日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月17日 PartI PartII・PartI)の概要
不動産オーナーの相続対策・所得税対策および有効活用
資産設計提案業務・不動産・相続 · 定期建物賃貸借契約 / 不動産の有効活用 / 不動産管理法人の活用 / 相続税対策 / FPの職業倫理
設例のAさん(68歳・不動産賃貸業)は、妻Bさん、長女Cさん、二女Dさんの4人家族である。所有財産には現預金・有価証券のほか、別荘、テナントビル(自宅兼用)、月極駐車場があり、借入金残債が7,000万円ある。相続税額は約2億5,000万円と試算され納税資金の不足が懸念されている。別荘の期限付き賃貸、駐車場の有効活用(賃貸マンション建設や事業用定期借地権)、所得税負担軽減および相続後の娘2人への収入確保に向けた法人設立、円滑な遺産分割などの課題を抱えている。これらの状況を踏まえ、顧客の相談内容・問題点、解決策、具体的な提案理由および留意点、FPの職業倫理について答えなさい。
解答・解説を表示
解答
顧客の相談内容・問題点(納税資金不足、高所得に伴う税負担、未活用不動産の収益化・活用方針、相続後の姉妹への賃料収入確保と遺産分割)、解決策(定期建物賃貸借の活用、不動産管理法人設立による所得分散、駐車場の事業用定期借地権等の活用、生前贈与・遺言書作成)、提案理由・留意点(借入れを抑えつつ納税資金・収益を確保する方針、法人の形態選定や借地借家法の要件遵守)、FPの職業倫理(顧客利益の優先、守秘義務、説明義務、コンプライアンスの遵守、士業連携)を適切に提示する。
解説
不動産賃貸オーナーの総合提案では、高所得による毎年の税負担の軽減(法人化や所得分散)、将来の相続税の軽減および納税資金の準備、そして相続人への円滑な資産承継(争族対策・遺言作成)を三位一体で検討することが重要です。借入れリスクを回避したい顧客に対しては、事業用定期借地権などの投資負担のない土地活用法を検討します。
解き方
- 設例から顧客の保有資産、負債、親族関係、意向(借入回避、娘への収入確保、所得税負担軽減)を正確に読み解く。
- 納税資金不足、高額な所得税負担、未活用不動産の収益化という課題を抽出する。
- 借地借家法(定期建物賃貸借・事業用定期借地権)や法人化(管理会社・所有方式)等の法制度を適用した対策を組み立てる。
- 各方策のメリット・デメリットおよび法的手続き・留意点、専門士業との連携を踏まえた提案をまとめる。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①納税資金の不足懸念(見積もり相続税額約2億5,000万円に対し金融資産は2億円で借入金残債もある)、②テナントビルの減価償却費減少に伴う所得税等の高負担、③利用頻度の低い別荘の維持費負担と期限付き賃貸のニーズ、④月極駐車場の固定資産税等負担と新たな借入れを避けたい有効活用の検討、⑤相続開始後に長女・二女へ安定した賃料収入を確保させつつ争族を防ぐ遺産分割対策。
- 相続税評価額の合計が7億8,000万円で相続税が約2億5,000万円と見積もられる一方、金融資産は2億円かつ借入残債が7,000万円あるため納税資金対策が急務です。また不動産所得3,000万円による所得税負担や、未活用別荘・低収益駐車場の活用、娘2人への所得分配方法が問題点となります。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①別荘について定期建物賃貸借契約を活用した期限付き賃貸、②テナントビルや駐車場を対象とした不動産所有方式または管理委託方式・サブリース方式による不動産管理法人の設立(妻や長女・二女を役員・株主とし所得分散と納税資金蓄積を図る)、③月極駐車場における借入れを伴わない事業用定期借地権等の設定による安定地代収入の確保、④公正証書遺言の作成や小規模宅地等の減額特例を考慮した分割方針の確定。
- 別荘は借地借家法第38条の定期建物賃貸借により更新なしで期間満了により確実に返還を受けることができます。高所得に対しては家族を役員とする法人化で所得税率の低減と贈与効果を狙えます。駐車場は借入れを嫌う意向から事業用定期借地権が有効です。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案】月極駐車場の事業用定期借地権(賃貸借)による活用と、長女・二女を役員・株主とする不動産管理法人の設立、別荘の定期建物賃貸借契約。【理由】追加の多額な借入れを避けつつ安定した地代収入・保証金を得られ、法人を通じて長女・二女に合法的に役員報酬を支給し生前の所得分散と納税資金準備ができるため。【留意点】定期借地権は事業用建物に限定され公正証書による契約締結が必須であること。定期建物賃貸借契約は書面(公正証書等)による事前説明と契約締結が必要なこと。法人設立では設立費用や不動産の移転コスト(不動産取得税・譲渡所得税等)を精査する必要があること。
- Aさんは残債があるため新たな借入れに消極的です。賃貸マンション建設ではなく事業用定期借地権を選択すれば借入れ不要で安定収入が得られます。また、娘2人への所得承継と納税資金確保を両立するために不動産管理法人の活用が最も合致しています。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:顧客利益の優先、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント(顧客への十分な説明と同意)、法令遵守(コンプライアンス)、専門職(弁護士・税理士・司法書士等)との適切な連携。
- 金融機関からの提案内容に偏ることなく、顧客Aさんの意向を最優先に客観的なアドバイスを行うことが求められます。また税務相談や登記、公正証書作成等の個別具体的手続きについては、各法令に違反しないよう税理士や弁護士等の専門職と協働して進める必要があります。
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覚えるポイント
- 定期建物賃貸借契約は書面(または電磁的記録)による事前説明および契約が必要で更新がない。
- 事業用定期借地権等は専ら事業の用に供する建物所有を目的とし、公正証書によって契約を締結しなければならない。
間違えやすいところ
- 事業用定期借地権の対象に居住用マンションが含まれると誤認すること(居住用は対象外)。
- 不動産管理法人への建物売買に伴う移転コスト(消費税、譲渡所得税、不動産取得税、登録免許税)の考慮漏れ。
出題の前提:実技試験(資産相談業務)の出題基準(面接試験・口頭試問の検討課題)に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月17日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月17日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月17日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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