本文へ移動

FP技能検定 · 学習ガイド

2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)の問題・解答解説

日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。

2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)の概要
30:00

問題番号から選ぶ

母の相続に伴う代償分割の課税関係・不動産所得の帰属および相続手続

資産設計提案業務・資産相談業務(相続・事業承継) · 代償分割に係る譲渡所得 / 不動産所得の帰属(準確定申告) / 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 / 相続手続と必要書類 / FPの職業倫理

設例に基づき、顧客(Aさん)に対する相談内容および問題点、その解決に向けた方策、顧客への具体的提案とその理由・留意点、ならびにFPとしての職業倫理について検討しなさい。 【設例要約】 ・被相続人:母Bさん(2025年5月死亡、遺言なし)。父Cさんは3年前(2022年8月)に死亡。 ・相続人:長男Aさん(58歳、地方公務員、妻子と同居)、長女妹Dさん(55歳、母Bさんと2年前から同居、夫・子と同居)の2名。 ・母Bさんの相続財産概要(持分1/2の相続税評価額、小規模宅地等の特例適用前):  1. 現預金:9,000万円  2. 母Bさんの自宅(全体300㎡、築12年):土地8,000万円、建物1,000万円  3. Aさんの自宅(全体300㎡、築12年):土地8,000万円、建物1,000万円  4. 賃貸アパート(全体330㎡、築12年):土地9,000万円、建物2,000万円  合計:3億8,000万円(相続税額見積もりは約1億円、賃貸アパート全体の年間家賃収入は約900万円)  ※各不動産は父Cさんの相続時に母BさんとAさんが持分各1/2で共有取得している。 ・遺産分割案:現預金は均等に相続、母Bさんの自宅(持分1/2)は妹Dさん、Aさんの自宅(持分1/2)および賃貸アパート(持分1/2)はAさんが取得。さらに、母Bさんの自宅におけるAさんの固有持分1/2を代償財産として妹Dさんに交付する代償分割を検討中。 ・Aさんの懸念事項:代償財産として交付する土地建物の税務(取得費・評価額・時価の相違による譲渡所得課税等)、賃貸アパートの今年度家賃収入に対する課税関係、母Bさんの相続関係手続や必要書類等。

解答・解説を表示

解答

1. 相談内容および問題点:代償分割によるAさんの譲渡所得課税の発生懸念、準確定申告と今年度の不動産所得の按分申告、母の相続税申告・納付資金の確保と小規模宅地等の特例適用判断、相続関係手続と必要書類の把握。 2. 解決のための提案・方策:代償分割時の譲渡所得税の試算(時価での代償交付によるみなし譲渡)、代償財産を現預金等に変更することの検討、死亡日までの母の準確定申告および死亡後のAさんの不動産所得申告、妹Dさんによる自宅敷地への小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用検討、戸籍謄本等の収集と遺産分割協議書の作成・登記手続の推進。 3. 最優先提案とその理由・留意点:代償財産として自己所有不動産持分を交付すると時価譲渡としてAさんに譲渡所得税が課税されるため、現預金等を代償財産とする代償分割案の再検討を提案する。留意点として、不動産の時価評価の把握と共有解消のメリット・税負担のバランスを検証すること。 4. FPと職業倫理:顧客利益の優先、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント、コンプライアンス(税理士法・司法書士法等に抵触する具体的個別税額計算や登記申請代理を行わず、各専門士業と適切に連携・協業すること)。

解説

代償分割で自分の不動産を代償財産として渡すと、譲渡所得税がかかります。渡した時の時価で売ったとみなされ、取得費との差額に課税されるからです。また、亡くなった年の不動産所得は、死亡日までの分を4カ月以内に準確定申告します。死亡日の翌日以降の分は、各相続人が自分の確定申告で申告します。

解き方

  1. 設例にある共有不動産の関係、各人の住まい方や同居の状況、遺産の総額、示されている遺産分割案(代償分割)を整理します。
  2. 代償財産として不動産を渡すときの譲渡所得課税のしくみと、賃貸アパートの家賃について準確定申告と相続人への帰属の関係を分析します。
  3. 小規模宅地等(相続税の土地評価を下げる特例)が使えるか、同居する妹Dさんが特定居住用宅地等に当たるかを調べ、税負担を軽くする方法を検討します。
  4. 不動産を渡すことで生じる譲渡課税を避けたり軽くしたりするため、代償分割の見直し(現預金の活用など)を具体的に提案し、関連する専門家との連携の留意点をまとめます。

