日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月18日 PartI PartII・PartII)の概要
顧客へのヒアリング事項と自ら調査・確認すべき情報
不動産 · 顧客情報の収集 / 不動産の権利関係調査 / 土地活用提案
父親から甲土地および甲建物を相続することとなったAさんに対して、最適な提案を行うために示された情報以外に収集・確認すべき情報について、①Aさんから直接ヒアリングして確認する情報、および②FP自身が調べて確認する情報に整理して説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
①Aさん本人から確認する情報:父親の遺産全体の状況および遺産分割協議の進行状況(弟Bさんの意向、土地建物の共有持分比率など)、Aさんのクリニック経営状況・財務内容や将来の事業展開(法人化の意向等)、Aさん・Bさんそれぞれの資金需要・資産保有状況、甲土地の活用方針に関する希望・リスク許容度、X社との契約解除・建設協力金の未返済残高や違約金に関する認識など。 ②FP自身が調べて確認する情報:甲土地・甲建物の登記事項証明書や公図・地積測量図による権利関係・境界の確認、甲土地周辺の賃貸需要や競合マンションの稼働率・家賃相場等の市場調査、都市計画法・建築基準法上の用途地域・建蔽率・容積率等の法的規制(道路幅員・斜線制限等)、現地調査による土地の形状・接道・インフラ整備状況、テナントX社との賃貸借契約書(中途解約・違約金条項、建設協力金返済約定など)の詳細調査。
解説
不動産コンサルティングにおいては、依頼者の主観的な意向や財務・家族状況を直接聞き取るとともに、不動産の権利関係や法的規制、市場性などの客観的情報を各種専門資料や現地調査から収集・分析することが適切な助言の土台となります。
解き方
- 設例の条件から、相談者Aさんの個別事情(クリニック経営、父親の相続、弟Bさんとの関係)と検討中の土地活用案を整理する。
- Aさんへの直接ヒアリング事項(家族関係、遺産分割の希望、事業経営状況、資金需要等)を洗い出す。
- FP自身が客観的に調査・確認すべき事項(不動産登記、建築制限、周辺市場動向、賃貸借契約書の精査等)を整理して回答を構成する。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:父親の遺産内容・遺産分割の意向(弟Bさんとの共有割合やBさんの希望)、Aさんの美容外科クリニックの経営・財務状況および法人化の意向、Aさん・Bさんの保有資産や今後の資金需要、賃貸マンション事業等の土地活用に対する意向・リスク許容度、X社とのこれまでの交渉経過などを確認する。
- 顧客本人の主観的な希望や家族間の意向、事業状況などは直接のヒアリングによってしか把握できないため、遺産分割・家族関係・経営状態・リスク許容度を丁寧に聴取します。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:甲土地・甲建物の登記事項証明書や公図等の権利関係、建築基準法・都市計画法等の法的規制(接道状況、容積率制限、斜線制限等)、現地における周辺賃貸マンションの需給・家賃相場動向、X社との賃貸借契約書の条項(解約予告期間、違約金、建設協力金の清算方法など)をFP自身で客観的に調査する。
- 公的機関や契約書、現地市場調査を通じて客観的な事実や権利関係、法規制の制限を自ら収集・確認し、実現可能なプランを策定するための基礎データを揃えます。
覚えるポイント
- ヒアリング事項は「相談者・親族の意向・財務状況」、自身調査事項は「登記・法規制・市場・既存契約書」に区分して整理する。
間違えやすいところ
- 直接聞く情報と自ら調べる情報の区分が曖昧になり、登記事項の確認や法規制の調査を顧客への質問事項に含めてしまうミスに注意する。
出題の前提:2023年6月18日実施 1級実技試験(資産相談業務・PartII)設例
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月18日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
建設協力金方式の概要と建物解約時の更地返還要求の可否
不動産 · 建設協力金方式 / 普通借家契約 / 原状回復義務 / 借家契約の中途解約
建設協力金方式の概要を説明したうえで、甲建物の普通借家契約を中途解約するにあたり、賃貸人であるAさんが借家人であるX社に対して甲建物の取り壊しおよび甲土地の更地返還を要求することが法的に可能かどうかを説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
建設協力金方式とは、土地所有者が入居予定のテナントから建築資金の全部または一部を「建設協力金」(保証金・敷金等の名目)として無利息または低利で借り受け、テナントの要望に沿ったオーダーメイドの建物を建築して賃貸し、受け取る賃料の中から建設協力金を分割返済していく土地活用手法である。 甲土地の更地返還要求については、法的に要求することは不可能である。契約の対象は「甲建物」の普通借家契約であり、土地の賃貸借(借地契約)ではない。借家人であるX社が負う義務は甲建物の原状回復・明渡義務にとどまり、所有権がAさん等にある甲建物を取り壊して土地を更地で返還する義務はないため、取り壊しを行う場合は建物所有者であるAさん側が自己の負担で行う必要がある。
解説
建物の賃貸借契約(借家契約)の終了に伴い借家人が負う義務は、賃借している建物の原状回復および明渡しであり、賃貸人所有の建物を取り壊して敷地を更地にする義務は負いません。土地の更地返還義務が生じるのは借地契約が終了した場合に限られます。
解き方
- 建設協力金方式の仕組み(テナントからの資金借入、オーダーメイド建築、賃料との相殺・返済)を説明する。
- 設例における賃貸借契約の法的性質が「甲建物の普通借家契約」であることを確認する。
- 借家契約終了時の借家人の義務(建物の明渡し・原状回復)を法的に整理し、建物の解体・更地返還義務は生じない(要求できない)ことを導き出す。
覚えるポイント
- 借家契約では借家人の義務は建物の明渡しまでであり、更地返還義務(建物の収去)は借地権の消滅時に借地権者が負う義務である。
