日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客への最適なアドバイスに向けた必要情報の整理
不動産 · 情報収集 / 面談ヒアリング / 現地・権利・市場調査
会社員のAさん(64歳)は、大手コンビニチェーンX社に事業用定期借地権を設定して甲土地を賃貸していたが、X社から中途解約および建物収去更地返還の意向を告げられた。親戚Dさんの紹介で野菜専門販売業者Y社から現況建物をスケルトン状態で普通建物賃貸借したいとの提案を受けている。Aさんに対して最適なアドバイスを行うにあたり、示された情報のほかにどのような情報が必要か、「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FPであるあなた自身が調べて確認する情報」に整理して説明しなさい。
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解答
①Aさんから直接確認する情報:退職後の生活設計や希望収入、維持管理や修繕の手間・費用負担への許容度、建物の内部造作撤去費用の用意、親族(妻や長男)の意向等。②FP自身が調べて確認する情報:甲土地および建物の登記事項証明書等の権利関係、公法上の建築・用途規制、Y社の経営状態・財務健全性、近隣地域の賃料相場や競合状況、建物の劣化状況等。
解説
アドバイスをするには、顧客の希望を聞くことと、客観的な事実を調べることの両方が必要です。顧客のライフプラン(生活費・資金力・リスクの許容度・資産の承継意向)は本人から聞きます。不動産の権利関係や法令制限、市場性、相手企業の信用状況はFP自身が調べます。
解き方
- 設例から、Aさんが定年退職を迎えることや、修繕・管理をいやがっていること、工事費用がかかることに注目し、本人に確認することを選び出します。
- 建物の所有権や借地権などの権利関係、物件の物理的・法的な状況、テナント(Y社)の信用力や事業性など、FP自身が調べて確認することを整理します。
答えの内訳
- ①:退職後の収支見込みや希望する収入規模、建物の修繕・管理責任や空室リスクに対する許容度、スケルトン化工事費用の資金手当て、将来的な相続に対する長男・家族の意向など。
- 顧客自身のライフプラン上の希望(退職後の生活資金計画)や、修繕・管理の手間を避けたい意向の程度、改修費用を自己資金等で賄えるか、将来の資産承継方針を直接確認する必要があります。
- ②:甲土地および現況建物の登記事項証明書等の権利関係、公法上の利用・用途規制、周辺の店舗需要および賃料相場、Y社の財務状況・信用度、建物の構造・老朽化状況など。
- FP自身が公簿・現地調査・信用調査等を通じて、建物の権利状態や残存耐用年数、近隣市場での賃料妥当性、賃借候補者であるY社の事業健全性・継続性を客観的に調査・確認する必要があります。
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覚えるポイント
- 面談事項(ヒアリング)とFP調査事項(客観的調査・確認)を明確に分けて整理する。
間違えやすいところ
- 設例にもう書かれていること(敷金や地代の額など)を、必要な情報として重ねて挙げてしまうことです。
出題の前提:2026年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務)PartII・質問事項1
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
借地権者(退去予定)との建物譲渡・収去に関する交渉事項
不動産 · 借地借家法 / 建物譲渡 / 事業用定期借地権 / 中途解約
設例において、AさんがY社に甲土地上の建物を借りてもらうことを前提とする場合、現在建物を所有しており更地返還を予定しているX社とどのような交渉を行えばよいか、具体的に説明しなさい。
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解答
X社に対し、契約条項にある建物の収去・更地返還義務を免除することを提示したうえで、建物をAさんに無償または安価で譲渡(売買)してもらうよう交渉する。また、解約期日の調整やY社要望のスケルトン化工事の負担についても協議を行う。
解説
事業用定期借地権の中途解約では、借地人は原則として建物を収去して更地で返す義務を負います。しかし、地主と借地人が合意すれば、建物を地主に譲渡(有償または無償)して収去義務を免除できます。借地人は解体・撤去費用を減らせ、地主は既存の建物を使えるので、双方に利益があります。
解き方
- X社が負っている「建物を収去して更地で返す義務」と、解体費用の負担に注目します。
- Y社の希望である「スケルトン化」と、Aさんが建物を取得して貸すしくみを整理します。そして、双方に利益がある交渉内容(建物の譲渡と収去免除、造作の撤去の負担)をまとめます。
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覚えるポイント
- 借地人側の解体撤去費用削減メリットを提示して、建物譲渡と内部造作撤去の協力を引き出す点がポイントとなる。
間違えやすいところ
- 事業用定期借地権の期間満了や中途解約のとき、借地権者に当然に建物買取請求権があると間違えることです(定期借地権では、建物買取請求権を排除する特約が一般に有効です)。
