日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2021年9月 1級 学科(応用編)の概要
老齢基礎年金および老齢厚生年金の年金額の計算
ライフプランニングと資金計画 · 老齢基礎年金 / 老齢厚生年金 / 報酬比例部分 / 経過的加算
Aさん(1972年5月10日生まれ)が、60歳に達するまで国民年金の保険料を納付した場合に、原則として65歳から受給できる公的年金の老齢給付について、①老齢基礎年金の年金額および②老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)を求めなさい。年金額は2021年度価額に基づき、計算過程を示して円単位(円未満四捨五入)で解答すること。
解答・解説を表示
解答
① 780,900円 ② 344,129円
解説
老齢基礎年金は20歳以上60歳未満の保険料納付月数等(上限480月)に応じて計算されます。老齢厚生年金は、総報酬制導入前後の被保険者期間と標準報酬に基づく報酬比例部分に、定額部分と厚生年金期間中の20歳以上60歳未満期間に応じた基礎年金相当額との差額である経過的加算額を合算して計算します。
解き方
- Aさんの20歳以上60歳未満における保険料納付済期間を整理し、老齢基礎年金の月数が満額の480月に達することを確認して計算します。
- 報酬比例部分を総報酬制導入前(新乗率7.125/1,000)と導入後(新乗率5.481/1,000)に分けて算出し合算します。
- 経過的加算額を「1,628円×厚生年金被保険者期間月数(162月)-780,900円×(20歳以上60歳未満の厚生年金被保険者期間月数149月/480月)」によって計算します。
- 厚生年金の被保険者期間が240月未満であるため加給年金額は加算されないことを確認し、報酬比例部分と経過的加算額を合算します。
答えの内訳
- ①:780,900(円)
- 老齢基礎年金の満額は780,900円(2021年度価額)です。Aさんの20歳到達は1992年5月であり、20歳以上60歳未満の被保険者月数は、厚生年金保険期間が1992年5月から2004年9月までの149月、国民年金第1号被保険者期間が2004年10月から2032年4月(60歳到達の前月)までの331月となり、合計480月(40年間)納付済となります。したがって、年金額は 780,900円 × 480月/480月 = 780,900円 となります。
- ②:344,129(円)
- 老齢厚生年金の本来水準額は「報酬比例部分」と「経過的加算額」の合計です(厚生年金被保険者期間が162月で240月未満のため加給年金は対象外)。 1. 報酬比例部分: ・総報酬制導入前:280,000円 × 7.125/1,000 × 144月 = 287,280円 ・総報酬制導入後:360,000円 × 5.481/1,000 × 18月 = 35,516.88円 合計:287,280円 + 35,516.88円 = 322,796.88円 → 322,797円(四捨五入) 2. 経過的加算額: 1,628円 × 162月 - 780,900円 × 149月/480月 = 263,736円 - 242,404.375円 = 21,331.625円 → 21,332円(四捨五入) 3. 合計年金額: 322,797円 + 21,332円 = 344,129円 となります。
覚えるポイント
- 経過的加算の控除額で用いる月数は、厚生年金期間全体ではなく「20歳以上60歳未満」の期間のみである点。
- 加給年金額が加算される要件は原則として厚生年金の被保険者期間が20年(240月)以上であること。
間違えやすいところ
- 経過的加算の定額部分(1,628円に乗じる月数)の162月と、控除部分の基礎年金相当額に乗じる月数(20歳以上の149月)を取り違えて計算してしまうミス。
- 厚生年金被保険者期間が20年未満であるにもかかわらず加給年金額を加算してしまうミス。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の公的年金各法および2021年度年金額基準
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
国民年金基金の仕組みと給付内容
ライフプランニングと資金計画 · 国民年金基金 / 掛金限度額 / 給付の型 / 社会保険料控除
国民年金基金に関する説明文の空欄①~⑧に入る適切な語句または数値を答えなさい。 「国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者が加入することができ、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。国民年金基金には、全国国民年金基金と3つの( ① )国民年金基金があります。Aさんの場合は、全国国民年金基金に加入することになります。 国民年金基金への加入は口数制です。1口目は、( ② )年間の保証期間のある終身年金A型と保証期間のない終身年金B型の2種類のなかからの選択となり、2口目以降は、2種類の終身年金と( ③ )種類の確定年金のなかから選択することができます。 毎月の掛金は、加入員が選択した給付(年金)の型、加入口数、加入時の年齢などによって決まり、その拠出限度額は月額( ④ )円となっています。また、4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納した場合、( ⑤ )カ月分の掛金が割引されます。支払った掛金は、税法上、社会保険料控除として所得控除の対象となります。 国民年金基金の給付には、老齢年金と( ⑥ )があります。老齢年金は、終身年金(A型、B型)の場合、原則として( ⑦ )歳から支給が開始され、老齢年金の年金額が12万円以上の場合、年( ⑧ )回に分けて受け取ることになります」
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解答
① 職能型 ② 15(年間) ③ 5(種類) ④ 68,000(円) ⑤ 0.1(カ月分) ⑥ 遺族一時金 ⑦ 65(歳) ⑧ 6(回)
解説
国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者向けの上乗せ年金制度であり、掛金は全額社会保険料控除の対象となります。終身年金と確定年金を組み合わせることができ、税制上の優遇措置や割引制度が設けられています。
解き方
- 基金の種類(全国型と3つの職能型)および1口目・2口目以降の選択可能な給付の型(終身年金2種、確定年金5種)を特定します。
- 拠出限度額(月額68,000円)と1年分前納時の割引率(0.1カ月分)を確認します。
- 給付体系(老齢年金と遺族一時金)、終身年金の受給開始年齢(65歳)、支給回数(年額12万円以上で年6回)を順に当てはめます。
答えの内訳
- ①:職能型
- 国民年金基金には、地域型を統合した全国国民年金基金と、同種の業務に従事する者を対象とする3つの職能型国民年金基金(歯科医師、司法書士、日本弁護士)があります。
- ②:15(年間)
- 国民年金基金の1口目は終身年金(A型またはB型)から選択します。A型は15年間の保証期間が付いた終身年金です。
- ③:5(種類)
- 2口目以降は終身年金2種類(A型・B型)と確定年金5種類(Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型)の合計7種類から自由に組み合わせて選択できます。
- ④:68,000(円)
- 国民年金基金の掛金拠出限度額は、個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金と合算して月額68,000円です。
- ⑤:0.1(カ月分)
- 掛金を4月から翌年3月までの1年分前納した場合、0.1カ月分の掛金が割引されます。
- ⑥:遺族一時金
- 国民年金基金の給付には、加入員本人が受け取る「老齢年金」と、保証期間中や年金受給前に死亡した際に遺族に支給される「遺族一時金」があります。
- ⑦:65(歳)
- 国民年金基金の終身年金(A型・B型)の支給開始年齢は、原則として老齢基礎年金と同じ65歳です。
- ⑧:6(回)
- 老齢年金の額が年額12万円以上である場合、偶数月に年6回に分けて支給されます(公的年金と同様の支払月区分)。
