日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月17日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客への最適提案に向けた必要収集情報の整理(直接ヒアリング事項と独自調査事項)
不動産・相続・事業承継 · 不動産有効活用 / 相続対策 / 顧客ヒアリング / 現地・役所調査
Aさん(72歳)は首都圏近郊のK市内に自宅とまとまった土地(甲-1土地:1,240㎡、貸駐車場として利用中)を所有している。Aさんは妻Bさん(68歳)、養子Cさん(40歳)と同居している。約半年前に肺がんが見つかったため、甲-1土地に賃貸マンションを建築する計画を進めていたが、姉Dさん、弟Eさん、妹FさんからA家の代々の財産を分けてほしいと求められた。Aさんは兄弟に各現金3,000万円を提供することを提案したが、姉Dさんは「甲-a土地(224㎡)をもらってアパートを建てたい」と主張し、甲-b土地での代替を拒否している。Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、示された情報のほかにどのような情報が必要か、①Aさんから直接聞いて確認する情報、および②FP自身が調べて確認する情報に整理して説明しなさい。
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解答
①Aさんから直接確認する情報:Aさんの健康状態・意向、保有資産・負債の詳細、大手建設コンサル会社との契約内容・違約金、妻Bさん・子Cさんの意向、姉Dさんがアパート建築にこだわる理由や資金計画など。②FP自身が調べて確認する情報:甲土地周辺の賃貸需要や空室率・相場、甲土地の境界確定状況や公法上の規制・開発基準、現状での推定相続税額および納税資金のシミュレーションなど。
解説
提案では、顧客や関係者の意向などの「直接情報」と、FPが自ら調べる「客観的情報」の両方を集めることが欠かせません。どちらか一方だけでは、実現できる有効な選択肢を示せないからです。
解き方
- 事例から、まだ分かっていない顧客の意向や家族関係、すでに結んだ契約の内容など、直接聞くべきことを洗い出します。
- 不動産の法令上の制限や権利関係、市場の動き、税額の試算など、FP自身が調べて確かめるべきことを整理します。
答えの内訳
- ①:Aさんの病状や今後の治療方針、保有財産(金融資産・不動産・負債)の明細、大手建設コンサル会社との契約内容(違約金の有無・設計進捗)、賃貸事業に対する妻Bさんや養子Cさんの承継意欲・意向、姉Dさんをはじめとする兄弟の生活状況や真の要望(なぜアパート経営を望むのか、自己資金の有無等)。
- 顧客の意向や家族関係、すでに締結済みの建築コンサル契約の拘束力、家族全体の資産状況を正確に把握しなければ、有効な選択肢を提示できません。
- ②:甲土地(甲-1〜4土地)の登記事項証明書・公図・地積測量図等による権利関係と境界確認、現地の法令上の制限(都市計画法、建築基準法、開発許可基準、条例)、周辺エリアの賃貸市場の需給動向(家賃相場・ターゲット層・空室率)、現状におけるAさんの相続税試算および納税資金の過不足。
- 不動産の法的規制や周辺市場の事業採算性、相続税の負担を客観的なデータに基づいて検証し、提案の実現可能性を担保する必要があります。
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覚えるポイント
- ヒアリング項目(意向・家族・資産負債・契約内容)と客観調査項目(法令制限・権利関係・市場性・税額試算)を峻別して整理すること。
間違えやすいところ
- 調べるべきこととして、登記や法令の調査だけでなく、賃貸の需要調べや相続税の試算を忘れてしまうことです。
出題の前提:2023年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年2月17日PartII)設問1
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月17日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
親族間トラブルの解消に向けた土地有効活用・代替案の提案
不動産・相続・事業承継 · 土地の有効活用 / 共同開発 / 親族間調整 / 等価交換方式
Aさんは甲-1土地に賃貸マンションを計画していたが、姉Dさんは自身の所有する甲-3土地に地続きとなる甲-a土地(224㎡)の譲渡を強く求めており、甲-b土地での代替を拒んでいる。甲-a土地を割譲すると甲-1土地の形状が悪化し、計画中のマンション建築が困難になる。姉Dさんに納得してもらうためには、甲-a土地を割譲する以外にどのような方法が考えられるか説明しなさい。
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解答
姉Dさんの甲-3土地とAさんの甲-1土地を合わせた共同開発(マンションの共同建築や等価交換方式)により姉Dさんに区分所有権や賃貸収益を分配する案、甲-b土地を姉Dさんに渡したうえでアパート建築の資金支援や事業計画立案をサポートする案、姉Dさんの甲-3土地をAさんが買い取る案などが考えられる。
解説
親族の間で土地の分譲や分筆を求められても、そのまま分けると土地の形が悪くなり、全体の利用価値が大きく下がります。土地をまとめて共同事業にしたり、等価交換(同じ価値の土地を交換すること)をしたりする方法を組み合わせれば、相手の本当の希望をかなえられます。
解き方
