日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartI)の概要
数次相続における遺産分割・納税資金対策および不動産の権利調整と法人化
不動産・相続・事業承継 · 数次相続 / 相次相続控除 / 小規模宅地等の特例 / 事業用定期借地権 / 不動産管理会社 / FPの職業倫理
設例に基づき、父Bさんおよび母Cさんの相次ぐ死亡(数次相続)に伴う顧客Aさんの相談内容・問題点を整理した上で、その解決策や具体的提案、留意点、およびFPとしての職業倫理について述べなさい。
解答・解説を表示
解答
顧客の相談・問題点(数次相続による税負担と納税資金不足、自筆証書遺言の執行と二次相続、借地権付土地の解約・換価の可否、不動産管理法人の活用形態)に対し、小規模宅地等の特例や相次相続控除の活用、遺言の確認と遺産分割の成立、底地の買主交渉、不動産管理会社の比較検討を提案し、専門家と連携しながら顧客利益の最大化と守秘義務を徹底する。
解説
数次相続(相続が続けて起きること)では、一次相続と二次相続の申告を同時に進める必要があります。同じ財産に短い間に何度も相続税がかかると、負担が重くなるからです。そこで、相次相続控除(続いた相続の税負担を軽くするしくみ)や小規模宅地等の特例を使えるかを確認します。定期借地契約の拘束力や法人化にかかるコストも考えて計画を立てます。
解き方
- 父Bの遺言書(法務局に保管)の内容を確認します。そして、母Cの死亡により母が受け取る予定だった相続分をどう扱うかを整理します。
- 小規模宅地等の特例(特定居住用と貸付事業用)や相次相続控除が使えるかを検討します。税理士と連携して納税額を試算します。
- 事業用定期借地権の契約書で、中途解約の条件を確認します。解約が難しいときは、底地(貸している土地)として売れるかを検討します。
- 不動産管理会社の形(管理受託・サブリース・不動産保有)の長所と短所を比べます。顧客の目的に合った提案を行います。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①父Bと母Cの数次相続に伴う遺産分割手続、相続税の申告・納税資金の不足懸念および相次相続控除の適用可否。 ②父Bの自筆証書遺言の有効性と、母Cの死亡により母が承継予定だった財産・保険金の帰属。 ③事業用定期借地権契約の中途解約および底地(貸付土地)の換価可能性。 ④テナントビルを活用した不動産管理会社設立方式の選択(サブリース方式か不動産保有方式か)と税負担軽減効果。
- 短期間で父と母が立て続けに死亡した数次相続が生じており、遺言内容の承継と二次相続税負担、多額の納税資金の調達が急務となっています。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①法務局保管の遺言書情報証明書の取得(検認不要)と、母C承継分の財産に関するA・D間での遺産分割協議の実施。 ②小規模宅地等の特例(同居のDによる特定居住用宅地等、貸付事業用宅地等)および相次相続控除を適用した税額圧縮のシミュレーション。 ③事業用定期借地権の中途解約制限の確認と、借地人Z社に対する底地買取の打診など換価手段の検討。 ④テナントビルの維持形態に応じた不動産管理会社の形態比較(管理委託・サブリース・保有)と所得分散シミュレーションの実施。
- 法務局保管制度の遺言は検認不要であり、特例適用による納税額の圧縮と、解約が原則困難な定期借地権の現実的な換価方策を検討する必要があります。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案】小規模宅地等の特例・相次相続控除を最大限適用した正確な相続税額試算と、定期借地権土地のZ社への底地売却打診、および当面は管理委託またはサブリース方式による不動産管理会社の設立。 【理由・留意点】事業用定期借地権は借地借家法上、合意のない一方的中途解約は不可であるため底地売却が現実的であること、また不動産保有方式は建物取得資金の調達や流通税・譲渡所得税が発生するため、まずは初期負担の少ない管理方式が適している点に留意する。
- 借地権契約を地主側から一方的に解約することは難しいため、契約内容を精査した上で底地譲渡を検討し、法人化も初期負担を考慮して段階的に進める必要があります。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:顧客の意向と利益を最優先にする「顧客利益の優先」、財産や家族状況などの機密を守る「守秘義務の遵守」、重要事項を十分説明し納得を得る「インフォームド・コンセント」、税理士法・弁護士法・宅地建物取引業法等を遵守し税理士や弁護士等の専門家と適切に協働する「専門職との連携および法令遵守」が求められる。
- FPが税務相談の個別具体的な税額計算や登記申請、紛争調停を直接行うことは法令違反となるため、関連士業と連携しつつ誠実な業務遂行が不可欠です。
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覚えるポイント
- 法務局に保管された自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が不要である。
- 事業用定期借地権は存続期間中の地主からの合意なき中途解約は原則としてできない。
- 数次相続では一次相続で課税された税額について二次相続で相次相続控除の適用が受けられる場合がある。
間違えやすいところ
- 定期借地権の契約は、地主側の都合だけですぐに一方的に解約できると勘違いすることです。
- 法務局に保管された自筆証書遺言でも、家庭裁判所の検認手続が必要だと誤解することです。
- FP自身が相続税の申告書を作ったり、個別の税額を計算したりしてしまうことです(税理士法違反になります)。
出題の前提:2025年6月8日実施 金融財政事情研究会 1級FP技能検定 実技試験(資産相談業務)Part I 設例
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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