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日商簿記検定 · 学習ガイド

決算・税効果

棚卸資産の評価をはじめとする決算整理、本支店間の未達取引、外貨建取引の換算を整理します。税効果会計では、2級の対象となる一時差異から繰延税金資産・負債と法人税等調整額を計算します。

仕組みを理解する

決算整理

決算整理とは、決算日に帳簿の記録を実際の状態や当期の損益に合わせて修正する手続きで、棚卸資産の評価もその一つです。

エルくんが在庫の数量と値札を確認する図。数量不足2個×1,000円と、残る98個の評価差98×100円を別々に計算する。
考え方の例:帳簿100個、実地98個、原価1個千円なら数量不足は2千円です。さらに正味売却価額が900円なら、残る98個の評価差は9,800円になります。

帳簿上の在庫と実際の在庫が違う場合、数量の差と価値の下落を分けて調整します。

決算整理
論点判断・処理
売上原価の算定仕入/繰越商品(期首)、繰越商品/仕入(期末帳簿棚卸高)
棚卸減耗(帳簿数量-実地数量)×原価単価
商品評価損実地数量×(原価単価-正味売却価額)
貸倒引当金繰入期末の必要額-既存引当金残高
減価償却方法・供用月数・累計額を確認
その他有価証券時価に評価替え。差額は評価差額金(税効果あり)

基本の仕組み

基本の仕組みの図解。正方形の中央に在庫を一組だけ描き、左から右へ「帳簿100個→実地98個→残る98個の評価」の順に矢印でつなぐ。左で除いた2個を棚卸減耗損2,000円に、右で残る98個の原価1個1,000円と正味売却価額900円の差を評価差9,800円につなぐ。
覚えること:数量を実地へ直し残りだけ評価

帳簿100個、実地98個、原価1個1,000円なら棚卸減耗損は2,000円です。さらに正味売却価額が900円なら、残る98個の評価差は9,800円になります。

棚卸減耗は数量差、商品評価損は単価の下落として把握します。損益計算書上の扱いは問題で与えられた原因や表示方法に従います。

減耗した2個にも評価損を掛けると、存在しない在庫を評価することになります。数量を実地へ直してから残る商品の価値を見ます。

棚卸・引当・償却を順に整理する

棚卸・引当・償却を順に整理するの図解。左の「帳簿100個」から右の「実地98個」へ矢印を引き、差の2個を下へ分けて減耗2,000円と示す。残った98個について原価1,000円と正味売却価額900円を比べ、評価損9,800円を差し引いて期末商品88,200円へつなぐ。
覚えること:減耗後の98個で評価損を計算

期末商品の処理では、帳簿数量と実地数量から棚卸減耗損を求め、残った数量の原価と正味売却価額から商品評価損を求めます。原価1,000円、正味売却価額900円、帳簿100個・実地98個なら、減耗2,000円、評価損9,800円、期末商品88,200円です。

売上原価は、期首商品を仕入へ振り替え(仕入/繰越商品)、期末の帳簿棚卸高を仕入から繰越商品へ振り替えて(繰越商品/仕入)求めます。棚卸減耗損と商品評価損は、この期末帳簿棚卸高から差し引きます。

貸倒見積りは売掛金など対象債権の期末残高に指定率を掛け、既存の貸倒引当金との差額を繰り入れます(差額補充法)。固定資産は取得原価、残存価額、償却方法、供用月数、累計額を確認します。売却時は売却代金と売却時点の帳簿価額を比較します。

有価証券は保有目的で分けます。売買目的有価証券は時価に評価替えして差額を有価証券評価損益、満期保有目的債券は償却原価法(定額法)で有価証券利息を調整、その他有価証券は全部純資産直入法で差額をその他有価証券評価差額金とし、税効果も適用します。

費用・収益の見越しと繰延、法人税等と仮払法人税等の精算まで整理後、損益とB/Sに転記します。各仕訳の借方・貸方を両方反映し、整理前試算表の残高だけで期末表示額を決めません。

