日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客へのヒアリング情報およびFP自身が調査すべき情報
不動産・相続 · 不動産の有効活用 / 顧客ヒアリング / 不動産調査
Aさん(79歳)は、三大都市圏近郊のS市内に所在する甲土地(1,800㎡)の北側3分の1(600㎡)に甲建物(自宅・築50年)を所有し、南側3分の2(1,200㎡)を月極駐車場として利用している。Aさん夫妻は老朽化した自宅から隣県T市のシニア向け分譲マンション(6,000万円)へ転居を希望しており、手元現預金4,000万円には極力手を付けたくないと考えている。ドラッグストアを展開するX社から甲土地の出店活用として3つの提案(Ⅰ案:自宅敷地売却+駐車場定期借地、Ⅱ案:全体定期借地+前払地代、Ⅲ案:自宅敷地売却+建設協力金方式)を受けている。Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、示された情報のほかに必要な情報を「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FPであるあなた自身が調べて確認する情報」に整理して答えなさい。
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解答
①Aさんから直接聞いて確認する情報:シニア向けマンションの契約・転居希望時期、長男Cさんの甲土地の承継・相続に関する意向、駐車場契約者との契約内容および立退きに関する条件、Aさん夫妻の健康状態や将来の介護費用等の生活設計、遺言書の有無や相続に対する希望。 ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:甲土地・甲建物の登記事項証明書による権利関係、公図・地積測量図・境界確定状況、都市計画法・建築基準法等の公法上の規制やインフラ整備状況、周辺地域の地価水準や賃料相場、出店希望先であるX社の企業規模・財務健全性・事業継続性。
解説
不動産の有効活用提案においては、顧客や推定相続人の希望・ライフプラン等の主観的要素(直接確認する情報)と、公法上の制限・権利関係・テナントの信用力等の客観的事実(自身が調査する情報)の双方を漏れなく把握することが不可欠です。
解き方
- 顧客の現状の希望(転居時期、生活費、長男の承継意思、相続税対策の優先度)を整理する。
- 客観的な不動産情報(登記、境界、都市計画・接道規制、周辺相場、テナント企業の信用度)を調査項目としてリストアップする。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:シニア向けマンションへの転居希望時期や購入手続きの意向、長男Cさんの甲土地承継に関する意向、現行駐車場の契約条件(立退き交渉の難易度等)、将来の生活費・医療介護資金の想定、相続に関する意向や遺言書の有無など。
- 顧客自身の意思決定や保有財産の利用状況について、提案の前提条件となる希望時期、親族(長男Cさん)の承継意思、駐車場賃借人の解約条件、将来のライフプランを直接確認する必要があります。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:甲土地および甲建物の登記事項証明書等の権利関係、公図・地積測量図・境界確認書の有無、建築基準法・都市計画法等の公法上の規制、周辺の取引相場・賃料相場、出店事業者であるX社の信用力や財務状況など。
- 客観的な事実確認として、法務局での登記事項証明書・公図の確認、役所での建築・都市計画制限調査、現地確認や測量状況、さらに提案企業であるX社の経営健全性等を自ら調査する必要があります。
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覚えるポイント
- ヒアリング項目は「顧客と家族の意思」「契約状況」、調査項目は「権利関係」「公法規制」「テナント信用」に分類して整理する。
間違えやすいところ
- 顧客自身しか知らない情報(長男の承継意向や生活資金計画)をFP自身の調査事項として混同しないように区分する。
出題の前提:2023年9月30日実施 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)PartII 設例基準
出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事業用借地権における一括受取前払地代の課税関係
不動産・税務 · 不動産所得 / 前払地代 / 事業用定期借地権 / 所得税
AさんがX社から提示された提案のうち、Ⅱ案(甲土地全体を借地期間20年の事業用定期借地権として賃貸し、地代総額の30%相当である6,000万円を前払地代として一括受領する提案)を選択した場合、一括支払を受ける前払地代の課税関係について説明しなさい。
