日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)の概要
相談者への助言にあたって必要となる情報の収集と整理
不動産・相続 · 情報収集 / 顧客ヒアリング / 物件調査 / ライフプランニング
Aさん一家(夫婦・長男7歳・長女3歳)の住み替え希望や父Eさん(86歳)による賃貸用マンション購入・相続提案に対し、最適な助言を行うために追加で必要となる情報を「①Aさんから直接聞いて確認する情報」「②FPであるあなた自身が調べて確認する情報」に整理して説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
①Aさん自身や家族の今後のライフプラン・住まいに対する具体的な希望、将来相続したマンションに自ら居住する意向の有無、父Eさんや兄Fさんの意向および親族間の合意状況。②購入候補となるマンションの物件概要・権利関係・賃料相場・管理状態等の不動産市場調査、将来の賃貸需要や修繕リスク、父Eさんの相続税額の試算等。
解説
よい助言のためには、お客様から直接聞くことと、専門家が自分で調べることの両方が欠かせません。お客様の本当の希望や家族の関係は、直接聞かないと分かりません。物件の市場性や権利関係、税金への影響は、専門家が客観的に調べて総合的に判断する必要があります。
解き方
- Aさんの家族構成や資金計画、将来の住まいと相続の希望、親族の合意状況を、聞く項目としてまとめます。
- 物件の法的な制限や管理の状態、賃料の相場を調べ、税制と評価の基準に当てはめて試算する項目を洗い出します。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:Aさん一家の具体的な住まいの希望(購入時期・立地・予算・将来相続したマンションへの自己居住の意思)や、父Eさん・兄Fさんとの遺産分割・生前対策に関する合意状況・意向等。
- Aさん自身の住宅取得希望や家族のライフプラン、将来そのマンションに自ら居住する意向があるかを確認するとともに、兄Fさんとの公平性や父Eさんの真意など家族関係者間の合意形成状況を把握する必要があります。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:購入候補となるマンションの権利関係(登記情報)、修繕積立金等の管理状況、周辺の賃料相場や空室リスク、借入なしで購入した場合の収支見込み、父Eさんの相続税額の概算試算および評価通達等の税制動向。
- 購入対象マンションの資産価値・流動性・賃貸需要や管理状態のほか、定期借家による適正賃料水準、さらに区分所有財産の通達評価や総則6項の適用リスク、相続税の負担軽減効果を専門的に調査・分析する必要があります。
覚えるポイント
- ヒアリング項目は顧客の主観・意向・家族関係が中心となり、調査項目は物件情報・権利関係・税務試算などの客観的データが中心となります。
間違えやすいところ
- お客様に聞くこと(ライフプランや自分で住む希望など)と、自分で調べること(登記情報や賃料相場など)を混ぜないように分けて書きます。
出題の前提:2025年度第1回FP技能検定1級実技試験(資産相談業務)PartII 設例
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
定期建物賃貸借契約のメリットと普通建物賃貸借契約との相違点
不動産 · 定期建物賃貸借 / 普通建物賃貸借 / 中途解約 / 契約期間満了
父Eさんが購入したマンションを普通借家ではなく定期借家として賃貸するメリットを説明し、さらに「①契約締結時」「②賃借人からの中途解約時」「③契約満了時」の各時点における定期借家契約と普通借家契約の違いを説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
【メリット】期間満了により契約が確実に終了し更新がないため、契約終了後にAさんが自宅として利用したり売却したりする計画を確実に実行できる点。【契約締結時】普通借家は書面不要だが、定期借家は公正証書等による書面契約および契約前の事前書面交付・説明が必要。【中途解約時】普通借家は特約がなくても賃借人から解約可能(解約申入れから3か月経過等)だが、定期借家は原則中途解約不可(床面積200㎡未満の居住用で転勤・療養等やむを得ない事由がある場合を除く)。【契約満了時】普通借家は正当事由がなければ貸主側からの更新拒絶不可だが、定期借家は更新がなく期間満了により確定的に終了する(1年以上の契約では満了1年前から6か月前までの事前通知が必要)。
解説
定期建物賃貸借(定期借家)は、借地借家法第38条に基づく制度です。契約の更新がなく、期間が満了すると確実に終了します。貸す側は退去の時期を決められる利点がある一方、契約前の書面交付・説明や中途解約の制限など、普通借家とは違う要件があります。
解き方
- 定期借家を選ぶ目的(将来確実に明け渡せること、自分で住む計画や売却計画との合い方)から、メリットをまとめます。
- 契約のとき、借り手が途中で解約するとき、契約が満了するときの3つの場面で、普通借家と定期借家の手続きと効力の違いを比べて書きます。
