原則としてできません。共用部分の管理の問題です。
マンションの廊下は専有部分であり、各所有者が自由に変更できる。
区分所有法の改正後も、すべての決議で全区分所有者を分母とすればよい。
共用部分に対する各区分所有者の持分は、規約に別段の定めがない限り、その有する専有部分の床面積の割合による。
敷地利用権は、規約に別段の定めがあっても、専有部分と分離して処分することはできない。
規約及び集会の決議は、区分所有者から専有部分を買い受けた者に対しても、その効力を生じる。
2026年4月以降に招集手続が開始された集会では、規約の変更は区分所有者全員と議決権の各4分の3以上の賛成がなければできない。
2026年4月以降の普通決議には、法律上の定足数(出席要件)はない。
建替え決議は、2026年4月の改正後は他の決議と同様に、集会の出席者とその議決権の各5分の4以上で決する。
書面や代理人によって議決権を行使した区分所有者も、集会の決議における出席者に数えられる。
共用部分の変更のうちバリアフリー化のためのものは、出席者の各3分の2以上で決議することができる。
集会の招集通知を発する期間は、規約で定めれば会日の3日前まで短縮することができる。
書面で作成する集会の議事録には、集会に出席した区分所有者全員が署名しなければならない。
区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで集会を開くことができる。
区分所有者の共同の利益に反する行為の停止を訴訟で請求するには、集会の普通決議が必要である。
区分所有権の競売請求を集会で決議する場合、あらかじめ相手方に弁明の機会を与える必要はない。
マンションの廊下や階段は何に当たる?
2026年4月以降、建替えを必要とする客観的事由がない場合の建替え決議に必要な賛成はどれか。
集会の手続に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
区分所有者100人(議決権も各1で同数)のマンションで、2026年5月に招集された集会に、書面による議決権行使者を含めて60人が出席した。規約の変更を決議するのに必要な最少の賛成者数はどれか。
区分所有法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
マンションの自室と廊下では、管理や変更の決め方が異なります。誰の所有で、誰がするかを整理します。
では専有部分・共用部分・を区別します。2026年4月1日施行の改正で集会決議などの規律が見直されたため、決議の種類ごとに改正後の要件を確認します。
専有部分は構造上・利用上独立した部分、廊下・階段などは共用部分です。共用部分は原則として区分所有者全員の共有で、各共有者の持分は、規約に別段の定めがない限り、専有部分のによります(人数で等分するのではありません)。規約に特別の定めがあれば、管理者が共用部分を所有すること()もできます。
共用部分の持分は、区分所有法に別段の定めがある場合を除き、専有部分とできません。敷地利用権も、規約に別段の定めがない限り、専有部分と分離して処分できません。規約と集会の決議は、区分所有者の(買主など)にも効力を生じます。
2026年4月1日施行の改正で、建替え決議など区分所有権の処分を伴う決議を除き、集会の決議はによることになりました。書面・電磁的方法・代理人で議決権を行使した者も出席者に数えます。施行日以後に招集手続が開始された集会から、改正後の規律が適用されます。
普通決議は、法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者とその議決権ので決します。特別決議のような法律上の(定足数)はありません。
規約の設定・変更・廃止や共用部分の変更(形状・効用の著しい変更を伴わないものを除く)などの特別決議は、区分所有者と議決権の各過半数が出席し、出席者とその議決権ので決します。出席要件とを分けて確認します。
共用部分の変更の賛成割合は、規約でまで下げられます。共用部分の瑕疵で他人の権利を侵害するおそれがある場合の瑕疵除去や、バリアフリー化のための変更なら、出席者ので決議できます。
建替え決議は、出席者ではなく区分所有者と議決権ので決します。耐震性や火災に対する安全性の不足、外壁の剥離・落下の危険、給排水管の劣化、バリアフリー基準への不適合という客観的事由があれば、に緩和されます。建替え決議の集会の招集通知は、会日の少なくともに発します。
裁判所の決定を受けたは、全ての決議の母数から除かれます。古い過去問の「全区分所有者を分母とする」説明を、改正後の決議へそのまま当てはめないようにします。
集会の招集通知は、会日の少なくともに、会議の目的である事項と議案の要領を示して発します。この期間は規約で伸ばせますが、2026年4月以降はできません。があれば、招集手続を省略して集会を開けます。
区分所有者が通知を受ける場所を管理者に通知していないときは、専有部分の所在場所あてに通知すれば足ります。管理者は、集会で一定の時期に事務の報告をしなければなりません。
議事録は議長が作成し、書面で作成したときは議長と集会に出席した区分所有者が署名します(出席者全員ではありません)。
区分所有者が建物の保存に有害な行為など共同の利益に反する行為をし、又はそのおそれがあるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、行為の停止・結果の除去・予防の措置を請求できます。訴訟で請求するには集会のが必要です。
専有部分の使用禁止請求、区分所有権の競売請求、占有者に対する引渡し請求は、で決し、あらかじめ相手方にを与えなければなりません。
不動産登記法
不動産登記とは、土地や建物の所在や権利関係を登記簿に記録して公示し、取引の安全を支える制度です。

