日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)の概要
相談者からの収集情報と調査事項の整理
不動産 · 顧客ヒアリング / 現地調査・権利関係調査 / 不動産有効活用
甲土地および賃貸マンション(甲建物)を所有するAさんは、隣接する乙-1土地を甲建物入居者専用駐車場として賃借している。地主の死亡に伴い相続人Cさんから賃料増額要求や契約無効の主張を受けている本設例において、Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、提示された情報のほかに必要となる情報を「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FP自身が調べて確認する情報」に整理して説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
①Aさんから直接確認する情報:今後の甲建物の経営方針や保有方針、乙-1土地の賃料増額や買取りへの具体的な希望条件(予算・許容限度額)、甲建物入居者の駐車場利用状況および近隣での代替駐車場の確保可能性、手元資金の状況や金融機関からの融資借入条件など。②FP自身が調べる情報:乙土地の公図・登記事項証明書・地積測量図等の権利関係、乙-1土地の賃借権の対抗要件(登記の有無等)、現行の賃貸借契約書の内容(更新条項や解除要件)、乙-1土地および乙-2土地の道路付け・接道状況(間口や接道路線価等の個別格差)、周辺の月極駐車場や土地売買の取引相場、固定資産税・都市計画税の課税状況など。
解説
不動産の相談では、お客様から直接聞く情報と、専門家である自分が調べる情報の両方を集めて比べることが大切です。お客様の希望や資金の状況は、本人に聞かないと分かりません。権利関係や契約の内容、市場の相場などは、公的な書類などで客観的に確かめる必要があります。
解き方
- 問題の状況から、Aさんの希望や事業を続ける計画、資金を集める力など、本人に直接聞くべきことを書き出します。
- 乙土地の権利関係や契約書の内容、道路とのつながり方、市場の相場など、自分で調べるべきことを整理して答えを作ります。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:今後の甲建物の経営方針・保有計画、乙-1土地の賃料増額受入れや購入に関する希望条件(予算限度額)、駐車場入居者の利用実態や代替駐車場の確保見込み、金融機関からの融資条件など。
- 相談者Aさんの真のニーズと経済的許容度を把握するため、賃貸マンション事業の継続意思、駐車場の必要台数・代替性、賃料増額や買取りの予算枠、融資可能額等を直接確認する必要があります。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:乙土地の登記事項証明書や公図、乙-1土地の賃借権の対抗要件、現行の賃貸借契約書(契約期間・更新条項・解除要件等)、接道条件(幅員・間口・路線価等の個別要因)、周辺の賃料相場・売買相場、固定資産税評価額など。
- 法的権利関係や経済合理性を検証するため、公簿書類の権利状況、賃貸借契約書条項、乙-1と乙-2の接道状況等の個別格差、路線価や固定資産税等の公租公課を客観的に調査・確認する必要があります。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- ヒアリング項目は「顧客の意向・資金状況」、独自調査項目は「権利関係・公法上の規制・現地接道条件・市場相場」に大別して整理する。
間違えやすいところ
- Aさんに聞くことと、FP自身が公的な書類や現地などで調べることを混ぜないよう、分類に気をつけます。
出題の前提:2024年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務)PartII 設例および質問事項1
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
乙-1土地と乙-2土地の賃料単価格差に対する見解と理由
不動産 · 土地賃料 / 接道条件 / 土地の個別的要因 / 用途の差異
乙-1土地の賃料単価(290円/㎡)と乙-2土地の賃料単価(363円/㎡)に差があることについて、どのように考えるか、その理由とともに説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
乙-1土地と乙-2土地の賃料単価に差があることは妥当(おかしくない)と考える。その理由は、①接道条件の相違(乙-2土地は東側が幅員15mの特定道路である県道に広く接面し路線価も200千円/㎡と高いのに対し、乙-1土地は南側の幅員6mの市道のみに接面し路線価が145千円/㎡であること)、②賃貸借目的や利用形態の違い(乙-2は家電量販店の大規模な顧客専用駐車場で事業用としての収益貢献度が高く、乙-1は共同住宅入居者専用の月極駐車場であること)、③契約締結時や管理上の負担条件の違い(乙-1は駐車場の整備費用を賃借人であるAさん側が負担していること等)など、土地の個別的要因や契約内容に明確な格差が存在するためである。
解説
土地の適正な賃料は、隣り合う土地でも同じ単価になるとは限りません。なぜなら、接する道路の幅や路線価、便利さ、使い道、借りた人の費用負担など、いろいろな条件を合わせて決まるからです。
解き方
- 問題の図から、乙-1土地(南側の市道6mに接し、路線価は145千円/㎡)と乙-2土地(南側の市道6mと東側の県道15mに接し、路線価は200千円/㎡)の道路の接し方と路線価の差を確かめます。
- 使い道(家電量販店の店舗駐車場か、マンションの入居者用駐車場か)や管理の負担(乙-1は借りた人が整備の費用を負担)を比べ、賃料の差がある理由を説明します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 賃料単価の差異を検討する際は、接道条件(幅員・方角・路線価等)、用途・目的、敷地形状、整備負担などの契約条件に着目する。
間違えやすいところ
- 「隣の土地で同じ時期に借りたのだから同じ賃料であるべき」という相手方(Cさん)の言い分をそのまま信じず、道路の接し方や路線価などの客観的な違いを指摘します。
