日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2025年9月 1級 実技(資産相談業務・10月4日 PartI PartII・PartI)の概要
再婚家庭における資産承継・相続対策とFPの職業倫理
相続・事業承継 · 養子縁組 / 遺言書の作成 / 遺留分への配慮 / 小規模宅地等の特例 / 暦年課税贈与 / FPの職業倫理
Aさん(70歳)は不動産賃貸業を営み、現預金や自宅、賃貸不動産など計2億5,000万円の資産を有している。Aさんには前妻との間に実子Cさんがいるが、後妻Bさんとの折り合いが悪く疎遠である。一方、妻Bさんの連れ子であるDさん(養子縁組未実施)およびその家族と同居しており、関係は良好である。AさんはDさんに財産を残したいと考えており、またDさんは将来も自宅に住み続けられるか不安を抱いている。Aさんは当面の相続対策としてDさんへの毎年110万円の暦年課税贈与を検討している。本設例における問題点、解決策・提案内容、その留意点、およびFPの職業倫理について検討しなさい。
解答・解説を表示
解答
1. Dさんに相続権がないこと、同居自宅の居住継続への不安、実子Cさんとの遺留分トラブルリスク、月極駐車場の小規模宅地等の特例適用の不可など。 2. AさんとDさんの普通養子縁組、公正証書遺言の作成、Dさんや孫への生前贈与、駐車場の舗装整備等による特例適用要件充足の検討など。 3. 養子縁組と公正証書遺言の作成を優先提案。実子Cさんの遺留分への配慮や、区分所有登記のない二世帯住宅における小規模宅地等の特例の適用関係に留意する。 4. 顧客利益の最優先、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント、他士業との連携とコンプライアンス(弁護士法・税理士法等の遵守)の徹底。
解説
相続対策では、家族の続柄ごとに法律上の立場が違う点をまず押さえることが大切です。養子縁組や遺言を使えば、希望する人に財産を残せます。その一方で、他の相続人の遺留分(最低限もらえる取り分)を侵さない配慮や、小規模宅地等の特例などの税制面の検討も必要です。
解き方
- 家族の形(法定相続人の範囲、養子縁組の有無、実子と連れ子の関係)と、持っている財産の中身を正しくつかんで整理します。
- 相続権のない同居家族が住み続けられるようにする方法(養子縁組・遺言)と、疎遠な実子の遺留分への配慮策を整理します。
- 不動産の使われ方(区分所有登記のない二世帯住宅、更地の青空駐車場)を確認し、小規模宅地等の特例が使えるかどうかと、その対策を検討します。
- FPの職業倫理(お客様の利益を最優先、守秘義務、十分な説明と同意、士業法の遵守)にそった進め方をまとめます。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:(1)妻Bさんの連れ子であるDさんには法定相続権がないため、何もしなければAさんの財産を相続できない。(2)二世帯住宅に区分所有登記はないものの、将来Aさんや妻Bさんが亡くなった際、Dさん家族が自宅に居住継続できる法的権利が不安定である。(3)実子Cさんと妻Bさん・Dさん家族との関係が疎遠であり、遺産分割を巡って紛争(争族)や遺留分侵害額請求が発生するリスクが高い。(4)更地にロープを張っただけの青空駐車場は構築物がないため、現状では小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の対象外となっている。(5)Dさんへの暦年贈与について、定期贈与とみなされるリスクや生前贈与加算の対象となる点への理解が必要である。
- 妻の連れ子は養子縁組をしない限り法定相続人にならず、遺産分割協議にも参加できません。また、実子Cさんは法定相続人として遺留分を有しているため、Dさんへ財産を寄せる際には感情的対立や法的紛争が生じやすい構造にあります。さらに、土地の有効活用面では、自走式アスファルト舗装等の構築物がない青空駐車場は税法上の貸付事業用宅地等に該当せず評価減が使えないという財産上の問題も抱えています。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:(1)AさんとDさんとの普通養子縁組の実施(Dさんに法定相続権の付与、基礎控除額および生命保険非課税限度額の増加)。(2)公正証書遺言の作成(Dさんに自宅敷地・建物を取得させ、居住を安定確保する)。(3)実子Cさんへの遺留分に配慮した財産配分(金融資産等の指定や生命保険の活用)。(4)月極駐車場へのアスファルト舗装等の設備投資を行い、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の適用要件を満たす。(5)暦年贈与の適切な実施(都度贈与契約書の作成、銀行振込、贈与税申告の励行)や孫への教育資金贈与等の検討。
