日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)の概要
相談業務における必要情報の収集・整理
相続・事業承継 · 顧客ヒアリング / 客観的情報の収集 / 遺留分 / 代襲相続
亡くなった義父Eさんの遺産について、自筆証書遺言により義兄Dさんが不動産を、Aさん側が金融資産を相続すると聞かされ、大きな差があることに釈然としないAさんに対し、FPとして最適なアドバイスをするために追加で必要な情報について、「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FP自身が調べて確認する情報」に整理して答えなさい。
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解答
①Aさんおよび代襲相続人である長女Cさんの真の意向や要望、義父Eさんに対する長女Cさんや義兄Dさんの生前贈与・特別受益の有無、義父Eさんの介護負担や寄与分の有無。②甲土地・甲建物の登記事項証明書や現地調査・公図等による権利・境界・現況確認、甲土地・建物の時価(実勢価格・鑑定評価額等)、遺言書の保管場所や自筆証書遺言書保管制度利用の有無、義父Eさんの金融資産・負債の全容の調査・確認。
解説
FPが相続の相談を受けるときは、話をよく聞くことと、客観的な資料で裏付けを取ることの両方が基本です。人の希望や生前の経緯は、聞かなければ分かりません。また、財産の評価や権利関係は、公的書類や現地調査で正確に確かめる必要があります。
解き方
- 設例の家族関係を整理し、義父Eさんの法定相続人が義兄Dさんと、代襲相続人(亡くなった子の代わりに相続する人)の長女Cさんであり、Aさんは相続人ではないことを確かめます。
- 相談する側(Aさんと長女Cさん)から、本当の希望や、生前にもらった財産(特別受益)、介護の負担(寄与分)について聞く内容を整理します。
- 不動産の権利関係、時価の評価、遺言書の要件の確認など、FPが自分で客観的な資料を集めて調べる項目を整理します。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:Aさんおよび真の相続人である長女Cさんの今後の生活設計や相続に対する意向・希望、義父Eさんから義兄Dさん・長女Cさん(夫Bさん含む)への生前贈与や特別受益の有無、義父Eさんの療養看護や介護の実態と負担状況(寄与分に関わる事実の有無)、義兄Dさん家族とのこれまでの人間関係・交流状況。
- 本問の相続では夫Bさんが既に死亡しているため長女Cさんが代襲相続人であり、Aさん自身には相続権がないことを踏まえた上で、長女Cさん本人の意向や権利主張への姿勢、特別受益や寄与分に該当する事情がないかをAさん・Cさんから確認する必要があります。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:甲土地・甲建物の登記事項証明書、公図、測量図、建築確認済証、固定資産税評価証明書等による権利関係および法令上の制限、甲不動産の適正な時価(周辺相場や実勢価格、収益還元価値)、遺言書の現物の確認(保管場所、法務局の遺言書保管制度利用の有無、検認手続の状況)、義父Eさんの過去の預貯金通帳や課税状況等を通じた隠れた相続財産・債務の有無。
- 遺産分割や遺留分侵害額請求においては相続税評価額ではなく時価(実勢価格)が基礎となるため、客観的な資料収集により不動産の適正な時価や権利関係を把握し、遺産全体の正確な調査・確認を行う必要があります。
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覚えるポイント
- 子が先に死亡している場合はその直系卑属(孫)が代襲相続人となり、配偶者(嫁)は相続人にならない点に注意する。
- 遺言や遺留分の算定においては相続税評価額ではなく時価(時価ベース)が基準となるため、不動産の時価把握が極めて重要である。
間違えやすいところ
- Aさん本人が相続人だと勘違いして、Aさんだけの権利としてアドバイスを考えてしまう間違いです。
- 遺留分の計算の基礎となる財産の評価を、相続税評価額のまま計算してしまう間違いです。
出題の前提:民法(相続編)および日本FP協会の実務相談基準に準拠
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
自筆証書遺言の形式的要件
相続・事業承継 · 自筆証書遺言 / 民法上の要件 / 財産目録の作成方法 / 訂正方法
自筆証書遺言が民法上有効とされるために備えていなければならない形式的要件について説明しなさい。
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解答
遺言者がその全文、日付および氏名を自書し、押印すること。なお、添付する財産目録については自書でなくてもよいが、各頁に署名・押印が必要である。加除その他の変更を行う場合は、その場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更の場所に押印しなければならない。
解説
自筆証書遺言(自分で書く遺言)は、決められた方式を守らないと無効になります。偽造や書き換えを防ぎ、本人の本当の気持ちをはっきりさせるためです。そのため、法律で「全文・日付・氏名を自分で書き、押印すること」という厳しいルールが決められています。
解き方
- 自筆証書遺言の基本の要件である、民法968条1項の「全文・日付・氏名を自分で書くこと」と「押印」を抜き出します。
