本文へ移動

FP技能検定 · 学習ガイド

2025年9月 1級 実技(資産相談業務・9月27日 PartI PartII・PartI)の問題・解答解説

日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。

2025年9月 1級 実技(資産相談業務・9月27日 PartI PartII・PartI)の概要
30:00

問題番号から選ぶ

非上場株式の承継対策と遺産分割・争族対策

資産相談業務 · 事業承継 / 非上場株式の評価 / 遺産分割対策 / 遺留分対策 / 事業承継税制 / FPの職業倫理

Aさん(71歳)は食料品製造業を営むX株式会社(非上場企業、大会社区分)の代表取締役であり、長男Cさんへの事業承継および資産承継について検討している。以下の条件を踏まえ、「検討のポイント」に示された各項目(相談内容と問題点、解決策、優先提案とその理由・留意点、FPの職業倫理)について説明しなさい。 【前提条件】 ・親族関係:妻Bさん(68歳)、長男Cさん(44歳・専務取締役)、二男Dさん(39歳・会社員)。 ・居住状況:Aさん夫婦および長男Cさん家族は二世帯住宅で同居。二男Dさんは賃貸マンション居住。 ・親族関係の課題:二男Dさんは長男Cさんと不仲であり、相当額の相続分を求めている。 ・所有資産(計6億5,000万円):現預金1億円、X社株式2億円(10万株・100%保有)、自宅土地1億5,000万円(360㎡)・建物5,000万円、X社本社土地1億円(400㎡)・建物5,000万円。相続税額(特例等適用前)は約1億9,500万円。 ・X社の状況:大会社(類似業種比準価額2,000円/株、純資産価額5,000円/株)。2期連続赤字見込み(前期▲1,000万円、今期▲約300万円)。毎期配当25円/株を実施中。内部留保・余剰資金(3億円)は潤沢。 ・懸念事項:配当をゼロにした場合の株式評価上の影響、自社株の円滑な移転手法、遺産分割争いによる未分割状態の回避。

解答・解説を表示

解答

顧客の相談・問題点の整理、自社株評価・遺産分割・納税資金対策の提示、遺言書作成や事業承継税制等の具体的提案と留意点の検討、およびFP職業倫理の遵守。

解説

非上場株式の相続税評価では、大会社で類似業種比準価額を使えても、配当・利益・純資産のうち2つがゼロだと「比準要素数1の会社」となり、純資産価額による評価(または比準価額に0.25を乗じる方式)が強制されて評価額が大きく上がります。また同族企業の事業承継では、事業用資産を後継者に集めつつ、後継者でない人の遺留分にも配慮する遺産分割対策が欠かせません。

解き方

  1. 設例の現状を分析し、自社株の評価要因(大会社・配当の有無・赤字状況)と相続人どうしの関係(長男と二男の不仲)から、ひそむリスクを洗い出します。
  2. 無配にして比準要素数1の会社になるリスクを避ける方法と、自社株を移す方法(事業承継税制、退職金支給による株価引き下げ)を整理します。
  3. 争族による未分割申告を防ぐ遺言の作成と、遺留分対策(代償金の用意、民法特例)を具体策としてまとめ、留意点もそえて顧客への提案方針を決めます。
  4. FPとして守るべき倫理綱領と、士業との連携に関する業法規制(税理士法、弁護士法など)を確認します。

