日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartII)の概要
等価交換事業および収用資金の活用に向けた必要情報の整理
不動産 · 等価交換方式 / 顧客ヒアリング / 権利関係・公法規制調査 / 収用の税務
定年退職したAさんは、父親から相続した甲土地(地積360㎡、貸駐車場)を所有しており、今年3月に北側120㎡が道路収用され対価補償金4,000万円を受領した。隣地(乙土地1,160㎡)所有者BさんとともにディベロッパーX社から等価交換によるマンション建設の提案を受けている。長男Cさんは分譲マンションへの住替えを希望している。Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、示された情報のほかにどのような情報が必要か、Aさんから直接聞いて確認する情報およびFP自身が調べて確認する情報に整理して答えなさい。
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解答
①Aさんから直接確認する情報:甲土地活用の意向、取得希望住戸の利用目的(自宅・賃貸・長男居住・贈与等)、長男家族の意向と資金計画、保有資産状況と定年後の生活設計、貸駐車場の契約内容(中途解約条件等)、将来の相続対策や家族の意向。②FP自身が調べる情報:甲・乙土地の権利関係(登記記録上の抵当権・用益権等)、都市計画法・建築基準法の公法規制(用途地域、指定容積率・建蔽率、斜線制限、角地指定要件)、土地の境界確定状況、周辺賃貸・分譲市場動向、X社の提案条件(事業収支・管理計画等)の妥当性、収用の特別控除等の税務特例の適用要件。
解説
等価交換(土地とマンションなどを交換する取引)を提案するときは、まず関係者の希望をくわしく聞き、法律や制度も自分で調べることが大切です。なぜなら、権利関係や公法規制(建物の建て方についての法律上のルール)、周辺の市場相場、使える税の特例によって、取引の良し悪しが大きく変わるからです。聞き取りだけで決めず、客観的な資料をそろえて判断の土台にします。
解き方
- 問題文から、すでに分かっている条件(家族構成、土地の広さ、収用の補償金、X社の提案の概要など)を整理します。
- 事業を行うかの判断・税務の選択・交渉に必要な「Aさんに直接聞く情報」と、自分で調べる「法律や技術の情報」に分けます。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:・甲土地の活用に関する将来の希望や意向(資産保有、売却、資産組替えなど) ・等価交換で取得希望の4戸の具体的な利用計画(長男Cさんへの居住用贈与、賃貸経営、自宅としての利用など) ・長男Cさんの住替え計画、家族の希望、自己資金や住宅取得等資金贈与の希望の有無 ・Aさん夫婦の生活設計、保有金融資産の総額、年金収入等の資金繰り ・現在の貸駐車場契約の状況(賃貸借契約書の内容、解約予告期間、立退料や違約金の要否) ・将来の相続対策の検討状況および他の相続財産の有無
- 相談者の希望や家族状況、取得住戸の使途(長男への贈与や賃貸収入の目的)、定年後の生活設計、既存賃借人との契約解除条件など、関係者の意思や個別事情を直接ヒアリングして確認する必要があります。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:・甲土地および乙土地の権利関係(登記事項証明書による所有権、抵当権、地上権・賃借権等の設定状況) ・公法上の規制(都市計画法、建築基準法の用途地域、指定建蔽率・指定容積率、前面道路幅員による制限、斜線制限、特定行政庁の角地指定要件、準防火地域規制など) ・甲土地および乙土地の境界確認状況、地積測量図の有無、道路後退の要否、インフラ整備状況 ・周辺地域の分譲マンション販売相場、賃貸マンションの需給動向・想定賃料・空室率の推移 ・ディベロッパーX社の提案内容の妥当性(建築計画、工事費見積、等価交換比率、保留床処分条件、管理規約案) ・収用対価補償金に係る税務特例(収用等の5,000万円特別控除や代替資産取得特例)および立体買換特例の適用要件
- 法務局や市区町村役場等で登記・建築制限等の客観的権利関係や規制を調査し、周辺市場調査や税制上の特例適用要件を確認したうえで提案の実現可能性を検証する必要があります。
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覚えるポイント
- 直接ヒアリングすべき事項には、土地活用の基本方針、家族関係、取得資産の使途、資金計画が含まれます。
- FP自身が調べる事項には、登記情報、建築基準法・都市計画法の規制、市場動向、税制特例の要件が含まれます。
間違えやすいところ
- 家族の意向のように本人に聞けば分かることと、登記や法令上の制限のように役所や法務局で調べることを、混同しないように分けて整理します。
出題の前提:2025年6月15日実施の金融財政事情研究会1級FP技能検定実技試験(資産相談業務・PartII)設例に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