出題の前提:2026年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務)PartII・質問事項2
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
土地賃貸(事業用定期借地)と建物賃貸(事業用普通借家)における契約内容および税務の相違点
不動産 · 事業用定期借地権 / 普通建物賃貸借 / 不動産所得の税務 / 消費税 / 相続税評価
設例において、X社に事業用定期借地権により土地を賃貸する場合と、Y社に事業用建物を普通建物賃貸借により賃貸する場合とについて、契約内容(権利義務・更新・修繕等)および賃料等に係る税金(所得税・消費税・固定資産税・相続税評価等)の相違点を説明しなさい。
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解答
契約内容については、土地賃貸(事業用定期借地)では更新がなく終了時に更地返還され修繕義務は借地人が負うのに対し、建物賃貸(普通借家)では原則更新があり貸主が建物の修繕・維持管理義務を負う違いがある。税金面では、土地の地代は消費税非課税であるのに対し、事業用建物賃料は消費税の課税売上となるほか、建物所有に伴う減価償却費計上や建物固定資産税の負担、相続税における評価区分(貸宅地か貸家建付地か)に相違が生じる。
解説
土地だけを貸す(借地)か、建物ごと貸す(借家)かで、権利と義務は大きく変わります。修繕・維持管理の義務や、契約の解除・更新のルールが異なります。税制でも、消費税の課税区分や減価償却費の有無、相続税の評価方法に違いが出ます。
解き方
- 事業用定期借地契約と普通建物賃貸借契約について、法的な立場(契約更新の有無、中途解約の制限、修繕・管理の責任)を比べます。
- 所得税(収入と経費の項目・減価償却)、消費税(土地は非課税・事業用建物は課税)、保有税(固定資産税など)、相続税評価の違いを整理します。
答えの内訳
- 契約内容の違い:事業用定期借地権は契約の更新や建物買取請求権がなく期間満了や合意等で終了し、建物の維持・修繕は借地人が行う。一方、普通建物賃貸借契約は借地借家法が適用されて正当事由がない限り貸主からの更新拒絶や解約が制限されるとともに、原則として貸主が建物の修繕・維持管理義務を負う。
- 事業用定期借地契約(借地借家法第23条)は存続期間の満了に伴い更新なく確定的に終了し、建物解体・収去義務も借地人が負います。対して普通建物賃貸借契約では法第26条・第28条の更新保護が働き、貸主は民法第606条に基づき使用収益に必要な修繕義務を負担します。
- 賃料および税金面の違い:土地の賃貸(地代)は消費税が原則非課税であるのに対し、事業用建物の賃貸(家賃)は消費税の課税対象(課税売上)となる。また、建物賃貸では建物取得に伴い減価償却費を経費計上できる一方、建物の固定資産税等の負担が生じる。相続税評価では、土地賃貸は貸宅地(定期借地権設定地)として評価され、建物賃貸では自用建物から貸家・貸家建付地として評価減が適用される。
- 土地の貸付けは消費税法上非課税取引ですが、事業用建物の貸付けは課税取引となります。所得税の計算において建物賃貸は減価償却費・維持管理費等の必要経費が計上可能です。相続税評価では、定期借地権設定地は逓減する定期借地権割合に応じた評価となるのに対し、建物賃貸時は貸家建付地評価(自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合))および貸家評価が適用されます。
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覚えるポイント
- 土地の貸付けは原則非課税(1か月未満等の例外を除く)だが、事業用建物の賃貸料は消費税の課税取引となる。
- 普通建物賃貸借では民法上貸主が修繕義務を負い、借地借家法による強い更新保護(正当事由制度)が働く。
間違えやすいところ
- 事業用建物の賃料を、住宅用の賃料と同じように非課税だと間違えることが多いです。
- 事業用定期借地契約と普通建物賃貸借契約で、修繕・管理の義務が借主と貸主のどちらにあるかを取り違えてしまうことです。
出題の前提:2026年度第1回(2026年6月14日実施)1級ファイナンシャル・プランニング技能検定実技試験(資産相談業務)PartII 設例・質問事項3
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
相談者の意向を踏まえたY社提案への対応策および建物賃貸借以外の土地活用方法
不動産 · 定期建物賃貸借 / 事業用定期借地権 / 修繕義務免除特約 / 土地活用提案
「修理・維持管理等の面倒なことは避けたい」「長期間安定して借りてほしい」というAさんの意向を踏まえ、Y社からの提案(3年間の普通建物賃貸借契約)に対する留意点・助言を述べなさい。また、Y社に建物賃貸借以外の方法で甲土地を利用してもらう場合、どのような形態が考えられるか説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
Y社の提案に対しては、普通借家では貸主に修繕義務があり更新拒絶が困難であるため、定期建物賃貸借契約への変更や修繕義務を借主負担とする特約の締結、スケルトン化費用の負担協議を助言する。建物賃貸借以外の方法としては、X社からY社へ直接建物を譲渡させ、AさんとY社との間で新たに事業用定期借地契約を締結して土地のみを賃貸する方法が考えられる。
解説
