日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月7日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客へのヒアリング情報とFPが調査・確認すべき情報
不動産・相続 · 顧客ヒアリング / 不動産調査 / 資金計画 / 生産緑地
大手企業勤務のAさん(47歳)は、母Eさん(75歳)と共有する甲土地・甲建物の自宅建替え(総額5,000万円)を計画しており、母Eさんが単独所有する隣接農地(乙土地:生産緑地で申出基準日経過、特定生産緑地未指定)の一部(乙-b土地180㎡)を売却(約5,400万円)して充当することを検討している。Aさんに最適な助言を行うため、追加で確認すべき情報を「①Aさんから直接聞いて確認する情報」「②FPであるあなた自身が調べて確認する情報」に整理して答えなさい。
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解答
①Aさんから直接確認する情報:母Eさんや家族の売却・建替えへの意向、母Eさんの農業継続の希望、保有資産・負債状況、将来の相続への考え方、住宅ローン利用意向等の資金計画。 ②FP自身が調べて確認する情報:土地建物の登記事項や境界・越境の状況、都市計画・建築基準法上の建築制限、生産緑地の買取申出の手続き・要件、売却時の譲渡所得税や贈与税等の税金、周辺の相場動向。
解説
不動産の有効活用や建替えの相談では、主観的情報と客観的情報の両面から分析することが基本です。まず、顧客や家族の意向・財務状況を直接聞き取ります。次に、公法上の制限・権利関係・税務上の影響を客観的資料や現地調査から確認します。理由は、どちらか一方だけでは正しい助言にならないからです。
解き方
- 設例に出てくるAさん、母Eさん、家族の権利関係や希望を整理し、直接聞くべき情報を洗い出します。
- 不動産の法令上の制限、生産緑地の手続き、税務(譲渡所得税・贈与税)など、FP自身が調べるべき項目を整理します。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:母Eさんをはじめとする家族全員の自宅建替えや土地売却に対する真の意向、母Eさんの畑仕事継続に関する意向と今後の生活設計、Aさんおよび母Eさんの保有金融資産や負債状況、将来の母Eさんの相続に関する考え方や意向、自己資金の充当や住宅ローン活用の可能性を含む資金調達計画。
- 所有者である母Eさんの財産処分や今後の生活に対する意向、家族の合意状況、資産状況や資金調達手段の選択肢を正確に把握するために必要な情報です。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:甲土地・乙土地の登記事項証明書や公図・地積測量図による権利関係・境界の確認、現地確認による道路状況や境界標・越境物の有無、建築基準法等の建築制限、自治体の生産緑地指定解除や買取申出の手続き要件、土地売却に伴う譲渡所得税や資金提供に伴う贈与税の発生可能性、周辺不動産の適正な取引相場。
- 法的主体や制限、売却に伴う税務リスク(母の土地売却代金で子の住宅を建てる場合の贈与税等)や行政手続を客観的に検証するために調査すべき事項です。
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覚えるポイント
- 家族関係・生活設計・資金意向は直接ヒアリングし、権利関係・公法規制・税務・相場はFP自ら調査・確認する。
間違えやすいところ
- 土地の所有者が母Eさんである点を見落とし、母から子へお金が移るときの贈与税の確認を忘れてしまうことです。
出題の前提:2025年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務)PartII設例
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
申出基準日を経過した生産緑地と特定生産緑地の違い
不動産・相続 · 生産緑地法 / 特定生産緑地 / 固定資産税の宅地並み課税 / 相続税の納税猶予
生産緑地について、指定から30年を経過した「申出基準日を経過した生産緑地(特定生産緑地の指定を受けていない生産緑地)」と「特定生産緑地」の違いについて、買取りの申出、税制上の取扱い(固定資産税、相続税の納税猶予)の観点から説明しなさい。
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解答
特定生産緑地未指定の申出基準日経過生産緑地は、いつでも市区町村長への買取り申出が可能となるが、固定資産税等は農地評価から段階的に5年で宅地並み課税へと引き上げられ、以後の相続で相続税の納税猶予の適用を受けられない。一方、特定生産緑地に指定された農地は原則10年間買取り申出ができないが、固定資産税の農地評価・農地課税が継続し、相続税の納税猶予の適用も引き続き受けることができる。
解説
生産緑地は、指定から30年たつと申出基準日を迎えます。特定生産緑地に指定されると、10年間の営農義務と優遇税制が保たれます。一方、指定を受けないと、いつでも買取りを申し出られる代わりに、固定資産税が大きく上がり、相続税の納税猶予を受けられなくなります。
解き方
- 買取りの申出の違いを比べます。いつでも申し出られるか、指定後10年間はできないかを整理します。
- 固定資産税などの保有税の違いを整理します。5年で宅地並み課税になるか、農地課税が続くかを確認します。
- 将来の相続で相続税の納税猶予が使えるかを整理します。使えないか、そのまま使えるかを確認します。
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覚えるポイント
- 特定生産緑地未指定の場合、固定資産税は5年間の激変緩和措置を経て宅地並み課税となり、相続税の納税猶予は受けることができない。
間違えやすいところ
- 特定生産緑地に指定されなくても農地課税が続くと間違えたり、相続税の納税猶予がいつでも受けられると混同したりすることです。
出題の前提:生産緑地法、地方税法、租税特別措置法第70条の4・第70条の6
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
土地売却資金による自宅建替え計画の問題点と解決策
