日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月28日 PartI PartII・PartII)の概要
不動産の有効活用および売却に向けた事前確認情報
不動産 · 顧客からのヒアリング事項 / 専門家・行政調査事項 / 私道・位置指定道路の権利関係
Aさん(55歳)は、夫Bさん(59歳)と甲-2土地の中古住宅(築46年、夫名義)に居住している。母親が亡くなり、実家である甲-4土地・建物と、空き家となっている賃貸住宅2棟が建つ甲-3土地を兄Cさんと各2分の1の持分で相続した。分譲地内では甲-1のEさんが売却を予定しており、甲-5のDさん宅では息子Hさんが二世帯住宅への建て替えを希望している。Aさん夫妻の今後の住まいや資産処分について最適な提案を行うため、①Aさんから直接聞いて確認する情報、②FP自身が調べて確認する情報として、それぞれどのような事項が必要か説明しなさい。
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解答
①Aさんから直接聞いて確認する情報として、Aさん夫妻の今後のライフプラン・住み替え先の希望(予算やエリア)、兄Cさんの意向(売却換価希望か否か)、夫Bさんの退職時期・退職金・住宅ローン等の資金状況、甲-1のEさんや甲-5のDさん・Hさん親子の意向や希望条件、取得時の契約書・権利証等の保有状況を確認する。②FP自身が調べて確認する情報として、本分譲地の登記事項証明書・公図・地積測量図による権利関係と境界確定状況、位置指定道路(幅員4.5m)の廃止要件や私道持分・接道状況、都市計画法・建築基準法上の制限(用途地域・建蔽率・容積率・斜線制限等)、周辺の土地・マンション取引相場やデベロッパーによる開発・等価交換の需要状況を行政機関や現地調査を通じて確認する。
解説
不動産の有効活用や売却を提案するときは、権利関係・境界・法規制(位置指定道路の扱いなど)・市場性を細かく調べることが欠かせません。なぜなら、土地は共有者や親族、隣接地の住民の意向や計画に大きく左右されるからです。そのため、本人の希望だけでなく、関係する人たちからも話を聞く必要があります。
解き方
- お客様から聞くこととして、家族の生活設計、資金の状況、親族や共有者・隣接地の人の意向、取得費の資料があるかを整理します。
- FPが自分で調べることとして、法務局での権利や境界の調査、特定行政庁での建築・都市計画の規制、現地調査、市場性の調査を整理します。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:Aさん夫妻のライフプランや住み替え希望(予算・購入希望マンションの条件)、兄Cさんの意向や希望(換金処分か取得希望か等)、夫Bさんの定年時期や収入・資産・住宅ローン残高等の資金状況、Eさん(娘Gさん)の売却条件や売却希望時期、Dさん・息子Hさんの二世帯建て替え計画の詳細、甲-2〜4の取得費が分かる売買契約書等の資料の有無。
- Aさん夫妻の今後の生活設計や予算を把握するとともに、共有者である兄Cさんの希望や、隣接地住民(Eさん、Dさん家族)の建替え・売却に関する具体的な意向、売却時の譲渡所得税計算に必要な取得費資料を確認する必要があります。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:登記事項証明書・公図・地積測量図による所有権や境界の確認状況、位置指定道路の現況・権利関係および道路位置指定の廃止可能性(特定行政庁の基準・隣接者の同意要件等)、接道義務や都市計画・建築基準法等の公法上の規制、本分譲地周辺のマンション用地・建売用地の取引相場やデベロッパーの需要動向。
- 法務局や市区町村役場等の行政窓口調査、現地調査を通じて、位置指定道路の廃止・宅地化の可否や法規制、境界確定の有無、市場における土地の需要や適正相場を客観的に精査・確認する必要があります。
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覚えるポイント
- 共有名義の不動産処分には共有者全員の同意が必要となるため共有者の意向確認が必須。
- 位置指定道路の廃止や変更には、原則として関係権利者全員の同意と特定行政庁の承認が必要。
間違えやすいところ
- お客様から聞いた情報と、自分で専門機関などで調べて確認すべき客観的な情報を混同してしまいます。
- 隣接地(Eさん・Dさん)の動きが一体活用の成否を左右する点を見落とし、Aさんだけの所有分に注目してしまいます。
出題の前提:2024年度第2回(2024年9月28日)金融財政事情研究会 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 実技試験(資産相談業務)PartII 設例質問事項1
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月28日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本分譲地における土地の有効活用策の検討
不動産 · 位置指定道路の廃止・敷地統合 / 等価交換方式 / 一体開発・売却
設例の本分譲地の土地について、Aさんと夫Bさんが取り得る、最も経済的価値が高まる有効活用として、どのような方法が考えられるか説明しなさい。
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解答
本分譲地の中央にある位置指定道路を廃止して宅地化し、売却予定のEさんの甲-1土地や建て替えを希望するDさんの甲-5土地(場合によってはFさんの甲-6土地も含む)と一体化させ、大手デベロッパー等による「等価交換方式によるマンション建設」を実施する手法、または敷地全体を一体としてデベロッパーへ一括売却する手法が最も経済的価値を高める方法として考えられる。等価交換方式を採用すれば、Aさん夫妻は自己資金の持ち出しなしで新築マンションの区分所有権を取得でき、残余床の売却代金や賃貸収入を得ることも可能となる。
