日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartI)の概要
Part I 検討のポイント(被相続人急逝に伴う準確定申告・相続税申告および生前贈与・インボイス制度の検討)
資産相談業務(実技試験) · 準確定申告 / 相続税申告 / 相次相続控除 / 小規模宅地等の特例 / 生前贈与加算 / インボイス制度
【設例】2024年8月に急逝したAさんの相続に関する相談である。Aさんの法定相続人は、同居する妻Bさん(65歳・無職)、長男Cさん(40歳・銀行員)、長女Dさん(35歳・舞台役者)の3人である。 Aさんは一昨年(2022年)に交通事故で亡くなった兄Eさん(持家・独居)の唯一の相続人として財産6,100万円(現預金4,000万円、金1,000万円、自宅敷地300㎡ 1,000万円、自宅建物100万円)を相続し、相続税の申告・納税を完了していた。 その後Aさんは、今年(2024年)6月に兄Eさんから相続した住宅建物を解体してその敷地を2,000万円で売却し、金(ゴールド)も価格高騰を受けてすべて1,400万円で売却していた。Aさんの療養に要した入院費用等は死亡後の9月に支払われている。 Aさんの相続財産は現預金9,800万円、上場株式9,300万円、自宅敷地(400㎡)6,000万円、自宅建物(築15年)900万円の合計2億6,000万円(小規模宅地等の減額前、配偶者控除前、兄Eさんからの相続財産売却代金等を含む)であり、相続税額は4,320万円(各種特例適用前)と見積もられている。 遺言書はなく、相続人全員で自宅敷地・建物および現預金の一部を妻Bさんが相続し、残りを長男Cさんと長女Dさんが等分で相続することに合意しているが、具体的な分割手続、申告手続、名義変更の手順が分かっていない。 また、長女Dさんは年収250万円程度で、Aさんから最近10年間に毎年200万円の暦年贈与(申告済み)を受けていた。さらに所属事務所から年内のインボイス登録を要請されているが判断できずにいる。 本設例における「検討のポイント」の4項目について答えなさい。
解答・解説を表示
解答
1. 顧客の相談内容および問題点:Aさんの準確定申告(土地・金の譲渡所得、医療費控除)の手続と期限、遺産分割協議書の作成と相続税申告・納付手続(相次相続控除、小規模宅地等の特例、生前贈与加算の適用等)、長女Dさんのインボイス登録要否の判断。 2. 提案・方策:準確定申告の期限内実施、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例等の適用による税額軽減と分割協議書の作成、相次相続控除の適用、長女Dさんへの暦年贈与加算の精査、免税事業者としてのインボイス登録要否の試算検討。 3. 最優先の提案とその理由・留意点:準確定申告と相続税申告に向けた専門家(税理士等)との連携支援。準確定申告は相続開始を知った日の翌日から4か月以内という短い期限があるため最優先で着手する必要がある。 4. FPと職業倫理:顧客の利益の優先、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント、関係法令の遵守(税理士法に配慮し具体的な税務申告書作成や税額計算は提携税理士と連携すること)。
解説
相続が起きたら、所得税の準確定申告と相続税申告を並行して進めます。準確定申告の期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内で、相続税申告は10か月以内だからです。短期間に相続が続いたときは相次相続控除を検討します。また、配偶者軽減や小規模宅地等の特例を正しく使い、税負担を減らします。生前贈与加算やインボイス制度などの税制改正も踏まえた助言が大切です。
解き方
- 設例の出来事の順番、家族構成、財産、生前の取引(土地売却、金売却、暦年贈与)を整理します。
- 期限が近い手続き(4か月以内の準確定申告)と、各資産の譲渡所得や医療費の扱いを整理します。
- 相続税申告での分割の方針、相次相続控除、小規模宅地等の特例、贈与税加算などの適用要件を確認します。
- 長女Dさんのインボイス制度への対応の論点、FPとしての職業倫理、士業との連携方針をまとめます。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①Aさんの死亡に伴う所得税の準確定申告(土地売却や金売却に係る譲渡所得の申告、死亡後に支払った入院費用等の医療費控除の可否等)の手続および期限の把握。 ②Aさんの相続税の申告・納付手続、および遺産分割協議書の作成や財産の名義変更手続。 ③相次相続控除や小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減等の特例適用の可否と税負担軽減策の検討。 ④長女DさんがAさんから受けていた過去10年間の暦年贈与に関する生前贈与加算の範囲の確認。 ⑤長女Dさんの所属事務所からのインボイス登録要請に対する登録の要否判断および影響の把握。