相談者の希望(管理の負担を避ける・長く安定した収入を得る)をかなえるには、2つの方法が有効です。1つは、借主に有利になりやすい普通借家のリスクを除いた契約(定期借家や修繕の特約)を考えることです。もう1つは、貸主が建物を持たずにすむ土地賃貸(事業用定期借地)に切り替えるしくみを考えることです。
解き方
- Aさんの課題(建物の維持管理・修繕をしたくない、長く借りてほしい、費用の負担が心配)と、Y社の提案(普通借家3年、修繕の負担が不明、スケルトン化の要求)のずれを分析します。
- そのずれをなくすために、建物賃貸借契約についての助言(定期借家にすること、修繕の特約、費用負担の明確化)を伝えます。
- 建物を持つリスクを完全になくす別の方法として、Y社に建物を譲渡し、新しく事業用定期借地契約を結ぶことを提案します。
答えの内訳
- Y社の提案に関するアドバイス:普通建物賃貸借では貸主に修繕義務が生じAさんの意向に反する上、3年更新でも借主側から途中解約されるリスクがある。そのため、更新がなく期間満了で終了する「定期建物賃貸借契約」の締結を検討することや、修繕・維持管理義務を借主(Y社)負担とする特約を設けること、造作撤去(スケルトン化)費用や建物取得費用の負担・回収計画を明確にすることをアドバイスする。
- Aさんは「建物の修理・維持管理等の面倒なことは行いたくない」と希望しているため、民法の修繕義務規定を任意規定として借主負担とする特約を設けるか、契約形態を定期建物賃貸借として期間や中途解約制限ペナルティを設計する必要があります。またスケルトン化費用等の初期投資負担の回収リスクも考慮が必要です。
- 建物賃貸借以外の利用方法:X社が所有する建物をY社に直接有償または無償で譲渡(売買・譲渡担保等)させ、AさんはY社との間で改めて「事業用定期借地契約」(期間10年以上50年未満)を締結し、土地のみを賃貸する方法が考えられる。
- Y社に建物を買い取らせて土地のみの事業用定期借地契約を締結すれば、Aさんは建物の取得費用・維持管理責任・修繕義務を一切負うことなく、これまでと同様に安定した地代収入を長期間得ることが可能となり、Aさんの意向に完全に合致します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 建物の修繕義務(民法606条)は特約により排除・借主負担とすることが可能である(ただし大規模修繕等の有効性には留意)。
- 事業用定期借地契約を活用すれば、土地所有者は建物の維持管理負担を負わずに長期固定収入を得られる。
間違えやすいところ
- Y社が「長く借りるつもり」と言うからといって、普通借家の3年契約のまま受け入れると、借主の早い解約を防げない点を見落とすことです。
- AさんがX社から建物を買い取ってY社に貸すことだけを考え、X社からY社へ直接建物を譲渡する定期借地のしくみを忘れてしまうことです。
出題の前提:2026年度第1回(2026年6月14日実施)1級ファイナンシャル・プランニング技能検定実技試験(資産相談業務)PartII 設例・質問事項4
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事案に関与する専門職業家
不動産・相続 · 専門職業家の役割 / 士業連携 / コンプライアンス
設例に基づき、事業用定期借地権を設定していたX社の撤退に伴う建物処理交渉や、新たなテナントであるY社への賃貸・契約形態の検討、今後の維持管理・税務等を進めるにあたり、関与する専門職業家とその役割を説明しなさい。
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解答
弁護士、司法書士、税理士、不動産鑑定士、建築士(または工務店)、宅地建物取引業者などが関与する。
解説
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、顧客の生活設計や課題の整理を行います。しかし、各士業の法律で決められた独占業務を行うことはできません。そのため、専門家と正しく連携することが欠かせません。法律の判断や紛争の解決は弁護士、登記は司法書士、個別の税務相談・申告は税理士、鑑定評価は不動産鑑定士、建物の設計・調査は建築士が担当します。
解き方
- 設例の課題(X社との撤退・建物の買い取り交渉、登記の手続き、税金・消費税の取扱い、建物の点検・改修、Y社との契約条件の確認など)を整理します。
- それぞれの業務を担当する専門家(弁護士、司法書士、税理士、不動産鑑定士、建築士、宅地建物取引業者など)と、その具体的な役割を書き出します。
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覚えるポイント
- FP倫理として業法(弁護士法、税理士法、司法書士法、宅地建物取引業法等)に抵触しないよう留意し、各士業の専門領域を正確に押さえること。
間違えやすいところ
- 士業の名前を並べるだけでなく、設例の状況(建物の買い取り、登記、消費税、修繕など)に合った具体的な役割と結びつけて説明しないと、減点されやすいです。
出題の前提:2026年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2026年6月14日PartII)設例
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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