日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客への助言に必要な収集情報の整理
不動産・事業承継 · 顧客ヒアリング / 物件調査 / 事業転換 / 法人清算
Aさん(65歳)と弟Bさん(63歳)は、共有(各持分1/2)する甲土地上の同族会社X社(持分各50%)所有建物で赤字経営が続くディスカウントストアを営んでいる。不動産会社Y社から1億8,000万円の賃貸アパート建築を提案されたが、Aさんは借入額を半分程度に抑えたい意向があり、弟Bさんとの共有解消も懸念している。Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、示された情報のほかに収集すべき情報を、①Aさんから直接確認する情報、②FP自身が調べて確認する情報に整理して説明しなさい。
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解答
①Aさんおよび弟Bさんの事業転換や会社清算・借入・土地共有解消に関する意向、家族構成や生活資金需要。②甲土地・建物の登記情報や公図、建築基準法・都市計画上の制限、X社の詳細な財務諸表、周辺賃貸市場や戸建て用地としての市場動向・売却査定価格。
解説
不動産の有効活用や事業転換を進めるときは、聞き取る情報と自分で調べる情報の両方を集めることが大切です。お客様の希望や暮らしの計画は、直接たずねて確認します。登記や法令の制限、市場の相場、会社の財務などは、FP自身が資料で確かめます。
解き方
- 設例の内容から、Aさんと弟Bさんの関係、土地の共有持分、同族会社の運営方針、家族の状況など、直接聞くべきことを洗い出します。
- 土地の形や法令上の条件、賃貸市場のようす、X社の清算に伴うお金と税金の情報など、FPが自分で調べるべきことを整理します。
答えの内訳
- ①:Aさんから直接聞いて確認する情報:Aさんおよび弟BさんのX社の廃業・清算に対する意向、賃貸アパート経営への積極性やリスク許容度、建築資金(自己資金・借入金)の負担に対する弟Bさんの考え、Aさん・Bさんの家族構成および推定相続人の意向、将来の生活資金計画やリタイア後の生活費の確保状況。
- 土地建物の共同所有者かつ同族会社の共同株主である弟Bさんと合意形成を図るため、双方の事業承継・リタイアや共有解消に関する希望・家族関係を詳細にヒアリングする必要があります。
- ②:FP自身が調べて確認する情報:甲土地・甲建物の登記事項証明書、公図、地積測量図による権利関係と現況の確認、建築基準法や都市計画法上の制限(道路後退・建蔽率・容積率・斜線制限等)、賃貸アパートの市場需要・周辺相場家賃・競合状況、X社の直近3期分の決算書・勘定科目内訳明細書(清算時の残余財産や税金コストの把握)、甲土地を分筆・売却する場合の流通性や査定価格。
- 専門機関・公的資料・現地調査等を通じて、敷地の法令上の建築制限、アパート事業の採算性、既存法人の財務状態や解散・清算に伴う課税負担、土地分筆売却の実現性を客観的に精査します。
覚えるポイント
- 実技面接・論述における情報収集は「顧客への直接ヒアリング(意向・家族・資金)」と「公的資料・現地調査等の客観的調査」に大別して整理する。
間違えやすいところ
- 会社の財務(決算書)や建築基準法の制限など、FP自身が調べるべき項目を、お客様への聞き取りだけにまとめてしまうことです。
出題の前提:2023年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年2月18日実施)PartII 問1
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
土地の無償返還に関する届出書の意義と税務上の効果
タックスプランニング · 土地の無償返還に関する届出書 / 借地権の認定課税 / 相当の地代 / 相続税評価
同族会社X社は甲建物の新築時に当時の甲土地所有者(父Cさん)との間で賃貸借契約を締結し、公租公課相当額の地代を支払うとともに「土地の無償返還に関する届出書」を所轄税務署長に提出している。この届出書の手続にはどのような税務上の意義があるか説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
借地権設定に伴う権利金の支払いや相当の地代の授受がない場合でも、将来土地が無償で返還されることをあらかじめ税務署に届け出ることで、法人側に対する権利金相当額の認定課税(受贈益課税)を防ぐ意義がある。また、税務上は借地権が存在しないものとして扱われ、土地所有者の相続税評価では自用地評価となる。
