日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)の概要
動物病院の法人化・事業承継および遊休地活用・遺産分割対策
不動産・相続・事業承継(実技面接PartI) · 法人成り / 事業承継 / 土地有効活用 / 住宅取得等資金の贈与特例 / 遺産分割対策 / FPの職業倫理
個人で動物病院を営むAさん(65歳・獣医師、妻Bさん62歳、長男Cさん35歳・獣医師、長女Dさん33歳)について、次の4つの検討のポイントに基づき、具体的な課題、解決策、優先提案内容、およびFPの職業倫理について述べなさい。 1. 設例の顧客の相談内容および問題点 2. それらの相談内容および問題点を解決するための提案・方策 3. それらの方策(解決策)のなかで提案する内容、その理由・留意点 4. FPと職業倫理
解答・解説を表示
解答
1. 法人成りの適否・効果、駐車場用地へのテナントビル建築(個人・法人名義)、長男Cさんへの事業承継と事業用資産の移転、長女Dさんへの住宅資金援助、相続税負担(約1億3,000万円)と納税資金・遺産分割対策、非上場X社株式の買取対応などが問題点となる。 2. 法人設立(法人成り)のシミュレーション、テナントビルの収益性検証と所有主体の比較検討、長男Cさんへの事業用資産承継(個人版事業承継税制の検討や生前贈与・遺言)、長女Dさんへの住宅取得等資金の非課税特例の活用、X社株式の適正譲渡価額の算定、遺言書作成や生命保険を活用した代償分割対策・納税資金確保を提案する。 3. 法人成りおよび事業承継の準備、テナントビル建築の事業採算性の精査、住宅資金贈与の活用を優先提案する。理由として所得分散効果・相続財産圧縮効果と円滑な承継準備が挙げられ、留意点として役員報酬設定、法人設立・維持コスト、空室リスクや建築費高騰、遺留分への配慮、贈与特例の要件充足を確認することが必要である。 4. 顧客の利益の最優先、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント(丁寧な説明と同意)、顧客の自己決定権の尊重、コンプライアンス(税理士法等の関連法規遵守、弁護士・税理士・不動産鑑定士等の専門家との適切な連携)が求められる。
解説
個人事業主でも所得が高い人は、法人成りすると所得税と将来の相続税を軽くできます。役員報酬を家族に支払って所得を分けたり、給与所得控除を使ったり、退職金を積み立てたりできるからです。また、後継者への円滑な事業承継と、相続が起きたときの遺留分・納税資金の確保には、生前贈与の特例・公正証書遺言・生命保険を組み合わせることが大切です。
解き方
- まず、家族構成・保有資産(総額5億円、現預金・不動産・株式)・所得状況(年間3,000万円超)と、顧客のそれぞれの希望を漏れなく整理します。
- 次に、法人成り・土地活用・事業承継・住宅取得資金の贈与・相続対策などの課題ごとに具体的な方法を考え、提案する理由・留意点・FPの倫理・専門家との連携をまとめます。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①動物病院の法人成りによる所得税・将来の相続税の軽減効果の検証、②月極駐車場へのテナントビル建築における事業採算性と個人・法人名義の判断、③後継者である長男Cさんへの事業用資産(土地・建物・設備等)の円滑な承継準備、④長女Dさんの分譲マンション購入に伴う資金援助方法、⑤高額な相続税(約1億3,000万円)に対する納税資金対策および将来の遺産分割対策、⑥知人Eさんからの非上場X社株式買取申出への対応と評価額確認。
- Aさんの年間所得は3,000万円を超えており所得税負担が高く、総資産5億円・相続税見込額約1億3,000万円と試算されるため、早期の節税・納税・遺産分割対策が課題です。また長男Cさんへの事業承継や長女Dさんへの住宅取得援助、駐車場へのビル建築計画、非上場株式の売却など多角的な論点が存在します。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①法人設立(動物病院の法人化)による所得分散(役員報酬等)・経費化・退職金準備等のシミュレーション、②テナントビル建築の収支計画策定と個人所有・法人所有(土地保有・建物所有方式等)の比較検討、③個人版事業承継税制の適用検討や事業用資産の生前贈与・譲渡スケジュールの策定、④住宅取得等資金の贈与税非課税特例や相続時精算課税制度の活用、⑤公正証書遺言の作成や生命保険加入による遺留分・納税資金・代償資金対策、⑥税理士等によるX社株式の適正譲渡価格の算定と売却手続き。
- 高所得であるため法人化による節税余地が大きく、不動産の活用形態や事業承継の枠組み、生前贈与非課税特例の活用、遺留分を侵害しない円満な遺産分割と納税資金の確保を各専門家と連携して包括的に検討します。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案内容】動物病院の法人成りシミュレーションの実施および長男Cさんへの事業承継計画の策定、長女Dさんへの住宅取得等資金の贈与特例の活用を優先提案する。【理由】Aさんの所得税負担軽減と長男・妻への所得分散が図れ、事業の継続的発展と長女の住み替え希望を早期に叶えられるため。【留意点】法人設立・運営コスト(社会保険料負担や均等割等)、事業用資産の譲渡所得税等の負担、テナントビル計画における建築費高騰・空室リスク、長男と長女の受贈額バランス(遺留分への配慮)に留意する。
- 現状の喫緊の課題である所得税・将来の相続税負担の軽減と、長男への事業承継の準備着手、長女からの直近の相談である住宅購入援助を優先して提案します。リスク要因として法人維持費用や賃貸経営リスク、将来の相続紛争リスクを防止するための配慮を伝達する必要があります。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:①顧客第一主義(顧客の利益の最大化を常に最優先する)、②守秘義務の遵守(業務上知り得た顧客および家族・事業の秘密・個人情報を漏洩しない)、③インフォームド・コンセント(提案内容・リスク・費用等について十分な説明を行い顧客の理解と同意を得る)、④顧客の自己決定権の尊重(最終判断は顧客自身に委ねる)、⑤関連法規の遵守(税理士法・弁護士法・宅地建物取引業法等を遵守し、業法に抵触する具体的税額計算や法的手続きは提携する各専門家と連携して遂行する)。
- ファイナンシャル・プランナーとして相談業務を行うにあたり、顧客との信頼関係維持や法令遵守(コンプライアンス)が必須です。特に実務の個別具体的な税務判断や契約手続きは税理士や弁護士等の専門職と協働して行う必要があります。
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覚えるポイント
- 実技面接(PartI)の検討のポイント4項目(問題点、解決策、提案・留意点、職業倫理)の型を標準化して整理する。
- 小規模宅地等の特例や個人版事業承継税制、住宅取得等資金の贈与特例の適用要件を押さえる。
間違えやすいところ
- テナントビルの建築で必要になる借入金や、空室・金利上昇のリスクを見落としてしまう点です。
- 税務の申告書や法的書類の作成をFP自身ができるかのように答えてしまい、税理士法・弁護士法に触れてしまう点です。
出題の前提:2024年6月15日実施 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 実技試験(資産相談業務)PartI 設例
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月15日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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