日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客への提案に必要な追加情報の収集と確認項目
不動産・相続 · 不動産の有効活用 / 顧客ヒアリング / 物件調査
Aさん(75歳)は、所有する甲土地上の店舗を賃貸していたスーパーから解約申出を受けたことを契機に、デベロッパーのX社から一般定期借地権を活用した分譲マンション建築の提案を受けている。Aさんに対して最適なアドバイスを行うにあたり、示された情報のほかに収集すべき情報を「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FP自身が調べて確認する情報」に整理して答えなさい。
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解答
①Aさんへの直接ヒアリング事項(賃貸借契約の解約・原状回復条件、保有資産状況、子世代の意向・資金力、相続・生活設計に関する希望等)および②FP自身の調査確認事項(甲土地の公法規制・権利関係、周辺市場動向・需給、X社の信用力・事業提案の妥当性、固定資産税評価額・路線価等)を網羅的に確認する。
解説
不動産の有効活用の提案では、お客様とご家族の希望などの主観的な情報と、土地の法規制・市場性・事業者の信用度という客観的な情報の両方を調べる必要があります。どちらか一方だけでは、最適な提案はできません。人と物件の両面から多角的に考えることが大切です。
解き方
- 事例から、Aさんの家族構成、甲土地の現状、X社の提案内容、Aさんの希望や心配ごとを抜き出して整理します。
- 事業が実現できるか、相続税対策としてよいかを判断するため、足りない主観情報(本人や親族に聞く項目)を洗い出します。
- 客観的にリスクを確かめるため、FP自身が行政機関や現地で調べるべき法規制・市場動向・評価額などを整理します。
答えの内訳
- ①:スーパーとの現行契約内容(解約予告、明渡し時期、原状回復・解体費用の負担、敷金返還義務)、Aさん夫妻の資産・負債および生活資金の希望、長男・長女の意向や自己資金・住宅ローン借入可能性、将来の資産承継方針などをAさんから直接確認する。
- 現行の賃借人との退去条件(建物の解体費用負担や原状回復)を明確にすることに加え、Aさん夫妻の老後資金計画、子ども家族のマンション取得への真の要望・返済負担力、相続対策の優先順位を直接聴取することが最適な提案の前提となります。
- ②:甲土地の登記事項・公法上の規制(用途地域、建蔽率・容積率、接道・地盤状況)、周辺の不動産需要・家賃相場、X社の信用力および分譲・管理の実績、提案プランの採算性・実現可能性、甲土地の固定資産税評価額や路線価をFP自身で調査する。
- 法務局や市区町村役場で権利関係・建築制限を確認し、現地調査や市場調査で定期借地権付マンションの需要動向や分譲価格の妥当性を検証するとともに、相続税評価額の試算に必要な課税資料を調査・確認します。
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覚えるポイント
- ヒアリング項目は当事者の意向・資金計画・契約関係に区分して整理する。
- 自身で調べる項目は権利関係・公法規制・市場性・税務評価に大別して整理する。
間違えやすいところ
- 今のテナントとの明渡しや解体費用の負担について、契約の条件を確認し忘れることです。
- 子ども家族側の住宅取得の希望や資金力を確認し忘れることです。
出題の前提:2026年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2026年6月6日 PartII)設例
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
一般定期借地権における権利金と前払地代の相違および税務上の取扱い
不動産・タックス · 一般定期借地権 / 権利金 / 前払地代 / 不動産所得 / 相続税評価
一般定期借地権の設定に伴い授受される「権利金」と「前払地代」の違いを説明し、地主が受け取った前払地代について、所得税および相続税においてどのように取り扱われるかを説明しなさい。
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解答
権利金は借地権設定の対価として返還されない一時金であるのに対し、前払地代は将来の地代を一括前払いするもので中途終了時は未経過分が返還対象となる。所得税では受取時に一括計上せず各年の不動産所得の総収入金額に配分計上し、相続税では相続開始時の未経過前払地代が債務控除の対象となる。
解説
一般定期借地権でやり取りされるお金のうち、権利金は返さなくてよい利用権の一時金です。一方、前払地代は地代の前払いです。そのため、期間に応じて毎年の不動産所得に計上し、相続開始時の未経過分は債務控除の対象になります。
解き方
- 権利金(利用権を作る一時金で返還が不要)と、前払地代(地代の前払いで返還される)の性質の違いをはっきりさせます。
- 所得税では、受け取った年に一括で課税せず、期間で分けて毎年の不動産所得の総収入金額に入れることを確認します。
