日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2019年9月 1級 学科(応用編)の概要
労働者災害補償保険の給付体系および休業補償制度
ライフプランニングと資金計画 · 労働者災害補償保険 / 休業補償給付 / 休業特別支給金 / 傷病補償年金
労働者災害補償保険の給付要件や休業補償給付等の仕組みに関する次の文章の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 「労働者災害補償保険では、業務上の事由または( ① )による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業として特別支給金等が支給されます。 仮に、Aさんが業務上の事由による負傷または疾病の療養のために4日以上休業し、かつ、4日目以降の休業した日について事業主から賃金の支払がない場合、所定の手続により、Aさんは、原則として、4日目以降の休業した日について、休業補償給付および休業特別支給金の支給を受けることができます。 その給付額は、原則として、休業1日につき、休業補償給付は休業給付基礎日額の( ② )%相当額であり、休業特別支給金は休業給付基礎日額の( ③ )%相当額です。休業給付基礎日額とは、原則として、算定事由発生日以前( ④ )カ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(賞与等を除く)を、その期間の総日数で除した金額となります。 なお、休業の初日から3日目までの休業期間については、事業主が( ⑤ )法の規定に基づく休業補償を行わなければならないこととされています。 また、療養開始後1年6カ月を経過した日以後において、傷病が治癒せず、当該傷病による障害の程度が所定の傷病等級の第1級から第3級に該当する場合には、休業補償給付に代えて、( ⑥ )が支給されます。( ⑥ )の年金額は、その傷病等級に応じて、年金給付基礎日額の313日分、277日分または245日分となります」
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解答
① 通勤 ② 60 ③ 20 ④ 3 ⑤ 労働基準 ⑥ 傷病補償年金
解説
労働者災害補償保険は、業務災害および通勤災害を被った労働者に対し、迅速かつ公正な保護をするための制度です。業務上の療養による休業では、第4日目から労災保険より休業補償給付(60%)および休業特別支給金(20%)が支給され、最初の3日間は事業主が労働基準法上の休業補償責任を負います。
解き方
- 労災保険の補償対象となる災害区分(業務災害と通勤災害)を確認する。
- 休業4日目以降に支給される休業補償給付(60%)および特別支給金(20%)の給付割合と、算定期間(3カ月)を特定する。
- 最初の3日間の待期期間に対する事業主の補償責任(労働基準法)と、長期化時(1年6カ月経過時)に移行する傷病補償年金を確認する。
答えの内訳
- ①:通勤
- 労働者災害補償保険法第1条等において、業務上の事由または「通勤」による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して保険給付を行うと規定されています。
- ②:60
- 休業補償給付の額は、休業1日につき休業給付基礎日額の「60」%相当額と定められています。
- ③:20
- 労働福祉事業(社会復帰促進等事業)から支給される休業特別支給金の額は、休業1日につき休業給付基礎日額の「20」%相当額であり、休業補償給付と合わせて合計80%が補償されます。
- ④:3
- 休業給付基礎日額は、労働基準法第12条の平均賃金に準じ、算定事由発生日以前「3」カ月間に支払われた賃金総額をその期間の総日数で除して計算されます。
- ⑤:労働基準
- 休業初日から3日目までの待期期間については、労災保険からは給付が行われず、「労働基準」法第76条の規定により事業主が平均賃金の60%以上の休業補償を行わなければなりません。
- ⑥:傷病補償年金
- 療養開始後1年6カ月を経過した日以降、傷病が治癒(症状固定)せず所定の傷病等級(第1級~第3級)に該当する場合、休業補償給付に代えて「傷病補償年金」が支給されます。
覚えるポイント
- 休業補償給付は60%、休業特別支給金は20%で合計80%が補償される。
- 休業開始から3日間の待期期間は事業主が労働基準法に基づき休業補償を行う。
- 1年6カ月経過かつ傷病等級1~3級に該当した場合は傷病補償年金へ移行する。
間違えやすいところ
- 健康保険の傷病手当金(3分の2支給、待期3日後は4日目から支給)と労災保険の給付水準(60%+20%=80%)を混同しやすい。
