日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月7日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客への最適な提案に必要な収集情報の整理
不動産 · 情報収集 / 面談ヒアリング / 権利・法規制調査
Aさんは、自宅(甲土地・甲建物)で妻Bさんと暮らしており、長女Cさん夫婦との完全分離型二世帯住宅の建替えを検討しているが、甲土地(135㎡)では希望する延床面積の建築が難しい。一方、Aさんは父親から相続した乙土地(270㎡)を所有しており、Dさんに普通借地権として賃貸している。Dさんは高齢のため店舗兼住宅を畳んで借地権を売却し、近隣へ移転することを希望している。Aさんは乙土地に二世帯住宅を建てるため借地権の買取りを考えたが、買取り資金がないため甲土地の売却などで悩んでいる。Aさんに対して最適なアドバイスをするために、示された情報のほかに必要な情報について、①Aさんから直接聞いて確認する情報、②FP自身が調べて確認する情報、に整理して答えなさい。
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解答
①Aさんから直接確認する情報:二世帯住宅建築に関する具体的な希望や予算の柔軟性、Cさん夫婦の意向や自己資金・借入可能額、甲土地の売却に関する意向、Dさんとの交渉経緯や意向、将来の相続に関する考え方など。②FP自身が調べて確認する情報:甲土地・乙土地の登記事項証明書等の権利関係や確定測量図の有無、公法上の建築規制(斜線制限・日影規制等)、甲土地の実勢価格および乙土地の借地権・底地の市場評価、現行の借地契約書の内容など。
解説
顧客への最適な提案には、顧客ヒアリングと物件調査の両方が欠かせません。お客様の希望や資金力は本人に聞くしかなく、権利関係や法令上の規制は公的資料や現地調査でしか正確に分からないからです。
解き方
- お客様に直接聞く項目を整理します。家族のライフプラン、資金の余力、土地を処分・活用する考え、関係者との交渉状況などです。
- FP自身が調べる項目を整理します。甲・乙土地の権利関係、境界、法規制、実勢相場、借地契約の条件などです。
答えの内訳
- ①:Aさん世帯・Cさん世帯の資産状況(預貯金、収入、住宅ローン借入可能額等)、二世帯住宅の間取りや予算に関する柔軟性・具体的要望、甲土地の売却に対する抵抗感や意向、Dさんとのこれまでの交渉状況や関係性、将来の相続に関する希望や家族の合意状況など。
- 顧客本人の主観的な希望や家族間の意思統一状況、資金調達余力は、直接ヒアリングを行って確認する必要があります。
- ②:甲土地・乙土地の登記事項証明書および公図・地積測量図(権利関係・境界確定の有無)、現地調査および役所調査による公法上の規制(接道状況、用途地域、建蔽率・容積率、斜線制限、日影規制等)、甲土地の売却可能見込額(実勢価格)および譲渡税額の試算、乙土地の借地契約書の内容(地代、残存期間、条件等)、周辺の不動産相場など。
- 客観的な法的要件、現地の物理的状況、市場価格等は、登記記録や行政窓口での調査、実地調査等を通じてFP自身が収集・精査します。
覚えるポイント
- ヒアリング事項は「顧客の意向・資金・家族関係」、客観的調査事項は「法規制・権利関係・相場価格」に大別して整理します。
間違えやすいところ
- お客様に聞けば分かることと、登記などで専門的に調べるべき客観的なことを混同しないように注意します。
出題の前提:2026年2月実施の1級実技試験(資産相談業務)の出題基準による。
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
店舗併用住宅および借地権売却時の譲渡所得の課税関係
タックスプランニング · 長期譲渡所得 / 店舗併用住宅 / 居住用財産の3,000万円特別控除 / 譲渡費用
Dさんが乙建物(店舗兼用住宅:1階100㎡[店舗50㎡、住居50㎡]、2階50㎡[住居]、築60年)と借地権を第三者に売却する場合における、譲渡所得の課税関係について説明しなさい。
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解答
借地権および建物の譲渡所得は分離課税の対象となり、所有期間が5年を超えるため「長期譲渡所得」に該当する。譲渡所得の金額は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」で計算し、地主に支払う借地権譲渡承諾料や建替え承諾料等は譲渡費用となる。また、乙建物は店舗兼用住宅であるため、居住用部分(延床面積150㎡中100㎡=3分の2)に相当する譲渡益について「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」や「10年超所有軽減税率の特例」等の適用を受けられる。
解説
土地(借地権を含む)や建物を売ったときの所得は、申告分離課税の譲渡所得になります。所有期間の長さで長期か短期に分かれるからです。また、店舗兼用住宅の居住用特例は、原則として住んでいた部分にだけ按分して適用されます。
解き方
- 所有期間を確認し、5年を超えているため長期譲渡所得(申告分離課税)にあたると判定します。
- 譲渡益の計算では、地主に払う借地権譲渡承諾料や建替え承諾料などが譲渡費用に含まれることを確認します。
