日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月22日 PartI PartII・PartII)の概要
相談者からのヒアリング情報およびFP自身による調査事項
不動産・相続 · 顧客ヒアリング / 現地調査・役所調査 / 不動産取引の事前確認
実家(甲土地・甲建物)を相続したAさん(相続人は子3名:Aさん、Cさん、Dさん)に対し、売却や遺産分割等について最適なアドバイスを行うために必要となる追加情報について、①Aさんから直接聞いて確認する情報、②FP自身が調べて確認する情報に整理して答えなさい。
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解答
①Aさんから直接確認する情報:父Bさんの遺言書の有無、父Bさんの債務や葬式費用、過去の生前贈与の有無、妹Cさん・弟Dさんの具体的な意向や換価分割への同意状況、父Bさんの過去の確定申告書控等の有無。 ②FP自身が調査する情報:甲土地・甲建物の登記事項証明書および公図・地積測量図・建物図面、役所での都市計画法・建築基準法上の制限・道路関係、周辺の取引相場・路線価・固定資産税評価証明書、空き家特例や取得費加算等の適用要件。
解説
不動産の相続と売却の相談では、情報を2種類に分けて整理するのが基本です。家族関係や本人の希望は、Aさんから直接聞かないと分かりません。一方、登記や法令の制限は、公的機関や公簿で客観的に確かめられます。この2つを分けて考えます。
解き方
- 問題の前提(相続人3名、均等分割の希望、売却の前提、取得費の書類紛失など)を押さえ、足りない権利・税務・分割の情報を洗い出します。
- 本人や親族からしか聞けない「直接確認する情報」と、公簿や役所の調査でFPが自分で集められる「自身で調査する情報」に分けて書きます。
答えの内訳
- ①:父Bさんの遺言書の有無、父Bさんの債務や葬式費用の有無、過去の生前贈与の有無、妹Cさん・弟Dさんの売却方針や均等分割(換価分割)への意向、父Bさんの過去の確定申告書控など取得費を証明できる資料の保管状況、希望する売却時期など。
- 相続人間でのトラブルを防止し、円滑な遺産分割協議と適正な税務申告を行うために、遺言の有無や相続人全員の合意状況、被相続人の債務・過去の贈与状況などを直接確認する必要があります。
- ②:甲土地および甲建物の登記事項証明書、公図・地積測量図、役所での都市計画制限・建蔽率・容積率・接道義務や道路種別・上下水道等インフラ埋設状況の確認、甲土地の境界確認状況、固定資産税評価証明書、路線価等の相続税評価額の確認など。
- 物件の権利関係や法規制、売却の障害となる境界未確定や越境等の有無、相続税額および譲渡所得税の試算に必要な公的評価額や道路関係をFP自身が関係機関で調査・確認します。
覚えるポイント
- 「顧客から聞く情報」は意思・合意・私的資料の有無、「FPが調べる情報」は登記・法令制限・公的資料・現況であると分類する。
間違えやすいところ
- 登記事項証明書のような公簿の取得を「顧客から聞く情報」に入れてしまう間違いです。
- 遺言の有無や他の共同相続人の意向の確認など、相続で欠かせない聞き取りを落としてしまう間違いです。
出題の前提:日本FP協会/金融財政事情研究会 1級実技試験(個人資産相談業務・資産設計提案業務)実務面接・記述基準
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月22日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
手取額を最大化するための売却方法と税制優遇のアドバイス
不動産・タックスプランニング · 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例 / 取得費加算の特例 / 手取額の最大化 / 画地分割売却
Aさんたちが甲土地を売却するにあたり、税金や諸経費を支払った後の手取額を最も高くするために、どのような売却戦略および税制特例の活用についてアドバイスを行うべきか記述しなさい。
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解答
戸建て分譲会社への一括売却(1億1,000万円)では「空き家に係る譲渡所得の特別控除」の要件(売却代金1億円以下)を満たさないため、甲土地が元々2画地である点を活かして分筆し、2期または複数相手に分割して売却して1億円以下要件を満たして特例(相続人3名で最大計6,000万円控除)を適用するか、分割せず一括売却して「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算の特例)」を選択するかについて、税理士等の専門家と連携して諸経費・税引き後手取額を詳細に比較・試算して有利な方法を選択するようアドバイスする。
