日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartI)の概要
実態と異なる遺言書が発見された場合の遺産分割と相続税対策
相続・事業承継 · 自筆証書遺言の検認 / 遺言と異なる遺産分割協議 / 受遺者の先死亡 / 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 / FPの職業倫理
2023年11月に母Bさんが死亡し、相続人は長男Aさん(70歳)、長女Cさん(67歳)、二男Dさん(65歳)の3人である。母Bさんの遺品整理中に20年前に作成された自筆証書遺言が発見され家庭裁判所での検認期日を終えたが、遺言の内容は当時の状況に基づくもので、現在の生活実態(Aさん家族が母と同居していた自宅、Dさん家族が暮らす自用マンション)と乖離しており、受遺者である知人Eさんは2年前に既に他界している。Aさんは遺言どおりに分割しなければならないのか、手続や相続税額への影響を知りたがっている。本設例における問題点、解決策、具体的な提案および留意点、FPの職業倫理について述べなさい。
解答・解説を表示
解答
遺言と異なる遺産分割の可否確認、実態に即した遺産分割協議の実施、小規模宅地等の特例等の適用による税額軽減と円滑な資産承継の提案、専門家連携とコンプライアンス遵守。
解説
遺言書があっても、相続人全員が合意すれば、遺言と違う遺産分割協議を成立させることができます。受遺者が先に死亡して効力を失った部分は考え直せるからです。実際の住まい方や小規模宅地等の特例が使えるかどうかを見て分けると、税の負担を抑えながら生活の場も守れます。
解き方
- 遺言の中身と相続財産の内訳、そして相続人が今どこに住み何を望んでいるかを確認します。受遺者が先に亡くなった場合の影響(民法994条1項)も押さえます。
- 相続人全員の合意で遺言と違う遺産分割協議ができるかを検討します。特定居住用宅地等の特例が使えるかどうかで税額がどう変わるかを試算して整理します。
- 実態に合った分割案(自宅はAさん、マンションはDさんなど)を立てます。士業の専門家と連携し、遺産分割協議書の作成と期限までの申告を支えます。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:20年前の遺言内容が現在の居住実態等と合致していない点、受遺者Eさんが他界している点、遺言と異なる遺産分割協議の可否と手続、相続税額への影響(小規模宅地等の特例等)や申告納期限への対応が問題となる。
- 遺言では自宅をCさん、マンションをAさんに相続させるとあるが、現実は自宅にAさん家族、マンションにDさん家族が居住しており生活の基盤が脅かされる懸念がある。また受遺者Eさんは死亡しており、賃貸アパートの売却指示や相続税の特例適用による税負担変動への懸念がある。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:受遺者Eの先死亡に伴う遺贈の失効を確認した上で、相続人全員の合意に基づく遺産分割協議を行い、生活実態に合わせた遺産分割協議書を作成・調印して不動産登記や相続税申告を行う方策が考えられる。
- 民法第994条第1項により受遺者が遺言者より先に死亡した場合その遺贈は効力を生じない。遺言執行者がいないか指定があっても相続人全員および受遺者関係の同意があれば遺言と異なる遺産分割協議が可能であるため、実態に合わせた分割を目指す。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:自宅を同居していたAさん、自用マンションをDさんが取得し、賃貸アパートや預貯金をCさん・Dさんの受取分や代償金として活用する遺産分割協議の成立を提案する。小規模宅地等の特例活用で大幅な減税が図れる一方、相続人全員の完全な合意が必要である点に留意する。
- Aさんが同居親族として自宅を取得すれば特定居住用宅地等として330㎡まで80%減額を適用でき、税負担を大幅に抑制できる。居住安定と節税の観点から最も合理的であるが、相続人間で不公平感が生じないよう代償分割や家賃収入のあるアパート等の配分バランスに配慮する必要がある。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:顧客第一主義、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセントの徹底が求められる。また、税務申告や登記申請、紛争性のある調停等は弁護士・税理士・司法書士等の関連法規を遵守し適切な連携を図る必要がある。
- 非税理士による具体的税額計算の代行(税理士法違反)や非弁護士による法律事務の代理(弁護士法違反)を避け、各士業の専門家とネットワークを組んで適正に顧客支援を進めることが重要である。
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覚えるポイント
- 遺言の検認は遺言書の偽造・変造を防止するための証拠保全手続であり、遺言の有効・無効を確定するものではない。
- 受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したときは、その遺贈は効力を生じない(民法第994条第1項)。
- 相続人全員の合意があれば、遺言と異なる内容の遺産分割協議を行うことができる。
間違えやすいところ
- 家庭裁判所で検認を受けた遺言書は絶対で、内容は変えられないと誤解しやすいです。
- 特定居住用宅地等の特例は、亡くなった人と同居していた親族が取得して住み続けるなどの要件を満たす必要があります。別居していたCさんが取得しても使えない点を見落としやすいです。
出題の前提:2023年11月相続開始時点における民法および相続税法の規定に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月18日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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