出題の前提:2024年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務)PartII 設例および質問事項2
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
乙-1土地の売買価格(相続税評価額の2倍)の妥当性と対応
不動産 · 土地の売買価格 / 相続税評価額と実勢価格 / 不動産鑑定評価
設例において、乙土地を相続したCさんから「乙-1土地を相続税評価額の2倍の価格であれば売ってもよい」との発言があった。この発言についての考え方およびAさんがとるべき対応を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
Cさんの提示額は周辺相場を大きく上回り過大であるため、適正な実勢価格を把握したうえで交渉すべきである。
解説
土地の相続税評価額は、地価公示価格の約8割をめどに決められています。そのため、評価額の2倍という価格は実際の相場を大きく超えた高すぎる要求になります。取引では、適正な時価を知ることが欠かせません。
解き方
- 路線価と周辺の相場(坪60万円)から、乙-1土地の客観的な市場価格をだいたい計算して比べます。
- 「相続税評価額の2倍」という要求額が周辺の相場から大きく離れていることと、金融機関が融資してくれるかどうかを確かめます。
- 不動産鑑定士の鑑定評価などの客観的な根拠をもとに、適正な価格で交渉する方針を考えます。
覚えるポイント
- 相続税評価額(路線価)は公示価格の約80%水準で設定されているため、その2倍は実勢相場から大幅に乖離する。
間違えやすいところ
- 「相続税評価額は時価より低いから2倍でもよい」と間違えて考え、周辺の相場や金融機関の担保評価とのずれを見落とすことです。
出題の前提:2024年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務)PartII設例に基づく出題条件
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
賃貸人の死亡と土地賃貸借契約の効力(相続人の包括承継)
不動産 · 土地賃貸借契約 / 賃貸人の地位の承継 / 民法上の相続
設例において、乙土地を相続したCさんから「この契約は親父がしたものだが、親父が亡くなった時点で効力が無くなっているはずだ」との発言があった。この発言についての法的な考え方を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
Cさんの発言は法的に誤りであり、賃貸人の地位は相続人であるCさんに包括承継されるため契約は有効に存続している。
解説
不動産の賃貸借契約では、賃貸人の立場や契約上の権利・義務は、その人だけに限られたものではありません。そのため、賃貸人が亡くなっても契約は終わらず、相続人がそのまま引き継ぎます。
解き方
- 賃貸借契約での賃貸人の立場が相続の対象であり、その人だけの権利ではないことを、民法の決まりに基づいて確かめます。
- 亡くなったBさんの死によって契約は消えず、すべてを引き継いだCさんに効力が及ぶことを判断します。
覚えるポイント
- 賃貸借契約の賃貸人・賃借人の地位は原則として相続人に承継され、当事者の死亡のみで終了しない。
間違えやすいところ
- この件が駐車場の用地(建物を持つことを目的としない青空駐車場)であることから、借地借家法が使えるかどうかと、民法上の契約の引き継ぎを混同してしまうことです。
出題の前提:民法第896条(相続の一般的効力)および2024年度第1回FP1級実技試験PartII設例条件
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本事案に関与する専門職業家
不動産・法務・税務 · 専門職業家の役割 / 士業連携 / 不動産権利調整
設例において、Aさんが直面している乙-1土地の賃貸借契約の効力や賃料改定の要求、乙-1土地の買取交渉・境界確定・分筆等の課題を円滑に解決・遂行するために、関与が想定される専門職業家とその具体的な業務内容について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
本事案に関与する主な専門職業家は、弁護士(賃貸借契約の効力や賃料増額・買取交渉に関する法的助言・代理)、不動産鑑定士(乙-1土地の適正賃料や適正な売買価格の鑑定評価)、土地家屋調査士(乙土地の境界確定測量や乙-1土地の分筆登記)、司法書士(売買に伴う所有権移転登記)、税理士(購入に伴う資金・税務処理や確定申告、将来の相続税対策への助言)等である。
解説
不動産の賃貸トラブルや価格交渉、土地の分筆・売買などが重なる問題では、ファイナンシャル・プランナー(FP)は法律に触れないよう自分の仕事の範囲を守る必要があります。そのうえで、各専門家だけができる仕事を正しく理解し、適切な専門家と協力して総合的に助言します。
解き方
- この事案で起きている具体的な課題(法律上の争い、適正な価格や賃料の計算、土地の分筆、所有権の移転、税金の問題など)を整理します。
- それぞれの課題に対応できる資格を持つ専門家(弁護士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、税理士など)の役割をはっきりさせます。
覚えるポイント
- 不動産売買や権利調整の事案では、弁護士・不動産鑑定士・土地家屋調査士・司法書士・税理士の5大専門職の役割を網羅して答える。
間違えやすいところ
- 司法書士と土地家屋調査士の仕事の範囲を混同し、境界の確定や分筆の登記を司法書士の仕事と間違えないよう注意します。
出題の前提:2024年度第1回 FP技能検定1級実技試験(資産相談業務・2024年6月8日 PartII)設問5
出典:金融財政事情研究会『2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年6月 1級 実技(資産相談業務・6月8日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