- 通勤災害の場合は、初めの3日間に対する事業主の労働基準法上の休業補償義務は生じない点に注意する。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の労働者災害補償保険法および労働基準法
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
公的介護保険の被保険者・保険料・認定手続き・給付
ライフプランニングと資金計画 · 公的介護保険 / 第1号被保険者・第2号被保険者 / 特別徴収 / 特定疾病 / 要介護認定 / 高額介護サービス費
公的介護保険制度に関する次の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 「介護保険の被保険者は、( ① )歳以上の第1号被保険者と40歳以上( ① )歳未満の医療保険加入者である第2号被保険者に分けられます。介護保険料は、第1号被保険者で公的年金制度から年額( ② )万円以上の年金を受給している者については、原則として公的年金から特別徴収され、第2号被保険者については、各医療保険者が医療保険料と合算して徴収します。 保険給付は、市町村(特別区を含む)から要介護認定または要支援認定を受けた被保険者に対して行われますが、第2号被保険者に係る保険給付は、脳血管疾患などの( ③ )が原因で要介護状態または要支援状態となった場合に限られます。 要介護認定または要支援認定の申請に対する処分は、原則として申請のあった日から( ④ )日以内に行われ、その処分に不服がある場合、被保険者は介護保険審査会に( ⑤ )請求をすることができます。また、要介護認定または要支援認定を受けた被保険者が、当該認定に係る有効期間満了後も要介護状態または要支援状態にあることが見込まれ、引き続き保険給付を受ける場合は、原則として、有効期間満了日の( ⑥ )日前から満了日までの間に、認定の更新申請が必要となります。 介護保険の保険給付を受ける被保険者は、原則として、費用(食費、居住費等を除く)の1割を負担することになります。ただし、第( ⑦ )号被保険者のうち、一定以上の所得を有する者については、負担割合が2割または3割となります。 なお、同一月内の自己負担額(保険給付対象額)が一定の限度額を超えた場合は、高額介護サービス費または高額介護予防サービス費の支給が受けられます。現役並み所得者がいる世帯の場合、この自己負担額の限度額は、原則として、月額( ⑧ )円となります」
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解答
① 65 ② 18 ③ 特定疾病 ④ 30 ⑤ 審査 ⑥ 60 ⑦ 1 ⑧ 44,400
解説
公的介護保険は、加齢に伴い要介護・要支援状態となった国民を社会全体で支援する制度です。被保険者の区分(第1号と第2号)によって、受給要件(原因疾患の限定有無)、保険料の徴収方法(年金天引きの有無と基準額18万円)、利用者負担割合(1割~3割の適用対象)などの取扱いが異なります。
解き方
- 被保険者の区分年齢(65歳)と年金からの特別徴収基準額(年額18万円以上)を確認する。
- 第2号被保険者の給付対象事由が特定疾病に限定される点を確認する。
- 認定手続きにおける決定期間(30日以内)、不服申立て(審査請求)、更新申請期間(満了前60日~満了日)を確認する。
- 利用者負担の所得に応じた2割・3割負担の適用対象(第1号被保険者のみ)および現役並み所得者の高額介護サービス費限度額(44,400円)を導く。
答えの内訳
- ①:65
- 介護保険の第1号被保険者は「65」歳以上の者であり、第2号被保険者は40歳以上65歳未満の公的医療保険加入者です。
- ②:18
- 第1号被保険者の保険料は、受給している老齢・退職年金、障害年金、遺族年金等の年額が「18」万円以上の場合は、原則として年金から特別徴収(天引き)されます。
- ③:特定疾病
- 第2号被保険者が保険給付を受けられるのは、初老期認知症や脳血管疾患などの加齢に伴う「特定疾病」(16種類)が原因である場合に限られます。
- ④:30
- 要介護認定または要支援認定の処分は、原則として申請のあった日から「30」日以内に行われます。
- ⑤:審査
- 要介護認定等の処分に不服がある場合は、各都道府県に設置されている介護保険審査会に対して「審査」請求を行うことができます。
- ⑥:60
- 要介護・要支援認定の更新申請は、有効期間満了日の「60」日前から満了日までの間に行う必要があります。
- ⑦:1
- 一定以上の所得を有する第「1」号被保険者は、自己負担割合が2割または3割となります(第2号被保険者は所得にかかわらず一律1割負担です)。
- ⑧:44,400
- 高額介護サービス費における自己負担限度額は、現役並み所得者の世帯に属する場合は月額「44,400」円(2019年度基準)と定められています。
覚えるポイント