- 相続税では、相続開始時に残っている未経過分の前払地代が債務控除の対象になることを当てはめます。
答えの内訳
- 権利金と前払地代の違い:権利金は借地権設定の対価として授受され原則として返還されない一時金であるのに対し、前払地代は将来の地代債務に充当される性質を有し、借地契約が中途終了した場合には未経過分が返還される金銭である。
- 権利金は土地利用権創設そのものへの対価であり契約期間中の地代には充当されず返還義務もありませんが、前払地代は地代の予納であるため期間経過に応じて地代に充当され、期間満了前に解約された際は残存期間分が返還されます。
- 所得税における取扱い:前払地代として一括受領した金銭は受取時に一括して総収入金額に算入するのではなく、借地期間中の各年に対応する金額を各年分の不動産所得の総収入金額に計上する。
- 地代の前受金であるため、受領時には前受収益(預り金)として処理され、期間の経過に応じて毎年の地代相当額が各年分の不動産所得の総収入金額として配分・認識されます。
- 相続税における取扱い:相続開始日時点で残存する未経過の前払地代相当額は、被相続人の債務として相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象として取り扱われる。
- 被相続人があらかじめ一括で受け取っていた前払地代のうち、相続開始以後の期間に対応する未経過分は将来の地代充当義務(返還義務を負う債務)と同視されるため、相続税の債務控除が認められます。
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覚えるポイント
- 前払地代は受取時に一括課税されず、期間按分して毎年の不動産所得に計上する。
- 相続開始時点の未経過前払地代は相続税の債務控除の対象となる。
間違えやすいところ
- 前払地代を、受け取った年の分で全額一時所得や不動産所得として一括計上すると誤解することです。
- 前払地代が相続税の債務控除に使えることを見落とすことです。
出題の前提:2026年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2026年6月6日 PartII)設例
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
親族への低額賃貸と家屋の相続税評価
不動産・相続・事業承継 · 使用貸借 / 自用家屋評価 / 貸家評価
AさんがX社のマンションを2戸購入し、長男Cさんと長女Dさんに固定資産税・都市計画税程度の家賃で居住させ、Aさんの相続が開始した場合、当該住戸の家屋部分は相続税法上どのように評価されるか説明しなさい。
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解答
固定資産税・都市計画税程度の家賃での貸付は税務上「使用貸借」とみなされるため、貸家としての評価減は認められず、「自用家屋」として固定資産税評価額そのままで評価される。
解説
家賃が固定資産税などの公租公課と同じくらい以下のときは、ただで貸しているのと同じとみなされ、税務上は「使用貸借」になります。使用貸借では借家人を強く守る借家権がないため、借家権割合などの減額はできません。自用家屋と同じく固定資産税評価額そのままで評価します。
解き方
- 受け取る家賃が公租公課(固定資産税・都市計画税)と同じくらい以下かどうかを確かめます。
- 賃貸借契約ではなく、税務上の使用貸借に当たると判断します。
- 貸家評価の減額は使えず、自用家屋として固定資産税評価額×1.0で評価するという結論になります。
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覚えるポイント
- 公租公課相当額以下の賃料による貸し付けは税務上「使用貸借」と判定される。
- 使用貸借による家屋の相続税評価額は、自用家屋評価(借家権割合控除なし)となる。
間違えやすいところ
- 形だけの賃貸借契約書があっても、家賃が低く公租公課以下なら貸家評価は使えない点を見落とすことです。
- 家屋だけでなく敷地も、貸家建付地などの評価減が使えない点を混同することです。
出題の前提:相続税財産評価基本通達(家屋の評価・使用貸借による家屋の評価)
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
マンション取得支援策および教育資金の援助方法
相続・事業承継・贈与 · 住宅取得等資金の贈与税の非課税 / 相続時精算課税 / 都度贈与 / 教育費の非課税
①子どもたちにX社のマンションを取得させる方法としてどのような方策が考えられるか、②教育資金の援助についてAさんにどのようなアドバイスをするか、それぞれ説明しなさい。
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解答
①住宅取得等資金贈与の非課税特例や相続時精算課税制度を活用して購入資金を子どもに贈与する方法などが考えられる。②扶養義務者相互間における教育費・生活費の「都度贈与」を活用し、必要な都度直接支払うことで全額非課税として援助するアドバイスを行う。