- 財産目録の特例を確認します。民法968条2項では、財産目録は自分で書かなくてもよい代わりに、各ページに署名と押印が必要です。
- 字句の追加や削除などの訂正には、民法968条3項の厳しい方式が必要です。これらを合わせて、形式の要件全体をまとめます。
覚えるポイント
- 日付は「〇年〇月吉日」などの特定できない表記は無効となり、年月日を具体的に自書する必要がある。
- 財産目録をパソコン等で作成した場合、両面印刷のときは両面に署名・押印が必要となる点に注意する。
間違えやすいところ
- 財産目録はパソコンで作ってもよい例外があることから、遺言の本文までパソコンで作れると勘違いしてしまう間違いです。
- 日付や氏名は、ゴム印やワープロ打ちでも有効だと誤解してしまう間違いです。
出題の前提:民法第968条(自筆証書遺言)
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
遺産分割における主張と代襲相続人の権利
資産設計提案業務 · 代襲相続 / 遺留分侵害額請求 / 遺産分割協議
義父Eさんの遺産分割において、Aさん家族(特に長女Cさん)は義兄Dさんに対してどのような主張や法的な請求を行うことができるか説明しなさい。
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解答
長女Cさんは亡夫Bさんの代襲相続人として法定相続分(2分の1)および遺留分(4分の1)を有しており、自筆証書遺言の内容により遺留分が侵害されている場合は義兄Dさんに対して遺留分侵害額請求(金銭請求)を行うことができます。また、相続人全員の合意があれば遺言と異なる遺産分割協議を行うことも主張可能です。なお、妻であるAさんは義父Eさんの法定相続人ではないため、権利を主張・行使できる主体は長女Cさんとなります。
解説
相続人となる子が先に亡くなっているときは、その子の直系卑属(子や孫)が代わりに相続人になります。これを代襲相続といいます。また、遺言で特定の人に財産の多くを渡すと決めても、兄弟姉妹以外の法定相続人には最低限の取り分である遺留分が残ります。遺留分を侵害された人は、受け取った人に足りない分の金銭を請求できます。
解き方
- 亡くなったEさんの法定相続人を決めます。長女Cさんが、亡夫Bさんの代襲相続人であることを確かめます。
- 長女Cさんの法定相続分は2分の1、遺留分割合は4分の1です。これを計算します。
- 遺言でもらう額が遺留分より少ないときは、遺留分侵害額請求ができます。また、相続人全員が合意すれば、遺言と違う遺産分割協議もできます。この2つを整理します。
答えの内訳
- 代襲相続人の地位と権利主体の確認:Aさんは法定相続人ではなく、亡夫Bさんの一人娘である長女Cさんが代襲相続人として権利主体となる。
- 義父Eさんの相続人は、子である義兄Dさんと、既に死亡している次男Bさんを代襲相続した長女Cさんの2名です。息子の配偶者であるAさんは相続人ではないため、法的な主張を行えるのは長女Cさん自身となります。
- 遺留分侵害額請求の主張:遺言により長女Cさんの遺留分(法定相続分の2分の1である4分の1)が侵害されている場合、遺留分侵害額請求権を行使して不足額に相当する金銭の支払いを請求できる。
- 長女Cさんは直系卑属として総体的遺留分2分の1のうち法定相続分(2分の1)に応じた4分の1の遺留分を有します。仮に遺言で預金3,000万円のみを承継しても遺留分に満たないときは、義兄Dさんに対し侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
- 遺言と異なる遺産分割の合意:受遺者・相続人全員(義兄Dさんと長女Cさん)の合意があれば、遺言の内容と異なる遺産分割協議を行うことができる。
- 遺言が存在する場合であっても、受遺者および相続人全員が合意すれば、遺言の内容に拘束されず任意の遺産分割協議を成立させることが可能です。
覚えるポイント
- 子の配偶者(本問のAさん)は被相続人と直接の親子関係や養子縁組がない限り法定相続人にはなれない点に注意する。
- 代襲相続人となった孫(直系卑属)は、被代襲者である子が有していた法定相続分および遺留分をそのまま承継する。
間違えやすいところ
- Aさん自身に相続権や遺留分があると勘違いして、Aさんを主張する人にしてしまう間違いです。
- 遺留分侵害額請求をすれば、不動産の共有持分を取り戻せると誤解する間違いです。今の民法では、原則としてお金で請求します。
出題の前提:民法第887条第2項(代襲相続人)、第1042条(遺留分の帰属及びその割合)、第1046条(遺留分侵害額の請求)に基づく出題要件。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産の時価評価の主張と相談者へのアドバイス
資産設計提案業務 · 遺留分算定における財産評価 / 不動産時価評価 / 遺留分侵害額請求の消滅時効
遺産分割や遺留分算定において甲土地・甲建物の価値が相続税評価額より高くなると主張することはできるか。また、それを踏まえてAさんにどのようなアドバイスを行うべきか説明しなさい。
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解答
甲土地・甲建物の価値について、相続税評価額ではなく相続開始時の「時価(実勢価格)」に基づいて算定すべきと主張することは可能です。アドバイスとしては、不動産鑑定士等による適正な時価の把握、権利主体が長女Cさんであることの確認、遺留分侵害額請求の消滅時効(知った時から1年)への留意、親族間の感情的対立を避けた円満な話し合いの推進、弁護士等の専門家への相談を助言します。