間違えやすいところ
- 建設協力金方式で建てられた建物だからといって、テナントが建物の所有者であると誤認し、更地返還を要求できると誤答しないように注意する。
出題の前提:2023年6月18日実施 1級実技試験(資産相談業務・PartII)設例
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月18日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
賃貸マンション建築のメリット・デメリットおよび税負担軽減の仕組み
不動産 · 不動産の有効活用 / 賃貸不動産経営 / 所得税の損益通算 / 貸家建付地等の評価減
甲土地(800㎡)において、既存建物を解体して新たに賃貸マンション(区分所有建物)を建築する場合について、建築・経営に伴うメリットおよびデメリットを挙げたうえで、賃貸マンション経営が所得税や将来の相続税の軽減につながる仕組みを説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
賃貸マンション建築には安定収入の確保や税負担軽減、区分所有による柔軟な分割・売却等のメリットがある一方、空室・滞納・金利上昇・修繕コスト等のリスクがある。税負担軽減の仕組みとして、所得税面では減価償却費等の必要経費計上による損益通算が可能であり、相続税面では貸家建付地評価や貸家評価、小規模宅地等の特例、借入金の債務控除により課税価格を引き下げることができる。
解説
賃貸不動産の経営は、安定した果実(賃料収入)と不動産評価圧縮による相続税軽減および損益通算による所得税軽減をもたらす一方、空室・金利・修繕等の事業リスクや多額の負債を伴うため、事業収支計画とリスク管理の総合的な検証が重要である。
解き方
- 不動産賃貸事業のメリット(収益性・資産性・分割容易性・税務効果)とデメリット(空室・修繕・借入返済等の事業リスク)を対比して整理する。
- 所得税における減価償却費等の経費算入と他の所得(事業所得等)との損益通算の仕組みを説明する。
- 相続税における土地(貸家建付地評価・小規模宅地等の特例)、建物(固定資産税評価額・借家権割合)、借入金(債務控除)の評価減の仕組みを体系的に説明する。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
- 貸付事業用宅地等の小規模宅地特例は限度面積200㎡まで50%減額(相続開始前3年以内の貸付開始は一定の除外規定あり)
- 不動産所得の損失のうち、土地取得に要した借入金の利子相当額は損益通算の対象外となる
間違えやすいところ
- 所得税の損益通算において、土地取得に係る借入金利子まで損益通算できると誤認すること(建物に係る利子は通算可能)。
- 借家権割合を借地権割合と混同すること(全国一律で借家権割合は30%)。
出題の前提:2023年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2023年6月18日実施)PartII設問3
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月18日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事案に関与する専門職業家とその役割
関連法規・倫理 · 専門職業家の役割 / FP実務と関連法規 / 士業連携
本設例において、甲建物の解約・明渡し交渉、賃貸借契約の清算、既存建物の解体、賃貸マンション(区分所有建物)の建築・資金調達、兄弟間の権利調整、税務申告などを円滑に進めるために助言・連携を求めるべき主な専門職業家を挙げ、それぞれの業務・役割を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
税理士(相続税・所得税等の税務申告・相談)、弁護士(中途解約に伴う明渡し交渉や契約紛争解決)、司法書士(区分建物の所有権保存登記や抵当権設定登記)、土地家屋調査士(既存建物の滅失登記や新築建物の表題登記)、建築士(マンションの設計・建築確認申請)、不動産鑑定士(土地・権利の適正評価)などが挙げられる。
解説
ファイナンシャル・プランナーは顧客の課題解決に向けて総合的なプランニングを行うが、法令により士業の独占業務と定められている法律事務、税務申告・具体的相談、登記手続等はそれぞれの専門職業家と連携して業務を遂行しなければならない。
解き方
- 本設例で生じる課題(中途解約・明渡し、解体、新築設計・登記、融資担保設定、税務申告)を時系列・機能別に分類する。
- それぞれの業務に対応する専門資格者(弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、建築士、不動産鑑定士等)とその具体的役割を明記する。
覚えるポイント
- 税理士:個別具体的な税務相談、税務申告書の作成(税理士法)
- 司法書士:権利に関する登記(所有権保存、抵当権設定など)(司法書士法)
- 土地家屋調査士:不動産の表示に関する登記(表題登記、滅失登記など)(土地家屋調査士法)
- 弁護士:法律相談、紛争解決、交渉代理(弁護士法)
間違えやすいところ
- 建物の表題登記や滅失登記を司法書士の業務と混同すること(表示登記は土地家屋調査士、権利登記は司法書士)。
- FP自身が具体的な税額計算や法律交渉を行えると誤認すること(法令違反となる)。
出題の前提:2023年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2023年6月18日実施)PartII設問4
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月18日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月18日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月18日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

