日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月23日 PartI PartII・PartII)の概要
事案分析に必要な情報の整理(顧客からの聴取事項および独自調査事項)
不動産・相続 · 情報収集 / 面談・聴取事項 / 物件調査 / 借地権・底地
Aさんに対して最適なアドバイスを行うにあたり、設例に示された情報のほかに収集・確認すべき情報について、「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FPであるあなた自身が調べて確認する情報」に整理して説明しなさい。
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解答
①Aさんからの確認:長男家族の住み替え・建築に関する具体的な資金計画(自己資金や住宅ローン借入予定)、Aさん自身の今後のライフプランや相続に対する意向、地主Dさんとの従前からの関係性や過去の借地に関するやり取りの経緯等。②FP自身の調査:甲土地および周辺の権利関係(登記記録・公図)、現地の状況(接道・境界標・高低差・インフラ配管)、都市計画制限等の公法規制、甲土地周辺の借地権および底地の取引相場・路線価、地主Dさんの意向(底地の買取りや交換の可否など)。
解説
不動産の有効活用や処分を提案する際は、相談者や家族のライフプラン・資金状況・意向を正確に把握することに加え、客観的な権利関係・法令制限・現地現況・周辺相場および関係者(地主)の意向を網羅的に調査・確認することが不可欠です。
解き方
- 顧客(Aさん・長男Cさん)側からしか確認できない主観的意向や家庭の資金計画を洗い出す。
- 公的書類、役所調査、現地確認等により客観的に把握すべき法的・物理的・経済的要件を整理する。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:・長男Cさん一家の住宅取得に関する具体的な希望(建築プラン、自己資金、住宅ローンの借入予定等)や、Aさんからの資金援助の有無 ・Aさん夫妻の今後の生活資金計画(老後資金の過不足)および保有金融資産の使途 ・将来の相続に対するAさんの意向(他の推定相続人の有無や意向を含む) ・地主Dさんとのこれまでの人間関係、交渉経過、借地契約の過去の経緯
- 顧客自身のライフプラン、老後資金の必要性、長男Cさんの資金調達力や具体的な建築希望、ならびに地主との関係性など、顧客側でしか知り得ない意向や状況を把握するために聴取します。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:・甲土地および甲建物の登記記録(登記事項証明書、公図、地積測量図、建物図面等)による権利関係の精査 ・現地の状況確認(境界標の有無、隣地との越境状況、接道状況、上下水道・都市ガスの引込状況等) ・役所調査による都市計画・建築基準法上の制限(用途地域、建蔽率・容積率、道路種別、斜線制限等) ・甲土地周辺の相場調査(借地権価格、底地価格、更地価格、借地権割合等) ・地主Dさんの属性や底地・借地権に対する意向(交換の可否、売却・買取りの意向の有無)
- 権利関係や公法上の規制、現地の物理的状況、周辺の市場価格水準および地主側の意向について客観的資料や現地・役所調査を通じて収集・分析します。
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覚えるポイント
- 聴取事項(顧客の意向・資金計画・関係性)と独自調査事項(権利関係・公法規制・現地現況・相場)を明確に区分して回答する。
間違えやすいところ
- 役所調査や登記調査で判明する公的事項を、顧客からの聴取事項として回答してしまう誤り。
出題の前提:FP技能検定1級実技試験(資産相談業務)における面接試問の標準的確認事項
出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月23日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
借地権付建物の第三者への売却に伴う地主の承諾および売却時の課税関係
不動産・タックス · 借地権譲渡承諾 / 借地条件変更・更新 / 譲渡所得 / 相続税の取得費加算の特例
Aさんが甲土地(借地権)・甲建物を建売業者等の第三者に9,000万円(現状有姿)で売却する場合、地主Dさんからどのような承諾を得る必要があるか説明しなさい。また、売却した場合の課税関係について説明しなさい。
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解答
地主の承諾としては、借地権の譲渡(名義書換)に対する承諾および譲渡承諾料(名義書換料)の支払が必要となる。また、買主が建替えや更新を前提とするため、建物の建替え(改築)承諾や借地契約の期間更新(更新料の支払)に関する承諾も必要となる。課税関係としては、譲渡所得(土地等・建物)が生じ、所有期間は被相続人の取得時期(1966年)を引き継ぐため長期譲渡所得として申告分離課税となる。相続開始から3年10か月以内の譲渡であるため「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算の特例)」の適用が検討できる。
解説
借地権の第三者への譲渡には地主の承諾が必須であり、一般に名義書換料の支払いを要します。また、建替や期間更新を伴う場合はその承諾・更新料も問題となります。譲渡所得税においては、相続取得の場合の保有期間引き継ぎ(長期譲渡所得)および取得費加算特例の適用の可否が重要です。
解き方
- 民法および借地借家法の規定に基づき、第三者への借地権売却に必要な地主の承諾事項(譲渡承諾、増改築承諾、条件変更・更新)および承諾料等を整理する。
- 所得税法上の譲渡所得の区分(長期・短期)、計算要素(譲渡価額、取得費、譲渡費用)および適用可能な税務上の特例(取得費加算の特例等)を整理する。
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覚えるポイント
- 借地権の譲渡には地主の承諾が必要であり、承諾が得られない場合は裁判所による代諾許可制度がある。