解説
法人が役員などから土地を借りるときは、決められた手続をすれば借地権の認定課税を避けられます。権利金をやり取りせず、公租公課相当の地代だけを払っている場合でも同じです。契約の終わりに更地で無償返還することを、土地の持ち主と法人が連名で税務署に届け出ておく必要があります。
解き方
- 個人の土地を同族の会社に貸したときの、権利金と地代の税務上のきまり(認定課税のリスク)を確かめます。
- 「土地の無償返還に関する届出書」を出したときの、法人税の利点(認定課税の回避)と相続税の土地評価(自用地評価)を整理します。
答えの内訳
- 権利金の認定課税の排除:法人と土地所有者との賃貸借契約において、権利金や相当の地代の授受がない場合に生じる借地権認定課税(借地権相当額の受贈益課税)を回避できる。
- 権利金の授受が慣行となっている地域で権利金等を支払わずに土地を借り受けると、通常は借地権の贈与があったものとして借地権認定課税が行われますが、無償返還届出書を提出することでこれを防ぐことができます。
- 税務上の借地権評価と相続税評価:税務上、法人側に借地権の計上は不要(借地権価額はゼロ)となり、地代が公租公課相当額(通常の地代)の場合、土地所有者側の相続税評価額は「自用地」として評価される。
- 本届出を提出している場合、借地権は法人の資産として認識されず、契約終了時に無償で返還されるため、底地の相続税評価においても借地権割合による控除は行われず、自用地として評価されます。
覚えるポイント
- 無償返還届出書を提出すると権利金の認定課税は生じないが、地代が公租公課相当にとどまる場合の貸宅地の相続税評価は「自用地評価」となる。
間違えやすいところ
- 無償返還の届出書を出していれば、地代が公租公課相当でも相続税で貸宅地評価(借地権割合の控除)を受けられる、と誤解してしまうことです。自用地として評価される点に注意します。
出題の前提:2023年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年2月18日実施)PartII 問2
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
甲土地の建築費借入縮小策および土地共有状態の解消策
不動産 · 土地有効活用 / 共有物分割 / 等価交換方式 / 土地の分筆
設例に基づき、甲土地の有効活用にあたってAさんが希望する建築費借入額(Y社提案の約1億8,000万円の半分程度)に抑えるための具体的な方法と、Aさん・弟Bさんの甲土地の共有状態を解消するためのアドバイスを説明しなさい。
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解答
借入額縮小策として「甲土地の一部売却資金の充当」「X社内部留保金(約5,000万円)の活用」「等価交換方式の採用」「計画規模の縮小」が考えられます。共有状態解消策としては「甲土地の分筆による現物分割」や「持分の譲渡・買取り」を助言します。
解説
土地の共有は早めに解消し、建築資金は借入に頼りすぎない工夫が大切です。共有の土地は、管理や処分に全員の同意が必要で、将来トラブルになりやすいからです。接道や地形が良ければ分筆して単独所有に分けます。資金は土地の一部売却や自己資金・会社の資産をあて、等価交換など借入を抑える方法も比べます。
解き方
- 甲土地の地形と道路の接し方(西側8m、南北5mの市道)、周辺の相場(100㎡で2,700万円)から、一部売却や分筆ができるかを見きわめます。
- X社の内部留保金(約5,000万円)の引き出しや等価交換方式の導入など、借入金を減らせる方法を整理します。
- 将来の相続や土地活用の話し合いを進めやすくするため、土地を分筆して単独所有にする共有物分割の方法をまとめます。
答えの内訳
- 建築費借入額を抑える方法:土地の一部売却、X社内部留保金の活用、等価交換方式の活用、事業規模の縮小など。
- 甲土地(600㎡)の一部を分筆して戸建て住宅用地等として第三者へ売却し建築資金に充てる方法や、X社の内部留保金約5,000万円を退職金等として活用する方法、デベロッパー等と等価交換を行う手法、建物の規模・戸数を抑えて建築費自体を削減する方法が考えられます。
- 共有状態を解消するためのアドバイス:甲土地を分筆してAさんとBさんの単独所有とする現物分割、または一方の持分の買い取り・第三者への売却。