- 特別徴収の基準額は公的年金等の年額18万円以上。
- 要介護認定処分の決定期限は申請から30日以内、更新申請は満了の60日前から。
- 第2号被保険者の利用者負担は所得にかかわらず一律1割負担。
間違えやすいところ
- 第2号被保険者にも所得に応じた2割・3割の利用者負担があると誤認しやすいが、2割・3割負担は第1号被保険者のみが対象である。
- 特別徴収の年金受給額基準(年額18万円以上)と他の制度の基準数値を混同しないよう注意する。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の介護保険法
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給額の計算
ライフプランニングと資金計画 · 公的年金 / 遺族基礎年金 / 遺族厚生年金 / 短期要件 / 300月みなし
被保険者であるAさん(39歳)が2019年9月8日に死亡し、生計を同じくする妻Bさん(35歳)および子2人(長男3歳、二男0歳)が遺族給付を受給する場合について、以下の資料に基づき、妻Bさんに支給される遺族給付の年金額(2019年度価額)を求めなさい。 ① 遺族基礎年金の年金額(円単位) ② 遺族厚生年金の年金額(本来水準による額、円単位・円未満四捨五入) 〈条件〉 (1) 厚生年金保険の被保険者期間: ・総報酬制導入前:60月 ・総報酬制導入後:197月 ※短期要件を満たすため300月のみなし計算を適用すること。 (2) 平均標準報酬月額・平均標準報酬額(2019年度再評価率による額): ・総報酬制導入前:208,000円 ・総報酬制導入後:322,000円 (3) 乗率: ・総報酬制導入前:7.125/1,000 ・総報酬制導入後:5.481/1,000 (4) 中高齢寡婦加算額:585,100円(要件を満たす場合のみ加算)
解答・解説を表示
解答
① 1,229,100円 ② 382,239円
解説
厚生年金保険の被保険者期間中に死亡した場合の遺族厚生年金は短期要件に該当し、被保険者期間が300月未満のときは300月として計算されます。また、遺族基礎年金を受給できる子のある配偶者には中高齢寡婦加算は加算されません。
解き方
- 遺族基礎年金の基本額(780,100円)に、生計維持関係にある子2人分の加算額(各224,500円)を加算して①を計算する。
- 被保険者月数が計257月で300月未満のため、総報酬制導入前・後の報酬比例額を合算し、300/257を乗じて3/4を掛けることで遺族厚生年金額(②)を算出し、円未満を四捨五入する。
答えの内訳
- ①:1,229,100(円)
- 2019年度の遺族基礎年金の基本額は780,100円、子の加算額は第1子および第2子について各224,500円であるため、780,100円+224,500円×2=1,229,100円となります。
- ②:382,239(円)
- 報酬比例部分の計算において、被保険者期間の合計が257月(60月+197月)であり300月未満のため、300月みなし計算を行います。(208,000円×7.125/1,000×60月+322,000円×5.481/1,000×197月)×(300月/257月)×3/4=382,238.8…円となり、円未満を四捨五入して382,239円となります。なお、遺族基礎年金を受給中のため中高齢寡婦加算は加算されません。
覚えるポイント
- 遺族厚生年金の短期要件では被保険者期間が300月未満でも300月みなし計算が適用されること
- 遺族基礎年金を受け取れる間は、中高齢寡婦加算は支給されないこと
間違えやすいところ
- 300月みなしの補正率(300/257)や3/4の乗算を掛け忘れるミス
- 遺族基礎年金を受給している配偶者に対して誤って中高齢寡婦加算を加算してしまうミス
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令・2019年度年金額改定基準に基づく
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
株式取引の基本ルールおよびジュニアNISAの仕組み
金融資産運用 · 株式取引 / 受渡日 / 成行注文 / 競争売買の原則 / ジュニアNISA / 継続管理勘定