等価交換における配分割合の決定根拠と交渉アドバイス
不動産 · 等価交換方式 / 容積率制限 / 画地条件・個別的要因 / 路線価・価格比率
等価交換で土地所有者側に配分される12戸のうち、提供面積比を重視して9戸の取得を主張する乙土地所有者Bさんに対し、Aさんが4戸を取得しBさんは8戸を取得すべきであると主張するために、Aさんに対してどのようなアドバイスをしますか。
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解答
等価交換の取得割合は単なる土地面積比ではなく適正な土地評価額(価格比)に基づいて決定されるべきであることを説明する。甲土地は北側12m道路(路線価250千円/㎡)と東側6m道路(路線価140千円/㎡)に面する角地で指定容積率300%がフルに活用できる一方、乙土地は単独では幅員6m道路(路線価140千円/㎡)にしか接道せず容積率が240%に制限される。甲土地と一体開発することで乙土地側も300%の容積率を活用できる増分価値を享受できるため、更地評価額の比率は面積比(約1:3)よりも甲土地が高く(約1:2)、4戸対8戸の配分が妥当である旨を客観的な不動産鑑定評価等を示して交渉するようアドバイスする。
解説
等価交換(土地を出し合ってマンションなどに変える取引)で取得する割合は、土地の面積の比ではなく、評価額の比で決めます。なぜなら、道路の幅や路線価(道路に面する土地の単価)、容積率(建てられる床面積の割合)の制限、土地の形などで土地の価値が変わるからです。この「更地としての評価額の比率」で分けるのが不動産実務の基本です。
解き方
- 甲土地と乙土地について、接している道路の状況、路線価(甲は250Cと140Dに面する角地、乙は140Dに面する中間の土地)、前面道路の幅による容積率の制限(甲は12m×0.4=480%で指定の300%が適用、乙は6m×0.4=240%で指定の300%より低く240%に制限)を比べて整理します。
- 乙土地が甲土地と一体で開発されると、容積率が240%から300%に上がるメリット(増える価値)をはっきりさせます。面積の比(甲360㎡:乙1,160㎡≒1:3.22)ではなく、適正な評価額の比(約1:2)で考えると、4戸と8戸の配分が合理的だと説明できます。
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覚えるポイント
- 等価交換の取得比率は面積比ではなく更地価格比(路線価や鑑定評価額等)で按分します。
- 前面道路幅員制限(住居系地域は幅員×4/10)により容積率が制限される土地と制限されない土地の一体化効果に着目します。
間違えやすいところ
- 土地の面積の比(360㎡と1,160㎡、約24%対76%)だけを見て、道路の幅の制限や路線価の違いによる単価の差を無視してしまうことです。
出題の前提:2025年6月15日実施の金融財政事情研究会1級FP技能検定実技試験(資産相談業務・PartII)設例に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
収用対価補償金に係る税務上の特例およびマンション追加取得のアドバイス
不動産・タックスプランニング · 収用等の場合の特別控除 / 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例 / 住宅取得等資金の贈与税の非課税
S市の道路買収により受け取った対価補償金4,000万円に係る税務上の取扱いについて説明し、当該対価補償金と手元資金を活用してX社から販売経費を引いた価格(4,800万円)でマンション1戸を追加取得する場合における、税金面や長男Cさんへの支援方法を含めたAさんへのアドバイスを述べなさい。
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解答
対価補償金4,000万円には収用等の5,000万円特別控除の特例が適用でき、適用時は譲渡益が全額控除され所得税・住民税が非課税となる。追加取得時は、代替資産の買換特例よりも5,000万円特別控除を選択するほうが、購入マンションの減価償却費や将来の取得費の面で有利となる可能性が高い。長男への支援としては住宅取得等資金贈与の非課税等の活用や、Aさん名義で取得して賃貸・使用貸借とする相続対策等の検討をアドバイスする。
解説
公共事業で土地が収用(国や市に買い取られること)されたときは、税の優遇が受けられます。「収用等の場合の5,000万円特別控除」か「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(買換特例)」のどちらか一つを選べます。5,000万円特別控除を選ぶと、補償金の範囲内なら譲渡所得税はかかりません。さらに新しく買う資産の取得価額が実際の購入額になるので、将来の減価償却費を多く計上でき、将来売るときの税負担も抑えられます。
解き方
- 対価の補償金4,000万円に、収用等の5,000万円特別控除を使うと、譲渡所得が0円になり税金がかからないことを確認します。
- 追加で買う1戸の価格4,800万円を、補償金4,000万円と手元の資金800万円で用意できることを整理します。