- 姉Dさんが甲-a土地をほしがる本当の理由を考えます。それは甲-3土地と合わせてアパート経営を広げたいためです。
- 甲-1土地の価値を下げずに姉Dさんのお金の希望を満たす方法(まとめて開発・等価交換・資金の援助・買取りなど)を調べて、具体的にまとめます。
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覚えるポイント
- 相手が土地の取得にこだわる背景(賃貸事業による家賃収入・資産形成)を把握し、共同事業方式や等価交換などの多面的な解決策を提示すること。
間違えやすいところ
- 「お金をさらに増やす」という提案だけをして、姉Dさんの「アパート経営をしたい」という気持ちを無視してしまうことです。
出題の前提:2023年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年2月17日PartII)設問2
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月17日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
兄弟への現金・土地提供の方法とその税務上の検討
資産承継・不動産 · 生前贈与 / 遺言 / 死因贈与 / 贈与税・相続税
Aさんが兄弟(姉Dさん、弟Eさん、妹Fさん)に対して、生前または死後に現金3,000万円や土地(甲-a土地等)を提供する方法として、どのような手段や形態が考えられるか説明しなさい。
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解答
生前贈与(暦年課税等)、遺言による遺贈、死因贈与契約の締結、適正価格による売買などの方法が考えられる。
解説
法定相続人でない親族に財産を渡すときは、生前贈与や遺贈、死因贈与などを選べます。ただし贈与税は一般税率になり、相続税は2割加算されるなど税の負担が重いので、いつ渡すかや税の負担、家族の合意をまとめて考える必要があります。
解き方
- この事例では、妻Bさんと養子Cさんだけが法定相続人で、兄弟姉妹は法定相続人ではありません。この関係を確かめます。
- 生きているうちに渡す方法(生前贈与や売買)と、亡くなった後に渡す方法(特定遺贈や死因贈与契約)のよい点・悪い点と税への影響を比べて整理します。
答えの内訳
- 現金や土地を提供する主な方法:生前贈与(暦年贈与・一時贈与)、遺言(特定遺贈)、死因贈与契約、適正対価による譲渡(売買)などが考えられる。
- 生前に確実に財産を渡す方法としては生前贈与や売買があり、死亡時に確実に渡す方法としては遺言書による特定遺贈や死因贈与契約の締結が挙げられます。
- 税務上および法務上の留意点:兄弟への生前贈与では高額な贈与税負担(一般税率)が生じ、遺言・死因贈与では相続税の2割加算の対象となる点に留意が必要である。
- 現金3,000万円や土地の生前贈与は一括で行うと高額な贈与税が課されます。また、兄弟姉妹は法定相続人(子Cさんがいるため)ではないため、遺贈等の場合は相続税額の2割加算の対象となり、受遺者・受贈者の納税資金負担に配慮する必要があります。
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覚えるポイント
- 兄弟姉妹は第一順位の相続人(子)がいる場合は法定相続人にならず、遺贈を受けると相続税の2割加算対象となる。
- 高額な金銭や不動産の生前贈与は、受贈者に高率の贈与税(一般税率)が課される点に注意する。
間違えやすいところ
- 直系尊属(親や祖父母)からの贈与ではないので、贈与税の特例税率は使えず一般税率になる点を見落としやすいです。
- 兄弟がもう納得していると勝手に思い込み、書面に残さない贈与の合意で、将来もめるもとを残してしまうことです。
出題の前提:2023年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年2月17日実施)PartII 設例
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月17日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産業者提案の宅地開発・6画地分割案の妥当性評価
不動産の有効活用・開発手法 · 開発行為 / 画地分割 / 賃貸事業計画 / 換金性・有効性
X社の社長から提案された「甲-a土地を姉Dさんに分筆譲渡したうえで、残りの甲-1土地に幅員6mの開発道路を通し、6画地に分割する開発案」について、その妥当性や問題点をどのように評価するか説明しなさい。
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解答
換金性や分割の容易性が高まるメリットはあるが、開発道路による敷地の歩留まり低下、造成費用の負担、賃貸による節税・収益確保効果の喪失といったデメリットが大きく、慎重な検討が必要である。
解説
土地の使い方を見直すときは、売りやすさ(換金性)だけでは足りません。開発道路を作ると有効に使える面積が減り、造成やインフラ工事に多額の費用がかかります。そのため、相続税対策や安定した収入への影響も含めて比べる必要があります。
解き方
- 提案された開発の図面から、幅員6mの道路を新しく作ると使える土地が減り、造成の費用がかかることを確かめます。
- もともとの計画の「賃貸マンション建築」が生む収益や相続税評価を下げる効果と、開発して分ける案のよい点・悪い点を比べて評価します。
答えの内訳