損益計算書での表示

損益計算書での表示の図解。中央の「棚卸減耗損」から左右に矢印を分ける。左は「毎期経常的に発生する程度(原価性あり)」として売上原価または販売費及び一般管理費へ、右は「原価性なし」として営業外費用または特別損失へつなぎ、左右を縦線で仕切る。
覚えること:減耗損は原価性の有無で表示先が変わる

商品評価損は、原則として売上原価に含めます。棚卸減耗損は、毎期経常的に発生する程度(原価性あり)なら売上原価または販売費及び一般管理費、原価性がなければ営業外費用または特別損失に表示します。

売上原価の内訳に加える指示があれば、期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高の後に、棚卸減耗損や商品評価損を加算します。第3問では、設問の注記に従って表示区分を決めます。

試験に出る

  • 棚卸減耗損は数量差、商品評価損は単価の下落によるものとして区別する問題。
  • 棚卸減耗損と商品評価損の計算では、評価対象を実地数量にそろえる点に注意します。
  • 正味売却価額が原価を下回る場合の商品評価損の計算が問われます。
  • 棚卸減耗損・商品評価損の損益計算書上の表示は、設問の指示に従う点を押さえます。
  • 数量を実地に直してから評価額を計算する順序が問われます。

重要な言葉

棚卸減耗損
帳簿数量と実地数量の差によって生じる棚卸資産の減少。
商品評価損
棚卸資産の価値の下落による損失。
正味売却価額
売価から、完成までに要する見積追加費用と見積販売直接経費を差し引いた額。原価を下回れば帳簿価額をこの額まで切り下げる。

確認問題

確かめよう評価対象数量は100個と98個のどちら?

実際に残る98個です。

商品評価損は、実地数量ではなく帳簿数量に対して計算する。

棚卸減耗損は数量の差、商品評価損は価値の下落として区別する。

帳簿100個、実地98個、原価1個1,000円のとき、棚卸減耗損は?

商品評価損の計算に使う数量は?

帳簿上の在庫と実際の在庫が違う場合、数量の差とを分けて調整します。

帳簿100個、実地98個、原価1個1,000円なら棚卸減耗損は2,000円です。さらに正味売却価額が900円なら、残る98個のは9,800円になります。

は数量差、商品評価損は単価の下落として把握します。損益計算書上の扱いは問題で与えられた原因や表示方法に従います。

減耗した2個にもを掛けると、存在しない在庫を評価することになります。数量を実地へ直してから残る商品の価値を見ます。

本支店会計

本支店会計とは、本店と支店がそれぞれ帳簿を付ける場合でも、同一会社として社内の資金移動や未達取引を整理し、全体の財務諸表にまとめる会計です。

本店から支店へ現金5万円を渡す場面と、双方の借方・貸方の仕訳、合併時の本店・支店勘定の相殺を示す図。
考え方の例:本店が支店へ現金5万円を送ると、本店は支店勘定の借方、支店は本店勘定の貸方で対応します。合併時はこの社内残高を相殺します。

本店と支店は帳簿を分けても同じ会社です。社内の資金移動を外部の収益や負債として残さないようにします。

本支店会計
論点判断・処理
送金・商品移送の未達未記帳側へ仕訳を補う
本店・支店勘定残高を照合して相殺
支店への商品送付2級は原価で送付。内部利益の控除は1級
連結会計との境界本支店は同一法人で非支配株主持分なし
支店の当期純利益支店:損益/本店、本店:支店/損益

基本の仕組み

基本の仕組みの図解。画面を左右に仕切り、左に本店の「支店勘定」、右に支店の「本店勘定」を置く。中央の未達取引の伝票を片方の帳簿へ入れる矢印を先に描き、その下に、対応する残高を結んで消去する矢印を描く。
覚えること:未達や誤記を直してから相殺