覚えるポイント
- 国民年金基金の掛金上限はiDeCoと合算で月額68,000円であること。
- 掛金の前納割引は1年分前納で0.1カ月分であること。
- 確定年金は5種類(Ⅰ型〜Ⅴ型)あり、2口目以降でのみ選択可能であること。
間違えやすいところ
- 国民年金基金の掛金控除を小規模企業共済等掛金控除と混同すること(正しくは社会保険料控除)。
- 確定年金の種類数(5種類)と終身年金を含めた全種類数(7種類)を混同すること。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の国民年金法および国民年金基金令
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
国民年金の付加年金および小規模企業共済制度の仕組み
ライフプランニングと資金計画 · 付加年金 / 小規模企業共済 / 共同経営者 / 共済金の受取方法 / 一般貸付制度
設例に基づき、FPのMさんがAさんに対して説明した老後の年金収入を増やす方法等に関する文章の空欄①〜⑥に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 Ⅰ 「Aさんは、老後の年金収入を増やすために、国民年金の付加保険料を納付することができます。付加保険料は、国民年金の定額保険料に上乗せして納付します。仮に、Aさんが付加保険料を110月納付し、65歳から老齢基礎年金を受け取る場合、当該老齢基礎年金の額に付加年金として( ① )円が上乗せされます。なお、国民年金基金に加入した場合は、国民年金の付加保険料を納付することはできません」 Ⅱ 「小規模企業共済制度は、Aさんのような個人事業主が廃業等した場合に必要となる資金を準備しておくための共済制度です。毎月の掛金は、1,000円から( ② )円までの範囲内で、500円単位で選択することができます。妻Bさんは( ③ )の要件を満たせば、加入することができます。仮に、Aさんが加入しない場合であっても、妻Bさんは( ③ )の地位で加入することができます。支払った掛金は、税法上、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。 共済金は、加入者に廃業等の事由が生じた場合に、掛金納付月数等に応じて支払われます。共済金の受取方法には、『一括受取り』『分割受取り』『一括受取りと分割受取りの併用』があります。『分割受取り』を選択するためには、共済金の額が( ④ )万円以上であること、請求事由が生じた時点で60歳以上であること等の要件を満たす必要があります。 なお、加入者が任意解約した場合、掛金納付月数が( ⑤ )カ月未満では、解約手当金が掛金合計額を下回り、掛金納付月数が12カ月未満では、解約手当金を受け取ることができません。 加入者は、事業資金等が必要となった場合、一定の要件のもとに、掛金残高と掛金の納付月数に応じた貸付限度額の範囲内で、10万円以上( ⑥ )万円以内(5万円単位)で借入れをする一般貸付制度を利用することができます」
解答・解説を表示
解答
① 22,000(円) ② 70,000(円) ③ 共同経営者 ④ 300(万円) ⑤ 240(カ月) ⑥ 2,000(万円)
解説
国民年金第1号被保険者は、老後資金の上乗せ制度として付加年金や小規模企業共済などを活用できます。付加年金は2年受給で元が取れる設計であり、国民年金基金との重複加入はできません。小規模企業共済は掛金全額が小規模企業共済等掛金控除となるほか、解約手当金や契約者貸付に関する月数・金額要件が細かく規定されています。
解き方
- 付加年金額の計算式「200円×納付月数」に基づき、110月分の年金額を計算する。
- 小規模企業共済制度における掛金限度額、加入資格(共同経営者)、受給要件(分割受取り基準額)、任意解約ペナルティ期間、貸付上限額の各規定を確認して数値を当てはめる。
答えの内訳
- ①:22,000
- 付加年金の年金額は「200円×付加保険料納付済月数」で算出されます。納付月数110月の場合、200円×110月=22,000円となります。
- ②:70,000
- 小規模企業共済の掛金月額は、1,000円から70,000円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
- ③:共同経営者
- 個人事業主の配偶者等の親族は「共同経営者」(個人事業主1人につき2人まで)の要件を満たすことで加入できます。事業主本人が非加入でも加入可能です。
- ④:300
- 小規模企業共済の共済金を分割受取り(年金形式)にするためには、共済金額が300万円以上、請求事由発生時に60歳以上であることなどの要件が必要です。
- ⑤:240
- 任意解約時の解約手当金は、掛金納付月数が240カ月(20年)未満であると掛金合計額を下回り、12カ月未満では受け取ることができません。
- ⑥:2,000
- 契約者貸付制度のうち「一般貸付制度」の借入限度額は、掛金納付月数等に応じた限度額の範囲内で10万円以上2,000万円以内(5万円単位)です。
覚えるポイント
- 付加年金は月額400円納付で年金額は「200円×納付月数」加算(2年で元が取れる)。国民年金基金とは重複加入不可。
- 小規模企業共済の掛金は月額1,000円〜70,000円。任意解約手当金は240カ月(20年)未満で元本割れ、12カ月未満は掛け捨て。
間違えやすいところ
- 付加年金の年金額計算で「400円×月数」と掛金額を掛けてしまわないよう注意する。
- 任意解約で元本割れとなる月数を「120カ月(10年)」や「180カ月(15年)」と誤認しない(正しくは240カ月)。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.2(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
連結財務諸表に基づく財務分析(デュポン分析・インタレストカバレッジレシオ・配当性向)
金融資産運用 · ROE(自己資本利益率) / デュポンシステム / 財務レバレッジ / インタレスト・カバレッジ・レシオ / 配当性向
《設例》の〈X社とY社の財務データ〉および〈X社とY社の株式に関するデータ〉に基づいて、MさんがAさんに対して説明した文章の空欄①〜⑤に入る最も適切な語句または数値を記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。 Ⅰ 「株式投資の代表的な評価指標である( ① )は、売上高当期純利益率、使用総資本回転率、財務レバレッジの3指標に分解して、要因分析を行うことができます。X社とY社の( ① )の値を比較すると、( ② )社の値のほうが上回っています。( ② )社の値が上回る主な要因は、3指標のうち、( ③ )によるものであると考えられます」 Ⅱ 「X社とY社を財務的な安定性を測る指標であるインタレスト・カバレッジ・レシオで比較すると、X社の値が( ④ )倍、Y社の値が□□□倍です。両社ともに財務的な余裕があるといえます」 Ⅲ 「X社とY社を株主への利益還元の度合いを測る指標である配当性向で比較すると、X社の値が( ⑤ )%、Y社の値が□□□%であり、X社の値がY社の値を上回っています」
解答・解説を表示
解答
① ROE ② Y(社) ③ 財務レバレッジ ④ 43.33(倍) ⑤ 40.43(%)
解説
ROE(自己資本利益率)はデュポンシステムにより「売上高当期純利益率(収益性)×使用総資本回転率(効率性)×財務レバレッジ(負債利用度)」の積に分解して分析できます。自己資本の算出において連結財務諸表では純資産から非支配株主持分や新株予約権を控除します。インタレスト・カバレッジ・レシオは事業利益を金融費用で除して利払能力を測り、配当性向は当期純利益に対する配当金の割合を示します。
解き方
- デュポン分解の式から指標名①がROEであることを特定する。
- X社・Y社の自己資本を算出し、それぞれのROE、売上高当期純利益率、総資本回転率、財務レバレッジを計算・比較して空欄②・③を判定する。
- X社の事業利益(営業利益+受取利息+受取配当金)を支払利息で除してインタレスト・カバレッジ・レシオ④を計算する。
- X社の配当金総額を親会社株主に帰属する当期純利益で除して配当性向⑤を計算し、端数処理を行う。
答えの内訳
- ①:ROE
