日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客へのヒアリング情報およびFP自身による調査情報の整理
不動産・相続 · 相談業務 / 情報収集 / 不動産共有 / 定期借地権
Aさんと弟Bさんが共有する甲土地(Aさん持分3/5、弟Bさん持分2/5)について、借地人であるX病院からの再契約(期間20年)の要望と、弟Bさんの自宅建替え資金調達のための売却希望が対立している。この事案において、Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、設例で示された情報以外に必要となる追加情報を、「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FPであるあなた自身が調べて確認する情報」に分類して説明しなさい。
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解答
①Aさんから直接聞いて確認する情報:弟Bさんとの関係性や協議状況、Aさん自身の今後のライフプランや資金需要、相続に対する意向、X病院側の条件変更余地(買取や賃料見直し等)。②FPである自身が調べて確認する情報:甲土地の登記事項や公図・境界確定の有無、都市計画・建築規制、周辺の取引相場・賃料相場、分筆売却の可否、甲土地および親族の税務・相続税評価額等の状況。
解説
不動産の相談業務では、顧客や関係者の意向・人間関係と、不動産の権利・法規制・市場実勢の両方を正しくつかんでから提案を組み立てます。どちらか一方だけでは、よい提案にならないからです。
解き方
- 顧客のAさん、親族の弟Bさん、借地人のX病院から、意向や関係性などの情報を聞き出して整理します。
- 不動産の権利関係、建築基準法や都市計画法の規制、実際の相場、税務など、自分で資料を調べて確認する事項を整理します。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:・弟Bさんの意向の詳細やこれまでの兄弟間の話し合いの経緯、感情的な対立の有無 ・Aさん自身の今後の生活設計、保有資産状況、子どもへの資産承継に対する意向 ・X病院側の意向(借地期間や借地料の再協議余地、甲土地の全部または弟B持分の一括買取希望の有無など)
- 共有者間の意見対立を調整し、かつ借地人であるX病院との合意形成を図るためには、弟Bさんの本当の意向や資金ニーズ、借地人である病院側の柔軟性・資力を顧客であるAさんからヒアリングすることが不可欠です。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:・甲土地の登記事項証明書、公図・地積測量図、境界確定状況および現況 ・甲土地の用途地域等の都市計画制限、接道要件、分筆可能性(分筆後の建築基準法適合性) ・甲土地周辺の地価公示、実勢相場、地代水準 ・甲土地の相続税評価額および分筆・売却に伴う税務上の影響(譲渡所得税等)
- 土地の単独処分や分筆売却、継続賃貸等の法的な可否および経済合理性を判定するためには、客観的な権利関係、接道状況、都市計画規制、周辺取引相場、税務面の影響を専門的に調査・検証する必要があります。
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覚えるポイント
- ヒアリング情報は「当事者の意向・関係性・資金需要」、調査情報は「公的規制・権利関係・相場・税額」に大別して回答を整理します。
間違えやすいところ
- 設例にもう書かれている数値や条件(今の地代、固定資産税、家族構成など)を、重ねて答えに書かないよう気をつけます。
出題の前提:2024年9月21日実施のファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)の出題条件に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2005年契約当時の事業用定期借地権の存続期間制限
不動産・法規制 · 借地借家法 / 事業用定期借地権 / 法改正
設例において、2005年に締結された甲土地の病棟所有を目的とする事業用定期借地権の存続期間が「20年」と設定されている。この存続期間が20年と比較的短い期間に制限されていた理由を説明しなさい。
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解答
契約が締結された2005年当時の旧借地借家法第24条の「事業用借地権」は、存続期間が「10年以上20年以下」と規定されており、20年が法律上の上限期間であったため。
解説
事業用借地権の存続期間は、制度ができた1992年には「10年以上20年以下」でした。2007年の改正(2008年施行)で「10年以上50年未満」に広がりました。このように制度の内容が変わってきた経緯があります。