本店が支店へ現金5万円を送ると、本店は支店勘定の借方、支店は本店勘定の貸方で対応します。合併時はこの社内残高を相殺します。

未達取引があれば、片方だけに記録された社内送金・商品移送などを先に反映します。その後、対応する本店勘定と支店勘定を消去します。

残高が合わないときに差額を無理に消さないようにします。未達や誤記を直してから相殺します。

本支店の未達を解消してから合併する

本支店の未達を解消してから合併するの図解。左に送金を記帳済みの本店帳簿、右に未記帳の支店帳簿を並べ、左から右へ送金の矢印を引く。右の帳簿への補記から下向き矢印をつなぎ、対応がそろった本店勘定と支店勘定を相殺する順序を示す。
覚えること:未達を補い、勘定をそろえて相殺

本店から支店への送金・商品発送、本店による支店費用の立替、支店による本店債権の回収など、どちらの帳簿に先に記録されたかを確認します。未達があれば受取側など未記帳側の仕訳を補い、本店勘定と支店勘定の対応をそろえます。

本支店合併財務諸表では、本店勘定と支店勘定を相殺します。本店が支店へ原価に利益を加算して商品を送る場合の内部利益の控除は1級の範囲で、2級では原価で送付する前提で整理します。

決算で支店の当期純利益を本店へ振り替えるときは、支店で(借方)損益/(貸方)本店、本店で(借方)支店/(貸方)損益とし、会社全体の純利益を本店の損益勘定でまとめます。

本支店会計は同一企業内の帳簿統合です。親会社と子会社という別法人を合わせる連結会計とは、処理対象の関係が異なります。社内取引の消去という共通点はあっても、非支配株主持分は本支店会計に現れません。

試験に出る

  • 本店勘定と支店勘定が対応する関係と、合併時の相殺が問われます。
  • 未達取引は片方にしか記録がないため、先に反映してから相殺する流れを押さえます。
  • 残高の差額をそのまま消さず、未達や誤記を直す点に注意します。
  • 社内の資金移動は会社全体では資産の置き場所が変わるだけで、損益にならない点が問われます。
  • 本支店間の取引で使う本店勘定・支店勘定の向きが問われます。

重要な言葉

本店勘定
支店側の帳簿で本店との取引を記録する勘定。
支店勘定
本店側の帳簿で支店との取引を記録する勘定。
未達取引
一方の帳簿にだけ記録され、相手方にまだ届いていない社内取引。

確認問題

確かめよう本店から支店への5万円送金で会社全体の現金は増える?

増えません。置き場所が変わるだけです。

本店から支店への現金送金は、会社全体の利益を増やす。

未達取引があるときは、片方にだけ記録された取引を先に反映してから本店勘定と支店勘定を消去する。

本店が支店へ現金5万円を送ったとき、支店側で本店勘定を記入するのは?

本支店会計で未達取引がある場合の正しい処理は?

本店と支店は帳簿を分けても同じ会社です。社内のを外部の収益や負債として残さないようにします。

本店が支店へ現金5万円を送ると、本店はの借方、支店は本店勘定の貸方で対応します。合併時はこの社内残高を相殺します。

があれば、片方だけに記録された社内送金・商品移送などを先に反映します。その後、対応する本店勘定と支店勘定を消去します。

残高が合わないときに差額を無理に消さないようにします。や誤記を直してから相殺します。

外貨建取引の決算処理

外貨建取引の決算処理とは、外貨で記録した債権債務を決算時の為替相場で円換算し、帳簿額との差を為替差損益として整理する手続きです。

売掛金100ドルを記録時140円・決算時145円で換算し、エルくんが500円を積み足して14,000円から14,500円になる為替差益を示す図。
考え方の例:100ドルの売掛金を1ドル140円で記録し、決算時145円なら、14,000円から14,500円へ500円増え、為替差益です。