- 売上高当期純利益率、総資本回転率、財務レバレッジの3指標に分解(デュポンシステム)して要因分析を行う株式投資の代表的指標は「ROE(自己資本利益率)」です。
- ②:Y(社)
- 自己資本=純資産合計-新株予約権-非支配株主持分(または株主資本+その他の包括利益累計額)で算出します。X社の自己資本は1,830,000百万円でROE=188,000÷1,830,000×100≒10.27%。Y社の自己資本は323,000百万円でROE=42,500÷323,000×100≒13.16%となり、Y社のほうが上回っています。
- ③:財務レバレッジ
- 3要因を比較すると、売上高当期純利益率(X社5.37%、Y社5.45%)および使用総資本回転率(X社0.97回、Y社0.94回)には大差がないのに対し、財務レバレッジ(総資産÷自己資本)はX社の1.97倍に対しY社は2.57倍と大きく上回っており、ROEの差をもたらす主因となっています。
- ④:43.33
- インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受取利息+受取配当金)÷支払利息で計算します。X社は(380,000+6,000+4,000)÷9,000=390,000÷9,000≒43.333…倍となり、小数点以下第3位を四捨五入して43.33倍です。
- ⑤:40.43
- 配当性向=配当金総額÷親会社株主に帰属する当期純利益×100で計算します。X社は76,000÷188,000×100≒40.4255…%となり、小数点以下第3位を四捨五入して40.43%です。
覚えるポイント
- ROEのデュポン分解:ROE = 売上高当期純利益率 × 総資本回転率 × 財務レバレッジ
- インタレスト・カバレッジ・レシオ = (営業利益 + 受取利息 + 受取配当金) ÷ 支払利息
- 連結財務諸表の自己資本 = 純資産合計 - 新株予約権 - 非支配株主持分
間違えやすいところ
- 自己資本の計算において非支配株主持分や新株予約権を引き忘れて純資産合計をそのまま分母にしてしまうミス。
- インタレスト・カバレッジ・レシオの分子に営業外収益の「その他」まで含めてしまうミス(原則として受取利息・配当金のみ加算)。
- 配当性向の計算で、発行済株式数と1株当たり配当金から算出した配当金総額と純利益の対応関係を混同するミス。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
サスティナブル成長率および使用総資本事業利益率の計算
金融資産運用 · 財務分析 / サスティナブル成長率 / 使用総資本事業利益率 / ROE
設例の〈X社とY社の財務データ〉に基づき、①Y社のサスティナブル成長率と、②Y社の使用総資本事業利益率をそれぞれ求めなさい。なお、計算過程を示し、表示単位の小数点以下第3位を四捨五入して小数点以下第2位まで解答すること。
解答・解説を表示
解答
① 10.53(%) ② 11.71(%)
解説
サスティナブル成長率は外部調達を行わずに企業が維持できる成長率を示し、ROEに内部留保率(1-配当性向)を乗じて求めます。自己資本には純資産合計から非支配株主持分や新株予約権を除いた額を用います。使用総資本事業利益率は投下資本全体の運用効率を示す指標であり、事業利益(営業利益+受取利息・配当金)を資産合計で除して算出します。
解き方
- サスティナブル成長率の計算:自己資本(純資産-非支配株主持分)を求め、当期純利益からROEを算出し、内部留保率(1-配当金/当期純利益)を乗じる。
- 使用総資本事業利益率の計算:営業利益に受取利息および受取配当金を加算して事業利益を求め、資産合計(使用総資本)で除して100を乗じる。
答えの内訳
- ①:10.53(%)
- サスティナブル成長率は「ROE×内部留保率」で計算します。自己資本は純資産の部合計から非支配株主持分(および新株予約権があればそれも控除)を差し引いた金額(350,000百万円-27,000百万円=323,000百万円)となります。ROE=親会社株主に帰属する当期純利益42,500百万円÷自己資本323,000百万円×100≒13.1579%。内部留保率は「1-配当性向」=1-(配当金総額8,500百万円÷42,500百万円)=1-0.2=0.8(80%)です。したがって、サスティナブル成長率=13.15789…%×0.8=10.5263…%となり、小数点以下第3位を四捨五入して10.53%となります。
- ②:11.71(%)
- 使用総資本事業利益率は「事業利益÷総資本(資産の部合計)×100」で求められます。事業利益は「営業利益+受取利息+受取配当金」であり、95,000百万円+1,200百万円+1,000百万円=97,200百万円となります。総資本は830,000百万円であるため、使用総資本事業利益率=97,200百万円÷830,000百万円×100=11.7108…%となり、小数点以下第3位を四捨五入して11.71%となります。
覚えるポイント
- 自己資本=純資産合計-新株予約権-非支配株主持分
- 事業利益=営業利益+受取利息+受取配当金
間違えやすいところ
- 自己資本の計算で非支配株主持分を差し引くのを忘れて純資産合計そのものを分母にしてしまう誤り。
- 事業利益の計算で営業外収益全体を足してしまったり、支払利息を差し引いてしまう誤り。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
損益分岐点比率の計算
金融資産運用 · 損益分岐点分析 / 損益分岐点比率 / 限界利益 / 固定費
設例の〈X社とY社の財務データ〉に基づいて、X社の損益分岐点比率を求めなさい。計算過程を示し、計算過程においては端数処理せず、解答は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入して小数点以下第2位まで解答すること。なお、変動費は売上原価に等しく、固定費は販売費及び一般管理費に等しいものとする。
解答・解説を表示
解答
62.56(%)
解説
損益分岐点比率は、現在の売上高に対する損益分岐点売上高の割合であり、企業の売上減少に対する耐久力を測定する指標です。比率が低いほど経営の安全性が高いと判断されます。固定費を限界利益(=売上高-変動費)で除して100を掛けることで簡潔に計算できます。
解き方
- 固定費(販売費及び一般管理費=売上総利益-営業利益)を算出する。
- 限界利益(売上高-売上原価=売上総利益)を確認し、損益分岐点比率(固定費÷限界利益×100、または損益分岐点売上高÷売上高×100)を端数処理せず計算し、最後に四捨五入する。
覚えるポイント
- 損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷売上高×100=固定費÷限界利益×100
- 限界利益=売上高-変動費、固定費=売上総利益-営業利益
間違えやすいところ
- 販売費及び一般管理費(固定費)を求める際に売上総利益から営業利益を引く計算を取り違えるミス。
- 途中の計算過程で端数を四捨五入してしまい、最終結果に誤差を生じさせること。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
法人税の別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の作成
タックスプランニング · 法人税法 / 別表四 / 損金不算入 / 役員給与 / 減価償却費
X社(資本金3,000万円の中小企業者等)の当期(2021年4月1日~2022年3月31日)に係る確定申告資料等に基づき、〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑦に入る最も適切な数値を求めなさい。 【資料の要約】 1. 減価償却費:器具備品の減価償却費3,000千円、限度額2,800千円。建物の減価償却費5,800千円、限度額6,000千円、前期からの繰越償却超過額350千円。 2. 役員給与:取締役Aへの給与を2021年4月~11月は月額800千円、12月~翌年3月は月額1,000千円へ増額改定(臨時改定事由なし、事前確定届出給与の届出なし)。 3. 役員退職給与:退任取締役Bへ35,000千円支給。功績倍率方式による適正額(最終報酬月額800千円×在任15年×功績倍率2.5倍)を上回る額を別表四で自己否認。 4. 税額控除:給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除250千円。 5. 法人税等:損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」は利子源泉所得税等30,630円と当期確定見積額2,500千円の計2,530,630円。未払法人税等を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税等は730千円。源泉所得税等は法人税額から全額控除する。