不動産・タックスプランニング・相続 · 贈与税の発生リスク / 譲渡所得税と手取り額 / 特定生産緑地と解除手続き / 持分比率と資金計画
設例に基づき、Aさんの自宅新築および乙土地の一部売却計画における問題点と、その具体的な解決策について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
【問題点】①乙土地は母Eさんの単独所有であるため、売却代金(5,400万円)はEさんに帰属し、これをAさんの住宅建築費に充当するとEさんからAさんへの贈与とみなされ多額の贈与税が課される。②売却代金から諸費用や母Eさんの譲渡所得税・住民税が差し引かれるため、実際の手取り額が建築費5,000万円に満たない可能性がある。③特定生産緑地の指定を受けていない乙土地について、一部売却のための買取り申出や生産緑地の行為制限解除の手続きと時期の確認が必要である。【解決策】①新築建物を資金拠出割合に応じたAさんと母Eさんの共有名義にする、または住宅取得等資金の贈与の非課税特例や相続時精算課税制度、適正な金銭消費貸借契約を活用して贈与税負担を回避・軽減する。②譲渡所得税等を事前に精査し、手取り不足分については住宅ローンの借入れや手元資金の投入を検討する。③市区町村の窓口で生産緑地の買取り申出や分筆制限等の手続きスケジュールを速やかに確認する。
解説
不動産を売ったお金は、本当の所有者のものになります。そのお金をほかの人の建物の建築費に使うと、贈与税がかかります。また、土地を売ると税金がかかるので、手取り額を正確に知り、資金の負担に合わせて持分を登記することが大切です。
解き方
- 乙-b土地と甲建物の権利関係(所有者や持分)とお金の流れを整理し、贈与税のリスクを洗い出します。
- 乙-b土地の売却にかかる諸費用と譲渡所得税・住民税を計算し、手取り資金で建築費を払えるか確認します。
- 特定生産緑地に指定されていない場合の買取り申出の要件と、残った乙-a土地360㎡の営農・指定継続の要件を確認します。
- 共有名義登記、贈与税の非課税特例、相続時精算課税、親族間の融資、住宅ローンの借入れなどの解決策を出します。
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覚えるポイント
- 親の土地を売ったお金で子の家を建てると贈与税が発生するため、建物の持分共有や贈与特例の活用が必要である。
- 土地売却時は諸経費だけでなく譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別所得税)を引いた純手取額で試算する。
間違えやすいところ
- 売却代金5,400万円から費用300万円を引いた5,100万円で建築費5,000万円を払えると思い込み、多額の譲渡所得税を忘れてしまうことです。
- 母名義の土地の代金をそのまま子の建築費に使っても、親族なら贈与税はかからないと誤解することです。
出題の前提:2025年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2025年6月7日PartII)設例および現行の所得税法・相続税法・生産緑地法に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
計画の実行に関与する専門職業家
関連法規・FP倫理 · 士業の独占業務 / 税理士 / 土地家屋調査士 / 司法書士 / 宅地建物取引業者
設例において、Aさんの自宅新築および土地売却計画に関与する専門職業家(士業等)とその具体的な役割を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
①税理士:母Eさんの乙-b土地売却に伴う譲渡所得税の確定申告や税額試算、贈与税特例適用の検討および将来の相続税試算等の税務相談・申告を行う。②土地家屋調査士:乙土地の一部(乙-b土地)の分筆登記に伴う境界確定測量や分筆登記手続き、旧甲建物の建物滅失登記等を行う。③司法書士:乙-b土地の売買に伴う所有権移転登記、新築建物の所有権保存登記、必要に応じた住宅ローンの抵当権設定登記等の登記申請代理を行う。④宅地建物取引業者:乙-b土地の売買に関する媒介契約の締結、重要事項説明、買主との売買契約仲介業務を行う。⑤建築士・ハウスメーカー:新築建物の設計、建築確認申請、解体および建築施工業務を行う。
解説
FPは、顧客の課題解決のために幅広い助言を行います。ただし、各士業の法令上の独占業務(税理士法、弁護士法、司法書士法、土地家屋調査士法など)に気をつける必要があります。そのうえで、適切な専門職業家と連携して仕事を分担し、進めます。
解き方
- この事案で必要になる手続き(測量、分筆、売買の仲介、建築確認、登記、税務申告)を洗い出します。
- それぞれの手続きを担当する法律上の専門職業家を特定し、具体的な役割を整理します。
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覚えるポイント
- 表示に関する登記(分筆・滅失など)は土地家屋調査士、権利に関する登記(移転・保存・抵当権など)は司法書士が担当する。
- 税務書類の作成や個別具体的な税額試算・申告代理は税理士の独占業務である。
間違えやすいところ
- 分筆登記や滅失登記を司法書士の役割と間違えることです(表題部の登記は土地家屋調査士の仕事です)。
- 所有権移転登記や抵当権設定登記を土地家屋調査士の役割と混同することです。
出題の前提:2025年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2025年6月7日PartII)設例および各士業法(税理士法、司法書士法、土地家屋調査士法、宅地建物取引業法等)に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月7日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月7日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2025年6月 1級 実技(資産相談業務・6月7日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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