解説
子どもの住宅取得を助けるときは、親が直接物件を買うのではなく、住宅取得等資金の贈与税の非課税や相続時精算課税を使って資金を渡し、子ども名義で取得させる方法が有効です。孫への教育費は、一括贈与の特例を使わなくても、扶養義務者による都度贈与なら相続税法上もともと非課税です。
解き方
- マンション取得は、子どもが自分で買えるように、住宅資金の贈与の特例や相続時精算課税の使い方を整理します。
- 教育費の援助は、一括贈与の特例の廃止や制限に関係なく、相続税法の原則である都度贈与(直接支払い)の非課税規定を使う助言をまとめます。
答えの内訳
- ①:「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」や「相続時精算課税制度」等を活用してマンション購入資金を子どもたちに贈与し、子ども自身が直接購入契約を締結して取得する方法が考えられる。
- Aさんが前払地代として受け取った資金を元手に、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税特例や、2,500万円の特別控除および年110万円の基礎控除がある相続時精算課税制度を活用して資金を子どもへ贈与し、子どもたちが直接区分所有権を取得する方法が実効的です。
- ②:扶養義務者間における生活費・教育費の非課税規定を活用し、入学金や授業料等が必要となった都度、Aさんが直接学校等へ支払う「都度贈与」を行うようアドバイスする。
- 相続税法第21条の3第1項第2号に基づき、祖父母から孫へ通常必要と認められる教育費を必要な都度直接支払う場合、金額にかかわらず贈与税は非課税となります。教育資金の一括贈与特例のような事前手続きや信託契約の手数料をかけることなく、都度必要な金額を直接負担することで安全かつ有利に援助できます。
覚えるポイント
- 扶養義務者から受ける生活費・教育費で通常必要と認められるものは、都度贈与であれば贈与税が非課税である。
- 住宅取得等資金の非課税特例や相続時精算課税制度を活用することで、生前の資産移転を円滑に行える。
間違えやすいところ
- 教育資金の一括贈与特例が廃止・改正されても、ふつうの都度贈与なら非課税で援助できる点を見落とすことです。
- 将来の教育費をまとめて子や孫の口座に振り込むと、都度贈与と認められず贈与税がかかる点に注意することです。
出題の前提:租税特別措置法第70条の2(住宅取得等資金の贈与)、相続税法第21条の3第1項第2号(教育費・生活費の非課税規定)
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事案に関与する専門職業家
不動産・相続 · FP実務倫理 / 専門職業家の役割 / 士業連携
設例において、甲土地への一般定期借地権設定によるマンション開発、既存建物の解体、前払地代等の税務処理、マンションの取得や子どもたち・孫への資金援助・相続対策などを円滑に進めるにあたり、本事案に関与する専門職業家としてどのような職種が考えられるか説明しなさい。
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解答
税理士(所得税の確定申告や贈与税・相続税の試算および申告)、司法書士(定期借地権設定登記やマンション取得に伴う所有権移転登記等の権利登記)、土地家屋調査士(土地の境界確定測量や建物滅失登記等の表示登記)、弁護士(定期借地権設定契約書等の法的確認や契約締結支援)、不動産鑑定士(甲土地の適正な価格や地代等の適正評価)などが挙げられる。
解説
FPは税理士法や司法書士法、弁護士法などの業法を守る必要があります。税務相談や登記申請、紛争解決などの独占業務は自分で行わず、それぞれの専門家と上手に連携して総合的な提案を行います。
解き方
- この事案で起こる実務手続き(契約、建物滅失、登記、測量、税務申告・試算、鑑定評価)を洗い出します。
- それぞれの手続きに対応する専門資格(税理士、司法書士、土地家屋調査士、弁護士、不動産鑑定士など)と役割を整理します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- FP自身が士業等の独占業務に抵触しないよう留意し、適切な専門家へ橋渡しをする役割を担うこと。
間違えやすいところ
- 司法書士(権利の登記)と土地家屋調査士(表示の登記・境界測量)の役割の違いを混同することです。
出題の前提:2026年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2026年6月6日実施)設例に基づく出題条件
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月6日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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