- 乙建物の床面積から居住用の割合(100㎡÷150㎡=2/3)を求めます。3,000万円特別控除などの居住用財産の特例は、居住用部分に按分して適用されると整理します。
答えの内訳
- 譲渡所得の区分と計算:所有期間5年超の「長期譲渡所得」として申告分離課税となる。譲渡価額から取得費と譲渡費用を控除して譲渡所得を算出する。地主に支払う借地権譲渡承諾料(名義書換料)等は譲渡費用に算入される。
- 借地権および建物は60年間保有しているため長期譲渡所得に該当し、譲渡に際して地主に支払う承諾料等は譲渡費用として控除されます。
- 居住用財産の特例の適用:乙建物は延床面積150㎡のうち居住用部分が100㎡(3分の2)の店舗併用住宅であるため、居住用部分に対応する譲渡益についてのみ「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」や「10年超所有軽減税率」等の適用が可能となる(居住用割合がおおむね90%未満であるため按分適用)。
- 店舗併用住宅の場合、居住用部分の床面積割合がおおむね90%未満のときは、居住用部分のみを対象として3,000万円特別控除等が適用されます。
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覚えるポイント
- 店舗併用住宅の居住用特例は、居住用割合が90%以上の場合は全体に適用可能ですが、90%未満の場合は居住用部分のみに按分適用されます。
間違えやすいところ
- 借地権を売るときに地主へ払う譲渡承諾料は、取得費と間違えず、売るための「譲渡費用」として差し引く点に注意します。
出題の前提:2026年2月実施の1級実技試験(資産相談業務)の出題基準による。
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
借地権・底地の整理と甲土地・乙土地の有効活用アドバイス
不動産 · 借地権の整理 / 土地の有効活用 / 固定資産の交換の特例
設例に基づき、本件の解決方法としてFPがAさんに対して行うべきアドバイスの要点を答えなさい。
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解答
Aさんが所有する甲土地をDさんに譲渡(売却または一部交換)し、その対価でDさんから乙土地の借地権を買い取ることで、Aさんは乙土地を完全所有地化して希望の二世帯住宅を建築し、Dさんは甲土地に希望の住宅を建築できるようにする解決策を提案する。
解説
底地と借地権が混ざった土地は、権利関係を整理して完全所有権にすると有効活用しやすくなります。地主と借地人の両方に建替えや住み替えの希望があるときは、お互いの希望規模や立地を見比べ、不動産の売買や交換でまとめて解決するのが実務上とても有効です。
解き方
- 甲土地(135㎡)と乙土地(270㎡)の広さと建蔽率(50%)から、AさんとDさんの住宅プランがどちらの敷地で実現できるか比べます。
- Dさんの希望規模(1階66㎡)は甲土地で足りること、Aさんの希望規模(1階110㎡)には乙土地が必要なことを確認します。そして、甲土地の売却・交換の資金で乙土地の借地権を買い取る方法を組み立てます。
答えの内訳
- 1:甲土地のDさんへの売却と乙土地借地権の買取り(または等価交換)
- Dさんは近隣で土地を購入して1階66㎡の小規模な住宅建築を希望しており、建蔽率50%の甲土地(135㎡、建築面積上限67.5㎡)はDさんの希望に合致する。Aさんが甲土地をDさんに売却し、その代金でDさんの乙土地借地権を買い取る(または甲土地と乙土地借地権を交換する)ことで双方の希望が実現する。
- 2:乙土地における二世帯住宅の建築実現
- Aさん家族の希望する二世帯住宅は1階が110㎡であり、第一種低層住居専用地域(指定建蔽率50%)では最低220㎡の敷地が必要となる。借地権を買い取って乙土地(270㎡)を完全所有地とすれば、建蔽率上限が135㎡となり希望の間取りの二世帯住宅が建築可能となる。
- 3:税制上の特例活用の検討
- 甲土地を売却する場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」の適用を検討し、交換を行う場合は「固定資産の交換の特例」の適用要件(同一用途への供用等)を満たすか慎重に検討する。
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覚えるポイント
- 第一種低層住居専用地域(建蔽率50%)で1階110㎡を建てるには220㎡以上の敷地が必要である点を見落とさないこと。
間違えやすいところ
- 乙土地を底地と借地権の割合で単純に分筆して等価交換すると、Aさんの土地は約108㎡になり、希望の二世帯住宅が建てられません。安易に分筆等価交換だけを提案しないようにします。
出題の前提:2025年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務)PartII設例・不動産関連法令および税制
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
完全分離型二世帯住宅の登記方法と相続税小規模宅地等の特例
相続・事業承継 · 二世帯住宅 / 区分所有登記 / 共有登記 / 小規模宅地等の特例 / 特定居住用宅地等