小問ごとの答え

小問 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①長男Cさんへの円滑な事業承継と自社株式の移転手法の選択、②無配転落によるX社株式の比準要素数1の会社等への判定リスク、③長男Cさんと二男Dさんの不仲に伴う遺産分割争いおよび遺留分侵害リスク、④遺産未分割による配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例適用の制約、⑤高額な相続税(約1億9,500万円)に対する納税資金の確保および役員退職金の活用可能性。
X社は2期連続赤字見込みであり、利益金額がゼロ以下となるなかで配当もゼロ(無配)にすると、比準3要素(配当・利益・純資産)のうち2要素がゼロまたは直前2年間の実績等により「比準要素数1の会社(または比準要素数0の会社)」に該当し、割高な純資産価額(5,000円/株)で評価されるおそれがあります。また、二男Dさんは長男Cさんと折り合いが悪く法定相続分相当の権利主張が予想されるため、遺産分割協議が難航して申告期限までに分割できない場合、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が当初適用できず多額の納税資金が必要になる点が深刻な問題点です。
小問 それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①配当を少額でも継続することによる「比準要素数1の会社」該当の回避と株価引き下げ対策、②法人版事業承継税制(特例措置)や暦年課税・相続時精算課税制度を活用した生前贈与、③Aさんの役員退職金支給による株価引き下げおよび納税資金確保、④公正証書遺言の作成による事業用資産(株式・本社不動産)の長男Cさんへの集中と二男Dさんへの配慮、⑤代償分割のための生命保険の活用や遺留分に関する民法特例(除外合意・固定合意)の検討。
比準要素数1の会社に該当することを防ぐため、安定的な少額配当を継続して類似業種比準価額(2,000円/株)を適用可能な状態に維持します。さらに退職金の支給によって一時的に株価を引き下げたうえで後継者への贈与・譲渡を行うか、特例承継計画を策定して法人版事業承継税制の特例措置(贈与税・相続税の100%納税猶予)の適用を検討します。また、遺産分割対策としては遺言書の作成が不可欠であり、あわせて遺留分対策として代償資金の準備(生命保険活用)や民法の除外合意・固定合意を模索します。
小問 それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案内容】 公正証書遺言の作成と少額配当の継続、および役員退職金を活用した株式承継。 【理由・留意点】 争族による会社の経営混乱・未分割申告を避けるため、X社株式および本社土地建物を長男Cさんに確実に相続させる遺言書を作成する。その際、二男Dさんの遺留分侵害額請求を回避できるよう、現預金等の配分や長男受取人の生命保険による代償資金手当てを行う。また無配化を避け配当を維持して株価の急騰を防ぎ、Aさんの勇退時には適正額の役員退職金を支給して株価を引き下げたうえで株式を承継させる。税務上の損金算入限度額や事業承継税制の認定取消リスクに留意する。
長男と二男の不仲が明白であるため、遺言書の作成が最優先課題です。事業用資産(株式・本社土地建物)が長男に渡らないと会社経営が成り立たなくなるため遺言で指定し、二男には預貯金等を相続させるか代償交付金を支払う設計とします。また安易な無配化は株式評価が類似業種比準価額(2,000円)から純資産価額(5,000円)中心の評価へと大幅に跳ね上がる原因になるため、少額でも配当を維持するよう強く指導する必要があります。
小問 FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:①顧客第一主義(顧客の利益と意思の最優先)、②守秘義務の徹底、③法令遵守(コンプライアンス遵守)、④説明義務・インフォームドコンセント、⑤能力開発・継続教育の維持。具体的には、弁護士法に抵触する具体的な紛争仲裁や遺産分割交渉の代理を行わず弁護士と連携し、税理士法に抵触する個別具体的な税額計算や申告書作成は提携税理士と協働すること。
ファイナンシャル・プランナーは顧客の真の希望を引き出し最善の提案を行う義務があります。特に親族間の感情的対立を含む資産承継では、秘密保持義務と倫理観が強く求められます。また、非上場株式の評価や税制特例の適用、遺言書の起案・登記・係争については、税理士・司法書士・弁護士等の専門家と適切に連携し、業法違反とならないよう役割分担を明確にして業務を進める必要があります。

覚えるポイント

  • 比準3要素(配当・利益・純資産)のうち2つがゼロになると「比準要素数1の会社」となり割高な純資産価額等で評価される。
  • 遺産が申告期限までに未分割の場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は原則として適用できない。
  • 事業承継における紛争予防には公正証書遺言の作成と、生命保険を活用した遺留分侵害額請求への代償資金対策が極めて有効である。

間違えやすいところ

  • 赤字だからといって配当をやめると(無配にすると)、利益と配当の2つがゼロになり、類似業種比準価額が使えず株価が急に上がってしまう点を見落とすことです。
  • 遺言さえ書けば十分と考え、二男の遺留分侵害額請求権への配慮(代償交付金や受取人を指定した生命保険などの手当て)を怠ることです。

出題の前提:2025年9月27日実施のファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)の出題条件に基づく。

出典:金融財政事情研究会『2025年9月 1級 実技(資産相談業務・9月27日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)

2025年9月 1級 実技(資産相談業務・9月27日 PartI PartII・PartI)

参照した公式資料

金融財政事情研究会が公開した2025年9月 1級 実技(資産相談業務・9月27日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。

金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。