登記は不動産の所在や権利関係を公示する仕組みです。誰が所有者かを外部から調べられることが取引の基礎になります。
表示登記・権利登記と効力

登記簿を信じれば、記載が事実と違っても必ず権利を取得できるわけではありません。不動産登記には一般に公信力がないことも押さえます。
表示に関する登記(表題部)は不動産の物理的な状態を公示し、権利に関する登記(権利部)は所有権移転や抵当権設定などを公示します。表示に関する登記には申請義務があり、建物を新築したときや建物が滅失したときは、1か月以内に表題登記・滅失の登記を申請しなければなりません。登記官が職権でできる場合もあります。
分筆・合筆は土地の表示の変更で、表題部所有者又は所有権の登記名義人しか申請できません。ただし、一筆の土地の一部が別の地目になったときなどは、登記官が職権で分筆の登記をします。
登記事項証明書は、誰でも手数料を納めて交付を請求でき、オンラインでも請求できます。一方、登記簿の附属書類(申請書など)の閲覧は、図面を除き、自分が申請した書類か、正当な理由があるときに限られます。
申請方法と登記義務

権利に関する登記は、原則として登記権利者と登記義務者の共同申請です。例外として、相続・合併による移転、相続人に対する遺贈、判決による登記、登記名義人の住所・氏名の変更、収用による移転、契約から10年を経過した買戻し特約の抹消などは単独で申請できます。相続人以外の者への遺贈は共同申請です。
相続(遺言を含む)で不動産の所有権を取得した相続人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。期限内に相続人申告登記をすれば、この義務を果たしたことになります。遺産分割が成立したときは、分割の日から3年以内にその内容の登記を申請します。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
所有権の登記名義人は、住所・氏名等が変わった日から2年以内に変更の登記を申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象です。
相続登記の義務は2024年4月1日、住所・氏名等の変更登記の義務は2026年4月1日に施行されました。施行前の相続や変更も対象で、相続登記は2027年3月31日まで、住所等の変更登記は2028年3月31日までが期限です(起算日が後になる場合はその日から)。問題文でいつ知ったか、いつ変更したかを確認します。
| 登記・申請 | 原則と期限 | 過去問の判定点 |
|---|---|---|
| 表題部 | 所在・地番・種類・構造など | 権利部の所有権・抵当権と区別 |
| 権利に関する登記 | 原則、権利者と義務者の共同申請 | 相続・相続人への遺贈・判決・住所変更等は単独申請。相続人以外への遺贈は共同申請 |
| 相続登記 | 取得を知った日から3年以内。10万円以下の過料 | 2024年4月1日より前の相続も対象(2027年3月31日まで) |
| 住所・氏名等の変更登記 | 変更日から2年以内。5万円以下の過料 | 2026年4月1日より前の変更も対象(2028年3月31日まで) |
試験に出る
- 相続登記の申請義務は、取得を知った日などから3年以内が基本。起算点が問われます。
- 相続登記の義務化は2024年4月に始まり、施行前の相続にも経過措置があります。
- 2026年4月から、所有権登記名義人の住所・氏名等の変更登記は変更日から2年以内が基本です。
- 表題部は物理的状況、権利部は権利関係を示すという区分が問われます。
- 不動産登記には一般に公信力がなく、記載を信用しても必ず権利を取得できるわけではありません。
重要な言葉
- 表題部
- 不動産の所在や地番、種類、面積など物理的状況を示す登記の部分。
- 権利部
- 所有権や担保権などの権利関係を示す登記の部分。
- 公信力
- 登記の記載を信頼して取引した者を保護する効力。不動産登記には一般にない。
確認問題
確かめよう相続登記は売却するまで必ず放置できる?
いいえ。申請義務と期限があります。
相続で不動産を取得したら、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請するのが基本である。
不動産登記には公信力があるので、登記を信じれば必ず権利を取得できる。
建物を新築した所有者は、新築の日から3か月以内に表題登記を申請しなければならない。
建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならない。
分筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人の申請がなければ、登記官が職権ですることは一切できない。
登記事項証明書は、利害関係の有無にかかわらず、誰でも手数料を納付して交付を請求することができる。
登記簿の附属書類のうち申請書は、利害関係の有無を問わず、誰でも閲覧を請求することができる。
相続人以外の者に対する遺贈による所有権移転登記は、受遺者が単独で申請することができる。
相続人に対する遺贈による所有権移転登記は、登記権利者である相続人が単独で申請することができる。
相続登記の申請期限内に相続人申告登記をした相続人は、相続登記の申請義務を履行したものとみなされる。
所有権の登記名義人が住所変更登記の申請義務を正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象となる。
2024年4月1日より前に開始した相続によって取得した不動産は、相続登記の申請義務の対象外である。
買戻しの特約の登記は、売買契約の日から10年を経過したときは、登記権利者が単独で抹消を申請することができる。
相続登記の申請義務の基本の期限は?