外貨額が同じでも、為替相場が動くと円で回収する金額は変わります。取引時と決算時のレートを区別します。

外貨建取引の決算処理
論点判断・処理
取引発生取引時相場で初回の円貨額
期末の金銭債権債務決算時相場で換算、為替差損益
翌期の決済決算後の帳簿額との差を当期損益
買掛金円安で差損、売掛金と逆方向
前払金・前受金非貨幣性項目のため換算替えしない
為替予約(振当処理)予約レートで換算し、決算時の換算替えなし

基本の仕組み

基本の仕組みの図解。中央の「100ドルの売掛金」を共通の対象とし、左に記録時の1ドル140円・帳簿額14,000円、右に決算時の1ドル145円・換算額14,500円を配置する。左右を仕切り、左から右への矢印に「500円増=為替差益」と記す。
覚えること:100ドル売掛金、決算で500円差益

100ドルの売掛金を1ドル140円で記録し、決算時145円なら、14,000円から14,500円へ500円増え、為替差益です。

外貨建金銭債権債務は決算時の為替相場で換算し、帳簿額との差を整理します。回収・決済時にはその時点の帳簿額と円換算額を比べます。

円安だから常に利益とは限りません。外貨建買掛金なら円での支払額が増えて差損になる方向です。

取引・決算・決済のレート

取引・決算・決済のレートの図解。100ドルの売掛金について、左から右へ取引時14,000円→決算時14,500円→翌期の決済時15,000円と、矢印でつなぐ。各矢印の下に、その時点で生じる差益500円を配置する。
覚えること:決済差益は直前帳簿額との差

外貨建取引は発生時に取引時の為替相場で円換算します。期末に残る外貨建金銭債権・債務は決算時相場で換算し直し、差額を為替差損益にします。翌期の決済時は、直前の円貨帳簿額と実際決済額を比較します。

100ドルの売掛金を140円で記録し期末145円なら、帳簿14,000円を14,500円に直し500円の差益です。翌期150円で回収すれば、決済時の差益はさらに500円です。取得時140円との差1,000円を翌期の利益へ全額入れません。

同じ外貨額の買掛金なら円安で支払額が増え差損方向です。前払金・前受金は将来お金ではなく商品などで精算する非貨幣性項目なので、取引時の円貨額のまま換算替えしません。

2級の期末換算は、外貨建の売掛金・買掛金など営業取引の債権債務が対象です。外貨建の貸付金・借入金や外貨建有価証券の換算は1級の範囲です。

為替予約と表示

為替予約と表示の図解。左上の「取引」と「為替予約」を同じ時点に重ね、そこから中央の帳簿へ矢印を引き、予約レートでの記帳を示す。帳簿の右に決算時の仕切りを置き、「換算替え」へ進む矢印を遮る。
覚えること:取引時予約→予約レート記帳、決算換算なし

為替予約を付けた場合、2級では振当処理により予約レートで円換算します。取引と同時に予約すれば予約レートで記帳し、決算時の換算替えはしません。

取引後に予約した場合は、帳簿の円貨額と予約レートによる円貨額の差額を、予約した期の為替差損益とします。2級では、この差額を期間配分しません。

為替差益と為替差損は為替差損益勘定でまとめ、損益計算書では純額を営業外収益または営業外費用に表示します。

試験に出る

  • 外貨建金銭債権債務は決算時の為替相場で換算する点が問われます。
  • 円換算額が帳簿額を上回れば為替差益、下回れば為替差損になる計算が頻出です。
  • 円安がすべての外貨建勘定で利益になるわけではなく、買掛金では差損になる点に注意します。
  • 取引時のレートと決算時のレートを混同させる選択肢に注意します。
  • 回収・決済時の換算と決算時の換算を区別する問題が問われます。
  • 為替予約(振当処理)を付けた債権債務は予約レートで換算し、決算時に換算替えしない点が問われます。

重要な言葉

為替差損益
為替相場の変動により生じる、円換算額と帳簿額の差。
決算換算
外貨建の債権債務を決算時の為替相場で円に換算すること。
外貨建金銭債権債務
外貨で表示された売掛金や買掛金などの債権債務。
為替予約
将来の決済に使う為替相場を前もって契約で決めておくこと。2級では振当処理により予約レートで円換算する。

確認問題

確かめよう同じ条件が100ドルの買掛金なら?