解答・解説を表示
解答
① 2,500,000 ② 200,000 ③ 800,000 ④ 5,000,000 ⑤ 200,000 ⑥ 30,630 ⑦ 12,800,000
解説
法人税の別表四は、企業会計上の「当期純利益」から法人税法上の「所得金額」を計算するための明細書であり、税法上の益金加算・損金算入・損金不算入・益金不算入を調整します。
解き方
- 各取引について法人税法上の損金算入・不算入および益金算入・不算入の要件を判定し、個別の調整額を計算する。
- 当期純利益に加算項目を加算し、減算項目を減算した上で、法人税額から控除される所得税額等を加算調整して所得金額を算出する。
小問ごとの答え
- 小問 ①:2,500,000
- 当期確定申告分の見積納税額として損金経理した未払法人税等の金額(納税充当金)である2,500,000円を加算(社外流出)します。
- 小問 ②:200,000
- 器具備品の減価償却費3,000千円-償却限度額2,800千円=200千円(200,000円)が償却超過額として加算(留保)されます。
- 小問 ③:800,000
- 事業年度の中途において臨時改定事由等なく増額された定期同額給与については、期首から支給していた月額800千円を超える部分(月額200千円×4カ月=800千円、すなわち800,000円)が損金不算入となり、加算(社外流出)されます。
- 小問 ④:5,000,000
- 適正退職給与額=800千円×15年×2.5倍=30,000千円。支給額35,000千円との差額5,000千円(5,000,000円)が過大役員退職給与として損金不算入となり、加算(社外流出)されます。
- 小問 ⑤:200,000
- 建物の償却限度超過不足額は、限度額6,000千円-会社計上額5,800千円=200千円。前期繰越償却超過額350千円のうち、この200千円(200,000円)を限度として当期認容額として減算(留保)されます。
- 小問 ⑥:30,630
- 法人税額から控除される所得税額等(所得税30,000円+復興特別所得税630円=30,630円)は、別表四で一旦減算(留保)されます。
- 小問 ⑦:12,800,000
- 当期利益5,199,370円+加算小計(2,500,000円+200,000円+800,000円+5,000,000円=8,500,000円)-減算小計(200,000円+730,000円=930,000円)=仮計12,769,370円。ここから法人税額控除所得税額30,630円を加算して、所得金額又は欠損金額は12,800,000円となります(別表四の様式上、「法人税額から控除される所得税額」欄は仮計に加算される項目です)。
覚えるポイント
- 期中増額の定期同額給与は増額部分のみが損金不算入となる。
- 前期からの繰越償却超過額は当期の償却不足額の限度で当期認容(減算)される。
間違えやすいところ
- 別表四における「法人税額から控除される所得税額」は、損益計算書で費用計上されている源泉税を法人税の前払として所得金額に戻すため、仮計に加算する(減算と混同しない)。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法人税法等に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.9(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.10(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
納付すべき法人税額の計算
タックスプランニング · 法人税法 / 中小法人の軽減税率 / 税額控除 / 所得税額控除
前問《問57》の計算結果を踏まえ、X社(資本金3,000万円の中小企業者等)が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。
解答・解説を表示
解答
2,032,900(円)
解説
資本金1億円以下の中小法人等については、課税所得金額のうち年800万円以下の部分について軽減税率(15%)が適用され、年800万円を超える部分には本則税率(23.2%)が適用されます。算出税額から各種税額控除を差し引いて納付税額を求めます。
解き方
- 課税所得金額12,800,000円を「800万円以下の部分」と「800万円超の部分」に区分し、それぞれ税率(15%、23.2%)を乗じて法人税額を算出する:8,000,000円×15%+(12,800,000円-8,000,000円)×23.2%=1,200,000円+1,113,600円=2,313,600円。
- 算出税額から特別税額控除額(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除250,000円)および所得税額控除(30,630円)を控除する:2,313,600円-250,000円-30,630円=2,032,970円。
- 100円未満の端数を切り捨てて、確定申告により納付すべき法人税額2,032,900円を求める。
覚えるポイント
- 中小法人の年800万円以下の所得に対する軽減税率は15%。
- 源泉所得税および復興特別所得税の控除漏れに注意する。
間違えやすいところ
- 給与等の支給額が増加した場合の税額控除(250,000円)を所得金額から控除するミス(所得控除ではなく税額控除である)。
- 端数処理(100円未満切り捨て)の失念。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法人税法および租税特別措置法に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.9(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.10(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
青色申告法人の欠損金繰越控除および経営資源集約化税制
タックスプランニング · 欠損金の繰越控除 / 中小企業等の特例 / 経営資源集約化税制 / 事業再編投資損失準備金
法人税に関する次の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 〈青色申告法人の欠損金の繰越控除〉 「2021年4月1日から2022年3月31日までの間に開始する事業年度において、損金の額に算入することができる欠損金額は、事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が( ① )円以下の中小法人等については、繰越欠損金控除前の所得の金額が限度となりますが、中小法人等以外の法人については、繰越欠損金控除前の所得の金額の( ② )%相当額が限度となります。 2021年度税制改正により、カーボンニュートラル、DX、事業再構築・再編等に係る投資額の範囲内において、繰越欠損金の控除上限を、最長( ③ )年間、現行の( ② )%から最大100%まで引き上げる特例が創設されています。特例の対象となる欠損金は、原則として、2020年度および2021年度に生じた欠損金になります」 〈中小企業の経営資源の集約化に資する税制(経営資源集約化税制)〉 「2021年度税制改正により、中小企業の経営資源の集約化に資する税制(経営資源集約化税制)が創設されています。M&Aによる規模拡大を通じた中小企業の生産性向上と増加する廃業に伴う地域の経営資源の散逸の回避の双方を実現することを目的として、『設備投資減税・雇用確保を促す税制・準備金の積立』の3つの措置をセットで適用することを可能とする税制です。 中小企業経営強化税制において、M&Aの効果を高める設備として『経営資源集約化設備(D類型)』が追加されています。D類型の対象は、計画終了年度に修正( ④ )または有形固定資産回転率が一定以上上昇する経営力向上計画を実施するために必要不可欠な設備とされています。 また、M&Aに伴って行われる労働移転等により、雇用者給与等支給額を前年度比( ⑤ )%以上引き上げる等の一定の要件を満たした場合、所得拡大促進税制の上乗せ措置の適用により、雇用者給与等支給額の増加額の( ⑥ )%を税額控除(法人税額の20%相当額が上限)することができます。 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた中小企業者が、M&A実施後の株式等の価格の低落による損失に備えるために、その株式等の取得価額の( ⑦ )%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、当該金額をその事業年度の損金の額に算入することができます。中小企業事業再編投資損失準備金は、取得した株式等を継続保有していれば、積み立てた事業年度終了の日の翌日から( ⑧ )年間は据置き、その後の( ⑧ )年間で準備金残高の均等額を取り崩して、益金の額に算入します」