解説
譲渡税の特例には、売却金額の上限があります。たとえば空き家特例は、売却代金が1億円以下でないと使えません。そのため、額面の売却価格だけで比べず、使える特例や解体・測量費用、仲介手数料をすべて入れた「税引後手取額」で比べることが欠かせません。
解き方
- 問題の売却条件を整理します(戸建て分譲会社への更地売却は1億1,000万円、個人への更地仲介は9,500万円、解体費用は約330万円、測量費用は約70万円)。
- 空き家特例の要件(1981年5月31日以前の建築、売却代金1億円以下、相続人3名以上で各2,000万円控除など)と、1億1,000万円で一括売却すると特例を受けられない問題点を洗い出します。
- 2画地をまとめて使っている土地の特徴をふまえ、分割売却や、相続税申告後の取得費加算の特例を使う場合とで、税引き後の手取り額を試算して示します。
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覚えるポイント
- 空き家特例は売却代金が1億円を超えると全額適用不可となる。
- 相続人が3名以上の場合は空き家特例の控除限度額が各2,000万円(合計最大6,000万円)となる点に留意する。
間違えやすいところ
- 1億1,000万円という売却価格だけを見て、安易に戸建て分譲会社への売却をすすめ、1億円を超えると空き家特例が使えないことを見落とす間違いです。
- 取得費加算の特例と空き家特例はどちらか一方しか選べず、一緒には使えないことを確認し忘れる間違いです。
出題の前提:租税特別措置法第35条第3項(空き家に係る譲渡所得の特別控除)、同法第39条(相続財産に係る譲渡所得の課税の特例)
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月22日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
古家付き現状有姿売却における留意点
不動産 · 現状有姿売却 / 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除 / 契約不適合責任
甲建物を解体せずに現状有姿(古家付き)のまま不動産会社等に売却する場合、売買条件や税務特例の適用に関してどのような点に気を付けるべきか説明しなさい。
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解答
空き家に係る3,000万円特別控除の適用要件(令和6年1月1日以降の譲渡では買主による翌年2月15日までの解体特約が必要、譲渡対価が1億円以下であること等)、買主が宅建業者である場合の契約不適合責任免責特約の締結、残置物の撤去責任や解体費用相当分の価格減額交渉への留意が必要である。
解説
建物を壊さず現状有姿で売る方法には、良い点と注意点があります。解体費用を先に出さずにすみ、近隣とのトラブルも避けられます。一方で、買主が宅地建物取引業者なら契約不適合責任を外せることや、空き家の譲渡所得の特別控除の要件(譲渡対価1億円以下、買主による解体期日の特約など)を満たすかを確かめる必要があります。
解き方
- 買主が宅地建物取引業者なら、民法上の契約不適合責任をすべて外す特約を付けられるか確認します。
- 令和6年1月1日以降の税制改正により、買主が解体する場合の空き家3,000万円特別控除の要件(翌年2月15日までの解体、譲渡対価1億円以下など)と、契約に特約が必要か確認します。
- 現状有姿で売ることで買取価格がどれだけ下がるかや、残った物の撤去費用を誰が負担するかの条件を比べます。
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覚えるポイント
- 空き家3,000万円特例は売却代金が1億円を超えると全額適用除外となる。
- 宅建業者が買主の場合、一般人売主の契約不適合責任を免除する特約は有効である。
間違えやすいところ
- 買主が解体する場合でも、売却代金が1億円を超えると特例がまったく使えないことを見落としがちです。
- 現状有姿で売るだけで、買主が解体する特約がなくても空き家特例が自動で使えると誤解しがちです。
出題の前提:2024年度第2回FP1級実技試験(資産相談業務)Part II 設例・法令基準(令和5年度税制改正後の空き家譲渡特例の拡充を含む)
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月22日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産取得費の確認資料紛失時における対応策
不動産 · 取得費不明 / 概算取得費 / 客観的推計資料
