日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月16日 PartI PartII・PartI)の概要
前妻の子への遺留分対策・空き家実家処分および生前贈与の検討
不動産・相続・事業承継 · 相続人の範囲と遺留分 / 公正証書遺言 / 相続土地国庫帰属制度 / 生前贈与等の税務特例 / FPの職業倫理
個人で不動産賃貸業を営む82歳のAさんは、資産3億円(現預金8,000万円、自宅、賃貸アパート2棟、月極駐車場、郷里の実家空き家)を所有している。家族構成は現在の妻B(76歳)、長女C(52歳、二世帯住宅で同居)、二女D(50歳、今秋結婚予定)に加え、56年前に離婚した前妻との間に35年以上音信不通の子E(60歳)、子F(58歳)がいる。Aさんは前妻や子E・Fに財産を相続させたくないと考えており、郷里の築55年空き家実家の国による引き取り制度の利用や、二女Dへの挙式・新居建築資金の援助を希望している。この状況における問題点、解決策、優先提案および留意点、FPの職業倫理について検討しなさい。
解答・解説を表示
解答
前妻の子への遺留分侵害額請求対策としての公正証書遺言の作成、実家の相続土地国庫帰属制度利用に向けた要件確認、二女への各種贈与特例の活用と敷地利用の検討、および士業連携と職業倫理の遵守。
解説
離婚した前の配偶者に相続権はありません。しかし、その人との間の子は第一順位の法定相続人となり、遺留分を持ちます。そのため、遺産分割協議でもつれないように、遺言書の作成がとても役立ちます。また、相続土地国庫帰属制度を使うには、更地にするなどの要件を満たすかと、費用に見合うかを確かめる必要があります。
解き方
- 法定相続人を確認し、法定相続分と遺留分を整理します。配偶者Bは2分の1、長女C・二女D・子E・子Fは各8分の1で、遺留分はそれぞれ法定相続分の半分です。
- 連絡が取れない相続人がいると、遺産が凍結されるおそれがあります。これを踏まえ、遺言執行者を指定した公正証書遺言の作成を中心に対策を考えます。
- 築55年の空き家である実家の状態から、相続土地国庫帰属制度の要件(建物の解体、境界の確定など)を確かめます。あわせて、二女への贈与の特例や建築の制限も検討します。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①前妻には相続権がないが、前妻の子E・Fは第1順位の法定相続人(法定相続分各8分の1、遺留分各16分の1)であり、音信不通のため遺言がないと遺産分割協議が成立しないこと。②Aさんが子E・Fに財産を渡したくないとしても遺留分侵害額請求権を排除できないこと。③郷里の実家が空き家で維持管理負担があり、国庫帰属制度利用の適格性(建物解体や境界確定等)の確認が必要なこと。④二女Dへの挙式費用や新居建築資金援助に伴う贈与税課税および特別受益の問題。⑤自宅敷地内に新居を建てる場合の建築基準法(接道義務・容積率・建蔽率)の適合性。⑥約4,700万円の相続税および遺留分弁済資金の確保。
- 離婚した前妻は配偶者ではないため相続権はありませんが、前妻との間の子E・Fは実子であり、妻B、長女C、二女Dとともに共同相続人となります。遺言書が存在しない場合、全員による遺産分割協議が必須となるため遺産凍結のリスクがあります。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①公正証書遺言を作成し、妻B・長女C・二女Dに財産を承継させ遺言執行者を指定すること。②子E・Fからの遺留分侵害額請求に備え、遺留分算定の基礎財産や価格を把握し、金銭で支払えるよう現預金を確保すること。③相続土地国庫帰属制度の利用検討(建物を解体して更地化、境界確認、負担金の算出)や空き家バンク・隣地所有者への売却打診。④二女Dへの資金援助について「結婚・子育て資金の一括贈与非課税特例」や「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」の活用検討。⑤自宅敷地の分筆または敷地権設定における建築士等の専門家への相談。⑥生命保険の非課税枠の活用や小規模宅地等の特例を念頭に置いた分割設計。
- 遺留分を完全に侵害する遺言も有効ですが、遺留分侵害額請求がなされた場合は金銭賠償義務が生じるため、請求に応じるための現預金を現受取人に残す工夫が必要です。また相続土地国庫帰属法では建物が存する土地は引き取り対象外となります。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案】最優先で「公正証書遺言の作成(遺言執行者指定・付言事項の付記)」を提案する。併せて「実家の建物解体・現況確認による国庫帰属制度の事前調査」および「二女Dへの非課税贈与特例の適用要件確認」を提案する。 【理由・留意点】子E・Fと音信不通である以上、遺言がないと預金解約や不動産登記が不可能になるため遺言作成が急務である。留意点として、子E・Fの遺留分(各16分の1)を考慮した財産配分・金銭準備を行うこと、付言事項で心情を伝えること。また実家の国庫帰属は更地化費用・負担金(原則20万円等)の費用対効果を見極める必要があること、自宅敷地への新居建築は二女Dの意向確認とともに建築確認・贈与税上の名義関係を適正に整理する必要があること。
- 遺言の存在がなければ法定相続分に応じた分割協議が必要となり、行方不明の場合は不在者財産管理人の選任等の煩雑な法的手続きが必要となります。そのため遺言執行者を指定した遺言書作成が最優先の防衛策となります。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:①顧客利益の優先(クライアント・ファースト):Aさんおよび家族の意向と生活設計を最優先に考慮したプランを策定する。②守秘義務の遵守:相談で知り得た親族関係や資産状況等の機微な個人情報を厳格に管理・保護する。③説明義務(インフォームド・コンセント):各対策のメリットだけでなく、遺留分侵害額請求のリスクや解体費用・負担金などのコストを十分に説明し納得を得る。④専門職・関連士業との連携とコンプライアンス(法規制の遵守):具体的な遺言書作成・紛争予防は弁護士、相続税試算や税務申告は税理士、相続登記や国庫帰属代行は司法書士・土地家屋調査士、敷地要件確認は建築士等の各専門家と連携し、非弁行為・無資格税務代理を行わない。
- FP業務においては、ファイナンシャル・プランナー自身の職務範囲を自覚し、税理士法、弁護士法、司法書士法等の業法を遵守しつつ、他士業とチームを組んでワンストップで顧客の課題解決を支援する姿勢が不可欠です。
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覚えるポイント
- 離婚した前妻に相続権はないが、前妻との間の子は嫡出子として実の親子関係が存続し相続権・遺留分がある。
- 相続土地国庫帰属制度は建物がある土地、担保権が設定されている土地、境界が不明な土地等は申請できない。
間違えやすいところ
- 前の妻との子と長く連絡が取れなくても、法律上の相続権や遺留分がなくなることはありません。
- 相続土地国庫帰属制度は、建物を残したままでは使えません。建物の解体費用と、審査手数料・負担金がかかります。
出題の前提:2024年6月16日実施のファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)PartⅠの出題条件および施行中の法令に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月16日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月16日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月16日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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