解き方
- 契約を結んだ時期が2005年10月であることを確認します。
- 2007年の改正前の借地借家法第24条では、事業用借地権の存続期間は「10年以上20年以下」でした。この当時の上限が20年だったと判断します。
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覚えるポイント
- 2008年1月施行の改正前は「10年以上20年以下」のみであり、現行の事業用定期借地権等(10年以上50年未満)とは期間要件が異なっていた点に留意します。
間違えやすいところ
- 今の法律の「10年以上50年未満」というルールを、昔の契約にさかのぼって当てはめないようにします。単に当事者がそう決めただけだと間違えないようにします。
出題の前提:2005年(平成17年)当時の借地借家法第24条に基づく法令基準。
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
共有不動産の賃貸借契約・借地権設定における共有者の同意要件
不動産 · 共有物の管理・変更 / 事業用定期借地権 / 民法第251条
Aさん(持分5分の3)と弟Bさん(持分5分の2)が共有する甲土地について、借地人であるX病院から期間20年の事業用定期借地契約の再契約申入れがあった場合、Aさん単独で甲土地全体の事業用定期借地権の再契約を締結することができるか、民法の共有規定に基づいて判断しなさい。
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解答
Aさん単独では再契約することはできない。民法上、共有地の利用権設定(借地権設定)や処分行為には共有者全員の合意・同意が必要であるため、持分過半数(5分の3)であっても単独での契約締結は不可である。
解説
民法では、共有物の手入れ(保存)は各共有者が一人でできます。使い方の管理は持分の過半数で決められます。しかし、物を変えたり処分したりするには、共有者全員の同意が要ります。土地を5年より長く貸す契約は、処分・変更にあたるとされ、全員の合意が必要です。
解き方
- 共有者の持分(Aさんは5分の3、Bさんは5分の2)と、契約の期間が20年であることを確認します。
- 民法の共有の決まりで、変更行為は全員一致、管理行為は過半数と決まっています。これをもとに、Aさんが一人で再契約できるかを判断します。
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覚えるポイント
- 共有物の変更・処分行為には共有者全員の合意・承諾が必要である。
- 土地の賃貸借で5年を超える期間の契約設定は管理行為ではなく変更・処分行為に該当する。
間違えやすいところ
- 持分が5分の3(過半数)あるため、管理行為として一人で賃貸契約できると間違えやすいです。
- 更新や再契約でも、期間20年の借地権を設定するには共有者全員の同意が必要です。この点を見落としやすいです。
出題の前提:民法第251条(共有物の変更)、民法第252条(共有物の管理)
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
共有関係解消と当事者の希望を両立させる土地活用提案
不動産 · 共有物の分割 / 分筆と一部売却 / 持分の譲渡・買取り / 事業用定期借地権
賃貸継続を望むAさん、自宅建替え資金のために売却を望む弟Bさん、および引き続き存続を望むX病院の三者の意向を踏まえ、FPとしてAさんにどのような解決策・アドバイスを提示すべきか論述しなさい。
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解答
①甲土地を分筆してBさん所有分をX病院等に売却し、Aさん所有分はX病院に定期借地として賃貸を継続する案、②AさんがBさんの持分を買い取り単独所有としてX病院と再契約する案、③Bさんが金融機関からの融資等で建替え資金を調達し、安定した地代収入から返済に充てるよう説得する案、等をアドバイスする。
解説
共有のトラブルを解消する方法には、土地を分けてそれぞれのものにする方法、持分を売り買いする方法、お金で調整する方法などがあります。それぞれの資金の事情や、借地人が土地をどう使っているかをよく考えて、いちばんよい組み合わせを提案します。
解き方
- それぞれの希望を整理します。Aさんは地代収入の維持、Bさんは5,000万円の確保と資産の維持、X病院は病院の継続を望んでいます。
- 分筆して一部を売り一部を貸す方法、持分を売り買いする方法、借入金を地代で返す方法など、実現できる案を比べて示します。
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覚えるポイント