解説
行き止まりの位置指定道路を廃止して土地を一つにまとめ、形を整えられれば、土地の経済的価値を大きく高められます。なぜなら、道路だった場所も宅地になり、容積率や建蔽率を最大限に使えるようになるからです。一戸建ての敷地としてばらばらに売るより、開発用の土地としての評価が高まります。
解き方
- 分譲地の中の権利関係と道路の形(袋小路の位置指定道路、南側の市道5mへの接道)を確認します。
- EさんやDさんなどの関係者の意向をふまえ、私道を廃止して街区を一つにまとめ、使える面積を広げられるか検討します。
- 周辺のマンション需要(1種当たり40万円/坪)を考え、等価交換方式か一括売却が最も価値を高める活用方法だと導きます。
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覚えるポイント
- 等価交換方式は、土地所有者が土地を提供し、デベロッパーが建築資金を拠出して建物を建て、出資割合に応じて土地・建物を区分所有する仕組み。
- 位置指定道路を廃止するには、接道義務を満たす代替措置や、私道利用関係者全員の合意および特定行政庁の承認が必要。
間違えやすいところ
- 甲-2や甲-3・甲-4だけを使ったり個別に売ったりするにとどめ、位置指定道路の廃止や隣接地(甲-1など)との一体化で得られる規模の利点を見落としてしまいます。
- 「売却する」「アパートを建てる」とだけ答えて、等価交換方式などの事業の方法や道路だった土地を宅地にすることにふれません。
出題の前提:2024年度第2回(2024年9月28日)金融財政事情研究会 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 実技試験(資産相談業務)PartII 設例質問事項2
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月28日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
所有不動産の売却に伴う課税関係
不動産 · 譲渡所得 / 居住用財産の3,000万円特別控除 / 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例 / 取得費加算の特例
設例において、Aさんと夫Bさんが本分譲地内に所有する不動産(甲-2土地・建物・私道持分、甲-3・甲-4土地・建物・私道持分)を売却した場合における課税関係について説明しなさい。
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解答
夫B所有分は長期譲渡所得となり「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用が検討できる。A所有分は被相続人の取得時期・取得費を引き継ぐ長期譲渡所得となり、甲-4(実家)は要件を満たせば「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(空き家特例)」または「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算の特例)」の適用が検討できる。甲-3(旧賃貸住宅)は空き家特例の対象外であるが取得費加算の特例等の適用余地がある。
解説
不動産の譲渡所得は分離課税で、所有期間が5年を超える長期と5年以下の短期で税率が変わります。相続した土地や建物は、亡くなった人の取得時期と取得費をそのまま引き継ぎます。また、住まいや亡くなった人の空き家を売る場合は特別控除などがあり、要件を満たすかの確認が欠かせません。
解き方
- 不動産の所有者ごとに所有期間を確認し、短期譲渡所得か長期譲渡所得かを判定します。
- 夫Bさんの自宅(甲-2)について、居住用財産の特例(3,000万円特別控除など)が使えるか確認します。
- Aさんが相続した実家(甲-4)と賃貸住宅(甲-3)について、相続空き家の3,000万円特別控除や相続税の取得費加算の特例が使えるか検討します。
答えの内訳
- 譲渡所得の区分および取得費・所有期間の引継ぎ:夫Bさん所有分・Aさん所有分のいずれも所有期間5年超の「長期譲渡所得」に該当する。
- 夫Bさんは7年前に甲-2を購入しているため長期譲渡所得となります。Aさんが相続した甲-3および甲-4は、被相続人の取得時期(1977年)と取得費を引き継ぐため、長期譲渡所得(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)に該当します。
- 夫Bさん所有不動産(甲-2土地・建物等)の課税の特例:「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の適用が受けられる可能性がある。
- 甲-2は夫Bさんの居住用家屋およびその敷地であるため、要件を満たせば譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できます。なお、所有期間は7年であるため「所有期間10年超の軽減税率の特例」や「特定の居住用財産の買換え特例」は適用対象外となります。
- Aさん所有不動産(甲-3、甲-4土地・建物等)の課税の特例:甲-4について「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(空き家特例)」、また甲-3・甲-4について「相続税の取得費加算の特例」が検討できる。