- Aさんは2024年8月に急逝しており、同年中に土地と金を売却して多額の譲渡益が生じているため準確定申告が必要です。また、兄Eさんからの相続開始から短期間であるため相次相続控除の適用、自宅敷地に対する特定居住用宅地等の適用、長女Dさんへの生前贈与加算、インボイス登録判断など多岐にわたる問題点が存在します。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①準確定申告の期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内)に向けた書類収集と申告(9月支払の医療費は準確定申告ではなく相続財産からの債務控除として処理)。 ②相続人全員の合意内容に基づく遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記(義務化への対応)および預貯金・株式等の名義変更手続の実施。 ③相次相続控除の適用による相続税額の控除、妻Bさんが取得する自宅敷地への小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額)および配偶者の税額軽減の適用。 ④長女Dさんへの贈与について、相続開始前3年超7年以内の贈与加算(2024年1月1日以降の加算ルールおよび総額100万円控除の確認)の正確な反映。 ⑤長女Dさんの免税事業者継続と課税事業者選択(インボイス登録・2割特例の活用など)の試算・比較検討。
- 被相続人の所得税準確定申告と相続税申告の双方を期限内に進めるとともに、税負担を適正に軽減する各種特例の活用を提案します。また、法改正された贈与税加算期間やインボイス制度の経過措置も考慮したアドバイスを行います。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案内容】 税理士をはじめとする専門家と早期に連携し、準確定申告および相続税申告に向けたスケジュール管理と手続きを支援すること。 【理由】 準確定申告の期限が「相続開始を知った日の翌日から4か月以内」(2024年12月頃)と相続税申告(10か月以内)よりも早く到来するため、速やかな資料収集と税務判断が必要不可欠であるため。 【留意点】 Aさんが死亡後に支払った入院費用等の医療費は準確定申告の医療費控除の対象にはならず、相続税申告において債務控除(または妻Bさんらが支払った医療費控除)として扱う点に留意する。また、兄Eさんの相続税申告書等の控えを取り寄せ、相次相続控除を確実に計算・適用することに留意する。
- 準確定申告は期限が4か月以内と極めて短いため最優先で対応する必要があります。また、相続開始後に支払われた医療費の税務上の取扱いや、過去の相続資料の引き継ぎなど実務上の留意点を押さえることが重要です。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:①顧客利益の優先(クライアント・ファースト):顧客および相続人全員の意向を尊重し、公正かつ中立な立場で最善の解決策を提示すること。 ②守秘義務の遵守:相談業務を通じて得た顧客や親族の資産・所得・健康等の個人情報を厳重に管理し、外部に漏洩させないこと。 ③インフォームド・コンセント:提案内容や選択肢、メリット・留意点について顧客に丁寧かつ分かりやすく説明し、納得と同意を得て進めること。 ④関係法令の遵守(コンプライアンス):税務申告書の作成や個別具体的な税務相談は税理士法に抵触するため、提携する税理士と連携して業務を行うこと。
- ファイナンシャル・プランナーとして相談業務を行うにあたり、顧客利益の最大化、秘密保持、説明と同意、および税理士法・弁護士法・司法書士法などの他士業関連法令の遵守が不可欠です。
覚えるポイント
- 準確定申告の期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内である。
- 死亡後に相続人が支払った被相続人の医療費は、準確定申告の医療費控除には含められず、相続税の債務控除(または支払った相続人の医療費控除)となる。
- 10年以内に被相続人が相続により財産を取得し相続税を納めていた場合、相次相続控除を適用できる。
間違えやすいところ
- 亡くなった後に支払った入院費や医療費を、準確定申告の医療費控除に入れてしまう誤りです。
- 兄からの相続が2年前なのに、相次相続控除の検討を忘れてしまうことです。
- 税理士資格のないFPが、税務申告書の作成や具体的な税額計算を一人で行うと、税理士法違反になります。
出題の前提:2024年度(2024年9月実施)ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)の法令基準・出題条件に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年9月 1級 実技(資産相談業務・9月21日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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