解答・解説を表示
解答
① 1億(円) ② 50(%) ③ 5(年間) ④ ROA ⑤ 2.5(%) ⑥ 25(%) ⑦ 70(%) ⑧ 5(年間)
解説
法人税における繰越欠損金の控除制度は大法人と中小法人等で控除限度額(50%または100%)が異なります。また、2021年度税制改正で創設された経営資源集約化税制は、中小企業のM&A・事業再編を後押しするため、設備投資減税、雇用拡大に伴う税額控除の上乗せ、将来の減損リスク等に備える準備金積立(70%損金算入・5年据置5年均等取崩)の3つの支援措置で構成されています。
解き方
- 欠損金の繰越控除の資本金要件(1億円以下)および大企業の制限割合(50%)、改正による特例期間(5年間)を当てはめる。
- 経営資源集約化税制の設備類型(D類型:修正ROA等)、給与引き上げ要件(2.5%以上で25%控除)、事業再編投資損失準備金の積立割合(70%)と据置・取崩年数(各5年)を当てはめる。
答えの内訳
- ①:1億(円)
- 青色申告法人の欠損金の繰越控除において、所得全額まで控除が認められる中小法人等は、事業年度終了時における資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人などです。
- ②:50(%)
- 大法人(中小法人等以外の法人)における繰越欠損金の控除限度額は、繰越欠損金控除前所得の50%相当額です。
- ③:5(年間)
- 2021年度税制改正により導入された特例では、一定の事業適応計画の認定を受けた場合、投資額の範囲内で繰越欠損金の控除上限が最長5年間、最大100%に引き上げられます。
- ④:ROA
- 経営資源集約化設備(D類型)の対象となるのは、計画終了年度に修正ROA(総資産利益率)または有形固定資産回転率が一定以上上昇する計画に必要な設備です。
- ⑤:2.5(%)
- 経営資源集約化税制における所得拡大促進税制の上乗せ措置では、雇用者給与等支給額を前年度比で2.5%以上増加させることなどが要件とされています。
- ⑥:25(%)
- 給与総額を2.5%以上引き上げる等の上乗せ要件を満たした場合、控除率は通常(15%)に10%上乗せされた25%(税額控除限度額は法人税額の20%)となります。
- ⑦:70(%)
- 中小企業事業再編投資損失準備金として損金算入できる金額は、M&Aにより取得した株式等の取得価額の70%以下の金額です。
- ⑧:5(年間)
- 積み立てた準備金は、株式等を継続保有する場合、積立事業年度終了の翌日から5年間据え置かれ、その後5年間で均等額(毎年5分の1ずつ)を取り崩して益金算入します。
覚えるポイント
- 欠損金の繰越控除:資本金1億円以下の中小法人は全額(100%)、大企業は50%限度。
- 事業再編投資損失準備金:株式等取得価額の70%以下を積立損金算入、5年据置・5年均等取崩益金算入。
間違えやすいところ
- 事業再編投資損失準備金の損金算入限度割合を50%や100%と誤認しやすいが、正しくは70%である。
- 据置期間と取崩期間(5年据置・5年均等取崩)の年数を3年などと混同しないよう注意する。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の税法および2021年度税制改正に基づく法令
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.11(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
建築基準法に基づく建蔽率の最高限度(建築面積)および容積率の最高限度(延べ面積)の計算
不動産 · 建築基準法 / 指定容積率と道路幅員による制限 / 建蔽率の緩和 / 敷地面積・延べ面積
Aさんが賃貸マンション(耐火建築物)を建設する場合の建蔽率の上限となる建築面積と容積率の上限となる延べ面積に関する文章の空欄①~③に入る数値を求めなさい。 〈設例の条件〉 ・甲土地:敷地面積625㎡、前面道路幅員4m市道(住居系法定乗数4/10=0.4)、用途地域は第一種住居地域、指定建蔽率60%、指定容積率300%、準防火地域。単独では角地指定なし。 ・乙土地:敷地面積180㎡(8m市道と4m市道の角地)。 ・甲土地と乙土地の一体利用:合計敷地面積805㎡。前面道路の最大幅員は8m(乙土地側)。特定行政庁が指定する角地に該当する。 〈文章〉 〈甲土地に単独で賃貸マンションを建設する場合〉 Ⅰ 「Aさんが甲土地に単独で賃貸マンションを建設した場合の建蔽率の上限となる建築面積は□□□㎡、容積率の上限となる延べ面積は( ① )㎡です」 〈甲土地と乙土地を一体とした土地に賃貸マンションを建設する場合〉 Ⅱ 「Aさんが甲土地と乙土地を一体とした土地に賃貸マンションを建設した場合の建蔽率の上限となる建築面積は( ② )㎡、容積率の上限となる延べ面積は( ③ )㎡です」
解答・解説を表示
解答
① 1,000(㎡) ② 644(㎡) ③ 2,415(㎡)
解説
建蔽率の限度は、都市計画の指定建蔽率に、角地緩和(特定行政庁の指定による+10%)や防火地域・準防火地域内の耐火建築物等の緩和(+10%)を合算して求めます。容積率は、指定容積率と前面道路幅員に法定乗数(住居系地域は原則4/10)を乗じた基準容積率のいずれか小さい方が適用されます。2以上の道路に面する場合は、最も広い道路幅員を前面道路幅員として計算します。
解き方
- 甲土地単独の容積率:前面道路幅員4m×0.4=160%。指定容積率300%より低いため160%を採用し、625㎡×160%=1,000㎡(①)を算出する。
- 甲乙一体の建蔽率:指定60%+角地指定10%+準防火地域内耐火建築物10%=80%。敷地面積805㎡×80%=644㎡(②)を算出する。
- 甲乙一体の容積率:最大道路幅員8m×0.4=320%。指定容積率300%を採用し、805㎡×300%=2,415㎡(③)を算出する。
答えの内訳
- ①:1,000(㎡)
- 甲土地単独の場合、前面道路幅員は4mです。第一種住居地域(住居系)の道路幅員制限乗数は4/10(0.4)であるため、道路幅員制限による容積率は 4m×0.4=160% となります。指定容積率300%と比較して厳しい方である160%が適用されます。したがって、容積率の上限となる延べ面積は 625㎡×160%=1,000㎡ です。
- ②:644(㎡)
- 甲土地と乙土地を一体利用する場合、敷地面積は 625㎡+180㎡=805㎡ となります。建蔽率は指定建蔽率60%に対し、「特定行政庁が指定する角地(+10%)」および「準防火地域内の耐火建築物(+10%)」の緩和が重複適用されるため、最高限度は 60%+10%+10%=80% となります。したがって、建築面積の上限は 805㎡×80%=644㎡ です。
- ③:2,415(㎡)
- 一体利用する場合、敷地が幅員8mの市道(前面道路の最大幅員)に接することになります。道路幅員制限による容積率は 8m×0.4=320% となります。指定容積率300%と比較して小さい方である300%が適用されます。したがって、延べ面積の上限は 805㎡×300%=2,415㎡ です。