答えの内訳
- メリット:契約期間の満了により確定的に契約が終了し更新がないため、将来Aさんが相続した後に自己の居住用として転用したり売却して資金化したりする計画を確実に立てられる点。
- 普通借家では貸主側に正当事由がない限り更新拒絶や立退き要求が困難ですが、定期借家であれば期間満了によって確実に明渡しを受けられるため、将来のライフプラン(自己利用や売却)に合わせた柔軟な活用が可能です。
- ①契約締結時:普通借家契約は口頭でも成立する(書面化の義務はない)のに対し、定期借家契約は公正証書等の書面(または電磁的記録)による契約が必要であり、さらにあらかじめ「更新がなく期間満了により終了する」旨を記載した書面を交付して事前説明しなければならない。
- 借地借家法第38条に基づき、定期建物賃貸借契約の締結には契約書の書面化に加え、契約締結前の別個の書面交付および説明が効力要件とされています。
- ②賃借人からの中途解約時:普通借家契約では特約がなくても賃借人は解約申入れ後一定期間で解約できるが、定期借家契約では原則として中途解約ができない。ただし、床面積200㎡未満の居住用建物で、転勤・療養等のやむを得ない事由がある場合は、賃借人から解約申入れ(申入れから1か月経過で終了)が認められる。
- 定期借家契約は期間拘束性が強く原則中途解約不可ですが、居住用で200㎡未満かつ療養や転勤等のやむを得ない事由がある賃借人を保護する法定中途解約権が定められています。
- ③契約満了時:普通借家契約は貸主側に正当事由がなければ更新拒絶できず契約が更新されるのに対し、定期借家契約は契約の更新がなく期間満了により確定的に契約が終了する(契約期間1年以上の場合は、貸主は期間満了の1年前から6か月前までに満了通知を行う必要がある)。
- 普通借家では借地借家法第26条・第28条の正当事由制度により貸主からの終了が強く制限されますが、定期借家は第38条により更新がなく期間満了で終了します(期間1年以上の契約終了通知義務あり)。
覚えるポイント
- 定期借家契約の成立には「契約書自体の書面化」と「契約前の事前説明書面の交付・説明」の2つが必要です。
間違えやすいところ
- 定期借家の事前説明の書面は、賃貸借契約書とは別の書面(または別の電磁的記録)で作る必要がある点に注意します。
出題の前提:借地借家法第26条・第28条(普通建物賃貸借)、第38条(定期建物賃貸借)
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
居住用の区分所有財産の評価(マンション評価通達)
相続・事業承継 · 居住用区分所有財産 / マンション評価 / 評価乖離率 / 区分所有補正率
設例において、居住用マンション(区分所有財産)の相続税評価額を算定する際、「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)に基づき、どのように評価額を計算するかその手順と評価方法を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
従来の財産評価基本通達による自用地価額および家屋の評価額に、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4つの指数から算出される「区分所有補正率」を乗じて評価額を算定し、賃貸されている場合は貸家および貸家建付地としての減額を行う。
解説
居住用区分所有財産(分譲マンション)の相続税評価は、2024年1月1日以降、新しいルールになりました。昔の方法では市場価格との差が大きくなりやすかったからです。築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4つの指標から「評価乖離率」を出し、「区分所有補正率」を計算して、市場価格の最低60%の水準にそろえます。
解き方
- 従来の財産評価基本通達にしたがって、敷地利用権の自用地としての評価額と、家屋の固定資産税評価額をそれぞれ計算します。
- 築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度を使って評価乖離率を計算し、区分所有補正率を決めて、従来の評価額に掛けます。
- 貸している場合は、貸家建付地と貸家としての控除(借地権割合×借家権割合×賃貸割合など)を行い、最終的な評価額を出します。
覚えるポイント
- 区分所有補正率は築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4要素で算定される。
- 評価乖離率が1.67倍超の場合は評価水準が60%になるように区分所有補正率を乗じて引き上げる。
間違えやすいところ
- 1棟すべてを所有する賃貸マンションや二世帯住宅、店舗用の区分所有建物には、この補正ルールは使えません。
- 区分所有補正率を掛けたあと、貸している場合の貸家・貸家建付地の評価減を忘れないようにします。