- 代替資産の特例と5,000万円特別控除を比べ、取得費を引き継ぐかどうかで将来の減価償却や譲渡税がどう変わるかを確かめます。
- 長男Cさんを住まわせる方法(資金を贈与して長男名義で買うか、Aさん名義で買って住ませたり貸したりするか)の税務上の得と損を整理して、助言をまとめます。
答えの内訳
- 対価補償金に係る税金:収用等の場合の5,000万円特別控除の特例または代替資産を取得した場合の課税の繰延べの特例が適用可能である。本件の対価補償金は4,000万円であり、5,000万円特別控除を適用すれば譲渡所得は生じず、所得税・住民税は課税されない。
- 土地収用法等に基づく公共事業で土地を譲渡した場合、収用等の5,000万円特別控除(租税特別措置法第33条の4)の適用を受けることで譲渡益から最高5,000万円が控除され、対価補償金4,000万円の全額が非課税枠内に収まるため課税されません。
- マンション追加取得に関するアドバイス:代替資産の買換特例を使うより5,000万円特別控除を活用して追加取得(4,800万円)するほうが、将来の減価償却費の計上や譲渡時の取得費控除で有利になる。長男への住居支援では、現金を贈与して長男名義で買わせる(住宅取得等資金贈与の非課税特例等)か、Aさん名義で取得して居住・相続対策に活用するかを比較検討するよう助言する。
- 追加取得費用4,800万円は補償金4,000万円と手元資金(1,000万円のうち800万円)で充当可能です。5,000万円特別控除を適用して取得すれば、買換特例のように旧土地の低い取得費を引き継がず、4,800万円が取得費となるため将来の税負担を抑制できます。長男名義とする場合は贈与税特例の適用要件を、Aさん名義とする場合は相続税評価の圧縮効果等を勘案します。
覚えるポイント
- 収用の特例では「5,000万円特別控除」と「代替資産の買換え特例」は重複適用できず選択適用となる。
- 5,000万円特別控除を受けた資産は、実際の取得価額がそのまま取得費となるため減価償却等で有利になりやすい。
間違えやすいところ
- 収用の5,000万円特別控除と、代替資産の買換特例の両方を同時に受けられると思い込むことです。
- 代替資産の買換特例を選ぶと、古い資産の低い取得費が新しい資産に引き継がれて減価償却費が小さくなる点を見落とすことです。
出題の前提:2025年度第1回(2025年6月15日実施)1級ファイナンシャル・プランニング技能検定実技試験(資産相談業務)PartII・設例
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
甲・乙土地の一体等価交換および収用・資金計画に関与する専門職業家
不動産・ファイナンシャル・プランニング総論 · 不動産鑑定士 / 税理士 / 司法書士 / 土地家屋調査士 / 弁護士
本設例の等価交換事業、土地の境界・合筆・登記手続き、収用および贈与等の税務申告、近隣所有者Bさんとの権利調整や契約書作成などに関与する専門職業家について、その役割とともに述べなさい。
解答・解説を表示
解答
本事業に関与する専門職業家として、税理士(収用特例や等価交換、贈与等の税務相談・申告)、不動産鑑定士(甲土地・乙土地の一体化による適正な価格評価や等価交換比率の算定)、土地家屋調査士(敷地の境界確定、測量、合筆や表題登記)、司法書士(所有権移転登記や区分所有建物の登記)、弁護士(Bさんやディベロッパーとの契約書作成・権利調整)が挙げられる。
解説
不動産の有効活用や等価交換には、測量・境界の確定から評価、契約、登記、税務申告まで、幅広い専門知識と法律の手続きが必要です。FPは、弁護士法や税理士法などの法令で決められた「その仕事はその資格を持つ人だけができる」というルールを守らなければなりません。そのうえで、専門家としっかり連携して顧客を支えます。
解き方
- 設例にある法律の問題、税務の問題、登記・測量の問題、不動産評価の問題をそれぞれ洗い出します。
- それぞれの問題に対応する専門家(税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、弁護士など)を選び、その具体的な仕事の内容を整理します。
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覚えるポイント
- FP実務において士業の独占業務に抵触しないよう留意し、適切な専門家と連携する体制を構築する。
- 等価交換比率の客観的妥当性の提示には不動産鑑定士、権利調整・合意には弁護士、登記には司法書士・土地家屋調査士が不可欠となる。
間違えやすいところ
- 土地家屋調査士(土地の形や境界の表示に関する登記・境界の確定)と、司法書士(所有権などの権利に関する登記)の仕事を混同することです。
- FP自身が具体的な税務申告書を作ったり、争いのある権利の交渉を直接代わりにしたりできると思い込むことです。
出題の前提:2025年度第1回(2025年6月15日実施)1級ファイナンシャル・プランニング技能検定実技試験(資産相談業務)PartII・設例
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