- 開発案のメリット(評価できる点):1画地あたりの面積が適正化(約180㎡)されて流動性・換金性が向上し、将来の遺産分割や納税資金確保のための売却が容易になる点。
- 大規模な土地をそのまま保有するよりも、戸建て住宅用地として需要の高い規模に分割することで買い手がつきやすくなり、段階的な処分や現金化が容易になります。
- 開発案のデメリット・懸念点(課題):開発道路設置に伴う有効面積の減少(歩留まり低下)、造成・インフラ整備等の多額の先行費用、賃貸事業による相続税評価減や継続収入が得られなくなる点。
- 幅員6mの道路を新設することで有効宅地面積が減少し、開発許可申請や道路・上下水道工事等の先行投資が必要となります。また、当初予定していた賃貸マンションによる貸家建付地評価減や小規模宅地等の特例、安定した賃料収入が得られなくなります。
覚えるポイント
- 開発道路の新設は有効宅地面積を減少させ、造成費・開発許可手続き等の先行負担を発生させる。
- 駅徒歩5分の立地特性を活かした賃貸事業の収益性・節税効果と、宅地分譲による換金性を比較衡量することが重要。
間違えやすいところ
- 不動産業者の開発提案をうのみにして、インフラ整備の費用や道路の帰属(寄付・私道の負担)の問題を考えないことです。
- 売りやすさだけに目を向け、賃貸建物を建てることで相続税評価が大きく下がる効果を失う点を見落とすことです。
出題の前提:2023年度第3回FP1級実技試験(資産相談業務・2024年2月17日実施)PartII 設例
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月17日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事案に関与する専門職業家
不動産・相続 · FP実務倫理 / 士業連携 / 土地活用
Aさんの相続対策、兄弟間における現金・土地の提供問題、甲-1土地の賃貸マンション建築プランや分筆・開発計画等に関与する主な専門職業家(士業等)を挙げ、それぞれの担当業務と連携内容を説明しなさい。
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解答
弁護士(兄弟間の協議や合意書作成、遺言書作成等)、税理士(生前贈与や譲渡所得、将来の相続税の試算・申告)、司法書士(土地の分筆・贈与・売買に伴う所有権移転登記等)、土地家屋調査士(土地の境界確定測量や分筆登記等)、一級建築士(賃貸マンションや開発道路の設計・許認可申請等)、不動産鑑定士(土地の適正な時価評価等)。
解説
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、顧客の生活設計や資産づくりを支えますが、法律・税務・登記などの独占業務はできません。事件に応じて弁護士や税理士、司法書士、土地家屋調査士などの専門家と正しく連携することが求められます。
解き方
- この事例の課題(兄弟間の財産の話し合い、土地の分筆・開発・活用、税金対策・登記の手続きなど)を整理します。
- それぞれの業務について、法律で定められた独占の資格と実際の役割に合う専門家は誰かを選んで挙げます。
答えの内訳
- 弁護士:弁護士
- 兄弟間での財産配分(現金や土地の分与)に関する合意書の作成、法的トラブルの防止、遺言書の作成支援や遺留分対策などを担当します。
- 税理士:税理士
- 兄弟への現金や土地の提供に伴う贈与税・譲渡所得税の試算・申告、将来発生する相続税額のシミュレーションと申告実務などを担当します。
- 司法書士:司法書士
- 土地を分筆・贈与・売買する際、または将来の相続発生時における所有権移転登記や抵当権設定登記などの法務局への登記申請業務を担当します。
- 土地家屋調査士:土地家屋調査士
- 甲-1土地の境界確認、現況測量、分筆・開発計画に伴う測量および法務局への土地表題部変更・分筆登記申請などを担当します。
- 一級建築士:一級建築士(建築設計事務所)
- 甲-1土地における賃貸マンションの建築設計プランの作成・見直し、開発道路の設計や開発許可の申請手続きなどを担当します。
- 不動産鑑定士:不動産鑑定士
- 兄弟間で土地を売買・贈与・交換等する際における適正な客観的時価の評価や、開発案の採算性検討のための鑑定評価を担当します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 税理士法(税務相談・申告の独占)、弁護士法(法律事務の独占)、司法書士法・土地家屋調査士法(登記申請等の独占)への抵触を防止するため、FPは具体的な独占実務を専門家に委任・連携する必要があります。
間違えやすいところ
- 土地家屋調査士(表題部・境界の測量・分筆)と司法書士(権利部・所有権移転の登記)の仕事の分け方を取り違えやすいので注意が必要です。
出題の前提:2023年度第3回FP技能検定1級実技試験(資産相談業務・2024年2月17日実施)PartII 設例
出典:金融財政事情研究会『2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月17日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月17日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2024年2月 1級 実技(資産相談業務・2月17日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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