設例に基づき、Aさんと長女Cさん夫婦が完全分離型の二世帯住宅を建てた場合、その登記をするにあたって将来の相続税の課税上注意すべき点について答えなさい。
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解答
建物を「区分所有登記」してしまうと、長女夫婦が居住する部分に対応する敷地について将来の相続税における小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)が適用できなくなるため、「共有名義(共有登記)」またはAさんの単独所有で登記する必要がある。
解説
完全分離型の二世帯住宅でも、1棟の建物として共有登記か親の単独所有にしていれば、同居親族として敷地全体(上限330㎡まで)に相続税の小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等:80%減額)を使えます。ところが、構造上独立した住戸として区分所有登記にすると、親が住む部分しか特例の対象になりません。
解き方
- 二世帯住宅の登記方法には、区分所有登記と共有登記があります。それぞれの違いを整理します。
- 小規模宅地等の特例で、区分所有登記だと特定居住用宅地等の対象面積が制限されるという不利益を確認します。そのうえで、適切な共有登記と持分割合の決め方を導きます。
答えの内訳
- 1:区分所有登記を避けて共有登記(または単独所有)とすること
- 完全分離型二世帯住宅を親世帯部分と子世帯部分で「区分所有登記」すると、同居親族とみなされず、長女夫婦の区分所有部分に対応する敷地割合について小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受けられなくなるため、建物全体を資金拠出割合に応じた共有名義(または単独名義)で登記する必要がある。
- 2:建築資金の拠出割合に応じた共有持分登記とすること
- 実際の建築資金の負担割合(Aさん3,000万円、Cさん夫婦3,000万円)と登記上の持分割合を一致させないと、当事者間で贈与があったものとみなされ贈与税が課されるリスクがあるため注意を要する。
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覚えるポイント
- 二世帯住宅の小規模宅地等の特例適用では「区分所有登記はNG、共有登記はOK」が鉄則である。
間違えやすいところ
- 完全分離型だからといって、独立した住戸として安易に区分所有登記をすると、相続税の特例で大きな不利益を受けます。注意しましょう。
出題の前提:租税特別措置法第69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事案に関与する専門職業家
不動産・相続 · FP実務 / 専門職業家の役割 / 業法遵守
【設例】に基づく以下の質問について答えなさい。 「5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。」
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解答
本件に関与する専門職業家としては、土地家屋調査士(境界確定・分筆・建物表題登記)、司法書士(所有権移転登記・保存登記・抵当権設定登記)、税理士(譲渡所得や等価交換、将来の相続税・小規模宅地特例に関する税務相談・申告)、宅地建物取引業者(甲土地等の売買・媒介)、建築士・ハウスメーカー(二世帯住宅等の設計・建築施工)、不動産鑑定士(底地・借地権等の適正価格評価)などが挙げられる。
解説
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、税理士法・司法書士法・土地家屋調査士法・宅地建物取引業法・弁護士法などの関連業法を守らなければなりません。資格のない業務の判断や手続きは、自分ではできないからです。お客様の課題を解決するには、各分野の専門家と上手に連携することが欠かせません。
解き方
- この事例で必要な課題を洗い出します。土地の分筆・測量、建物の新築・解体、所有権や抵当権の登記、税務相談や特例の適用、不動産の売買仲介などです。
- それぞれの業務を担当する専門家(土地家屋調査士、司法書士、税理士、宅建業者、建築士、不動産鑑定士など)と役割を整理して答えます。
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覚えるポイント
- FP実技面接(Part II)の定番質問であり、「どの士業が」「どのような業務を担当するか」をセットで答える。
間違えやすいところ
- 士業の名前を並べるだけでなく、この事例に合わせた具体的な役割を述べないと、減点されやすくなります。
出題の前提:2025年度第3回(2026年2月7日実施)金融財政事情研究会 1級FP技能検定 実技試験(資産相談業務)Part II 設例・質問事項5
出典:金融財政事情研究会『2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月7日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年2月 1級 実技(資産相談業務・2月7日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

