日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartI)の概要
遺言・代償分割・小規模宅地等の特例および相続手続に関する相談対応
資産相談業務 · 遺産分割 / 代償分割 / 小規模宅地等の特例 / 相続手続 / FP倫理
Aさん(60歳)は、母Bさん(85歳)の死亡(2025年12月)に伴い、自宅兼賃貸マンション(土地建物)、現預金、上場株式等の相続に直面している。母Bさんが遺した自筆証書遺言(マンションをすべてAさんに相続させる旨)の検認後、妹Cさん・弟Dさんとの間で、不動産はAさんが相続し、現預金・上場株式はCさん・Dさんが均等に相続、不足分はAさんが死亡保険金および自身所有の上場株式を代償財産として交付することで合意しつつある。上場株式を代償財産とする際の留意点や、今後の相続手続、税務上の特例等についてFPとして検討・助言すべき事項を整理する。
解答・解説を表示
解答
代償分割における代償財産(自己所有株式)交付時の譲渡所得課税の確認、小規模宅地等の特例の適用可否の検討、相続手続・税務申告のスケジュール管理、および士業等の専門家と連携した顧客本位の支援を提案する。
解説
相続の代償分割で、相続人が自分の現物財産(株式など)を渡すと、税務上は時価で売ったものとみなされ、譲渡所得税がかかります。なぜなら、本来の自分の財産を渡す行為は、お金に換えて渡したのと同じ扱いになるからです。また、区分所有登記のない自宅兼賃貸マンションの敷地は、住む部分と貸す部分の床面積の割合などに応じて、特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等に分けて判定する必要があります。
解き方
- 設例の相続財産・相続人関係・遺言の内容・相続人同士の合意内容、そして渡す予定の代償財産の種類を整理します。
- 自己所有株式を代償として渡すと税務上どうなるか(みなし譲渡課税)を押さえ、現金を使うなどの代わりの案を検討します。
- 自宅兼賃貸マンションの敷地に小規模宅地等の特例(相続税の評価を下げる制度)が使えるか、また按分の区分を確認します。
- 相続が始まった後の手続の期限(準確定申告は4か月、相続税の申告・納付は10か月など)を整理し、士業との連携と職業倫理に配慮した総合的な提案をまとめます。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:代償財産に自己所有株式を用いることによる譲渡所得税等の税務上の留意点、遺留分等に配慮した遺産分割協議書の作成、小規模宅地等の特例適用の可否と税額軽減の可能性、相続手続や申告等の期限・順序の不明点が挙げられる。
- Aさんが自己所有の上場株式を代償財産として交付する場合、時価による譲渡とみなされ譲渡所得課税が発生するおそれがあります。また、遺言書に記載のない預貯金・株式の分割や代償分割内容を確定させる遺産分割協議書の作成、マンション敷地への小規模宅地等の特例適用の検討、準確定申告や相続税申告等の期限管理が問題点となります。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:自己所有株式の譲渡所得課税リスクの検証と現金交付等の代替案検討、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等・特定居住用宅地等)の適用要件確認、遺産分割協議書の作成と相続登記、各種手続スケジュールの策定と専門家連携が考えられる。
- 代償財産に現物資産を用いると所得税課税が生じるため、受取保険金などの現金を充当する等の工夫を検討します。また、マンション敷地における特定居住用宅地等(Aさん居住部分等)や貸付事業用宅地等(賃貸部分)の適用を検討し、税理士や司法書士等の専門家と連携して適法・円滑に手続を進める方策を講じます。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:自己所有株式の代償交付に伴うみなし譲渡課税の説明と現金の活用検討、敷地全体に対する小規模宅地等の特例の併用適用の検証、および相続税申告・準確定申告等のスケジュール一覧化を提案する。
- 株式を交付すると含み益に対して譲渡所得税が課税されるため、取得費や時価を確認し、可能であれば死亡保険金等の現金での精算を優先して提案します。理由として、無用な納税負担を回避できる点が挙げられます。また、小規模宅地等の特例は8階空室部分の貸付予定や区分登記のない1棟物件の按分計算等に留意して正確に評価減を適用する必要があります。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:顧客第一主義、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)、コンプライアンス(税理士法や司法書士法等の士業法規制の遵守)の徹底が求められる。
- FPは常に顧客の利益を最優先に考え、知り得た個人情報や親族関係の秘密を保持しなければなりません。また、具体的税額の計算や税務申告書の作成は税理士に、相続登記申請は司法書士に委ねるなど、業法を遵守しながら顧客に対して丁寧に情報提供と意思決定支援を行う必要があります。
覚えるポイント
- 不動産以外の自己所有財産(株式等)を代償財産として交付すると譲渡所得課税の対象となる。
- 被相続人の準確定申告は相続開始を知った日の翌日から4か月以内、相続税の申告・納付は10か月以内に行う。
- 区分所有登記のない併用住宅マンション敷地は、利用区分ごとの面積按分により小規模宅地等の特例を判定する。
間違えやすいところ
- 代償分割で自分の有価証券や不動産を渡しても、非課税で移せると思い込むことです。
- 遺言書があっても、遺言で指定されていない残りの財産(預貯金・株式など)は遺産分割協議が要らないと思い込むことです。
出題の前提:2025年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2026年2月14日実施PartI)の出題条件に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月14日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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