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解答
一括支払を受ける前払地代は、原則として一括受領した年分の総収入金額とするのではなく、契約期間(貸付期間20年間)の経過に応じて各年分の不動産所得の総収入金額に按分して算入する。
解説
不動産の賃貸借において将来の賃料に充当される性質の前払地代を一括受領した場合、受取時に全額を一括計上するのではなく、原則として貸付期間の経過に応じて各年分の不動産所得の総収入金額に按分計上します。
解き方
- 受領する金員の性質が「権利金等の譲渡」ではなく「将来の地代の一括前払い」であることを確認する。
- 所得税法における前払地代の原則的な収益計上時期(契約期間にわたる期間按分による不動産所得の総収入金額への算入)を導く。
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覚えるポイント
- 前払地代は受領年の全額一括計上ではなく、借地期間に応じて各年分の不動産所得に按分計上する。
間違えやすいところ
- 受取時に全額が不動産所得や譲渡所得として一括課税されると誤認しやすい点に注意する。
出題の前提:所得税法基本通達36-5、36-6(不動産所得の収入金額の計上時期)および設例条件
出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
土地活用提案の比較検討と最適案の選択
不動産・相続 · 事業用定期借地権 / 建設協力金方式 / 土地活用 / 相続税対策
Aさんの希望(シニア向けマンション購入資金を手元資金に手を付けず確保すること、転居後の生活費年400万円の確保、将来の相続への備え)を踏まえ、ドラッグストアX社から提示されたⅠ案、Ⅱ案、Ⅲ案のいずれを推奨すべきか。将来の相続税、収益性(年間収入)、将来の資産価値などの観点から理由を述べて説明しなさい。
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解答
Ⅰ案を推奨する。理由として、①甲建物敷地(600㎡)の売却代金6,000万円により手元資金を減らさずにシニア向け分譲マンションの購入資金を賄え、自宅売却で3,000万円特別控除の適用を受けられること、②駐車場部分(1,200㎡)を事業用定期借地とすることで借入金や建物管理リスクを負わずに固都税控除後で年580万円の安定した手取り地代収入が得られ、年金と合わせて生活費を十分に賄えること、③換金した資金を相続税評価額の低い分譲マンション(2,000万円)へ組み替えられ、残る土地も貸宅地評価や小規模宅地等の特例適用により相続税の大幅な圧縮が図れること、④20年後には更地で返還され、遠方に住む長男Cへの将来的な資産承継や処分が容易であることが挙げられる。
解説
土地活用の提案にあたっては、地主の高齢化や承継者(長男)の居住状況を踏まえ、初期投資・借入リスクの有無、手取り収益の安定性、将来の相続税評価額の圧縮効果、契約期間満了後の原状回復・換金性などを総合的に比較して最適な手法を選定する必要があります。
解き方
- 各案の資金収支(初期資金の確保可否、年間地代・賃料から固都税等を引いた手取り収入)を計算し、生活費を満たすか検証する。
- 事業用定期借地権設定による貸宅地評価や小規模宅地等の特例、資産の組替えによる相続税評価額の圧縮効果を比較検討する。
- 長男Cが同居せず地元に戻らない点に着目し、建物を抱えるリスク(Ⅲ案)や前払地代の課税問題(Ⅱ案)を回避できるⅠ案の優位性をまとめる。
答えの内訳
- 推奨案の決定:Ⅰ案を推奨する。
- 手元資金を減らさずにマンション購入資金を確保したいというAさんの最優先希望を満たし、借入リスクを負わずに安定収入と高い節税効果を得られるため、Ⅰ案が最も優れています。
- 収益性(年間収入)の観点:借入返済や建物管理負担なしに、固都税控除後で年580万円の安定した地代収入を確保できる。
- Ⅰ案の地代年額780万円から固定資産税・都市計画税見込額200万円を差し引いても手取り年580万円となり、公的年金200万円と合わせれば転居後の生活費年400万円を十分に賄うことができます。
- 将来の相続税の観点:自宅敷地売却代金のマンション組み替えによる圧縮と、残存土地の貸宅地評価等により大幅な節税効果がある。
- 売却代金6,000万円を相続税評価額2,000万円のマンションに組み替えることで財産圧縮が図れ、残る1,200㎡も事業用借地権の貸宅地評価や小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の適用により相続税評価額を大きく引き下げられます。
- 将来の資産価値・承継の観点:建物建築・借入金のリスクがなく、20年後に更地で返還されるため遠方に住む長男への承継が容易である。
