日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月15日 PartI PartII・PartII)の概要
相談者へのヒアリング情報およびFP自身による調査事項の整理
不動産・相続実務 · 不動産取引 / 顧客ヒアリング / 現地調査・権利関係確認
設例において、Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、提示された情報のほかに確認すべき情報について、①「Aさんから直接聞いて確認する情報」および②「FP自身が調べて確認する情報」に整理して答えなさい。
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解答
①Aさんから直接聞いて確認する情報:購入計画・資金調達(自己資金・借入)、土地の具体的な利用目的(事務所新設・二世帯住宅建築の詳細や時期)、家族(妻や長男夫妻)の意向・合意状況、取引希望時期や予算上限など。②FP自身が調べて確認する情報:乙土地・乙建物の公法上の規制やインフラ整備状況、登記事項証明書による権利関係(抵当権の残債状況や抹消の可否)、公図・地積測量図による境界確定の有無、乙土地・建物の適正な市場価格(周辺相場)、Cさんの親族関係や意思能力・判断能力に関する状況調査など。
解説
不動産の購入や開発の相談では、聞き取りと独自の調査の両方が必要です。まず、相談者本人の希望やお金の状況、家族の意向を直接聞きます。次に、物件の権利関係や法令上の制限、市場価格、相手方の意思能力などをFP自身が客観的に調べます。この二つをそろえることで、適切な助言ができます。
解き方
- 設例の前提を整理します。Aさんの事業状況、家族構成、乙土地の抵当権、Cさんの健康状態などを確認します。
- Aさん本人に確認する事項を洗い出します。利用計画、資金繰り、家族の意向などが対象です。
- FPが自分で調べる客観的な情報を整理します。登記、法令上の規制、境界、周辺相場、相手方の意思能力などです。公的機関や現地で確認します。
答えの内訳
- ①:Aさんの購入資金計画(自己資金・融資利用)、将来の利用計画(事務所新設・二世帯住宅の建築計画・時期)、家族(妻・長男夫妻)の賛同や将来の事業承継方針、希望する購入時期や予算上限の確認。
- 相談者本人の具体的な意向・ライフプランを把握するため、事務所や二世帯住宅をどのような規模・スケジュールで建築・利用する予定であるか、家族の同意が得られているか、会社資金と個人資金の区分や資金調達方法などを確認する必要があります。
- ②:乙土地・建物の登記事項(抵当権の被担保債権の残債額や抹消可能性)、境界確定・越境の有無、都市計画法・建築基準法等の公法上の規制、周辺の取引相場・適正価格、Cさんの判断能力および推定相続人等の親族関係の確認。
- 対象不動産の権利関係や法的制限を客観的に把握するため、登記簿上の4,000万円の抵当権が完済・抹消可能か、境界確定図があるか、道路付けや建蔽率・容積率等の建築制限、周辺相場との価格差、さらにCさんの意思能力や親族関係の有無をFP自身が調査する必要があります。
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覚えるポイント
- 直接聞く情報は顧客の意思・家族・資金、自身で調べる情報は物件の法的権利・相場・現況に大別して整理する。
間違えやすいところ
- 抵当権の抹消や境界の確認など、専門的な調査事項を、相談者への聞き取り事項と混同しないようにします。
出題の前提:ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)の設例面接における標準的なヒアリング・調査項目の評価基準に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
認知症が懸念される高齢者との不動産売買交渉におけるアドバイス
不動産・民法実務 · 意思能力 / 不動産売買 / 権利関係・抵当権抹消 / トラブル防止
設例において、乙土地の購入の話を進めるにあたって、Aさんに対してどのようなアドバイスをしますか。
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解答
個人間で安易に直接契約を結ばず、宅地建物取引業者を仲介に入れること。売主であるCさんの意思能力(判断能力)の有無を医師の診断等で確認し、必要に応じて成年後見制度の利用を検討すること。乙土地に設定された4,000万円の抵当権について金融機関等へ残債を確認し、売買代金決済時に確実に抵当権抹消登記ができる条件(同時履行)とすること。相場より安価なため贈与認定のリスクに留意すること。境界確定測量や隣接地との境界確認書を取り交わすこと。
解説
判断能力に不安のある高齢者との不動産取引は、慎重に進める必要があります。契約が無効になったり、あとで親族と争いになったりするおそれがあるからです。そのため、医師による判断能力の確認、成年後見制度の活用、仲介業者を入れること、抵当権の抹消の確保、適正な価格の維持が大切です。
解き方
- Cさんの認知機能と意思能力のリスクを洗い出します。契約が無効になることや、あとで紛争になることがあります。
- 乙土地にある4,000万円の抵当権について、代金の決済と引渡しを確実に進める方法を考えます。
- 相場より大きく安い価格で売ると、税務上のみなし贈与になるおそれがあるため、その点を検討します。