- 整形地1,000㎡であれば分筆しても十分な敷地規模が確保でき、資産価値を維持しやすい。
- 相手方の資金調達余力や病棟の配置状況を踏まえて分筆可能かを検討する必要がある。
間違えやすいところ
- Bさんの持分だけを第三者に売ると、価格が大きく下がるので現実的でない点を考えないこと。
- Aさん一人の借入や買取りだけでなく、土地の分割やBさんが融資を受ける案など、いろいろな提案を忘れがちであること。
出題の前提:民法第256条(共有物の分割請求)、不動産コンサルティング実務
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事案に関与する専門職業家とその役割
不動産・相続 · FP実務倫理 / 専門職業家の役割 / 士業連携
甲土地(Aさん持分3/5、弟Bさん持分2/5の共有)について、期間満了を迎える事業用定期借地契約の再契約を希望するAさんと、更地返還・売却して自宅建替え費用に充てたい弟Bさん、および継続賃借を要望するX病院との利害調整や今後の手続きを進めるにあたり、関与する専門職業家とその役割を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
本案件に関与する専門職業家として、土地の境界確定や分筆登記を行う土地家屋調査士、権利移転等の登記手続きを行う司法書士、譲渡所得税等の試算・申告を行う税理士、共有物分割や契約関連の法的助言・紛争解決を担う弁護士、適正な地代・不動産価格を算定する不動産鑑定士、土地の売買仲介を行う宅地建物取引業者などが挙げられる。
解説
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、顧客の利益のために幅広く助言します。しかし、弁護士法や税理士法などの法律で、法的な手続きや税務相談、登記申請を一人で行うことは禁じられています。そのため、複雑な共有の解消や不動産の売買・分筆では、各分野の専門家と協力することが欠かせません。
解き方
- 甲土地の共有の解消、分筆、売却、再契約など、Aさん・Bさん・X病院の間で出てくる具体的な課題(測量、登記、税務、契約、評価)を洗い出します。
- それぞれの課題に対応する専門家(土地家屋調査士、司法書士、税理士、弁護士、不動産鑑定士、宅地建物取引業者など)の役割をはっきりさせ、答えを組み立てます。
答えの内訳
- 土地家屋調査士:土地家屋調査士:甲土地の境界確定測量および分筆登記等の表示に関する登記申請手続きを行う。
- 甲土地を分筆してAさんと弟Bさんで単独所有とする場合などに、現地調査・境界確定測量を行い、分筆登記を代理・申請します。
- 司法書士:司法書士:共有物分割や持分移転、所有権移転登記など権利に関する登記手続きを代理する。
- 分筆後の持分移転や、土地の一部売買に伴う所有権移転登記など、権利部の登記申請手続きを専門に行います。
- 税理士:税理士:甲土地の売却・分筆・譲渡に伴う譲渡所得税等の試算や確定申告、住宅資金贈与等の税務相談を担う。
- 土地の譲渡所得税の計算、特例適用の可否判定、弟Bさんの自宅建替えに伴う贈与税や税務申告を適正に行います。
- 弁護士:弁護士:共有関係の解消に向けた兄弟間の協議・交渉、契約内容の法意確認や紛争予防・解決を担う。
- 共有者間での意見対立や利害調整、借地契約の更新・再契約に関する法的な解釈や紛争解決、合意書の作成等を行います。
- 不動産鑑定士・宅地建物取引業者:不動産鑑定士・宅地建物取引業者:適正な時価・地代の鑑定評価、土地の売却や買い取りに関する媒介・仲介を行う。
- 不動産鑑定士は分筆・等価交換時や地代改定時の適正評価を担い、宅地建物取引業者はX病院等への売買仲介業務を担います。
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覚えるポイント
- FP業務では他士業の独占業務(非弁・非税理士行為・非司法書士行為等)への配慮が不可欠であること
- 分筆には「土地家屋調査士(表示登記)」、権利移転には「司法書士(権利登記)」の連携が必要であること
間違えやすいところ
- 土地の分筆登記を司法書士の仕事と混同してしまうこと(表示の登記は土地家屋調査士だけができる仕事です)。
- 専門家の名前を並べるだけで終わらせず、この案件でそれぞれがどんな役割を担うかを説明しないと不十分です。
出題の前提:2024年度第2回(2024年9月21日実施)FP技能検定1級実技試験(資産相談業務・PartII)設例および面接試問課題に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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