500円の為替差損です。

100ドルの売掛金を1ドル140円で記録し、決算時145円になれば為替差益が生じる。

円安になると、外貨建買掛金でも必ず為替差益になる。

100ドルの売掛金を1ドル140円で記録し、決算時145円のときの差額は?

外貨建金銭債権債務を換算するレートは?

外貨額が同じでも、が動くと円で回収する金額は変わります。取引時と決算時のレートを区別します。

100ドルの売掛金を1ドル140円で記録し、決算時145円なら、14,000円から14,500円へ500円増え、です。

外貨建金銭債権債務は決算時の為替相場で換算し、との差を整理します。回収・決済時にはその時点の帳簿額と円換算額を比べます。

円安だから常に利益とは限りません。外貨建なら円での支払額が増えて差損になる方向です。

税効果会計(2級の重要論点)

税効果会計とは、会計上の利益と税務上の所得の差のうち将来解消する一時差異について、繰延税金資産や繰延税金負債を計上し、税負担と利益を対応させる会計です。

エルくんが説明する図解。当期損金不可1万円→将来損金1万円→税率30%で将来減税3000円。
考え方の例:貸倒引当金の一部1万円が当期は損金不算入で、将来損金となる条件なら、税率30%で将来の税負担減少は3千円です。回収可能性を満たす範囲で繰延税金資産を考えます。

会計の費用と税務上の損金になる時期がずれると、当期の税負担と利益の対応を調整する必要があります。

税効果会計(2級の重要論点)
論点判断・処理
将来減算一時差異繰延税金資産(将来の税負担を減らす)
将来加算一時差異繰延税金負債(将来の税負担を増やす)
永久差異税効果の対象外
その他有価証券評価差額純資産項目に対応して税効果を処理
2級の対象範囲貸倒引当金・減価償却・その他有価証券の一時差異のみ。回収可能性の検討は除外
表示繰延税金資産は投資その他の資産、繰延税金負債は固定負債。相殺して純額

基本の仕組み

基本の仕組みの図解。上段は左の「当期損金不算入」から右の「将来損金」へ矢印を引き、1万円の一時差異が将来解消する条件を示す。そこから下段の当期側へ矢印を下ろし、「1万円×税率30%→繰延税金資産3,000円」とつなぐ。
覚えること:将来損金の1万円×30%=3,000円

貸倒引当金の一部1万円が当期は損金不算入で、将来損金となる条件なら、税率30%で繰延税金資産3,000円を計上します。2級では繰延税金資産の回収可能性の検討は出題範囲から除かれており、指定された一時差異と税率で整理します。

一時差異は将来解消する会計と税務の差です。繰延税金資産は将来減算、繰延税金負債は将来加算の差異と対応します。

永久に損金にならない交際費などの永久差異へ税効果を付けないようにします。税率を掛ける前に、将来解消する差かを判断します。

たとえば借方に繰延税金資産3,000円、貸方に法人税等調整額3,000円を計上し、当期の会計上の税負担を調整します。翌期に差異が解消すれば逆方向へ取り崩します。

その他有価証券評価差額金に関する税効果は、法人税等調整額ではなく、その純資産項目と対応させる点も区別します。

一時差異の発生と解消

一時差異の発生と解消の図解。1本の横長の帳簿図で、左の「限度超過1万円」「税率30%」から中央の「繰延税金資産3,000円」へ矢印を引く。中央から右へは「翌期に損金算入」と記した矢印を引き、先に「取崩し」を置く。
覚えること:翌期損金算入で繰延税金資産を取崩す