- これらのリスクを取り除く進め方を助言としてまとめます。宅建業者の仲介、専門家の関与、境界の確定、成年後見制度の利用などです。
覚えるポイント
- 意思能力を欠く法律行為は無効(民法3条の2)。親族とのトラブル防止や抵当権抹消の確実な履行が必須。
間違えやすいところ
- 「提示された5,000万円ですぐに契約してよい」と助言するのは重大な誤りです。契約が無効になるリスクや抵当権の事故を見落とすことになるからです。
出題の前提:民法(意思能力・売買・成年後見制度・抵当権)、宅地建物取引業法、相続税法(低額譲渡・みなし贈与)に基づく実務判断。
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
意思能力喪失時の売買契約の効力および成年後見制度を活用した不動産売買
不動産・民法 · 意思能力 / 成年後見制度 / 居住用不動産の処分許可
設例において、Cさんと売買契約を締結した後に、契約時点でCさんがすでに重度の認知症と診断されていたことが判明した場合の契約の効力、および重度の認知症と診断されていた場合にAさんが乙土地を購入するための具体的な手続き・方法について説明しなさい。
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解答
①売買契約締結時にCさんが意思能力を欠いていた場合、民法上その法律行為は無効となる。②家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて成年後見人を選任し、成年後見人がCさんを代理して売却する。なお、対象不動産はCさんの居住用不動産に該当するため、家庭裁判所の処分許可を得る必要がある。
解説
不動産の売買などの法律行為には、当事者の確かな意思能力が必要です。意思能力がない状態で結んだ契約は無効になります。判断能力が大きく衰えた人と取引するときは成年後見制度を使います。住まい用の不動産を売るには、家庭裁判所の許可が必要です。
解き方
- 契約のときに、当事者が重度の認知症で意思能力を欠いていた場合の効力を確認します。民法第3条の2により、その法律行為は無効です。
- 意思能力のない本人と取引するために、成年後見人の選任の申立てと、民法第859条の3による住まい用不動産の処分許可の要件を整理します。
答えの内訳
- ①:売買契約は無効となる(意思能力を欠く状態で締結された法律行為は無効)。
- 民法第3条の2の規定により、法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とされます。契約時に重度の認知症で意思能力がない状態であった場合、売買契約は成立せず無効となります。
- ②:法定後見制度(後見)を利用し、家庭裁判所により選任された成年後見人と売買契約を締結する。その際、居住用不動産の処分について家庭裁判所の許可を得る必要がある。
- 本人の意思能力がない場合は、親族や市町村長等の申立てにより家庭裁判所から後見開始の審判を受け、選任された成年後見人が本人を代理して契約を行います。また、本件の乙土地・乙建物は本人の自宅(居住用不動産)であるため、民法第859条の3に基づき、売却にあたって家庭裁判所の許可を得なければなりません。
覚えるポイント
- 意思能力のない者の法律行為は無効であること
- 成年後見人が居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必須であること
間違えやすいところ
- 「取り消せる」と「無効」を混同しないようにします。未成年者や保佐人の取消権と、意思能力がない場合の無効は別のものです。
- 住まい用の不動産なのに、家庭裁判所の処分許可が必要なことを見落とさないようにします。
出題の前提:2025年度(2026年2月15日実施)金融財政事情研究会 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 実技試験(資産相談業務)PartII 設例問3(民法第3条の2、民法第859条の3)
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
隣地取得に伴う土地利用価値および建築計画上のメリット
不動産 · 接道要件 / 二面接道 / 指定容積率 / 敷地統合
設例において、Aさんが隣地である乙土地および乙建物を購入することによって得られる具体的なメリットについて、敷地利用計画、道路条件、容積率制限等の観点から説明しなさい。
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解答
甲土地と乙土地を一体化(合計718㎡)することで、事務所新設や二世帯住宅の建築計画が容易になる。また、幅員4m市道のみに接道していた甲土地が幅員8m市道(北側)にも接する表裏二面道路となり、道路幅員による容積率制限が基準容積率(200%)までフルに活用可能になるほか、利便性や資産価値が大きく向上する。
解説
隣の土地を一緒に取得すると、面積が増えるだけではありません。幅の広い道路に接することができ、容積率の制限がゆるくなります。また、土地を有効に使った配置計画がしやすくなります。その結果、土地全体の利用価値と資産価値が大きく高まります。
解き方
- 甲土地だけで使う場合の接道幅員(東側4m)と、建築基準法第52条第2項による容積率の制限(4m×0.4=160%)を確認します。
