日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartI)の概要
不動産管理会社の活用と相続税・遺産分割・納税資金対策
資産設計提案業務・資産承継 · 小規模宅地等の減額特例 / 同族会社(不動産所有会社)の活用 / 生前贈与 / 遺産分割対策
Aさん(68歳)は、夫の死亡後に相続した多額の資産(現預金、二世帯住宅、自用マンション、賃貸アパート、同族会社X社の賃貸土地、月極駐車場など計3億3,000万円)を保有している。将来発生する自身の相続に向けて、推定相続人である長男Bさん・長女Cさんのために相続準備を検討している。本設例における「相談内容および問題点」「解決策・方策」「具体的な提案内容・留意点」「FPの職業倫理」について答えなさい。
解答・解説を表示
解答
相談内容・問題点として将来の相続税負担(約8,200万円)や小規模宅地等の特例適否、二重生活に伴う生活拠点と遺産分割のバランス、X社の活用方法等が挙げられる。方策として小規模宅地等の特例の適用要件確認、月極駐車場の有効活用、X社の株式や役員の承継と所得分散、生前贈与や遺言書作成が考えられ、これらを総合的に提案・実行支援する。
解説
相続対策では、分割対策(争族の防止)、納税資金対策、節税対策の3つのバランスを保つことが基本です。特に不動産所有会社を活用した資産承継では、株式評価額が低い段階での株式移転や、賃貸物件の活用による評価減が効果的ですが、推定相続人の職業(公務員の兼業禁止等)や居住実態(小規模宅地等の特例要件)など個別固有の法的要件を十分に検証することが不可欠です。
解き方
- 設例の家族構成、保有資産構成、推定相続税額、X社の財務状況等の前提条件を漏れなく整理する。
- 長男・長女の職業制限(公務員等)や居住実態(デュアルライフによる主たる拠点の判定)等の個別論点を抽出する。
- 小規模宅地等の特例、不動産所有会社(X社)の活用、生前贈与・遺言書作成などの具体的な解決策と留意事項をまとめる。
- FP倫理(守秘義務、顧客第一主義、他士業との連携)に基づいたアドバイス方針を導く。
答えの内訳
- 設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。:①将来の多額の相続税負担(約8,200万円)と納税資金・節税の必要性、②居住実態が長女近隣の自用マンションにあることによる二世帯住宅敷地への小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適否判定、③長男(同居二世帯)と長女(近隣マンション)の間での遺産分割の公平性と遺留分への配慮、④不動産管理会社X社(株式評価額0円)の活用と事業承継対策、⑤低収益な月極駐車場(評価額8,000万円に対し年収300万円)の収益性・土地利用の改善が挙げられます。
- Aさんの財産総額は3億3,000万円にのぼり高額な相続税が見込まれる一方、実質的な生活拠点が長女宅近隣のマンションに移っており、長男が住む二世帯住宅敷地に対する特定居住用宅地等の適用可否に慎重な検証が必要です。また、財産構成において不動産割合が高く、子ども2人に対する円滑かつ公平な遺産分割および納税資金の確保が課題となります。
- それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。:①小規模宅地等の特例の適用要件の整理・確認(二世帯住宅の特定居住用や貸付事業用宅地等の選択)、②不動産管理会社X社の活用(子どもへの役員就任や役員報酬支給による所得分散、株式の生前贈与、物件売却や建物追加取得等の検討)、③低利用の月極駐車場への賃貸建物建築や有効活用による評価引下げと収益力向上、④暦年課税制度や相続時精算課税制度を利用した計画的な生前贈与、⑤生命保険の非課税枠の活用による納税資金準備、⑥争族を回避するための公正証書遺言の作成が考えられます。
- 保有資産の収益改善と評価額圧縮、所得分散を同時に進めるため、X社の法人格を活用した対策や、更地同然の月極駐車場の活用が有効です。また、推定相続人である子ども2人の意向を踏まえた生前贈与や遺言による事前調整が不可欠です。
- それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。:【提案内容】 1. 不動産管理会社X社の活用と株式の生前贈与 2. 遺言書の作成と小規模宅地等の特例の適用設計 【理由】 現在X社株式の評価額は0円であり、贈与税負担なく子どもへ株式を移転できます。また、将来の不動産収益を子どもに移転してAさんの資産増加を防ぎます。さらに、二世帯住宅敷地(特定居住用または貸付事業用)と長女への資産配分を遺言で明確に定めることで公平な分割を実現します。 【留意点】 長男Bさんは公務員、長女Cさんは公立学校等の教員であるため、国家公務員法・地方公務員法等の兼業禁止規定に抵触しないよう役員就任や報酬受領の可否を法的に確認する必要があります。また、生活拠点の実態により特定居住用宅地等の適用が否認されないよう税理士等の専門家と確認することが重要です。
- 長男・長女がともに公務員・教職にある点が本設例の大きな留意点です。副業・兼業制限により役員就任や過度な報酬受取が制限される可能性があるため、株主としての権利移転に留める等の配慮が求められます。
- FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。:FPは顧客の利益を最優先に考え(顧客第一主義)、顧客のプライバシーや財産状況等の情報を厳格に管理する守秘義務を遵守する必要があります。また、提案にあたっては顧客への十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)を徹底し、税務判断や登記手続き等の独占業務については自ら判断せず、税理士や弁護士、司法書士等の専門家と連携(コンプライアンスの遵守)して支援することが重要です。
- FP倫理綱領の基本原則(顧客第一主義、守秘義務の遵守、インフォームド・コンセント、コンプライアンスの徹底、能力の啓発)に沿って実務を遂行する姿勢が求められます。

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覚えるポイント
- 公務員は原則として営利企業の役員兼職が禁止されているため、会社役員就任による所得分散には法的制限が伴う。
- 小規模宅地等の特例における特定居住用宅地等は「主としてその居住の用に供していた宅地等」が対象となるため、二拠点居住(デュアルライフ)の実態確認が極めて重要である。
- 土地の無償返還に関する届出書が提出されている場合、自用地評価額から借地権割合相当額ではなく原則として20%相当額が控除された80%評価(通常の地代収受時)となる。
間違えやすいところ
- 長男・長女が公務員であることを看過し、安易にX社の役員就任と役員報酬支払いを提案してしまう。
- 住民票の住所だけで安易に特定居住用宅地等の適用が可能と判断し、生活拠点の居住実態を軽視してしまう。
出題の前提:2023年度第1回(2023年6月11日実施)金融財政事情研究会 1級ファイナンシャル・プランニング技能検定 実技試験(資産相談業務)Part I 設例に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartI)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartI)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2023年6月 1級 実技(資産相談業務・6月11日 PartI PartII・PartI)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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