答えの内訳

設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:1. 自己所有の不動産持分(母Bさん自宅の持分1/2)を代償財産として妹Dさんに交付することに伴う譲渡所得課税の発生有無および課税関係の懸念。 2. 母Bさん死亡に伴う賃貸アパートの今年度家賃収入の帰属(母Bさんの準確定申告とAさんの確定申告での持分按分・期間按分の処理方法)。 3. 母Bさんの相続税の申告・納付手続(見積額約1億円の納税資金確保)および小規模宅地等の特例適用の可否。 4. 母Bさんの遺言がないことによる遺産分割協議書の作成、戸籍収集、不動産の名義変更等の諸手続の進め方。
代償分割において相続財産以外の固有財産(不動産)を代償財産として交付した場合、その時の時価により譲渡があったものとみなされ譲渡所得が課税されます。また、年の中途で死亡した被相続人の不動産所得は死亡日までの分を準確定申告し、それ以降は遺産分割に従って帰属させる必要があります。
それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:1. 代償財産として不動産持分を譲渡した場合の譲渡所得税を試算し、税負担が過重となる場合は代償財産を現預金に変更するなど遺産分割方法の再検討を提案する。 2. 賃貸アパートの家賃収入について、2025年1月1日から母Bさん死亡日までの分を母Bさんの準確定申告(4カ月以内)とし、死亡日翌日以降の分をAさん自身の不動産所得として翌年確定申告する旨を助言する。 3. 同居親族である妹Dさんが取得する母Bさんの自宅敷地について、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額)の適用を検討し、相続税負担の軽減を図る。 4. 相続人確定のための被相続人および相続人の戸籍謄本収集、財産目録の作成、遺産分割協議書の作成および相続登記の義務化に伴う申請準備を進める。
代償交付による譲渡所得税の発生を回避・軽減するため、現預金9,000万円等を活用した代償分割への組み替えや、小規模宅地等の特例(妹Dさんは同居親族として申告期限まで居住・所有を継続すれば特定居住用宅地等の適用が可能)を活用することが効果的です。
それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案内容】代償財産として不動産持分を交付する分割案を見直し、現預金等を代償財産として活用する遺産分割案への変更を提案する。 【理由】不動産を代償財産として交付すると、時価による譲渡があったものとみなされてAさんに多額の譲渡所得税が課されるおそれがあるため。 【留意点】不動産の共有解消は将来の管理・処分において有効であるため、時価評価額を適切に算定し、代償交付による税負担額と共有状態解消の利益を比較考慮すること。また、税理士等の専門家と連携して正確な税金試算と遺産分割協議書の作成を行うこと。
不動産による代償分割は譲渡所得税の課税(所得税法所轄)を誘発します。現預金等の交付であれば譲渡課税は生じないため、現預金9,000万円の配分比率を調整して実質的な公平性を図る代償分割案を提示することが実務上極めて合理的です。
FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:1. 顧客利益の優先:Aさんおよび相続人全体の意向と利益を最優先に考え、中立公正な立場で提案を行う。 2. 守秘義務の遵守:相談業務を通じて知り得た家族関係や資産状況などの個人情報を厳格に管理・保護する。 3. インフォームド・コンセント:税負担や手続きの流れについて分かりやすく説明し、顧客の十分な理解と同意を得て方針を決定する。 4. コンプライアンス(関連法規の遵守):税理士法に抵触する具体的・個別的な税額計算や税務書類作成、司法書士法に抵触する登記申請代理等は行わず、提携する税理士や司法書士等の専門家と適切に連携・協業する。
FP技能士は顧客の利益保護と法令遵守(士業独占業務への配慮)を徹底し、十分な説明と同意のもとで各種提案を進める必要があります。

関連する分野を学ぶ

覚えるポイント

  • 代償分割で自己の固有財産(不動産)を交付すると時価による譲渡所得課税が生じる。
  • 被相続人の死亡日までの不動産所得は4カ月以内に準確定申告が必要である。
  • 同居親族が取得・居住・所有継続する場合、特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)の適用が可能である。

間違えやすいところ

  • 不動産での代償交付を、課税されない現預金での交付と混同し、譲渡所得課税を見落とす。
  • 亡くなった年の1年分の家賃収入を、亡くなった人か相続人のどちらか一方だけの所得として申告してしまう。

出題の前提:2025年度第1回(2025年6月15日実施)1級ファイナンシャル・プランニング技能検定実技試験(資産相談業務)PartI設例

出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)

2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)

参照した公式資料

金融財政事情研究会が公開した2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。

金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。