- 乙土地(北側の幅員8m)を一緒に取得したときの道路条件の変化を整理します。二面接道となり、最大幅員8mを使えるので容積率は指定の200%まで広がります。あわせて、使いやすさと資産価値の向上も整理します。
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覚えるポイント
- 住居系地域における前面道路幅員による容積率制限係数は原則4/10(0.4)であること
- 2つ以上の道路に接する場合、幅員の最大値が道路幅員による容積率制限の基準となること
間違えやすいところ
- 「敷地が広くなる」ことだけを言って、北側8m市道に接することで容積率の制限がゆるむこと(160%から指定の200%へ)や、路線価(資産価値)の違いに触れないのは不十分です。
出題の前提:2025年度(2026年2月15日実施)金融財政事情研究会 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 実技試験(資産相談業務)PartII 設例問4(建築基準法第52条)
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産取引および成年後見手続きに関与する専門職業家
不動産・相続・FP倫理 · 専門職業家の役割 / 成年後見制度 / 不動産登記・測量・税務
設例において、認知症の疑いがある高齢者Cさんからの隣接地(乙土地・建物、抵当権設定あり)の購入検討、成年後見制度の利用、抵当権抹消、土地建物の売買・登記、事務所および二世帯住宅の新設等を円滑かつ適法に進めるにあたり、関与することが考えられる専門職業家とその主な役割について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
弁護士(成年後見申立て・法的助言)、司法書士(成年後見申立て書類作成、抵当権抹消・所有権移転登記)、医師(認知機能の診断書作成)、土地家屋調査士(境界確認・現況測量・滅失登記)、宅地建物取引士(価格査定・売買仲介)、税理士(譲渡所得・不動産取得税等の税務相談)、建築士(事務所・二世帯住宅の設計・建築確認)。
解説
FPは顧客の課題を全体としてとらえ、適切に助言します。ただ、士業などの独占業務にあたる行為を自分で行うことはできません。成年後見や登記は弁護士・司法書士、境界確定や表示登記は土地家屋調査士、不動産取引の仲介は宅地建物取引士が担当します。税務は税理士、建築設計は建築士、判断能力の医学的な判定は医師です。このように各専門家と連携して進めます。
解き方
- 設例の課題を洗い出します。意思能力の確認と成年後見、古い抵当権の抹消、隣地境界の確認、不動産売買契約、税金、建物の新築計画などです。
- 洗い出した課題ごとに、独占業務や専門知識を持つ専門家(士業や医師など)を対応させて整理します。
答えの内訳
- 1:弁護士・司法書士
- Cさんの成年後見等開始の審判申立て手続き(家庭裁判所への申立て代理または申立書類作成)、居住用不動産処分許可の取得、売買契約の法的有効性の確認、および乙土地に設定されている抵当権抹消登記や所有権移転登記を担当します。
- 2:医師(精神科等の専門医)
- 法定後見制度の開始審判申立てに必要なCさんの判断能力に関する診断書(主治医診断書・鑑定)を作成します。
- 3:土地家屋調査士
- 甲土地および乙土地の境界確認(確定測量)、境界標の設置、将来の建替えに伴う乙建物の滅失登記や新築建物の表題登記を担当します。
- 4:宅地建物取引士(不動産仲介会社)
- 乙土地・建物の適正価格の査定、重要事項説明書の作成・交付、売買契約書の作成および適正な不動産売買取引の媒介を担当します。
- 5:税理士
- 不動産売買に伴うCさんの譲渡所得税の特例適用や申告、およびAさんの不動産取得税や将来の固定資産税等の税務相談・申告を担当します。
- 6:建築士
- 甲土地と乙土地を一体利用した事務所の新設および二世帯住宅の建築プランの設計、建築確認申請などを担当します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- FP実技試験では各専門職業家(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、宅建士、税理士、建築士、医師等)の独占業務と連携の意義が頻出である。
- 高齢者の判断能力に疑義がある事案では、法定後見の申立てに関連して医師や司法書士・弁護士の関与が不可欠となる。
間違えやすいところ
- 司法書士(権利の登記や成年後見の書類作成)と、土地家屋調査士(表示の登記や境界測量)の役割を混同しやすいので注意します。
- 専門家の名前を並べるだけでは不十分です。設例の状況に合わせて、抵当権の抹消、境界の確認、新築の設計など、具体的な仕事と結びつけて説明する必要があります。
出題の前提:2025年度第3回ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務・2026年2月15日実施)PartII 設例
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月15日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月15日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

