日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客ヒアリングおよび調査・確認事項の整理
不動産・タックスプランニング・相続 · 顧客ヒアリング / 不動産管理会社設立 / 物件および権利関係の調査
設例において、Aさんに対して最適なアドバイスを実施するために追加で確認・収集すべき情報を、①「Aさんから直接聞いて確認する情報」と②「FP自身が調べて確認する情報」に分類して述べなさい。
解答・解説を表示
解答
①Aさんから直接聞く情報:賃貸経営の現状・将来方針、管理実務への長男Cさんや妻Bさんの関与意思・能力、生活費・資金需要、将来の資産承継方針等。②FP自身が調べる情報:賃貸物件の登記簿謄本・公図・現況、既存の管理委託契約(Y社)の内容、賃貸市場・周辺相場、類似法人の管理料水準等。
解説
法人を作って節税や所得分散を提案するときは、家族の意向などの主観的な情報と、登記や契約書・相場などの客観的な情報の両方を集めて調べる必要があります。どちらか一方だけでは、その提案が実行できるか、法律にかなっているかを正しく判断できないからです。
解き方
- 設例を読んで、家族の生活状況、賃貸物件の大きさ、提案されている法人の仕組みを整理します。
- お客様に直接聞かないと分からない情報を書き出します。家族の考えや、実際に仕事を手伝う体制、今後の方針などです。
- 登記など公的な書類、市場の調査、契約書から、FP自身が確かめるべき情報を書き出します。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:各賃貸物件の入居率・稼働状況・家賃滞納の有無、将来の賃貸経営方針・修繕計画、長男Cさんや妻BさんのZ社業務への従事実態や就労意思・管理実務能力、家族全員の生活費・保有金融資産状況、将来の資産承継(相続対策)に関するAさんの意向。
- 不動産管理会社(Z社)の活用が実効的であるかを判断するためには、Aさん自身の今後の経営意向のみならず、役員となる妻や長男が実際に不動産管理業務を行う意思や能力があるか、また家族全体のライフプランや将来の遺産分割方針をヒアリングして確認する必要があります。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:対象不動産の登記事項証明書・公図・地積測量図・建物図面、Y社との現行の管理委託契約書および管理業務の内訳・業務範囲、近隣同種物件の賃料相場および空室率、一般的な不動産管理方式における管理手数料の相場水準、法人の維持費用・税務申告負担。
- 現行の管理会社(Y社)との契約内容や業務分担を精査し、Z社が上乗せして徴収する管理手数料(年間650万円、家賃収入の約19%)が独立第三者間取引と比較して過大でないかを客観的な市場相場や契約書面等から検証する必要があります。
覚えるポイント
- ヒアリング情報は主観・意向・家族関係、独自調査情報は登記・契約書・市場相場に大別して整理する。
間違えやすいところ
- 登記簿の確認など、自分で調べるべき項目を「お客様に聞く項目」に混ぜてしまわないよう注意します。
出題の前提:2025年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務)Part II 設例・出題基準
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産管理会社を活用した所得税軽減の理由
タックスプランニング · 所得税の累進課税 / 所得分散効果 / 給与所得控除 / 基礎控除
対策前におけるAさん単独の所得税負担と比べ、対策後にAさん・妻Bさん・長男Cさんの3名が負担する所得税の合計額が減少する理由を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
累進課税下での所得分散により適用税率が低下すること、および妻Bさんと長男Cさんに役員報酬を支給することで各人の給与所得控除や基礎控除等の各種控除が適用され、世帯全体の課税対象所得が圧縮されるため。
解説
所得税は、もうけが増えるほど高い税率がかかる仕組み(超過累進税率)です。だから一人に集まった所得を、親族への給与などの形で法律に反しないように分けると、世帯全体の税率を下げられます。さらに給与所得控除などの各種控除も使えるため、税の負担を軽くできます。
解き方
- 対策の前と後で、それぞれの人の所得と、日本の所得税の仕組み(もうけが多いほど税率が上がること)を確認します。
- 所得を分けることで、Aさんにかかる税率が下がる仕組みを整理します。
