日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月9日 PartI PartII・PartII)の概要
相談者へのヒアリング事項および調査・確認事項
不動産・相続相談実務 · 顧客ヒアリング / 現地・公法調査 / 親族間調整
地方中核都市のX市で賃貸マンションに暮らすAさん(48歳)は、妻Bさんの父Eさん(82歳)が所有する甲土地・老朽空き家(甲建物)について、取壊し後の賃借および戸建て新築を検討している。Aさんに対して最適なアドバイスを行うために必要な追加情報について、示された情報のほかにどのような情報が必要か、①Aさんから直接聞いて確認する情報、および②FP自身が調べて確認する情報に整理して説明しなさい。
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解答
①新築住宅の建築・資金計画、義父Eさんや親族(妻Bさん、義兄Fさん、義姉Gさん)の意向や関係性、今後のライフプラン。②甲土地・建物の登記事項証明書等の権利関係、固定資産税課税明細書、公法上の制限(接道・法令規制)、現地の境界や現況、解体費用等の見積額。
解説
不動産の活用や親族間の土地の利用・相続の相談では、聞き取る情報と自分で調べる情報を、もれなく集めて分析することが適切なアドバイスの土台になります。なぜなら、資金計画や親族の意向は本人に聞かないと分からず、登記や法令の制限・現地の状況・税金は客観的に調べないと分からないからです。
解き方
- 相談者であるAさんから直接聞くべき情報(希望・資金・親族の意向や関係性)を洗い出して整理します。
- FP自身が公的機関や現地で調べるべき情報(権利関係・法令の制限・現況・費用)をはっきりさせます。
小問ごとの答え
- 小問 ①:新築住宅の規模・希望時期・自己資金および住宅ローンの調達計画、義父Eさんへの相談時期や意向、他の推定相続人(妻Bさんの兄Fさんや姉Gさん)との関係性および同意の有無、Aさん世帯の今後のライフプラン。
- 相談者であるAさんから直接聴取すべき事項としては、住宅の新築にかかる資金計画や希望条件のほか、土地所有者である義父Eさんの真意や他の相続人(Fさん、Gさん)との感情面・遺産分割方針をめぐる意向の確認が重要となります。
- 小問 ②:甲土地および甲建物の登記事項証明書・公図・地積測量図、固定資産税課税台帳(名寄帳)および固定資産税評価額、現地の現況(境界標の有無や越境、ゴミ投棄状況)、接道要件や用途地域等の法令上の制限、建物解体費用の見積額。
- FP自身が調査・確認すべき事項として、権利関係(所有権以外の担保権設定の有無等)や法規制、固定資産税等の公租公課の負担水準、再建築にあたっての道路付けや解体に要する実費用の把握が不可欠です。
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覚えるポイント
- 親族間での不動産取引・利用では、他の推定相続人の意向や将来の遺産分割争いリスクを事前に把握することが最重要事項の一つです。
間違えやすいところ
- 法令や登記の調査ばかりに気をとられ、家族関係や推定相続人の意向の聞き取りを忘れやすいので注意します。
出題の前提:2024年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年6月9日)PartII 設問1
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月9日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
管理不全空き家に対する固定資産税の住宅用地特例解除制度
不動産 · 空家等対策特別措置法 / 管理不全空家 / 固定資産税等の住宅用地特例
設例において、Aさんが義父Eさんに伝えた「管理不全空き家というものに該当してしまうと税金が高くなる」という制度の概要について説明しなさい。
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解答
空家等対策特別措置法に基づき、放置すれば特定空家になるおそれのある空家が「管理不全空家等」として市区町村長から指導を受け、改善されず勧告を受けた場合、その敷地について固定資産税・都市計画税の住宅用地に係る課税標準の特例(小規模住宅用地の6分の1減額等)の適用が除外され、税負担が増加する制度。
解説
人が住むための建物の土地には、固定資産税と都市計画税が軽くなる「住宅用地の課税標準の特例」が使えます。しかし、空家等対策特別措置法により、市区町村から「特定空家等」や「管理不全空家等」として勧告を受けた土地は、この特例が使えなくなります。空き家をそのまま放置させないためです。
解き方
- 空家等対策特別措置法による「管理不全空家等」になる条件(放置すると特定空家等になりそうな状態)を確認します。
- 市区町村長から勧告を受けたときの税のペナルティ(固定資産税などの住宅用地特例が使えず税負担が増えること)を整理して書きます。
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覚えるポイント
- 2023年12月施行の改正法により、「特定空家等」の手前の段階である「管理不全空家等」の勧告でも住宅用地特例が解除されるようになりました。
間違えやすいところ
- 「特定空家等」と新しくできた「管理不全空家等」を混同したり、指導の段階で特例が解除されると間違えたりしないよう注意します。
出題の前提:2024年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年6月9日)PartII 設問2、改正空家等対策の推進に関する特別措置法(2023年12月13日施行)
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月9日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
親族間での土地賃借に伴う借地権の認定課税および相続税評価
不動産・相続 · 借地権の認定課税 / 貸宅地の相続税評価 / 相当の地代 / 土地の無償返還に関する届出書
Aさんが、義父Eさんに権利金等の授受を行わず通常の地代で甲土地を普通借地し、税務署に届出等をしなかった場合における、以下の事項について答えなさい。 ①数年後にEさんが死亡し、相続税額の計算上、甲土地を貸宅地として評価する場合の相続税評価額の算出方法 ②甲土地を貸宅地として評価した場合に課税上生じる可能性のある問題点