税効果会計では、会計上の帳簿価額と税務上の金額の差が将来解消するかを先に判定します。将来減算一時差異は繰延税金資産、将来加算一時差異は繰延税金負債に対応します。交際費の損金不算入など永久に解消しない差異は対象外です。

貸倒引当金の損金算入限度超過額1万円が翌期に損金算入され、税率30%なら、発生時に繰延税金資産3,000円を計上し、貸方の法人税等調整額で税金費用を同額減らします。翌期に損金算入されると差異が解消し、繰延税金資産を取り崩します。

その他有価証券の評価差額など、損益を通さず純資産へ直接計上する項目の税効果は、法人税等調整額を使いません。評価差額から税効果分を差し引いた額をその他有価証券評価差額金とします。

税率が変わる条件では、どの時点の税率を適用するか設問を確認します。

2級で出る3つの一時差異

2級で出る3つの一時差異の図解。左に会計上の償却費5万円と税法上の限度額4万円を、同じ基準線から伸びる棒で並べ、上端の差1万円を着色する。仕切りの右へ「超過額1万円→×税率30%→繰延税金資産3,000円」と矢印でつなぐ。
覚えること:超過1万円×30%=繰延税金資産3千円

減価償却費の償却限度超過額も将来減算一時差異です。会計上の減価償却費5万円のうち税法上の限度額が4万円なら、超過額1万円×30%で繰延税金資産3,000円を計上します。資産を売却・除却した時などに差異が解消します。

その他有価証券は全部純資産直入法で時価評価し、税効果を差し引いて評価差額金とします。翌期首には評価差額を振り戻す(洗替法)ため、繰延税金資産・負債も同時に取り消します。

繰延税金資産の期末残高は、期末の一時差異の残高×税率です。期首残高との差額だけを法人税等調整額で計上します。期首差異1万円・期末差異1.5万円、税率30%なら、繰延税金資産を1,500円増やします。

2級で出る3つの一時差異
場面(税率30%)借方金額貸方金額
貸倒引当金の損金算入限度超過額1万円繰延税金資産3,000円法人税等調整額3,000円
減価償却費の償却限度超過額1万円繰延税金資産3,000円法人税等調整額3,000円
その他有価証券(原価10万円→時価12万円)その他有価証券2万円繰延税金負債6,000円
その他有価証券評価差額金14,000円
その他有価証券(原価10万円→時価9万円)繰延税金資産3,000円その他有価証券1万円
その他有価証券評価差額金7,000円

課税所得・法人税等と表示

課税所得・法人税等と表示の図解。中央の横長の棒を縦線で仕切り、法人税等16.2万円を「中間納付した仮払法人税等8万円」と「未払法人税等8.2万円」に分ける。棒の下に左から右へ「16.2万円-8万円=8.2万円」と配置する。
覚えること:未払法人税等=法人税等-仮払法人税等

法人税、住民税及び事業税は、課税所得×税率で求めます。中間納付した仮払法人税等を差し引いた残りが未払法人税等です。2級の設問では、税引前当期純利益に加算・減算する項目が示され、それに従って課税所得を求めます。

税引前当期純利益50万円、加算項目が貸倒引当金の限度超過額1万円・減価償却費の限度超過額1万円・交際費の損金不算入額2万円なら、課税所得は54万円です。税率30%で法人税等は16.2万円、仮払法人税等8万円なら未払法人税等は8.2万円です。

この例で税効果の対象は一時差異2万円だけで、交際費は永久差異です。法人税等調整額は貸方6,000円となり、税金費用の合計は15.6万円です。

損益計算書では、法人税、住民税及び事業税の次に法人税等調整額を記載します。借方残高なら加算、貸方残高なら減算します。貸借対照表では、繰延税金資産を投資その他の資産、繰延税金負債を固定負債に表示し、両方あれば相殺して純額で示します。