- 相続により取得した土地建物・借地権の売却では、被相続人の取得時期・取得費を引き継ぐため長期譲渡所得となり、取得費加算の特例が検討できる。
間違えやすいところ
- 単なる譲渡承諾だけでなく、建売業者の取得・建替えを前提とする建替え承諾や期間更新の承諾が必要である点を見落とすこと。
- 相続による取得であるにもかかわらず短期譲渡所得と判定してしまう誤り。
出題の前提:民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)、借地借家法第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)、租税特別措置法第39条(相続財産に係る譲渡所得の課税の特例)
出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月23日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
借地権と底地の交換後の土地活用方法および相続時の評価
不動産・相続 · 借地権と底地の交換 / 使用貸借 / 小規模宅地等の特例 / 相続税評価額
Aさんが地主Dさんとの間で借地権と底地の交換を行い、完全所有権を取得した土地(またはその一部)に長男Cさんの自宅を建築する場合について、考えられる具体的な方法と、それぞれの方法を採用した場合における将来のAさんの相続時における当該土地等の相続税評価・適用可能な特例について説明しなさい。
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解答
土地の利用・承継方法として①Aさんが長男Cさんに無償で土地を貸す(使用貸借)、②Aさんが長男Cさんに土地を贈与または売却する、③Aさんが土地上に長男Cさんの自宅を建築して長男Cさんに賃貸する(または同居する)などの方法が考えられる。使用貸借の場合は自用地評価となり、一定の要件(家なき子特例など要件充足時)を満たせば小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用の余地があるが、同居していない別居親族への使用貸借では原則として特例対象外となる点に留意する。
解説
親の所有地を子が利用する場合、使用貸借が最も簡便ですが、土地の評価額は自用地評価となり、別居親族である子が利用している場合は原則として特定居住用宅地等の特例の対象外となります。生前贈与や建物の所有主体の選定も含め、税負担と将来の遺産分割を考慮した比較検討が不可欠です。
解き方
- 親が所有権を取得した土地を子が利用するための契約形態(使用貸借・賃貸借・生前贈与・売買など)を整理する。
- 選択した利用形態ごとに、Aさんの相続発生時における土地の評価方法(自用地評価か否か)および小規模宅地等の特例の適用可否を判定する。
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覚えるポイント
- 親名義の土地に子が建物を建てて無償で利用する形態は「使用貸借」となり、借地権は発生せず自用地評価となる。
間違えやすいところ
- 同居していない別居の親族に親の土地を使用貸借させて子が自宅を建てている場合、原則として特定居住用宅地等の適用は受けられない。
出題の前提:2023年度第2回 FP1級実技試験(資産相談業務)PartII 設例(2023年9月23日実施)
出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月23日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本事案に関与する専門職業家
関連法規・専門職連携 · FP実務倫理 / 専門職業家連携 / 士業の独占業務
本事案(借地権・底地の交換、土地の分筆・測量、建物の解体・新築、不動産売却・賃貸、各種税務申告・特例適用など)において関与が想定される専門職業家を挙げ、それぞれの具体的な役割について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
税理士(借地権底地交換の特例や譲渡所得・相続税の申告・試算)、土地家屋調査士(土地の測量・境界確認・分筆登記・建物の滅失登記)、司法書士(土地の所有権移転登記・交換による登記手続き)、宅地建物取引業者(売却時の媒介業務や地主との交換協議のサポート・仲介)、建築士・ハウスメーカー(新築住宅の設計・施工)などが挙げられる。
解説
ファイナンシャル・プランナーは他士法(税理士法、弁護士法、司法書士法等)に抵触しないよう留意し、高度な専門判断や法定手続き・登記・税務申告等については各専門職業家と密接に連携して顧客に最適なプランを実行支援します。
解き方
- 本事案で発生する具体的な手続き(測量、分筆、登記、税務申告、建築設計、不動産取引仲介)を洗い出す。
- それぞれの手続きを担当する資格者(土地家屋調査士、司法書士、税理士、建築士、宅地建物取引業者等)を対応付ける。
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覚えるポイント
- 土地の表示に関する登記(分筆・滅失など)は土地家屋調査士、権利に関する登記(所有権移転・保存など)は司法書士の管轄である。
間違えやすいところ
- 土地の分筆登記や滅失登記を司法書士の業務と混同しないよう注意する。
出題の前提:2023年度第2回 FP1級実技試験(資産相談業務)PartII 設例(2023年9月23日実施)
出典:金融財政事情研究会『2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月23日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月23日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2023年9月 1級 実技(資産相談業務・9月23日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