- Ⅲ案のように1億2,000万円もの建設協力金債務や建物管理・修繕リスクを負うことがなく、借地期間満了後は確実に更地返還されるため、地元に戻る予定のない長男Cへの資産承継面でも極めて有利です。
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覚えるポイント
- 事業用定期借地権は借地期間終了後に更地で無償返還され、借地権設定により貸宅地評価(自用地評価額から借地権割合相当分を控除)となる点。
- 居住用財産の譲渡所得には最高3,000万円の特別控除の特例があり、売却資金で評価額の低い不動産を取得すると相続税評価を大きく圧縮できる点。
間違えやすいところ
- Ⅲ案の建設協力金方式は表面上の賃料収入が高いものの、多額の債務リスクや遠隔地での建物修繕・維持管理負担が発生するデメリットを見落とすこと。
- Ⅱ案の前払地代方式は一括受取時に多額の一時課税が生じる可能性があり、土地全体を長期間拘束される点を見落としがちなこと。
出題の前提:2023年度第2回 1級実技試験(資産相談業務)PartII 設問3に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
土地活用・不動産売買・相続対策に関与する専門職業家
関連法規・FP実務 · 士業の職域 / FP倫理 / 専門職業家の連携
Aさんの甲土地の活用、甲建物および敷地の売買、事業用定期借地権の設定、シニア向け分譲マンションの購入、将来の相続対策等の事案に関与する専門職業家を挙げ、それぞれの具体的な業務内容を説明しなさい。
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解答
関与する専門職業家として、①税理士(居住用財産売却に伴う3,000万円特別控除の適用申告、不動産所得の確定申告、将来の相続税試算や対策相談)、②司法書士(甲建物および敷地の売買・分譲マンション購入に伴う所有権移転登記、事業用借地権設定登記等の代理)、③土地家屋調査士(甲土地の売却・分筆に伴う現況測量、境界確定、土地分筆登記)、④公証人(事業用定期借地権設定契約を公正証書により作成)、⑤宅地建物取引業者(土地建物の売買および賃貸借契約の媒介・仲介)などが挙げられる。
解説
ファイナンシャル・プランナーは顧客のライフプランや資産活用に関する総合的な提案を行うにあたり、弁護士法、税理士法、司法書士法、宅地建物取引業法などの関連法規を遵守し、各専門分野の独占業務に抵触しないよう適切な専門職業家と密接に連携して業務を推進する必要があります。
解き方
- 事案に登場する法的手続(不動産の売買、土地の分筆、事業用定期借地権の設定、税務申告)を洗い出す。
- それぞれの法的手続に対応する士業・専門家(税理士、司法書士、土地家屋調査士、公証人、宅建業者)とその具体的な担当役割を整理して記述する。
答えの内訳
- 税理士:譲渡所得税の確定申告(3,000万円控除等)、不動産所得の申告、将来の相続税試算と対策の立案を行う。
- 税理士法に定める無資格調製・税務相談の制限に基づき、具体的な税務書類の作成や個別税務相談を税理士が担当します。
- 司法書士:甲建物敷地の売買や新マンション購入に伴う所有権移転登記、借地権設定登記等の代理業務を行う。
- 不動産取引に伴う権利関係の保全のため、法務局への登記申請代理業務を司法書士が独占業務として担当します。
- 土地家屋調査士:甲土地の敷地境界の確定、現況測量、売却に伴う分筆登記の手続きを行う。
- 甲土地の一部(600㎡)を売却するために必須となる現況測量、筆界確認、および土地の表題部変更・分筆登記を担当します。
- 公証人(公証役場):借地借家法に基づき、事業用定期借地権設定契約を公正証書によって作成・嘱託する。
- 事業用定期借地権の設定は借地借家法第23条により公正証書等の書面によって契約しなければ効力を生じないため、公証人の関与が不可欠です。
- 宅地建物取引業者:土地建物の売買仲介、新マンションの売買契約、賃貸借契約の媒介業務を行う。
- 宅地建物取引業法に基づき、重要事項説明の実施や売買・賃貸借契約の適正な仲介業務を実施します。
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覚えるポイント
- 事業用定期借地権の設定には公正証書の作成が必須要件であるため、必ず公証人(公証役場)が関与する点。
- 一筆の土地の一部を売却・賃貸区分する際には、土地家屋調査士による測量・分筆登記が前提となる点。
間違えやすいところ
- 事業用定期借地権の公正証書作成義務があるにもかかわらず公証人を挙げ忘れること。
- 登記手続において、権利の登記を行う司法書士と、表示に関する登記(分筆等)を行う土地家屋調査士の役割を混同すること。
出題の前提:2023年度第2回 1級実技試験(資産相談業務)PartII 設問4に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

