日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartII)の概要
甲土地の有効活用および共有物分割に伴う情報収集
不動産 · 共有物分割 / 不動産調査 / 相談業務の実務
Aさん(57歳)は、二男Bさん、三男Cさんと3人で相続した甲土地(1,200㎡、市街化区域、第一種低層住居専用地域)をほぼ等価に3分割し、将来それぞれが2区画(整形地)に分割利用できるよう土地内に道路を新設する共有物分割を検討している。Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、示された情報のほかにどのような情報が必要か、「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FPであるあなた自身が調べて確認する情報」に整理して答えなさい。
解答・解説を表示
解答
①Aさんから直接聞いて確認する情報:将来の転居・売却の具体的な時期や計画、建物の維持・改築に対する意向、道路開設等の整備費用負担に対する3人の合意状況など。②FP自身が調べて確認する情報:登記記録による権利関係・担保権設定の有無、建築基準法上の道路位置指定基準や開発許可の要件、上下水道・都市ガス等のインフラ引込状況と費用、周辺相場や路線価に基づく各分割区画の客観的評価額など。
解説
不動産の共有物分割や宅地開発のアドバイスにおいては、当事者全員の将来計画や合意形成といった定性的・主観的情報と、公法上の規制・権利関係・インフラ整備等の客観的・法的調査結果の双方を網羅的に収集・分析することが極めて重要です。
解き方
- 設例の共有関係・建物現況および3兄弟の分割希望(等価分割、将来の2区画分割、費用均等負担)を整理する。
- 当事者間の合意事項や資金面・将来計画などAさんから直接ヒアリングすべき主観的情報を抽出する。
- 建築基準法・都市計画法の道路開設基準やインフラ整備、登記・評価額などFP自身が行政・公簿等で客観的に調査すべき情報を整理する。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:3兄弟の将来の生活設計(転居・売却の時期や資金需要)、既存建物の利用・改築等に関する意向、道路新設やインフラ整備等の費用負担に関する合意状況、家族構成と将来の相続への配慮。
- 相談者側の主観的意向や将来計画を確認します。具体的には、Aさん・Bさん・Cさんの将来の転居・売却の具体的希望時期、Cさん宅の敷地・建物に関する許容範囲、新設道路やインフラ整備にかかる費用の均等負担への合意形成状況、各家庭の相続に対する意向を聴取する必要があります。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:甲土地の登記事項証明書による権利関係・担保設定の確認、K市における建築基準法第42条第1項第5号(道路位置指定)および都市計画法(開発許可)の基準、上下水道・ガス等インフラの埋設・引込状況と費用、路線価や取引事例に基づく各区画の適正評価額。
- 客観的な法規制や物理的条件を自ら調査します。法務局での登記事項・公図の確認、K市役所の建築指導課や開発指導課での道路位置指定基準・隅切り等の要件確認、水道局や指定道路敷へのインフラ埋設条件、周辺相場からみた分割後の各画地の等価性検証が必要です。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- FP実技面接において顧客から直接聞く情報とFP自身が調査する情報の区分は頻出項目である。
- 道路新設を伴う分割では、位置指定道路の基準、インフラ埋設条件、権利関係の調査が必須となる。
間違えやすいところ
- 設例に既に記載されている事項(面積、指定建蔽率・容積率など)を重複して回答に挙げないこと。
- 直接聞く情報と自身で調べる情報を取り違えないように明確に区分して記述すること。
出題の前提:2023年度第1回FP技能検定1級実技試験(PartII)設例条件・建築基準法および都市計画法に基づく相談実務基準
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
共有物分割案(分割案①と分割案②)の比較検討と推奨
不動産 · 共有物分割 / 道路位置指定 / 接道義務 / 区画割
甲土地の共有物分割案として提示されている「分割案①(不動産鑑定士提示)」と「分割案②(Cさん提示)」について、あなたはAさんにどちらの案を勧めるか、理由とともに答えなさい。
解答・解説を表示
解答
分割案②を勧める。理由として、分割案①ではCさん自宅(築16年)が新設道路にはみ出して建物解体・改築が必要となるのに対し、分割案②であれば既存建物をそのまま活用できること、および新設道路を敷地中央に配置することで、将来Aさんの敷地を東西に2分割する際にも両区画が新設道路に接道でき、3人の分割希望を満たすため。
解説
土地の区画割・共有物分割の提案では、既存建物の配置・有効活用を最優先に配慮するとともに、将来の再分割時における建築基準法の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接道)を満たせる道路線形・敷地形状を選択することが重要です。
解き方