- 役員報酬を受け取る妻と長男が、給与所得控除や基礎控除を使えるようになり、課税される所得が減る点を説明します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 所得税の軽減理由は「超過累進税率の緩和(所得分散)」と「給与所得控除等の各種控除の活用」の2大要素で論述する。
間違えやすいところ
- 法人税や経費が認められない話にそれて、問われている「所得税の合計が減る理由(税率の仕組みと控除)」を答え忘れないようにします。
出題の前提:所得税法(超過累進税率、給与所得控除、各種所得控除)および出題設例
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産管理業務の具体的内容
不動産 · 不動産管理業務 / 入居者管理業務 / 建物維持管理業務 / プロパティマネジメント
賃貸用不動産の運営および維持保全において実施される管理業務にはどのようなものがあるか、具体的な項目を挙げて説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
不動産の管理業務には、入居者募集・賃貸借契約の締結や更新・解約手続き、賃料等の請求・回収・滞納督促、入居者からの苦情・要望対応などの「入居者管理業務(ソフト面)」と、共用部の清掃、建物や敷地の巡回点検、消防用設備や受変電設備等の保守点検、退去時の原状回復工事の手配、長期修繕計画の策定・大規模修繕の監理などの「建物・設備維持管理業務(ハード面)」がある。
解説
不動産の管理業務は、入居者との契約やお金のやり取りをする「入居者管理業務(ソフト面)」と、建物や設備の清掃・点検・修繕をする「建物・設備維持管理業務(ハード面)」の二つに分けられます。管理会社に任せるときは、この二つを分けて考え、料金が仕事の内容に見合っているかを判断します。
解き方
- 入居者の募集、契約の締結・更新・解除、家賃の回収、苦情対応など、人や契約に関わる事務を整理します。
- 日常の清掃、定期点検、法律で決められた設備点検、退去時の原状回復工事、大規模修繕の計画など、建物を保つ仕事を整理します。
答えの内訳
- 入居者管理業務(事務・運営管理):入居者の募集・審査、賃貸借契約の締結・更新・解約手続き、賃料等の請求・回収・滞納督促、入居者からの苦情・トラブル対応などの業務。
- 賃貸経営における対人・契約関係を円滑に進めるためのソフト面の管理業務であり、入居者の募集から退去手続き、日常的な窓口対応全般を含みます。
- 建物・設備維持管理業務(物的保全管理):共用部分の日常清掃・定期清掃、建物や設備の巡回点検、消防設備・エレベーター等の定期保守点検、退去時の原状回復工事や修繕の手配・監理、長期修繕計画の立案などの業務。
- 賃貸物件自体の資産価値や安全性を維持するためのハード面の保全業務であり、法定点検の実施や中長期的な修繕計画の実行などが該当します。
覚えるポイント
- 不動産管理業務は入居者管理業務(ソフト面)と建物・設備維持管理業務(ハード面)の2つの側面から整理すること。
間違えやすいところ
- 清掃や修繕などのハード面だけを答えて、家賃の回収やトラブル対応などの入居者管理業務を書き忘れないようにします。
出題の前提:2025年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2026年2月14日)PartII 設例
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産管理会社への管理報酬と必要経費算入上の問題点
タックスプランニング · 不動産所得 / 必要経費の妥当性 / 不動産管理会社 / 管理委託方式 / 過大役員報酬・管理料の否認
長男Cさんが100%出資して設立する不動産管理会社(Z社)に、Aさんが年間650万円の管理報酬を支払い、Z社が従前の管理会社Y社に年間150万円で再委託するDさんの提案を実行した場合、Aさんの不動産所得の必要経費の計算上、どのような問題が生じるか説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
AさんがZ社に支払う管理報酬額(年間650万円)が、Z社の行う管理業務の実態に対して著しく高額(過大)であると税務署から判定された場合、社会通念上妥当と認められる金額を超える部分について、Aさんの不動産所得の必要経費への算入が否認されるリスクがある。
解説
所得税では、不動産所得の必要経費に入れられるのは、収入を得るために直接かかった費用などに限られます。同じ家族の管理会社に払う管理料が、相場や実際の仕事から大きくかけ離れて高いときは、社会通念上ふさわしいと認められる金額を超えた部分は必要経費として認められません。
