本文へ移動

FP技能検定 · 学習ガイド

2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月24日 PartI PartII・PartI)の問題・解答解説

日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。

2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月24日 PartI PartII・PartI)の概要
30:00

問題番号から選ぶ

急逝した会社代表者の事業承継・相続対策と遺産分割

事業承継・資産承継 · 代表取締役選任手続き / 非上場株式の集約・承継 / 遺産分割と遺留分対策 / 事業承継税制および金庫株 / 小規模宅地等の特例 / 教育資金贈与信託の残余財産 / FPの職業倫理

地方都市で専門工事業を営むX株式会社(非上場会社・取締役会設置会社)の代表取締役社長Aさんが70歳で急逝した。Aさんは遺言書を作成しておらず、自社株式(発行済株式の80%、評価額4億円)などの移転対策も未着手であった。後継者として長男Cさん(取締役)が実質的な経営を担っており社内の評価も高いが、妻Bさんと二男Dさん(都内在住の公務員で経営や不動産取得は望まないが法定遺留分を含む財産分与を希望)との間で遺産分割協議を行う必要がある。また、孫2名に対する教育資金一括贈与信託の残余財産の取扱いや、高額な相続税の納税資金確保が課題となっている。本設例における相談内容と問題点、解決策、提案事項およびFPの職業倫理について述べなさい。

解答・解説を表示

解答

1. 相談内容および問題点:代表取締役の早期選任、X社株式の集中承継と二男Dさんへの遺産分割・遺留分配慮、相続税の納税資金確保と特例適用、教育資金贈与信託残額の相続税課税の有無確認。 2. 提案・方策:取締役会による後任代表取締役の選任、長男CさんへのX社株式の集約および代償分割や金庫株(自社株買い)の活用、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の適用、事業承継税制(特例承継計画の確認)の検討、教育資金贈与の管理残額確認。 3. 具体的な提案・理由・留意点:代表取締役への長男Cさんの早期就任手続きを優先し、株式は長男Cさんに集中承継させ、二男Dさんには現預金等の充当やX社による自己株式取得(金庫株)を活用した代償資金の準備を提案する。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を活用して納税額を圧縮し、二次相続にも留意する。 4. FPと職業倫理:守秘義務の遵守、顧客利益の優先、インフォームド・コンセント、中立公正な姿勢、弁護士・税理士・司法書士等専門家との適切な連携(士業法遵守)。

解説

事業承継では後継者への経営権(株式・事業用資産)の集中と、他の相続人の遺留分を含む公平性の確保を両立させることが重要である。納税猶予制度や金庫株、小規模宅地等の特例等を適切に活用し、税負担軽減と資金調達を一体で設計する。

解き方

  1. 設例の会社概要、親族構成、財産構成、相続人の意向を整理し、緊急度(代表選任、申告期限等)と重要課題(遺産分割、納税資金)を特定する。
  2. 遺産分割案(株式・事業用土地の後継者集中、二男への代償・現預金配分)を立案し、金庫株や各種税務特例の適用要件と留意点を検証する。

答えの内訳

設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①突然の代表取締役急逝に伴う後任代表取締役の早期選任手続き、②遺言書がない状況での遺産分割(特にX社株式80%の長男Cさんへの集約と、二男Dさんの権利主張に対する公平・円満な分割)、③約2億4,500万円に及ぶ相続税負担に対する納税資金の確保、④小規模宅地等の特例や事業承継税制の適用可否の検討、⑤孫への教育資金贈与信託に関する管理残額の相続財産加算の有無や課税関係の確認、が問題点として挙げられる。
Aさんが遺言書を作成せずに急逝したため、法定相続人(妻B、長男C、二男D)全員による遺産分割協議が必須です。経営権維持には長男Cへの株式集中が必要ですが、二男Dの遺産分割・遺留分への配慮が不可欠です。また、試算税額が約2億4,500万円と高額であり、手元現預金等だけでは納税資金不足が生じる恐れがあります。
それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①取締役会の開催による長男Cさんの代表取締役就任手続きの実施、②X社株式および本社土地を長男Cさんが相続し、現預金やその他財産・代償金を妻Bさんおよび二男Dさんに配分する遺産分割の合意形成、③X社の潤沢な余剰資金を活用した自己株式取得(金庫株および相続財産に係るみなし配当課税の特例)による代償・納税資金の調達、④配偶者の税額軽減および小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等・特定同族会社事業用宅地等・貸付事業用宅地等)の活用、⑤事業承継税制(法人版特例措置)の適用可否の検討、⑥信託銀行を通じた教育資金贈与信託の契約時期・受贈者要件に基づく残余財産の課税確認と申告。
取締役会設置会社であるため、取締役会決議により速やかに代表取締役を選定します。遺産分割では長男Cに経営権を集中させ、二男Dへは現預金等の配分や代償金の支払いで合意を図ります。X社は余剰資金が3億円以上あるため、自己株式の買取りを実行することで後継者の納税・代償資金を確保できます。
それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案】早期の取締役会決議による長男Cさんの代表取締役選任、X社株式の長男Cさんへの集中承継、二男Dさんへの現預金等の重点配分および不足時の代償金(金庫株活用)の交付、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減を組み合わせた相続税額の最小化を提案する。 【理由】会社の経営安定と信用の維持を最優先しつつ、二男Dさんの権利意識を尊重して紛争を防ぎ、手元資金を超える相続税負担を大幅に圧縮できるため。 【留意点】配偶者の税額軽減を過度に利用すると二次相続時の税負担が過大になる点、金庫株の実行に際しては財源規制(分配可能額)の確認が必要な点、教育資金贈与信託の管理残額が相続財産に加算される場合の相続税額の2割加算等の影響に留意する。
長男Cへの経営権集中と二男Dへの財産配慮のバランスをとることが最重要です。金庫株の活用では会社法上の分配可能額の範囲内で行うこと、租税特別措置法のみなし配当課税の特例(相続税申告期限後3年以内の譲渡所得課税扱い)を適用することを確認します。また、妻Bの二次相続対策を見据えた遺産分割割合を検討する必要があります。
FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:顧客利益の最優先、守秘義務の徹底、十分な情報提供と丁寧な説明に基づくインフォームド・コンセントの徹底、中立公正な態度の保持が求められる。また、具体的な遺産分割調停や登記申請は弁護士・司法書士、具体的な相続税申告書の作成や税務判断は税理士など、各専門士業の独占業務に抵触しないよう連携して支援する(関係法令・士業法の遵守)。
FPは広範な専門知識をもって総合的な提案を行いますが、弁護士法(非弁活動の禁止)、税理士法(個別具体的な税務相談の禁止)、司法書士法等に抵触しないよう留意し、提携する士業専門家と連携しながら支援を進める必要があります。

関連する分野を学ぶ

覚えるポイント

  • 取締役会設置会社の後任代表取締役は、取締役会の決議によって選定される。
  • 相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合、申告期限後3年以内であればみなし配当課税が行われず譲渡所得(20.315%)として課税される。

間違えやすいところ

  • 遺産分割で株式を兄弟で均等に共有・分散させてしまい、後々の経営意思決定や承継で紛争を招くこと。
  • 配偶者の税額軽減を限度一杯まで使って一次相続税をゼロにした結果、二次相続で多額の税負担が発生すること。

出題の前提:2023年9月24日実施のFP1級実技面接試験(資産相談業務)の出題基準による。

出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月24日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)

2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月24日 PartI PartII・PartI)

参照した公式資料

金融財政事情研究会が公開した2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月24日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。

金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。