日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2025年2月 1級 実技(資産相談業務・2月9日 PartI PartII・PartI)の概要
設例の顧客(非上場会社オーナー)に対する事業承継・資産承継支援
資産承継・事業承継 · 事業承継対策 / 遺産分割対策 / 相続税・納税資金対策 / 小規模宅地等の特例 / FPの職業倫理
設例のAさん(68歳・X株式会社代表取締役社長)の相談内容に基づき、【検討のポイント】にある「設例の顧客の相談内容および問題点」「提案・方策」「提案する方策とその理由・留意点」「FPと職業倫理」について答えなさい。
解答・解説を表示
解答
設例における「相談内容および問題点」「解決のための提案・方策」「優先提案とその理由・留意点」「FPの職業倫理」について、事業承継・遺産分割・税務対策・士業連携の観点から総合的に回答する。
解説
オーナー企業の事業承継では、自社株式などの経営資源を後継者に集めながら、非後継者を含む相続人どうしの公平(遺留分など)も両立させることが根本原則です。なぜなら、どちらか一方だけを優先すると、争族や経営権の不安定を招くからです。また、分散した株式を集める手続や税制特例の活用では、会社法・税法に沿った正確な手続が必要です。
解き方
- 設例から、X社の株主の構成、後継者の二男Dさん、非後継者の長男Cさん、所有する資産、相続税の見込み額という現状を整理します。
- Eさんの死亡にともなう株式の売渡請求や、Fさんからの買取りの要望への対応手順を、会社法と財源規制をふまえて考えます。
- 遺留分でもめないように、公正証書遺言の作成や生命保険の活用、小規模宅地等の特例の要件を確認し、優先する提案をまとめます。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①後継者(二男Dさん)への経営権および自社株式の集約・承継対策が未完了であること。②急逝した専務取締役Eさんの所有株式(20%)に対する相続人への売渡請求の可否および取締役Fさん(10%)からの株式買取要請への対応(株式集約と買取資金の確保)。③長男Cさんへの財産不承継方針に伴う遺留分侵害額請求のリスク。④自筆証書遺言の保管制度を想定しているが、将来の遺産分割紛争リスクへの懸念。⑤多額の相続税負担(約1億7,000万円)に対する納税資金の準備不足。⑥自宅土地建物(1階空室・区分登記なし)および本社兼工場土地に関する小規模宅地等の特例適用の可否・影響。
- X社株式の30%が外部役員(Eさん・Fさん)に分散しており、経営権の安定化には株式買取りと資金手当てが必要です。また、長男Cさんに財産を渡さない方針は遺留分侵害による争族リスクを生じさせます。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①会社法に基づく売渡請求(定款変更の要否確認)または合意による自己株式取得を活用したEさん・Fさん持株の集約。②法人版事業承継税制(特例措置)の適用検討による自社株式に係る贈与税・相続税の納税猶予の活用。③公正証書遺言の作成による確実な遺言執行と、遺留分に関する民法特例(除外合意・固定合意)や生命保険(非課税枠および代償資金)の活用による遺留分対策。④役員退職金の活用による株価引き下げと納税資金準備。⑤小規模宅地等の特例(本社兼工場敷地の特定同族会社事業用宅地等、自宅敷地の特定居住用宅地等)の適用要件確認と最大活用。
- 分散株式の買取り手続きや、税制特例・民法特例の活用、生前贈与や生命保険などを複合的に組み合わせることで、経営権集約・遺産分割・相続税の諸問題を一体的に解決する方策が有効となります。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案】「Eさん・Fさんの所有株式の集約(会社による自己株式取得等)」および「公正証書遺言の作成と遺留分対策」。 【理由】第三者株主の株式が分散・流出した場合、二男Dさんの安定した経営権行使が脅かされるため早期の株式集約が最優先課題である。また、自筆証書遺言よりも実効性と安全性の高い公正証書遺言を作成し、長男Cさんの遺留分への配慮を行わなければ将来の親族紛争を招くため。 【留意点】株式の売渡請求を行うには定款の定めが必要であり、自己株式取得には分配可能額規制やみなし配当課税等の税務・法務上の制約がある。また、長男Cさんを完全に排除するのではなく、生命保険の死亡保険金受取人指定や代償交付資金の準備など、遺留分を侵害しない財産配分を慎重に設計する必要がある。
- 会社の支配権維持のための自社株集約が最も緊急性が高く、次いで同族間の争いを避けるための遺留分配慮を伴う遺言作成が実効性の高い優先提案となります。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:顧客の利益を最優先に考える「顧客第一主義」、相談内容や会社の財務・親族情報を外部に漏らさない「守秘義務の遵守」、提案内容やリスクを十分に説明し理解・同意を得る「インフォームド・コンセント」、法令を厳格に守る「コンプライアンスの徹底」、常に自己研鑽に努める「能力・資質の向上」が求められる。特に、具体的な税務申告・税額計算は税理士法、定款変更手続・登記は司法書士法、遺留分トラブルの法的対応は弁護士法に抵触しないよう、各専門家と緊密に連携(ネットワークの活用)して業務を行う必要がある。
- FPは各種業法(弁護士法72条、税理士法52条、司法書士法等)に留意し、独占業務範囲を侵さず専門家と協働しながら顧客利益を最大化する倫理姿勢が不可欠です。
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覚えるポイント
- 相続人に対する株式の売渡請求(会社法174条)には定款の定めと株主総会の特別決議が必要。
- 事業用宅地(特定同族会社事業用宅地等:400㎡まで80%減額)と特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)は完全併用が可能。
間違えやすいところ
- 長男が関心を示していないからといって遺留分侵害を無視すると、相続が始まった後に遺留分侵害額請求を起こされ、紛争になるおそれがあります。
- 自筆証書遺言の保管制度を利用しても、遺留分侵害額請求権を行使されること自体は防げない点に注意が必要です。
出題の前提:2024年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2025年2月9日実施 Part I)設例に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2025年2月 1級 実技(資産相談業務・2月9日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2025年2月 1級 実技(資産相談業務・2月9日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2025年2月 1級 実技(資産相談業務・2月9日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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