解説
遺産分割や遺留分の計算で使う財産の評価は、相続税評価額ではなく、相続が始まったときの時価(実際の市場価格)が基準です。路線価や固定資産税評価額は時価より低く付けられることが多く、特に収益の高い都市部の不動産では実際の価格と大きくずれます。そのため、実勢価格を使うと遺留分の侵害額をより正確に、有利に計算できます。なお、遺留分侵害額請求権は、相続の開始と侵害を知った時から1年で消滅時効にかかります。
解き方
- 民法上の遺留分の計算では、財産を相続開始時の時価(客観的な取引価格)で評価します。相続税評価額より高い時価を主張できる理由を整理します。
- 甲土地・甲建物は駅から徒歩3分の良い場所にあり、収益も見込める物件です。そのため、不動産鑑定などで正しい時価を調べる必要があると考えます。
- 権利を持つのは長女Cさんであること、遺留分侵害額請求権には1年の時効があること、家庭裁判所での自筆証書遺言の検認、弁護士への相談など、実務上の注意点をアドバイスとしてまとめます。
答えの内訳
- 不動産価値が相続税評価額より高くなるとの主張の可否:主張することは可能である。遺産分割や遺留分の算定基準となる遺産額の評価は、相続税評価額ではなく相続開始時点における「時価(実勢価格)」によるため。
- 遺留分侵害額の計算や民法上の遺産分割における財産評価は、路線価等に基づく相続税評価額ではなく客観的な交換価値(時価・実勢価格)によります。本物件は駅徒歩3分の商業地で賃貸収入も得られる優良不動産であるため、実勢価格が相続税評価額を大きく上回る可能性が高く、時価による再評価を主張することが適切です。
- 適正な時価の把握:不動産鑑定士による鑑定評価や複数の不動産業者による査定を取得し、客観的な時価を把握することを助言する。
- 義兄Dさんとの話し合いや請求を客観的・説得的に進めるため、相続税評価額2億円にとどまらない適正な実勢価格を不動産鑑定等により確認することを提案します。
- 手続・期間および親族関係等へのアドバイス:権利主体は長女Cさんであること、遺留分侵害額請求権には1年の消滅時効があること、家庭裁判所での検認を待つこと、弁護士等の専門家へ相談することを助言する。
- 請求権者が長女Cさんである点を確認したうえで、相続の開始及び遺留分侵害を知った時から1年で時効消滅するため速やかな準備を促します。また、裁判所の検認完了前に開封・処分しないこと、長年の介護への配慮と親族関係の円満維持に努めること、具体的な交渉は弁護士に依頼することを助言します。
覚えるポイント
- 相続税評価額は課税計算のための基準であり、遺留分算定や遺産分割協議では相続開始時の時価(実勢価格)が基準となる。
- 遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅する。
間違えやすいところ
- 遺産分割協議や遺留分の計算は、相続税の申告に使う相続税評価額でしなければならないと思い込む間違いです。
- 遺留分侵害額請求には、知った時から1年、相続開始から10年という期間の制限があることを忘れてしまう間違いです。
出題の前提:民法第1046条(遺留分侵害額の請求)、第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)および判例法理に基づく出題要件。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事案に関与する専門職業家の役割
相続・事業承継 · 士業の職域 / FP倫理 / 遺留分侵害額請求 / 相続登記
設例において、義父Eさんの相続に伴う遺言書の検認、遺産分割・遺留分に関する権利主張、不動産の適正評価、相続税申告および相続登記等について、FPが連携すべき関与専門職業家を挙げ、それぞれの主な役割について説明しなさい。
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解答
関与する主な専門職業家は、弁護士(遺産分割協議・遺留分侵害額請求等の代理や交渉)、司法書士(自筆証書遺言の検認申立支援や甲土地・甲建物の相続登記手続き)、税理士(相続税額の試算や相続税申告書の作成・提出)、不動産鑑定士(甲土地・甲建物の適正な時価の鑑定評価)などである。
解説
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、税理士法・弁護士法・司法書士法などのルールを守らなければなりません。そのため、個別の法的な争いの代理や、税務書類の作成、登記の申請はできません。お客さまの課題に合わせて、それぞれの専門家(士業など)と上手に連携したり紹介したりすることが大切です。
解き方
- 設例の相続にある課題を抜き出します。遺言書の検認、遺言への不服と遺留分の主張、不動産の時価の計算、相続登記、相続税の申告などです。
- それぞれの業務に対応する専門家(弁護士・税理士・司法書士・不動産鑑定士など)と、その具体的な役割を整理して答えます。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- FP実務では士業の独占業務に抵触しないよう、各士業の専門領域と連携先を把握しておく必要があります。
間違えやすいところ
- 行政書士は、争いのある遺産分割の交渉や、相続登記、相続税の申告を代理することはできません。役割を間違えないよう注意が必要です。
出題の前提:2025年6月8日実施のFP1級実技試験(資産相談業務)の出題条件および関連法規に基づきます。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