- 現況図と分割案①・分割案②における建物位置と新設道路の位置関係を確認する。
- 分割案①における問題点(Cさん自宅が新設道路敷にはみ出す点)を把握する。
- 3人の分割希望「将来それぞれが取得した土地を2区画(整形地)に分割利用できること」について、分割案②での接道条件(特に奥地となるAさん敷地の中央接道)を検証する。
- 既存建物への影響と将来の利用可能性の両面から分割案②が優れている理由をまとめる。
答えの内訳
- 推奨する案:分割案②を勧める。
- 既存建物の保存性および将来の土地利用(希望である2区画への再分割可能性)の観点から、中央に新設道路を設ける分割案②が適切と判断されます。
- 理由:分割案①では新設道路が敷地東端に配置され、Cさんの自宅(築16年)が道路敷地にはみ出て解体・減築が必要となるが、分割案②であれば既存建物を活かしたまま分割できる。さらに、分割案②の中央道路配置であれば、奥にあるAさんの土地を将来東西に2分割する際にも両区画が新設道路に接道義務(2m以上)を満たして整形地として利用可能であり、3人の希望を最も合理的に満たすため。
- 分割案①は建物越境が生じるため現実的ではありません。また分割案②では道路をB宅とC宅の間に通すことで既存建物を残せるだけでなく、奥のA宅敷地(地積420㎡、間口30m)の南側中央に5m道路が接するため、将来Aさんが東西に15mずつ2分割しても各区画が2.5mずつ接道でき、希望どおり整形地として建築可能な区画を確保できます。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 建築基準法の接道義務は、原則として幅員4m以上の道路に敷地が2m以上接することである。
- 敷地奥の土地を将来再分割する場合、道路の接道位置(敷地中央接道など)によって双方の区画が接道可能かどうかが決まる。
間違えやすいところ
- 地積の数値(分割案①:420㎡/323㎡/323㎡、分割案②:420㎡/325㎡/319㎡)の差だけで判断せず、建物への影響や将来の再分割可能性を理由に挙げること。
出題の前提:2023年度第1回FP技能検定1級実技試験(PartII)設例条件・建築基準法第42条および第43条
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
甲土地上への建築基準法上の道路新設方法
不動産 · 建築基準法の道路 / 位置指定道路 / 開発許可
甲土地(地積1,200㎡、市街化区域)を分割して奥側の土地等に建築物を建てるために、甲土地上に建築基準法上の道路を新設する方法について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
建築基準法第42条第1項第5号に基づく特定行政庁の「位置指定道路」の指定を受ける方法、または都市計画法に基づく開発許可を受けて築造される建築基準法第42条第1項第2号道路とする方法がある。
解説
建築物の敷地は建築基準法第43条に基づき幅員4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接道していなければなりません。敷地を分割して奥に通路を設ける際は、特定行政庁から位置の指定を受けた位置指定道路(法42条1項5号)とするか、開発許可に伴う築造道路(法42条1項2号)とする必要があります。
解き方
- 甲土地の地積や分割計画を確認し、都市計画法上の開発許可が必要な規模に該当するかを特定行政庁で確認する。
- 開発許可を要しない場合は、幅員・構造・隅切り等の基準を満たした図面を作成し、建築基準法第42条第1項第5号の位置指定道路の申請手続きを行う。
答えの内訳
- 方法1:位置指定道路(建築基準法第42条第1項第5号道路)の指定を受ける
- 特定行政庁から道路としての位置の指定を受けることで、建築基準法上の道路(幅員4m以上等)を新設することができます。
- 方法2:都市計画法に基づく開発許可に伴う道路(建築基準法第42条第1項第2号道路)の築造
- 甲土地の地積が1,200㎡あり開発行為に該当する場合、都市計画法第29条に基づく開発許可を受けて築造する道路として新設します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 位置指定道路は幅員4m以上や転回広場・隅切りの確保など技術的基準を満たす必要がある点。
間違えやすいところ
- 単に私道を敷設しただけでは建築基準法上の道路とは認められず、接道義務を満たせない点に注意が必要です。
出題の前提:建築基準法第42条、第43条、および都市計画法第29条に基づく開発許可制度の規定。
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
共有物分割の手続と課税関係
不動産・タックスプランニング · 共有物分割 / 分筆登記 / 持分移転登記 / 譲渡所得税 / 不動産取得税
甲土地の共有状態を解消するための共有物分割の手続きの流れ、およびその際に生じる課税関係(所得税、登録免許税、不動産取得税等)について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