課税所得・法人税等と表示
場面(上の例)借方金額貸方金額
法人税等の計上法人税、住民税及び事業税16.2万円仮払法人税等8万円
未払法人税等8.2万円
税効果(一時差異2万円×30%)繰延税金資産6,000円法人税等調整額6,000円

試験に出る

  • 一時差異と永久差異の区別が最重要です。永久差異には税効果を適用しません。
  • 繰延税金資産は将来減算、繰延税金負債は将来加算の一時差異と対応する点が問われます。
  • 2級の対象は、貸倒引当金の損金算入限度超過額、減価償却費の償却限度超過額、その他有価証券の評価差額に係る一時差異に限られます。
  • 2級では繰延税金資産の回収可能性の検討は範囲外である点を押さえます。
  • その他有価証券評価差額金の税効果は純資産項目と対応させる点に注意します。
  • 繰延税金資産は投資その他の資産、繰延税金負債は固定負債に表示し、両方あれば相殺した純額で示す点が問われます。

重要な言葉

一時差異
会計上の利益と税務上の所得の差のうち、将来の期間に解消するもの。
永久差異
将来にわたって解消しない会計と税務の差で、税効果の対象外。
繰延税金資産
将来の税金が減る効果を表す、将来減算一時差異に対応する資産。
法人税等調整額
税効果会計により当期の税負担を調整するために計上する勘定。
繰延税金負債
将来の税金が増える効果を表す、将来加算一時差異に対応する負債。
課税所得
法人税等の計算の基礎となる税務上の所得。税引前当期純利益に損金不算入額などを加算・減算して求める。

確認問題

確かめよう永久差異1万円にも繰延税金資産3,000円を計上する?

しません。将来の減税につながる一時差異ではないためです。

永久差異は、将来解消しないため税効果会計の対象とならない。

繰延税金負債は、将来減算の一時差異と対応する。

将来解消する会計と税務の差を何という?

税率30%で損金不算入の貸倒引当金1万円に計上する繰延税金資産は?

会計の費用と税務上の損金になる時期がずれると、当期のと利益の対応を調整する必要があります。

貸倒引当金の一部1万円が当期は損金不算入で、将来損金となる条件なら、税率30%で3,000円を計上します。2級では繰延税金資産の回収可能性の検討は出題範囲から除かれており、指定された一時差異と税率で整理します。

は将来解消する会計と税務の差です。繰延税金資産は将来減算、繰延税金負債は将来加算の差異と対応します。

永久に損金にならない交際費などのへ税効果を付けないようにします。税率を掛ける前に、将来解消する差かを判断します。

たとえば借方に繰延税金資産3,000円、貸方に3,000円を計上し、当期の会計上の税負担を調整します。翌期に差異が解消すれば逆方向へ取り崩します。

その他有価証券評価差額金に関する税効果は、法人税等調整額ではなく、その項目と対応させる点も区別します。

覚えるポイント

  • 決算整理:棚卸減耗は数量差、商品評価損は単価の下落として把握します。損益計算書上の扱いは問題で与えられた原因や表示方法に従います。
  • 本支店会計:未達取引があれば、片方だけに記録された社内送金・商品移送などを先に反映します。その後、対応する本店勘定と支店勘定を消去します。
  • 外貨建取引の決算処理:外貨建金銭債権債務は決算時の為替相場で換算し、帳簿額との差を整理します。回収・決済時にはその時点の帳簿額と円換算額を比べます。
  • 税効果会計(2級の重要論点):一時差異は将来解消する会計と税務の差です。繰延税金資産は将来減算、繰延税金負債は将来加算の差異に対応します。2級では回収可能性の検討は範囲外で、指定された一時差異と税率で整理します。永久差異は税効果の対象外です。

出典・参考資料

試験の公式案内と、この記事の参考にした学習資料です。

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