覚えるポイント
- 住居系地域の前面道路幅員制限乗数は原則4/10(0.4)。
- 準防火地域内の耐火建築物(または準耐火建築物)は建蔽率が10%緩和される。
- 2以上の道路に接する場合、最も広い道路の幅員を基準として前面道路制限容積率を判定する。
間違えやすいところ
- 甲土地単独の場合に、道路幅員制限(4m×0.4=160%)を忘れ、指定容積率300%を掛けてしまう。
- 一体利用時の建蔽率緩和で、準防火地域内の耐火建築物緩和(+10%)を適用し忘れて70%で計算してしまう。
出題の前提:建築基準法第52条(容積率)、第53条(建蔽率)
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.13(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.14(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産の譲渡所得(優良住宅地特例・居住用財産特例・買換え特例)
不動産 · 優良住宅地の造成等のための軽減税率 / 居住用財産の3,000万円特別控除 / 居住用財産の軽減税率の特例 / 特定の居住用財産の買換え特例
甲土地および自宅(建物とその敷地である乙土地)の譲渡に関する次の文章の空欄①〜④に入る最も適切な数値、および空欄⑤に入る最も適切な選択肢を答えなさい。 〈甲土地の売却〉 Ⅰ「譲渡した年の1月1日における所有期間が( ① )年を超える土地等を優良住宅地等のために譲渡した場合、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けることができます。本特例の適用を受けた場合、課税長期譲渡所得金額が( ② )万円以下の部分については、軽減税率が適用されます」 〈自宅(建物とその敷地である乙土地)の売却〉 Ⅱ「Aさんが、下記の資料および条件に基づき、現在の自宅を譲渡し、自宅を買い換えて、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除および居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合、当該譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額は( ③ )円となります」 Ⅲ「Aさんが、下記の資料および条件に基づき、現在の自宅を譲渡し、自宅を買い換えて、特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合、当該譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額は( ④ )円となります。Aさんが、本特例の適用を受けた場合、買換資産は譲渡資産の( ⑤ )」 〈譲渡資産および買換資産に関する資料〉 ・譲渡資産(自宅)の譲渡価額:6,000万円 ・譲渡資産(自宅)の取得費:不明 ・譲渡費用:300万円 ・買換資産(マンション)の取得価額:5,500万円 〈条件〉 ・空欄③・④は、100円未満を切り捨てること。本問の譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。
- イ
- 取得価額および取得時期を引き継ぎます
- ロ
- 取得価額を引き継ぎ、取得時期は引き継ぎません
- ハ
- 取得価額は引き継ぎませんが、取得時期を引き継ぐことになります
- ニ
- 取得価額および取得時期の引継ぎはしないこととされています
解答・解説を表示
解答
① 5(年) ② 2,000(万円) ③ 3,410,400(円) ④ 914,100(円) ⑤ ロ
解説
居住用財産を譲渡した際の各種課税特例(3,000万円特別控除、10年超所有軽減税率、買換え特例)の要件と税額計算の仕組み、および優良住宅地造成等の軽減税率の基本要件を正しく把握することが重要です。
解き方
- 優良住宅地特例の要件(所有期間5年超、2,000万円以下の部分に対する軽減税率)を確認して空欄①・②を埋める。
- 概算取得費(5%)と譲渡費用を控除し、3,000万円特別控除および10年超軽減税率(14.21%)を適用して空欄③の税額を計算する。
- 買換え特例において収入金額が買換資産額を上回る場合の按分計算を行い、一般長期譲渡税率(20.315%)を乗じて100円未満切捨てで空欄④を計算する。
- 買換え特例適用時における買換資産の取得価額・取得時期の引継ぎ関係(取得価額は引継ぐが取得時期は引継がない)から空欄⑤を選択する。
小問ごとの答え
- 小問 ①:5
- 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例は、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える土地等が対象となります。
- 小問 ②:2,000
- 本特例の適用を受けると、課税長期譲渡所得金額のうち2,000万円以下の部分について軽減税率(所得税10%、住民税4%、別途復興特別所得税)が適用されます。
- 小問 ③:3,410,400
- 取得費不明のため概算取得費は6,000万円×5%=300万円です。控除前譲渡益は6,000万円-(300万円+300万円)=5,400万円となります。3,000万円控除後の課税長期譲渡所得金額は5,400万円-3,000万円=2,400万円です。所有期間10年超の軽減税率(2,400万円×14.21%)を乗じると3,410,400円となります。
- 小問 ④:914,100
- 譲渡対価6,000万円>買換資産5,500万円のため差額500万円が課税対象収入です。必要経費600万円×(500万円/6,000万円)=50万円を差し引いた450万円が課税長期譲渡所得金額となります。一般の長期譲渡税率20.315%を乗じると914,175円となり、100円未満を切り捨てて914,100円となります。
- 小問 ⑤:ロ
- 特定の居住用財産の買換えの特例の適用を受けた場合、買換資産は課税繰り延べに伴い譲渡資産の取得価額を引き継ぎますが、取得時期については引き継がず実際の取得時期となります。
覚えるポイント
- 居住用財産の10年超所有軽減税率は6,000万円以下部分が14.21%(所得税10%・復興0.21%・住民税4%)。
- 買換え特例で全部買換えでない場合、譲渡資産の取得費・譲渡費用は収入金額に対する差額の割合で按分する。
間違えやすいところ
- 買換え特例適用時の課税所得に対して、10年超所有軽減税率を重複適用してしまうミス(併用不可)。
- 買換資産が取得時期まで引き継ぐと混同してしまうミス(取得時期は引き継がれない)。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の租税特別措置法および所得税関係法令に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.15(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産の相続税評価(路線価・地積規模の大きな宅地・貸家建付地)
不動産 · 相続税路線価記号 / 地積規模の大きな宅地の評価 / 貸家建付地評価額
甲土地の相続税評価額に関する次の文章の空欄①~⑤に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 〈路線価〉 Ⅰ「甲土地に面する道路に付された『200D』の数値は、1㎡当たりの価額を千円単位で表示した相続税路線価です。数値の後に表示されている『D』は、借地権割合が( ① )%であることを示しています」 〈地積規模の大きな宅地の評価〉 Ⅱ「地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏では500㎡以上、三大都市圏以外の地域では( ② )㎡以上の地積の宅地をいい、地積規模の大きな宅地の評価の対象となる宅地は、路線価地域においては、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在するものになります。 ただし、( ③ )に所在する宅地(一部の区域を除く)、工業専用地域に所在する宅地、指定容積率が( ④ )%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれています」 〈貸家建付地の評価〉 Ⅲ「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建設した場合、相続税の課税価格の計算上、甲土地は貸家建付地として評価されます。仮に、甲土地の自用地価額を1億2,500万円、借地権割合( ① )%、借家権割合30%、賃貸割合90%とした場合、甲土地の貸家建付地としての相続税評価額は( ⑤ )万円となります」