2026年4月からの住所・氏名等の変更登記の基本の期限は?
権利に関する登記の申請に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
Aが2025年6月1日に死亡し、子Bが単独で甲土地を相続した。Bが相続の開始と甲土地の取得を知ったのは2025年8月1日である。Bの相続登記の申請期限として正しいものはどれか。
所有権の登記名義人が、住所・氏名等の変更登記の申請義務を正当な理由なく怠った場合の過料はどれか。
不動産登記に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
登記は不動産の所在や権利関係をする仕組みです。誰が所有者かを外部から調べられることが取引の基礎になります。
登記簿を信じれば、記載が事実と違っても必ず権利を取得できるわけではありません。不動産登記には一般にがないことも押さえます。
表示に関する登記()は不動産の物理的な状態を公示し、権利に関する登記()は所有権移転や抵当権設定などを公示します。表示に関する登記には申請義務があり、建物を新築したときや建物が滅失したときは、に表題登記・滅失の登記を申請しなければなりません。登記官が職権でできる場合もあります。
分筆・合筆は土地の表示の変更で、表題部所有者又はしか申請できません。ただし、一筆の土地の一部が別の地目になったときなどは、登記官がで分筆の登記をします。
登記事項証明書は、手数料を納めて交付を請求でき、オンラインでも請求できます。一方、登記簿の附属書類(申請書など)の閲覧は、図面を除き、自分が申請した書類か、があるときに限られます。
権利に関する登記は、原則として登記権利者と登記義務者のです。例外として、相続・合併による移転、相続人に対する遺贈、判決による登記、登記名義人の住所・氏名の変更、収用による移転、契約からを経過した買戻し特約の抹消などは単独で申請できます。は共同申請です。
相続(遺言を含む)で不動産の所有権を取得した相続人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から以内にを申請しなければなりません。期限内に相続人申告登記をすれば、この義務を果たしたことになります。遺産分割が成立したときは、分割の日から3年以内にその内容の登記を申請します。正当な理由なく怠るとの過料の対象です。
所有権の登記名義人は、住所・氏名等が変わった日から以内に変更の登記を申請しなければなりません。正当な理由なく怠るとの過料の対象です。
相続登記の義務は2024年4月1日、住所・氏名等の変更登記の義務は2026年4月1日に施行されました。施行前の相続や変更も対象で、相続登記はまで、住所等の変更登記はまでが期限です(起算日が後になる場合はその日から)。問題文でいつ知ったか、いつ変更したかを確認します。
覚えるポイント
- 民法総則:代理では代理権の範囲内で本人のためにすることを示した意思表示が、原則として本人へ効果を生じさせます。意思能力・制限行為能力・錯誤・詐欺などはそれぞれ要件が異なります。
- 物権:所有権は物を支配する権利、抵当権は占有を移さず不動産から優先弁済を受ける担保権です。不動産物権変動の対抗には登記が基本となります。
- 債権・契約:契約不適合は種類・品質・数量などが契約内容に適合しない問題です。債務不履行一般の規律と、買主の通知など売買の特則を組み合わせます。
- 賃貸借・借地借家法:借地借家法は土地・建物の賃借人を保護する特則を置きます。普通借地・定期借地、普通借家・定期借家を、更新と終了条件で比較します。
- 区分所有法:区分所有法では専有部分・共用部分・敷地利用権を区別します。2026年4月施行の改正により決議等の規律が見直されたため、決議内容と適用時点を対応させます。
- 不動産登記法:表題部は物理的な状況、権利部は所有権や担保権などを示します。相続登記の義務化は2024年4月に始まり、施行前の相続にも経過措置があります。また2026年4月から、所有権登記名義人の住所・氏名等の変更登記は変更日から2年以内が基本です。相続登記の3年とは期限と起算点を区別します。
出典・参考資料
試験の公式案内と、この記事の参考にした学習資料です。
- 不動産適正取引推進機構:宅建試験の概要 ↗
- 国土交通省:宅地建物取引業法関係 ↗
- 法務省:2026年4月施行の区分所有法改正 ↗
- 法務省:相続登記の申請義務化 ↗
- 法務省:住所等変更登記の義務化 ↗
- e-Gov法令検索:民法 ↗
- e-Gov法令検索:借地借家法 ↗
- e-Gov法令検索:建物の区分所有等に関する法律 ↗
- e-Gov法令検索:不動産登記法 ↗
- 法務省:配偶者居住権について ↗
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