- 甲土地は三方接道の角地であり整形であるため、測量・境界確定を行ったうえで2つに分筆し、Aさんと弟Bさんの単独所有とする「共有物分割(現物分割)」が極めて有効です。これにより将来の権利関係の複雑化を防ぎ、それぞれが自由な土地活用や売却を行えるようになります。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 甲土地が広大で接道条件が良ければ「分筆して一部売却+残地活用」が有力な資金調達策になる。
- 共有状態の解消には現物分割(分筆)、代償分割、換価分割などの手法がある。
間違えやすいところ
- アパートの建築費の借入を減らす方法として、金融機関との交渉だけを挙げ、土地の処分や規模の見直しなどの不動産の方法を落としてしまうことです。
- 共有の解消で、分筆したあとの接道義務(建築基準法上の道路に2m以上接すること)を考えずに分割案を出してしまうことです。
出題の前提:2023年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年2月18日実施)Part II 質問事項3
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本事案に関与する専門職業家とその役割
関連法規・専門職連携 · 専門職業家 / 税理士 / 司法書士 / 土地家屋調査士 / 不動産鑑定士
設例の事案(事業転換、X社の整理、甲土地の共有解消・分筆・有効活用・建築など)を円滑に進めるにあたり、関与する専門職業家を挙げ、それぞれの具体的な役割を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
関与する主な専門職業家は、税理士、司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、建築士(一級建築士)などです。
解説
FPは、ほかの専門家の独占業務を守り、事案に合わせて専門家と連携することが必要です。税理士でない人が個別の税務相談や税務申告の代理をすることは禁止されています。弁護士でない人が法律事件を引き受けることも禁止されています。こうした決まりを守りながら、専門家のネットワークを作ります。
解き方
- この事案で必要になる実務の手続き(税務、登記、測量、不動産の評価、建築など)をもれなく洗い出します。
- それぞれの手続きを担当する国家資格者(税理士、司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、建築士など)と、その役割を整理して書きます。
答えの内訳
- 税理士:税務相談および申告業務の遂行
- 土地譲渡時の譲渡所得税、賃貸アパート経営に伴う不動産所得の確定申告、X社の解散・清算や退職金支給に係る法人税務、および将来の相続税対策の助言・申告を担当します。
- 司法書士:登記手続きおよび法人登記の代理
- 共有物分割に伴う土地の所有権移転登記、建築資金借入に伴う抵当権設定登記、X社の解散および清算人就任・結了の登記などを担当します。
- 土地家屋調査士:境界確定・測量および表示に関する登記
- 甲土地の境界確認測量、分筆登記、既存甲建物の滅失登記、新築賃貸アパートの表題登記を担当します。
- 不動産鑑定士:土地・不動産の適正評価
- 甲土地を分筆・分割する際の適正な評価額の算定や、一部売却時の適正な時価査定、等価交換時の権利割合の算定を担当します。
- 一級建築士/施工業者:建物の設計・工事監理・施工
- 敷地条件や周辺賃貸需要に即したアパートの設計計画、建築確認申請、工事施工および監理を担当します。
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覚えるポイント
- 分筆登記や表題登記は「土地家屋調査士」、権利部の登記(所有権移転や抵当権設定)は「司法書士」が担当する。
- FP自身は士業資格がない限り独占業務を行えず、専門家との連携体制を組むことが原則となる。
間違えやすいところ
- 土地家屋調査士(表示に関する登記・測量)と司法書士(権利に関する登記)の担当する範囲を、取り違えて答えてしまうことです。
- 士業の名前を並べるだけで、この事案での具体的な役割(何をしてもらうか)を書くのを忘れてしまうことです。
出題の前提:2023年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年2月18日実施)Part II 質問事項4
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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