- 甲-4(実家)は1981年5月31日以前建築の要件等を満たし、更地渡し等の条件を整え売却価額が1億円以下等であれば3,000万円控除の特例が検討できます。また、相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年以内の譲渡であれば、納付した相続税額の一定割合を取得費に加算できる特例の選択・適用が可能です。ただし甲-3(旧賃貸住宅)は空き家特例の対象外です。
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覚えるポイント
- 相続取得した財産の譲渡所得計算では、被相続人の取得時期・取得費がそのまま引き継がれる。
- 空き家特例は被相続人が1人で居住していた昭和56年5月31日以前建築の家屋が対象で、譲渡対価1億円以下などの厳格な要件がある。
間違えやすいところ
- 居住用財産の軽減税率の特例(10年超)を、所有期間が7年の夫Bさんに使えると誤って判断してしまいます。
- 前は賃貸住宅だった甲-3にも、亡くなった人の居住用財産の3,000万円控除が使えると誤解してしまいます。
出題の前提:2024年9月28日実施のFP1級実技試験(資産相談業務)の出題条件および現行の租税特別措置法に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月28日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本事案に関与する専門職業家
不動産 · FP実務倫理 / 士業連携 / 専門職業家の役割
設例において、本分譲地における不動産の売却や一体開発等の有効活用を進めるにあたり、関与が想定される専門職業家を挙げ、それぞれの具体的な業務内容について説明しなさい。
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解答
税理士(譲渡所得の税務相談や申告書作成)、司法書士(所有権移転等の登記手続き)、土地家屋調査士(境界確定測量や分筆・合筆登記)、宅地建物取引士(売買媒介や売買契約の締結支援)、弁護士(共有持分や位置指定道路等に関する権利調整や紛争予防)、一級建築士(建物の耐震診断や有効活用・開発計画の設計)などが関与する。
解説
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、お客様の課題を解決するために総合的な助言をします。ただし、税金の申告や登記などは士業法などで独占業務と決められています。そのため、具体的な手続きや高度な専門判断は、それぞれの専門家と連携して進める必要があります。
解き方
- 不動産の売買、測量、登記、税務、法律の手続きの各段階で、必要になる専門分野を洗い出します。
- 洗い出した分野に対応する専門家(税理士、司法書士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、弁護士、一級建築士など)を挙げます。
- それぞれの士業法にある、弁護士や税理士でない人がしてはいけない行為の決まりに注意しながら、各専門家の役割と仕事の内容をはっきり書きます。
答えの内訳
- 税理士:譲渡所得税の税額計算、各種特例の適用要件確認、確定申告書の作成・提出などの税務代理業務を行う。
- 不動産売却に伴う3,000万円特別控除や取得費加算の特例適用の判断、具体的な譲渡所得税の試算および確定申告手続きを行います。
- 司法書士:売買や等価交換に伴う所有権移転登記や抵当権抹消登記等の権利に関する登記申請代理を行う。
- 不動産を売却・処分する際の所有権移転登記や、買換え物件取得時の登記手続きを代理します。
- 土地家屋調査士:境界確定のための測量、境界標の設置、土地の合筆・分筆登記や現況測量を行う。
- 位置指定道路の現況調査や、隣地との境界確定測量、一体開発や売却に必要な合筆・分筆登記手続きを行います。
- 宅地建物取引士:不動産の価格査定、買主の探索、売買契約締結に向けた重要事項説明および媒介業務を行う。
- 不動産会社として適正価格での売却媒介やデベロッパーとの交渉仲介、契約事務の円滑な進行を担当します。
- 弁護士:共有者(兄Cさん等)や私道共有者との権利調整、売買や共同開発等に係る各種契約書の法的精査を行う。
- 位置指定道路の廃止・再配置や一体売却に伴う近隣住民・共有者間の合意形成や法的な紛争予防を図ります。
- 一級建築士:本分譲地の一体開発や建替計画の立案、建築基準法上の道路・建蔽率・容積率等の法規チェックを行う。
- 敷地統合によるマンションや戸建住宅のボリュームチェック、耐震診断や解体計画の策定を担います。
覚えるポイント
- FPは税務相談(個別具体的な税額計算等)や登記申請代理などの士業独占業務を直接行うことはできず、専門家への橋渡しを行う。
- 不動産の有効活用や道路・境界が絡む事案では、土地家屋調査士と一級建築士の役割分担を正確に把握しておく。
間違えやすいところ
- 司法書士の仕事(権利に関する登記)と、土地家屋調査士の仕事(表示に関する登記や測量)を混同してしまいます。
- FP自身がお客様の具体的な税額計算や確定申告書の作成ができると答えてしまいます(税理士法違反)。
出題の前提:2024年9月28日実施のFP1級実技試験(資産相談業務)の出題条件および関連業法に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月28日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月28日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月28日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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