本文へ移動

FP技能検定 · 学習ガイド

2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartI)の問題・解答解説

日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。

2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartI)の概要
30:00

問題番号から選ぶ

非上場会社の後継者への事業承継・自社株移転と遺産分割対策

事業承継・資産承継(実技PartI) · 事業承継税制の特例措置 / 遺留分に関する民法の特例 / 自社株式の評価引下げ・移転 / 遺産分割の公平性・納税資金対策 / FPの職業倫理

化学品卸売業を営む非上場会社(X社)の2代目社長Aさん(60歳)は、主要仕入先メーカーに勤務中の長男Cさん(28歳)を後継者として2年後に迎え入れ、ゆくゆくは経営をバトンタッチする予定である。Aさんの資産は総額9億円(X社株式4.5億円、現預金1億円、有価証券1億円、自宅2.5億円)であり、相続税額は約3.1億円と試算されている。AさんはX社株式の移転方法や法人版事業承継税制特例措置の適用の可否、長男Cに自社株、妻Bに自宅と現預金等の半分を相続させた場合の長女Dとの財産不均衡、金融機関等からの多数の提案の整理に悩んでいる。 設例に基づき、以下の「検討のポイント」についてそれぞれ説明しなさい。 1. 設例の顧客の相談内容および問題点 2. 相談内容および問題点を解決するための提案・方策 3. 提案・方策のなかで優先して提案すべき事項とその理由・留意点 4. FPと職業倫理

解答・解説を表示

解答

1. 自社株の移転時期・方法の未定と事業承継税制特例の期限対応、相続財産の偏重による遺産分割(長女Dの遺留分侵害)の懸念、相続税の納税資金不足、金融機関等からの提案の整理。 2. 特例承継計画の提出と特例措置活用の検討、自社株評価の引下げ(役員退職金支給等)と生前贈与、遺留分に関する民法の特例(除外・固定合意)や代償分割・生命保険金の活用、遺言書の作成、各社提案の客観的比較・整理。 3. 最優先は「特例承継計画の策定・提出」と「自社株承継プランの確立(遺言書作成含む)」。理由は申請期限の制約と親族間の紛争予防。留意点は特例税制の取消事由・認定要件の遵守や長女Dの心情・公平性への配慮。 4. 顧客利益の優先、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント、専門家(税理士・弁護士等)との連携とコンプライアンス(業法遵守)。

解説

事業承継対策では、次の3つの点を同時に満たす総合的な計画を作ることが欠かせません。1つ目は自社株を後継者にスムーズに集めること、2つ目は相続税を払うお金を確保し税の負担を軽くすること、3つ目は後継者以外の相続人に遺留分(法律で保障された最低限の取り分)など公平さへ配慮することです。

解き方

  1. お客様の現状(親族関係、資産の内訳、自社株の評価、事業の状況)を細かく調べ、承継と相続の問題点(納税資金、遺産分割、自社株を移す時期)を洗い出します。
  2. 事業承継税制の特例措置、民法の特例、自社株の評価を下げる方法、生命保険、遺言書などの方法を組み合わせ、優先順位と注意点を整理して提案します。

答えの内訳

設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①長男Cさんのキャリアパスと社長交代、X社株式移転の時期・方法(法人版事業承継税制特例措置の適用の要否)が未定であること。②総財産9億円のうち自社株が4.5億円と半分を占め、長男Cに自社株、妻Bに自宅等を渡すと長女Dの相続分が僅少となり遺産分割の不均衡(遺留分侵害等)が生じるおそれがあること。③相続税額約3.1億円に対して現預金は1億円しかなく、納税資金が不足するおそれがあること。④各社から多様な提案を受けており、顧客のニーズに即した客観的整理が求められていること。
Aさんの財産は自社株式と自宅不動産に偏重しており、長女Dの遺留分侵害の可能性や、金融資産不足による相続税納税資金の確保が大きな問題となります。また、事業承継税制特例措置の適用期限が迫っている点も急務です。
それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①事業承継計画の策定および「特例承継計画」の提出・特例措置の適用検討。②役員退職金の活用等による自社株評価の引下げと、長男Cへの計画的な生前贈与。③経営承継円滑化法における民法の特例(自社株の除外合意または固定合意)の活用、および長女Dに対する代償金原資としての生命保険等の準備。④Aさんの意向を反映した公正証書遺言の作成。⑤自宅土地に対する小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の活用検討。⑥外部からの提案に対する客観的なセカンドオピニオンの提供。
自社株対策(事業承継税制・評価引下げ)、遺産分割対策(遺留分の除外合意・生命保険の代償財産化・遺言書)、納税資金対策、および第三者提案の選別をバランスよく講じる必要があります。
それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案】「特例承継計画の策定・提出」と「公正証書遺言の作成(遺留分対策を含む)」を最優先に提案する。【理由】事業承継税制の特例措置は期限があり、選択肢を確保するため事前の計画提出が不可欠であること。また、遺産分割対策は親族間の紛争予防と会社の安定経営継続の前提となるため。【留意点】特例措置は承継後の雇用確保要件や報告義務等の各種要件があり、取消リスクに注意が必要であること。遺言作成にあたっては長女Dの遺留分に配慮し、付言事項等を通じて家族の納得・心情面への配慮を怠らないこと。
特例承継計画の提出期限や制度の要件継続リスクを考慮しつつ、家族関係を円満に維持するための遺言書作成と遺留分対策の早期実行が極めて重要です。
FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:①顧客利益の優先(提携企業等の利害に左右されずAさん家族の最善を追求する)。②守秘義務の遵守(知り得た企業・個人情報を厳格に管理する)。③インフォームド・コンセント(対策のメリット・デメリットを十分に説明し納得を得る)。④専門家との協働と法令遵守(税理士法に抵触する個別具体的な税額計算や、弁護士法に抵触する紛争仲裁・遺言執行業務は行わず、各士業と連携して支援する)。
ファイナンシャル・プランナーには高い倫理観が求められ、自社の販売手数料等に偏ることなく顧客本位の助言を行い、各士業法(税理士法・弁護士法など)を遵守して業務を行うことが求められます。

関連する分野を学ぶ

覚えるポイント

  • 特例承継計画の提出期限と特例措置の適用要件・取消リスクの確認。
  • 経営承継円滑化法における民法特例(除外合意・固定合意)は推定相続人全員の合意と家庭裁判所の許可が必要であること。

間違えやすいところ

  • 自社株の対策(株価を下げる・贈与する)だけに気をとられ、後継者でない人(長女など)の遺留分を侵害したり、納税資金が足りないことへの配慮を忘れてしまうこと。
  • FPが自分で具体的な相続税の申告書を作ったり、法律の争いを代理したりするなど、税理士や弁護士だけができる仕事をして法律に違反してしまうこと。

出題の前提:実技面接試験(資産相談業務)における一般的な出題基準・現行法令に基づく標準的解答フレームワーク

出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)

2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartI)

参照した公式資料

金融財政事情研究会が公開した2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月14日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。

金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。