出題の前提:2025年6月実施試験日時点で施行されている「居住用の区分所有財産の評価について」(国税庁法令解釈通達)に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
財産評価基本通達総則6項の適用の可能性
相続・事業承継 · 財産評価基本通達総則6項 / 最高裁判決 / 租税回避 / 時価と評価額の乖離
仮に、父Eさんがマンションを定期借家として賃貸借契約を締結した2年後に亡くなり、Aさんがマンションを財産評価基本通達と「居住用の区分所有財産の評価について」により評価して相続した場合、課税庁側から財産評価基本通達の総則6項により評価が見直される可能性はあるか。設例に示された総則6項の適用基準を踏まえて説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
総則6項により評価が見直される可能性は極めて低いと考えられる。借入金を伴わない自己資金での購入であり、生活費確保や将来の家族居住等の実質的理由が存在することに加え、2024年以降は新通達により時価乖離の是正が図られているため、通達評価と異なる価額とすべき「合理的な理由(過度な租税回避意図等の特別の事情)」が認められないためである。
解説
財産評価基本通達の総則6項は、通達どおりの評価が著しく不適当なときに、国税庁長官の指示で実質的な時価で評価する規定です。ただし、令和4年の最高裁判決などにより、使える場合が限られます。借金を過度に使った租税回避など、「通達の評価額では税の負担の公平に反する特別な事情(合理的な理由)」がある場合だけ適用されます。
解き方
- 設例にある総則6項の適用基準(①他の合理的な評価方法があるか、②著しい乖離があるか、③通達の評価と違う価額にする合理的な理由があるか)を確認します。
- 最高裁判決などの考え方に当てはめて、借金の有無(本件は全額預金の自己資金)、買った動機(生活費や修繕費の確保、将来の長男の居住)、保有期間(2年後)などを検討します。
- 「居住用の区分所有財産の評価について」で市場との差がすでに直されていることも考え、租税回避をねらった著しく不適当な事情には当たらないと結論づけます。
覚えるポイント
- 総則6項の適用には、時価との乖離だけでなく、著しい租税回避行為などの「特別の事情(合理的な理由)」が不可欠である。
- 全額自己資金による購入や、生活費獲得・将来の居住目的などの経済的合理性がある場合、総則6項の適用リスクは大幅に下がる。
間違えやすいところ
- 時価と相続税評価額に差があるというだけで、すぐ総則6項が適用されると思い込まないようにします。
- 居住用区分所有財産の新しい評価通達が使われた後は、時価との差の是正が通達の中で済んでいる、という点を忘れないようにします。
出題の前提:設例内の【財産評価基本通達とその適用基準】および令和4年4月19日最高裁判決に基づく実務基準。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本事案に関与する専門職業家
相続・事業承継 · 専門職業家の役割 / FP倫理と関連法規
父Eさんが保有する金融資産の一部(6,000万円)を用いてマンション(1戸)を購入し、定期借家として賃貸したうえで将来Aさんが相続するという計画について、本事案を円滑かつ適法に進めるために関与が求められる専門職業家とその主な業務内容を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
関与する主な専門職業家は、税理士(相続税の試算・申告等の税務業務)、司法書士(マンション購入時の移転登記および将来の相続登記等)、宅地建物取引士(不動産売買および定期借家契約の媒介)、公証人(公正証書遺言の作成)、弁護士(法的な遺産分割・紛争予防のアドバイス等)である。
解説
ファイナンシャル・プランニングでは、FPが独占業務の決まりに違反せず、お客様に最適な支援をする必要があります。そのためには、税理士、司法書士、宅地建物取引士、弁護士など、各分野の専門家としっかり連携する体制が欠かせません。
解き方
- 事案に出てくる課題(不動産の購入、定期借家契約の締結、相続税の対策や申告、登記の手続き、遺言の作成など)を洗い出します。
- 洗い出した各手続きについて、法的な独占業務と専門分野を特定し、関わるべき専門家(税理士、司法書士、宅地建物取引士、公証人、弁護士など)をあげて役割をまとめます。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 税理士法に抵触するため、FPは具体的な税額計算や税務書類の作成を行うことができず、税理士との連携が必要となる。
間違えやすいところ
- 登記申請を代わりにする仕事は、行政書士ではなく司法書士だけができる仕事なので、混同しないように注意します。
出題の前提:2025年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2025年6月14日PartII)設例および各専門職業家関連法規
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

