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FP技能検定 · 学習ガイド

2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartI)の問題・解答解説

日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。

2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartI)の概要
30:00

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旅館業を営む非上場会社の事業承継と自社株対策

事業承継・資産管理 · 事業承継対策 / 非上場株式の評価 / 比準要素数1の会社 / 特例事業承継税制 / FPの職業倫理

全国有数の観光地で温泉旅館を営むX社(大会社・非上場)の代表取締役社長Aさん(70歳)は、コロナ禍による業績悪化(2期連続赤字・今期も赤字見込み)の中、後継者である長男Cさんへの自社株贈与を進めてきた。しかし顧問税理士から「今期も赤字になると比準要素数1の会社に該当し、株価が逆に高くなる」と指摘され疑問を抱いている。また設備投資課題やM&A仲介会社からの打診もある。Aさんの相談内容・問題点、解決策、具体的な提案・留意点、およびFPの職業倫理について述べよ。

解答・解説を表示

解答

X社の比準要素数1の会社該当による株価急騰リスクへの対応、長男Cさんへの円滑な事業承継(特例事業承継税制等の活用)、インバウンド需要回復を見据えた設備投資資金調達や大手・外資との提携・M&Aの検討、長女Dさんへの遺留分等に配慮した遺産分割対策、およびFP倫理の遵守が求められる。

解説

非上場会社(大会社)の株式評価において、類似業種比準方式の3要素(配当・利益・純資産)のうち2要素がゼロである会社は「比準要素数1の会社」となり、原則として純資産価額方式または比準価額25%・純資産価額75%の併用方式が強制され、純資産価額が高い場合は評価額が急上昇します。事業承継対策では、税務・法務・経営戦略を統合して検討する必要があります。

解き方

  1. X社の財務状況から比準要素数1の会社に該当するメカニズムと株価への影響を把握する。
  2. 事業承継税制(特例措置)の適用や黒字化対策など、自社株対策の選択肢を整理する。
  3. 後継者Cさんと非後継者Dさんの相続バランス(遺留分対策)および旅館の設備投資資金対策を総合的に立案する。

答えの内訳

設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①赤字継続による「比準要素数1の会社」該当に伴う自社株評価額上昇の懸念、②長男Cさんへの自社株移転と事業承継の進め方、③設備投資等の資金調達と経営立て直し、④長女Dさんへの配慮(遺留分対策)、⑤M&Aの打診への対応方針の検討。
X社は大会社であるため通常は類似業種比準価額(3,500円)で評価されますが、3期連続赤字等で利益要素がゼロになり「比準要素数1の会社」に該当すると、純資産価額(7,500円)が重く反映(大会社はL=0.25となり純資産割合75%)され株価が急騰します。また設備投資や労働力確保などの経営課題、後継者以外の相続人である長女Dさんとの公平性確保が問題点となります。
それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①今期の一時的な黒字化や配当実施等による比準要素数1の会社該当回避、②法人版事業承継税制(特例措置)の適用検討、③長男Cさんへの株式生前贈与・譲渡と役員退職金等の支給、④長女Dさんに対する遺留分への配慮(生命保険の活用や遺言作成)、⑤外部資本提携やM&Aによる設備投資負担の軽減の検討。
比準要素数1の会社を回避するために資産売却益の計上や黒字化対策を検討するほか、納税猶予制度(特例承継計画の提出期限等に留意)を利用した株式移転が有効です。また、事業承継を行わない長女Dさんには自社株以外の資産を遺すための遺言作成や死亡保険金等の手当てが考えられます。
それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:長男Cさんへの事業承継を確実にするため「特例承継計画」に基づく特例事業承継税制の活用と遺言作成を提案する。併せて設備投資等の経営課題解決のため、外部提携や事業承継・再生支援機関の活用を提案する。留意点として、特例承継計画の提出期限、事業継続要件の維持、長女Dさんの遺留分侵害防止が挙げられる。
Aさんは長男への承継を望んでいるため、自社株評価額の上昇局面でも贈与税・相続税が全額猶予される特例事業承継税制が極めて効果的です。ただし、特例承継計画の提出期限(2026年3月末まで)や雇用・事業継続の要件があり、取り消された場合の利息負担等のリスクを十分に説明・管理する必要があります。
FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:顧客利益の最優先、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント(丁寧な説明と同意)、コンプライアンス(法令遵守)、各専門家(税理士・弁護士・中小企業診断士等)との適切な連携が求められる。
非上場株式の評価や具体的な税務申告・税務相談は税理士法、遺言書作成や遺留分等の法的紛争予防は弁護士法に抵触しないよう、各提携専門家とチームを組んでサポートし、顧客の意向を最優先に尊重して秘密を守る姿勢が必須です。

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覚えるポイント

  • 大会社であっても比準要素数1の会社に該当すると、原則として純資産価額方式(またはL=0.25)が適用され株価が跳ね上がる点。
  • 特例事業承継税制は贈与税・相続税が全額猶予されるが、事前の特例承継計画の提出が必要である点。

間違えやすいところ

  • 赤字が続けば株価が下がり続けると誤認すること(比準要素数1の会社に該当すると逆に急上昇する場合がある)。
  • 事業承継対策において後継者のみに目を向け、非後継者である他の兄弟(長女Dさん)の遺留分対策を怠ること。

出題の前提:2023年度(2023年9月30日実施)FP1級実技試験(資産相談業務)Part I設例に基づく。

出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)

2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartI)

参照した公式資料

金融財政事情研究会が公開した2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月30日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。

金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。