解き方
- 家賃収入3,400万円に対して管理料が年650万円(約19%)であること、そして管理業務のほとんどをこれまで通りY社に年150万円で再委託している実態をつかみます。
- Z社が自分で行う仕事に対して管理報酬が高すぎると判断されると、税務署から適正額を超えた分の必要経費が認められないおそれがある、と考えます。
答えの内訳
- 管理報酬の過大判定と必要経費否認リスク:支払う管理報酬(年間650万円)がZ社の提供する管理業務の実態に見合っておらず過大であると税務署に判断された場合、適正水準を超える部分が必要経費として認められず否認されるリスクがある点。
- 家賃収入3,400万円に対する管理料650万円は約19%に達し、一般的な管理委託方式の相場(賃料収入の5%〜8%程度)を大きく超過しています。さらに実質的な管理業務の多くをY社へ年間150万円で再委託しているため、Z社の業務実態と対価の均衡を欠き、過大部分が否認される可能性が高いです。
- 同族会社を利用した租税回避と判定されるリスク:実態の伴わない管理報酬の計上を通じて所得税の累進税率負担を軽減させる所得移転(租税回避)とみなされ、税務調査において追徴課税等を受けるおそれがある点。
- 親族のみで構成される同族会社を利用し、実質的な対価性のない手数料を計上して所得を親から子・妻へ分散させていると認定されると、必要経費の否認に伴い過少申告加算税や延滞税が課されるおそれがあります。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 管理委託方式における適正な管理報酬相場は賃料の5%〜8%程度であり、実態を伴わない過大な報酬は必要経費否認のリスクがある点。
間違えやすいところ
- 法人を作って契約書を用意すれば、金額に関係なく払った管理報酬の全額が必要経費になると勘違いしないようにします。
出題の前提:所得税法第37条(必要経費)、所得税法第157条(同族会社等の行為又は計算の否認)
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産管理会社設立と関与する専門職業家
不動産・タックスプランニング · 不動産管理会社 / 専門職業家の役割 / 士業連携
Aさんは個人で所有する複数の賃貸共同住宅等の所得税負担軽減のため、長男Cさんが100%出資する不動産管理会社(Z社)の設立をコンサルタントから提案されている。本設例において、計画の検討・実行にあたり関与・連携すべき主な専門職業家とその担当業務について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
税理士(管理委託料の経費性の妥当性確認、法人税・所得税の申告業務等)、司法書士(不動産管理法人の設立登記等)、社会保険労務士(役員の社会保険加入手続き等)、弁護士(管理委託契約の適法性確認やトラブル対応等)、宅地建物取引業者(入居者募集や既存の管理業務の調整等)。
解説
FP(ファイナンシャル・プランナー)は、お客様の課題解決のために全体を見て助言します。ただし、税理士法や司法書士法などの法律により、ほかの資格の独占業務にあたる具体的な手続きの代行や専門的な判断はできません。そのため、不動産管理会社の設立や経費の計上、契約では、それぞれの分野の専門家と協力することが必要です。
解き方
- 設例の提案内容(法人の設立、管理委託料の支払い、役員報酬の支給、再委託契約)を整理し、必要な手続きを書き出します。
- 法人の設立登記、税務申告と妥当性の確認、社会保険の加入、契約書の適法性の確認など、それぞれの仕事に対応する資格や専門家を特定します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 不動産管理法人設立では税理士(税務)と司法書士(設立登記)が必須の連携相手となります。
- FPは業法に抵触しないよう、具体的書類作成や個別判断は各士業に委ねる必要があります。
間違えやすいところ
- FP自身が管理委託料の適正額を決めたり、登記の申請書類を作ったりすると、業法に違反になる点を忘れないようにします。
- 役員報酬を払うと必要な社会保険(健康保険・厚生年金)の手続きや、社労士の関与を忘れないようにします。
出題の前提:2025年度第3回FP技能検定1級実技試験(2026年2月14日実施)出題条件に基づく
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