- 養子縁組を行うことでDさんは直系卑属となり法定相続人となるため、相続権が得られるだけでなく基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の枠も拡大します。遺言書の作成により居住不動産を確実にDさんに取得させ、かつ実子Cさんの遺留分相当額の現預金等をCさんに承継させることで争いを防止できます。また、青空駐車場にアスファルト等の構築物を設置することで貸付事業用宅地等としての評価減(200㎡まで50%減額)を活用可能にします。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案内容】 AさんとDさんの「普通養子縁組」の締結と「公正証書遺言の作成」を最優先で提案する。 【理由】 Dさんに法的相続権を与えて自宅の権利を確実に承継させ、生活の基盤と安心を確立するため。 【留意点】 ①実子Cさんの遺留分を侵害しない遺言内容とすること(侵害する場合は代償金の準備等が必要)。 ②二世帯住宅は区分所有登記がされていないため、同居親族等として小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用要件(生計別でも建物構造上全体に適用可能かどうかの確認、申告期限までの居住・所有継続要件等)を精査すること。 ③養子縁組により基礎控除や生命保険非課税枠が1人分増えるが、相続税の租税回避とみなされない実態の確認が必要であること。
- 区分所有登記がされていない二世帯住宅の場合、敷地全体について同居親族等として特定居住用宅地等の適用を受けられる余地があります(要件の充足が必要)。ただし、連れ子を養子に迎えて遺贈・相続させる際は、実子Cさんの感情面や遺留分(配偶者・子が相続人の場合は法定相続分の半分)への配慮が不可欠です。遺留分侵害額請求がなされると金銭支払義務が生じるため、代償交付金用の金融資産の確保・指定が重要となります。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:FPは次の職業倫理を遵守して業務を行う必要がある。 (1)顧客利益の最優先:Aさん一家の生活安定と希望を最優先に考えたプランニングを行う。 (2)守秘義務の遵守:家族関係や詳細な資産状況などの個人情報を厳格に管理し、外部に漏洩させない。 (3)インフォームド・コンセント:提案内容のメリット・デメリット、リスクや費用を十分に説明し、顧客の理解と同意を得る。 (4)コンプライアンスの徹底と関連士業との連携:具体的な税額計算や税務書類の作成は税理士、遺言書の作成支援・登記は弁護士や司法書士と連携し、税理士法・弁護士法などの法令に抵触しないよう自らの職域制限を遵守する。
- FP業務においては、顧客のプライバシーや利益を尊重するとともに、士業独占業務(弁護士法72条の非弁行為禁止、税理士法52条の税務相談・申告書作成代行の禁止など)の境界を明確に守り、専門家ネットワークを適切にコーディネートする姿勢が求められます。

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覚えるポイント
- 連れ子は養子縁組をしなければ法定相続人にならず、遺留分も有しない。
- 更地にロープを張っただけの青空駐車場は構築物がないため貸付事業用宅地等の特例対象外となる。
- 非区分所有の二世帯住宅は、同居親族が生計別であっても特定居住用宅地等の特例対象になり得る。
間違えやすいところ
- 連れ子と同居していても、養子縁組をしていなければ、法定相続人として基礎控除や生命保険の非課税枠に数えることはできません。
- 青空駐車場のままでも貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例が使える、と間違えやすいです(アスファルトなどの構築物が必要です)。
出題の前提:2025年10月4日実施のFP技能検定1級実技試験(資産相談業務)の出題条件および施行中の民法・相続税法に基づきます。
出典:金融財政事情研究会『2025年9月 1級 実技(資産相談業務・10月4日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2025年9月 1級 実技(資産相談業務・10月4日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2025年9月 1級 実技(資産相談業務・10月4日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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