甲土地の取得に係る売買契約書や領収書を紛失している場合、譲渡所得の計算上、実際の取得費を立証または推計するためにどのような方策が考えられるか説明しなさい。
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解答
父の預金通帳等の出金履歴やメモ書きの確認、分譲会社X社や当時の仲介会社への分譲価格表等の照会、市街地価格指数・地価公示や当時の住宅ローン資料等の客観的資料を用いた推計取得費の算出と所轄税務署への事前相談が挙げられる。
解説
譲渡所得の計算で取得費が分からないときは、原則として概算取得費(譲渡価額の5%)を使います。ただし、これでは税負担が大きくなりすぎることがあります。そこで、昔の預金通帳の出金記録や、分譲会社の販売台帳・パンフレット・価格表の照会、市街地価格指数や着工建築費を使った推計など、客観的な代わりの資料を集め、所轄税務署に事前に相談して申告する方法が認められています。
解き方
- 父Bさんの自宅や昔の事務所などから、昔の預金通帳、取引銀行の借入金資料、メモの裏付けになる領収証の控えなどの手掛かりをもう一度探します。
- 分譲元の不動産分譲会社X社(または仲介会社Y社)に問い合わせ、当時の販売価格表や売買台帳の控えが残っていないか照会します。
- 客観的な資料が手に入らないときは、市街地価格指数や地価公示などの公的な指標を使って合理的な推計額を計算し、所轄税務署に事前に相談して確認します。
覚えるポイント
- 取得費が不明でも安易に概算取得費(5%)とせず、代替証明資料の探索を行う。
- 分譲会社に残された分譲当時の価格表や売買台帳は有力な客観的証拠資料となる。
間違えやすいところ
- 売買契約書などの原本がなければ、実額の取得費はまったく認められないとあきらめてしまうことです。
- 父の私的なメモ1枚だけで、税務署が無条件に実額の取得費として認めてくれると過信することです。
出題の前提:2024年度第2回FP1級実技試験(資産相談業務)Part II 設例・所得税法(譲渡所得の取得費および国税不服審判所裁決事例等に基づく実務対応)
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月22日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本事案に関与する専門職業家
不動産 · 士業の役割 / 専門職業家の連携 / FP実務倫理
父Bさんの相続および相続財産である実家(甲土地・甲建物)の売却・換価分割等を円滑に進めるにあたり、FPとして連携・関与を依頼すべき主な専門職業家とその役割について説明しなさい。
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解答
関与する主な専門職業家は、税理士、司法書士、土地家屋調査士、宅地建物取引業者(不動産仲介会社)等である。
解説
ファイナンシャル・プランナーは、自分で何でも行うのではなく、専門の職業家と連携して顧客の課題を解決していく必要があります。税理士法や司法書士法などの士業法では、資格がない人が行えない独占業務が決められています。そのため、資格のない業務は自分で行わず、適切な専門家を紹介したり協力したりします。
解き方
- 問題にある課題(相続税の申告、譲渡所得の課税、登記の手続き、境界確定の測量、不動産の売却など)を漏れなく洗い出します。
- それぞれの課題に対応する専門職業家(税理士、司法書士、土地家屋調査士、宅地建物取引業者など)と、その具体的な仕事の内容を整理します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 税理士(税務相談・申告)、司法書士(登記・遺産分割協議書作成支援)、土地家屋調査士(境界確定測量・表示登記)、宅地建物取引業者(売却媒介)の4士業・専門家が実技面接の定番回答となります。
間違えやすいところ
- 境界の確認や確定測量では「測量士」だけでなく、登記を伴う境界確定や分筆には「土地家屋調査士」が必要です。この2つを混同しないよう注意しましょう。
出題の前提:2024年9月22日実施 金融財政事情研究会 1級FP技能検定実技試験(資産相談業務)Part II 設例・質問事項5
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月22日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月22日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月22日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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