株式取引およびジュニアNISAの仕組みに関する以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を記入しなさい。 〈株式取引〉 Ⅰ 「国内の証券取引所に上場されている内国株式を普通取引により売買する場合、その売買単位は( ① )株単位であり、2019年7月16日約定分から、売買が成立した日(約定日)から起算して( ② )営業日目に決済されます。その注文方法には( ③ )注文や指値注文があり、前者は希望する売買価格を明示せず、希望する銘柄、売り買いの別および数量を指定して注文する方法です。 なお、売買立会による売買は、競争売買により行われ、価格優先の原則と( ④ )優先の原則に従って取引が成立します」 〈ジュニアNISA〉 Ⅱ 「ジュニアNISAは、ジュニアNISA口座に受け入れた上場株式や公募株式投資信託等について、本来は課税される配当金等や譲渡益等が非課税となる制度です。未成年者が口座開設者となり、原則として、その親権者等が未成年者を代理して運用管理を行います。 ジュニアNISA口座に受け入れることができる上場株式等の限度額(非課税枠)は年間( ⑤ )万円であり、その配当金等や譲渡益等の非課税期間は、当該非課税管理勘定が設けられた日の属する年の1月1日から最長( ⑥ )年間とされています。また、ジュニアNISA口座に受け入れた上場株式等の配当金等や売却代金等は、原則として、口座開設者が3月31日時点で( ⑦ )歳である年の前年12月31日まで払出し制限が設けられています。 なお、ジュニアNISA口座で上場株式等の買付けを行うことができるのは、2023年12月31日までとされていますので、2019年に長男Bさんを口座開設者とするジュニアNISA口座を開設し、上場株式等の買付けを行った場合、その非課税期間終了時にジュニアNISAの翌年の非課税枠に移管することはできません。ただし、移管専用の非課税枠として設けられる( ⑧ )勘定に移管することにより、長男Bさんが1月1日において18歳である年の前年12月31日まで非課税保有を続けることができます」
解答・解説を表示
解答
① 100 ② 3 ③ 成行 ④ 時間 ⑤ 80 ⑥ 5 ⑦ 18 ⑧ 継続管理
解説
上場株式の取引ルールでは単元株式数100株やT+2(約定日を含めて3営業日目)の決済ルールが適用され、ジュニアNISAでは年間投資枠80万円、非課税期間5年、18歳までの払出し制限やロールオーバー用の継続管理勘定が規定されています。
解き方
- 株式取引の基本ルール(売買単位100株、受渡日3営業日目、成行注文、時間優先の原則)を確認して空欄①~④を埋める。
- ジュニアNISAの各要件(非課税枠年80万円、非課税期間5年、払出し制限18歳、移管先である継続管理勘定)を確認して空欄⑤~⑧を埋める。
答えの内訳
- ①:100(株)
- 全国の金融商品取引所における単元株式数の統一化により、普通取引での売買単位は100株単位となっています。
- ②:3(営業日)
- 2019年7月16日の約定分から決済期間が短縮され、約定日から起算して3営業日目(T+2)に決済されます。
- ③:成行(注文)
- 希望する売買価格を明示せず、銘柄・売買区分・数量のみを指定して発注する注文方法を成行注文といいます。
- ④:時間(優先)
- 競争売買の原則では、価格優先の原則に加えて、同価格の注文間では先に発注された注文が優先される時間優先の原則が適用されます。
- ⑤:80(万円)
- ジュニアNISA口座において非課税で受け入れることができる上場株式等の年間の新規投資限度額は80万円です。
- ⑥:5(年間)
- ジュニアNISAにおける配当等や譲渡益の非課税保有期間は、非課税管理勘定が設定された日の属する年の1月1日から最長5年間です。
- ⑦:18(歳)
- ジュニアNISA口座からの払出しは、原則として口座開設者が3月31日時点で18歳である年の前年12月31日まで制限されています。
- ⑧:継続管理(勘定)
- ジュニアNISAの5年間の非課税期間終了後、18歳になるまで非課税で保有を継続するための専用勘定を「継続管理勘定」といいます。
覚えるポイント
- 株の受渡日が2019年7月16日から「約定日から3営業日目(T+2)」に短縮された点
- ジュニアNISAの年間投資枠は80万円、非課税期間は5年間である点
間違えやすいところ
- 受渡日数を旧ルールの「4営業日目」と解答してしまう誤り
- 継続管理勘定の名称を他の勘定区分(課税ジュニアNISA口座等)と混同する誤り
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令等(株式決済期間の短縮ルールを含む)に基づく
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
サスティナブル成長率およびインタレスト・カバレッジ・レシオの計算
金融資産運用 · 財務分析 / サスティナブル成長率 / インタレスト・カバレッジ・レシオ