手続は共有者全員の協議、境界確定・分筆登記、持分移転登記の流れで行う。課税関係は、持分割合に応じた等価分割であれば譲渡所得税は非課税となり、登録免許税(軽減税率0.4%)が課され、元の持分割合相当部分の不動産取得税は非課税となる。
解説
共有物の分割は共有持分の相互移転ですが、従前の共有持分の割合に応じて現物分割(等価分割)された場合には譲渡所得の基因となる資産の移転はなかったものとして取り扱われます。ただし持分を超える経済的利益を取得して代償金の授受等がある場合は譲渡所得税や贈与税の課税関係が生じます。
解き方
- 共有者全員で分割案・境界確定に合意して共有物分割協議書を作成し、分筆登記と持分移転登記を申請する。
- 分割後の各取得区画の適正評価額を比較し、共有持分割合に応じた分割か精算金が発生するかを確認して税務処理を判断する。
答えの内訳
- 手続:共有物分割協議の成立、土地家屋調査士による分筆登記、司法書士による共有物分割を原因とする持分移転登記を行う。
- 共有者全員(A・B・C)による合意に基づいて共有物分割協議書を作成し、測量・分筆登記を経て各自が単独取得する持分移転登記を行います。
- 課税関係:等価分割であれば譲渡所得税および本来持分に応じた不動産取得税は非課税となり、登録免許税等が課される。
- 分割後の土地の価額割合が共有持分に応じた等価分割である場合、資産の譲渡はなかったものとみなされ譲渡所得税は非課税(所得税基本通達33-1の6)、持分相当分の不動産取得税も非課税ですが、登記に係る登録免許税は課税されます。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 持分に応じた等価分割であれば譲渡所得税は原則非課税、登録免許税は移転持分に対し原則4/1,000となる点。
間違えやすいところ
- 地積比率だけで等分しても接道状況や位置によって評価額に大きな差が生じると、代償金授受やみなし贈与等の課税が生じ得る点。
出題の前提:民法第256条以下の共有物分割規定、所得税基本通達33-1の6、登録免許税法、地方税法。
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
本事案に関与する専門職業家
不動産 · 士業の役割 / 専門職業家との連携 / 不動産の有効活用
Aさん、Bさん、Cさんが甲土地の共有物分割(私道の新設・分筆・等価分割等)を進めるにあたり、関与する専門職業家とその主な役割について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
関与する主な専門職業家は、土地家屋調査士(位置指定道路の申請や分筆登記など)、司法書士(共有物分割による所有権移転登記など)、税理士(等価分割に伴う譲渡所得税・贈与税の課税関係の確認や申告など)、不動産鑑定士(分割後の各土地の評価など)、宅地建物取引業者(将来の売却や有効活用に関する相談など)である。
解説
ファイナンシャル・プランナーは業務上、顧客に対して包括的な助言を行うとともに、各種法律(弁護士法、税理士法、司法書士法、土地家屋調査士法など)の独占業務に抵触しないよう、各分野の適切な専門職業家と連携して業務を進める必要があります。
解き方
- 設例における課題(道路位置指定、分筆、登記、税務申告、土地評価、将来の売却)を整理する。
- それぞれの課題に対応する法的な独占業務・専門領域を持つ士業・専門家(土地家屋調査士、司法書士、税理士、不動産鑑定士等)を特定し、その具体的な役割を提示する。
答えの内訳
- 土地家屋調査士:位置指定道路の指定申請、現況測量、甲土地の分筆登記業務を行う。
- 土地の形状変更に伴う境界の確認、道路位置指定申請手続きの実務、および土地を分割するための分筆登記を担当します。
- 司法書士:共有物分割協議に基づく所有権移転登記(持分移転等の登記)を行う。
- 共有物分割に伴って発生する持分移転登記や権利関係の登記手続きを代理・申請します。
- 税理士:等価分割における課税関係の整理、譲渡所得税や贈与税に関する相談・申告を行う。
- 共有物分割が税法上の等価分割に該当するかどうかの確認や、差額が生じた場合の贈与税・譲渡所得税等の申告業務を行います。
- 不動産鑑定士:分割後の各画地が等価であるかどうかの鑑定評価や価格水準の算定を行う。
- 道路新設後の各画地の形状・接道条件等を反映した適正な評価額を算定し、等価分割の客観的な裏付けを提供します。
- 宅地建物取引業者:将来的な土地の売却や有効活用、市場動向に関するアドバイスを行う。
- 将来自宅を分割して売却・賃貸する際などの市場性の把握、売却支援、分譲のアドバイスを行います。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- FP実技面接において専門職業家を答える際は、単に士業名を並べるだけでなく「その事案において何を担当するか」という具体的な業務内容までセットで答える。
間違えやすいところ
- 分筆登記(表示に関する登記)を行うのは土地家屋調査士であり、所有権移転等の権利に関する登記を行う司法書士と混同しやすい点に注意する。
出題の前提:2023年6月11日実施の資産相談業務実技試験の出題条件および関連士業法令に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