解答・解説を表示
解答
① 60(%) ② 1,000(㎡) ③ 市街化調整区域 ④ 400(%) ⑤ 10,475(万円)
解説
土地の相続税評価における路線価記号の意味、広大地評価に代わって新設された地積規模の大きな宅地の要件および除外事由、貸家建付地の減額評価計算式を体系的に理解する必要があります。
解き方
- 路線価記号「D」に対応する借地権割合(60%)を特定して空欄①を埋める。
- 地積規模の大きな宅地の面積要件(非三大都市圏1,000㎡以上)および適用対象外区域(市街化調整区域、指定容積率400%以上など)を確認して空欄②・③・④を埋める。
- 自用地評価額1億2,500万円、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合90%を算式に代入し、1億2,500万円×(1-0.162)=10,475万円を算出して空欄⑤を埋める。
小問ごとの答え
- 小問 ①:60
- 路線価の末尾アルファベットは借地権割合を示し、A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%です。したがってDは60%です。
- 小問 ②:1,000
- 地積規模の大きな宅地の評価における面積要件は、三大都市圏では500㎡以上、三大都市圏以外の地域では1,000㎡以上と規定されています。
- 小問 ③:市街化調整区域
- 地積規模の大きな宅地の評価の対象から除外される区域として、市街化調整区域(都市計画法第34条第10号または第11号の規定に基づき宅地分譲ができる区域を除く)が挙げられます。
- 小問 ④:400
- 地積規模の大きな宅地の評価において、指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地は適用対象から除外されます。
- 小問 ⑤:10,475
- 貸家建付地の評価額=自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)により、12,500万円×(1-0.60×0.30×0.90)=12,500万円×(1-0.162)=12,500万円×0.838=10,475万円となります。
覚えるポイント
- 路線価の記号:A(90%)からG(30%)まで10%刻みで定められている。
- 地積規模の大きな宅地:三大都市圏500㎡以上、三大都市圏以外1,000㎡以上。市街化調整区域や指定容積率400%(23区300%)以上は除外。
間違えやすいところ
- 路線価の記号Dを50%(Eと混同)や70%(Cと混同)と取り違えるミス。
- 貸家建付地の計算で自用地価額に直接減額割合(0.162)を掛けて減額分を答えてしまうミス。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の財産評価基本通達に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.16(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
類似業種比準方式による非上場株式の評価
相続・事業承継 · 取引相場のない株式の評価 / 類似業種比準価額 / 中会社
《設例》の〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額を求めなさい。なお、端数処理は、各要素別比準割合および比準割合は小数点第2位未満を切り捨て、1株当たりの資本金等の額50円当たりの類似業種比準価額は10銭未満を切り捨て、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額は円未満を切り捨てること。また、類似業種比準価額の算定にあたり複数の方法がある場合は、最も低い価額となる方法を選択すること。
解答・解説を表示
解答
2,255(円)
解説
類似業種比準価額は、評価会社と類似業種の「配当」「利益」「純資産」の3要素を比準し、類似業種の株価に乗じて算定します。規模区分に応じた斟酌割合(大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5)を乗じ、評価会社の1株当たりの資本金等の額を反映して求めます。
解き方
- 類似業種の株価候補の中から最も低い金額を選択する。
- 配当・利益・簿価純資産の3要素について要素別比準割合および比準割合を端数処理(小数点第2位未満切捨て)を行いながら計算する。
- 類似業種株価に比準割合、中会社の斟酌割合0.60、および資本金等の額の調整割合(500円/50円)を乗じて1株当たりの価額を求める。
覚えるポイント
- 類似業種比準価額の斟酌割合は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5であること。
- 比準割合および各要素別比準割合は小数点以下第2位未満切り捨てとなること。
間違えやすいところ
- 類似業種株価の選択肢から最低額以外の数値を誤って選んでしまうミス。
- 評価会社の1株当たりの資本金等の額(本問では500円)による倍率調整を忘れてしまうこと。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法令等(財産評価基本通達)
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.17(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.18(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
純資産価額方式および併用方式による非上場株式の評価
相続・事業承継 · 取引相場のない株式の評価 / 純資産価額方式 / 併用方式 / Lの割合
《設例》の〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの①純資産価額および②類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式による価額をそれぞれ求めなさい。なお、計算結果は円未満を切り捨てて円単位とし、相続税評価額の算定にあたり複数の方法がある場合は最も低い価額となる方法を選択すること。
解答・解説を表示
解答
① 5,670(円) ② 3,108(円)
解説
中会社の株式評価では、原則として類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式によって評価額を算定します。中会社の中区分におけるLの割合は0.75であり、純資産価額方式のみによる評価額と比較して有利な方を選択することができます。
解き方
- 相続税評価額による純資産額から帳簿価額純資産額を引いた評価差額に37%を乗じ、法人税等相当額を差し引いて1株当たり純資産価額を求める。
- 中会社の中に対応するL割合(0.75)を用い、類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25により併用方式の価額を計算し、円未満を切り捨てる。
答えの内訳
- ①:5,670(円)
- 相続税評価額による総資産価額は223,900万円、負債合計は93,600万円で正味資産額は130,300万円です。帳簿価額による正味資産額は147,600万円-93,600万円=54,000万円となり、評価差額は130,300万円-54,000万円=76,300万円です。法人税等相当額は76,300万円×37%=28,231万円となるため、差引純資産額は130,300万円-28,231万円=102,069万円となります。発行済株式総数180,000株で除すると、102,069万円÷180,000株=5,670.5円となり、円未満を切り捨てて5,670円となります。