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解答
①甲土地の相続税評価額=自用地評価額×(1-借地権割合[50%])。②権利金慣行のある地域で無償返還の届出等の適正手続きをせず通常の地代とした場合、借地権設定時に借地権相当額の贈与があったものとみなされ、借地人であるAさんに贈与税が課税(認定課税)される問題が生じる。
解説
借地権の取引慣行がある地域で土地を貸すとき、権利金をもらわず通常の地代だけを受け取ると、原則として権利金相当額を贈与したとみなされます(借地権の認定課税)。これを避けるには、相当の地代(更地価額の年6%程度)を受け取るか、土地の無償返還に関する届出書を税務署に出す必要があります。権利金を受け取らないことを、借りた人への贈与と同じとみなすためです。
解き方
- 甲土地の路線価図から借地権割合が50%(記号E)だと読み取り、貸宅地の相続税評価額は「自用地評価額×(1-借地権割合)」で求めます。
- 権利金を払わず、無償返還届出書も出さずに、地代を払う賃貸借をしたときの税務リスク(借地権の認定課税)を判断します。
小問ごとの答え
- 小問 ①:自用地評価額×(1-借地権割合)
- 甲土地の所在地域は「借地権の取引慣行のある地域」で路線価図記号は「100E」(借地権割合50%)です。甲土地を貸宅地として評価する場合の評価額は、「自用地評価額×(1-借地権割合)」によって算出されます。
- 小問 ②:借地権設定時に借地権相当額の贈与があったとみなされ、Aさんに贈与税の認定課税が生じる問題がある。
- 借地権の慣行がある地域で権利金等を支払わずに通常の地代(固定資産税の2〜3倍程度等)で賃借し、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出していない場合、権利金相当額の贈与を受けたとみなされ、借地人Aさんに多額の贈与税(借地権の認定課税)が課されるリスクがあります。
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覚えるポイント
- 親族間での土地賃貸借では「相当の地代」を支払うか「土地の無償返還に関する届出書」を提出しないと借地権認定課税の対象になります。
- 固定資産税相当額以下の支払いにとどまる場合は「使用貸借」となり借地権認定課税は生じない一方、相続税評価額は自用地評価となります。
間違えやすいところ
- 通常の地代を払っていれば認定課税を避けられると思いがちですが、実際には相当の地代か無償返還届出書の提出が必要です。
- 使用貸借と賃貸借(権利金なし)では、借地権の認定課税と土地の相続税評価額の扱いが正反対になるので、間違えないよう注意します。
出題の前提:相続税法、昭和48年直資2-58通達(相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて)
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月9日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本事案に関与する専門職業家とその役割
FP実務・倫理 · 専門職業家の役割 / 士業連携 / 業法遵守
本事案(甲建物の解体・空き家対策、甲土地の利用・建築計画、親族間での賃貸借・税務検討、将来の相続対策等)に関与する専門職業家およびその主な役割について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
税理士(税務相談・相続税試算)、司法書士(滅失登記・権利登記)、土地家屋調査士(現況測量・境界確認)、弁護士(遺産分割協議・契約書チェック)、建築士(新築住宅の設計・建築確認申請)、不動産鑑定士(土地の適正評価等)が挙げられる。
解説
FPは、法令で資格者だけに認められた独占業務を守りながら、各分野の専門家と連携して事案を進める必要があります。FPはお客様のライフプランや資産設計を総合的に支えますが、税理士法・司法書士法・弁護士法などで資格者だけができる業務は行えません。そのため、各専門家とよく協力することが大切です。
解き方
- 設例から出てくる実務の課題(空き家の解体、測量・登記、新築の設計、賃貸借による税務リスク、将来の相続トラブル対策)を洗い出します。
- それぞれの課題に対応する専門家(税理士、司法書士、土地家屋調査士、弁護士、建築士など)をあげ、具体的な仕事の内容を整理します。
答えの内訳
- 税理士:税理士
- 甲土地の賃貸借契約に伴う借地権認定課税の確認、空き家解体後の固定資産税への影響、将来のEさんの相続税試算や税務申告など、税務全般に関する相談や具体的な税額計算を行います。
- 司法書士:司法書士
- 甲建物の解体に伴う建物滅失登記、Aさんが新築する住宅の所有権保存登記、甲土地への権利設定登記や、将来のEさん死亡時の相続登記など、法務局への登記申請業務を担当します。
- 土地家屋調査士:土地家屋調査士
- 甲建物の表題部滅失登記の申請手続きや、甲土地を有効利用・建築するにあたっての隣地境界の確認、必要に応じた境界確定測量等を行います。
- 弁護士:弁護士
- 土地賃貸借契約書の法的なリーガルチェック、同居する兄Fさんや姉Gさんとの将来の遺産分割争い・遺留分トラブルを防ぐための遺言書作成の支援や法的な調整を行います。
- 建築士:建築士
- Aさん家族の希望に応じた戸建て住宅の設計プランニング、建蔽率・容積率等の建築基準法適合性の確認、建築確認申請の代理や工事監理業務を行います。
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覚えるポイント
- FP実務試験における面接では、専門職業家の名称だけでなく、顧客の事案に応じた具体的な業務内容と士業法遵守の観点を述べることが重要です。
間違えやすいところ
- FP自身が登記手続きや個別の税務申告を代わりにできると勘違いしないよう、独占業務との境をはっきり意識して答える必要があります。
出題の前提:FP倫理規程、税理士法、司法書士法、弁護士法、土地家屋調査士法、建築士法
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月9日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月9日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月9日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