- ②:3,108(円)
- 規模区分が「中会社の中」における類似業種比準価額の適用割合(L)は0.75です。併用方式による価額は、類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L)で算定されるため、2,255円×0.75+5,670円×(1-0.75)=1,691.25円+1,417.5円=3,108.75円となり、円未満を切り捨てて3,108円となります。純資産価額(5,670円)と比較して最も低い価額となる併用方式の3,108円が適用されます。
覚えるポイント
- 法人税等相当額の控除率は37%であること。
- 中会社のLの割合は中会社の大が0.90、中会社の中が0.75、中会社の下が0.60であること。
間違えやすいところ
- 評価差額の計算で負債額を帳簿価額と相続税評価額で混同したり、法人税等相当額の控除を失念すること。
- 中会社の中区分のL割合(0.75)を他の規模区分(0.90や0.60)と間違えて適用すること。
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法令等(財産評価基本通達)
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.17(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.18(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
非上場株式の評価(配当還元方式)・金庫株とみなし配当・事業承継税制の特例措置
相続・事業承継 · 配当還元方式 / 自己株式の取得とみなし配当 / 事業承継税制(特例措置)
非上場会社であるX社の株式に関する次の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 〈Dさんが所有するX社株式の相続税評価額〉 Ⅰ 「DさんがX社株式を手放さず、相続時まで所有した場合、Dさんの相続人が取得するX社株式については、会社規模にかかわらず、配当還元方式により評価されます。配当還元方式は、その株式の1株当たりの年配当金額を( ① )%で還元した元本の金額によって評価します。《設例》の〈X社の概要〉に基づく、X社株式の1株当たりの配当還元方式による価額は( ② )円になります」 〈Dさんが所有するX社株式の買取り〉 Ⅱ 「Dさんが生前にX社株式をX社に譲渡した場合、譲渡価額が当該株式に対応するX社の( ③ )の額を超えると、その超える金額は( ④ )所得として総合課税の対象となります。譲渡益部分は20.315%の税率により、譲渡所得として申告分離課税の対象となります。他方、X社株式を相続により取得したDさんの相続人が相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後( ⑤ )年を経過する日までに当該株式をX社に譲渡した場合、譲渡価額と取得価額の差額が譲渡益として申告分離課税の対象となります」 〈非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例(特例措置)〉 Ⅲ 「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例の適用を受けるためには、特例承継計画を策定して2023年3月31日までに( ⑥ )に提出し、その確認を受ける必要があります。現時点において、Aさんの相続が開始した場合、相続開始後に特例承継計画を提出することが可能です。相続開始後に各種の要件を満たしていることについての( ⑥ )の円滑化法の認定を受けようとする場合には、Aさんの相続開始の日の翌日から( ⑦ )カ月以内にその申請を行う必要があります。本特例の適用を受けるためには、長男Cさんは、相続開始の日の翌日から( ⑧ )カ月を経過する日において会社の代表権を有していること等が要件となります」
解答・解説を表示
解答
① 10(%) ② 250(円) ③ 資本金等 ④ 配当 ⑤ 3(年) ⑥ 都道府県知事 ⑦ 8(カ月) ⑧ 5(カ月)
解説
同族株主以外の株主が取得した株式は配当還元方式で評価し、年配当額が2円50銭未満の場合は2円50銭とみなします。また、自己株式の買取りではみなし配当課税が生じますが、相続人については申告期限後3年以内の譲渡特例があります。事業承継税制の特例措置は都道府県知事への計画提出・認定を要し、相続開始後8カ月以内の認定申請や5カ月時点での代表権確保などの要件が定められています。
解き方
- 配当還元方式の算式を確認し、1株当たり配当金が2円50銭未満の場合は2円50銭に引き上げて評価額を計算する。
- 自己株式の取得におけるみなし配当の規定(資本金等の額を超える部分が配当所得)および相続財産に係る譲渡所得の課税特例(申告期限後3年以内)を整理する。
- 事業承継税制の特例措置における申請先(都道府県知事)、相続開始後の認定申請期限(8カ月以内)、後継者の代表権具備期限(5カ月経過日)を適用する。
答えの内訳
- ①:10(%)
- 配当還元方式における還元利率は一律で年10%(100分の10)と定められています。
- ②:250(円)
- 配当還元価額は「(年配当金額÷10%)×(1株当たりの資本金等の額÷50円)」で算出します。年配当金額が2円50銭未満の場合は2円50銭として計算するため、(2.5円÷10%)×(500円÷50円)=25円×10=250円となります。
- ③:資本金等
- 非上場会社が株主から自己株式を買い取る際、譲渡対価のうちその株式に対応する「資本金等の額」を超える部分は利益の配当とみなされます。
- ④:配当
- 資本金等の額を超える交付金は「みなし配当」となり、所得税法上は配当所得として総合課税の対象となります。
- ⑤:3(年)
- 相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡であれば、みなし配当課税が除外され、全額が申告分離課税の譲渡所得として扱われる特例があります。
- ⑥:都道府県知事
- 事業承継税制(経営承継円滑化法に基づく認定)における特例承継計画の提出先および認定機関は、主たる事務所の所在地を管轄する「都道府県知事」です。
- ⑦:8(カ月)
- 相続開始後に経営承継円滑化法の認定申請を行う場合、相続開始の日の翌日から8カ月以内に申請書を提出する必要があります。
- ⑧:5(カ月)
- 特例措置において、後継者が相続税の納税猶予を受けるためには、相続開始の日の翌日から5カ月を経過する日(申告期限の5カ月前)までに会社の代表権を有している必要があります。
覚えるポイント
- 配当還元価額の計算で年配当金額が2円50銭未満(無配を含む)の場合は2円50銭として計算すること
- 非上場株式等についての納税猶予の特例措置における「8カ月以内(認定申請)」「5カ月経過日(代表権)」の期限要件
間違えやすいところ
- 配当還元方式の計算において、X社の配当金額2.0円をそのまま用いて200円としてしまうミス(2円50銭未満は切り上げ)
- 相続後の特例認定申請期限(8カ月以内)と後継者の代表権具備要件(5カ月経過日)の月数を混同すること
出題の前提:2021年4月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2021年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.17(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.19(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2021年9月 1級 学科(応用編)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2021年9月 1級 学科(応用編)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
- 公式模範解答(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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