設例の〈X社とY社の財務データ〉に基づき、①X社のサスティナブル成長率、および②Y社のインタレスト・カバレッジ・レシオをそれぞれ計算しなさい。なお、計算過程を示し、答は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入して小数点以下第2位まで求めること。 〈X社とY社の財務データ〉(単位:百万円) [X社] 純資産の部合計:1,800,000、非支配株主持分:200,000 営業利益:220,000、営業外収益:10,000(受取利息:1,000、受取配当金:5,000、その他:4,000) 営業外費用:33,000(支払利息:23,000、その他:10,000) 親会社株主に帰属する当期純利益:120,000、配当金総額:36,000 [Y社] 営業利益:250,000、営業外収益:9,000(受取利息:800、受取配当金:5,200、その他:3,000) 営業外費用:30,000(支払利息:26,000、その他:4,000)
解答・解説を表示
解答
① 5.25(%) ② 9.85(倍)
解説
サスティナブル成長率は、外部からの増資等を行わずに内部留保資金のみによって達成可能な利益成長率を示す指標であり、「ROE × 内部留保率」で求められます。自己資本は純資産の部合計から非支配株主持分等を控除して計算します。一方、インタレスト・カバレッジ・レシオは、営業利益に金融収益(受取利息・配当金)を加えた事業利益が、支払利息等の金融費用の何倍であるかを表し、企業の利払能力・借入利息の安全性を測定する指標です。
解き方
- X社の財務データから自己資本(純資産合計-非支配株主持分)を求め、ROEおよび内部留保率(1-配当性向)を算出し、掛け合わせてサスティナブル成長率を導く。
- Y社の財務データから事業利益(営業利益+受取利息+受取配当金)と支払利息を抽出し、事業利益を支払利息で除してインタレスト・カバレッジ・レシオを算出し四捨五入する。
答えの内訳
- ①:5.25(%)
- サスティナブル成長率(%)=ROE × 内部留保率={親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本}×{1-(配当金総額 ÷ 親会社株主に帰属する当期純利益)}により算出する。自己資本=純資産の部合計1,800,000百万円-非支配株主持分200,000百万円=1,600,000百万円となる。したがって、ROE=120,000百万円 ÷ 1,600,000百万円 × 100=7.5%、内部留保率=1-(36,000百万円 ÷ 120,000百万円)=1-0.3=0.7(70%)である。サスティナブル成長率=7.5% × 0.7=5.25%となる。
- ②:9.85(倍)
- インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=(営業利益+受取利息・配当金)÷ 支払利息により算出する。事業利益(分子)=営業利益250,000百万円+受取利息800百万円+受取配当金5,200百万円=256,000百万円となる。金融費用(分母)=支払利息26,000百万円である。したがって、256,000百万円 ÷ 26,000百万円=9.8461…倍となり、小数点以下第3位を四捨五入して9.85倍となる。
覚えるポイント
- サスティナブル成長率 = ROE × (1 - 配当性向)
- インタレスト・カバレッジ・レシオ = (営業利益 + 受取利息 + 受取配当金) ÷ 支払利息(および割引料)
間違えやすいところ
- 自己資本の計算において純資産合計から非支配株主持分を控除し忘れるミス
- インタレスト・カバレッジ・レシオの分子に営業外収益の「その他」まで合算してしまうミス
出題の前提:2019年4月1日現在施行の諸法令および出題時の財務指標の計算基準に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.9(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
米ドル建定期預金の利回り計算(年換算単利)
金融資産運用 · 外貨預金 / 利回り計算 / 為替レート / TTS・TTB
設例の〈米ドル建定期預金の概要〉の条件で、為替予約を付けずに円貨を外貨に交換して当該外貨預金に預け入れ、満期時に円貨で受け取る場合における利回り(単利による年換算)を求めなさい。なお、計算過程を示し、答は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位まで解答すること。また、6カ月は0.5年として計算し、税金等は考慮しないものとする。 〈米ドル建定期預金の概要〉 ・預入期間:6カ月満期 ・利率(年率):1.2%(満期時一括償還) ・適用為替レート(円/米ドル) 預入時:TTS 109.50円、TTM 108.50円、TTB 107.50円 満期時:TTS 112.20円、TTM 111.20円、TTB 110.20円
解答・解説を表示
解答
2.49(%)
解説
円貨を外貨預金に預け入れて満期時に円貨で受け取る取引では、預入時(円→外貨)に金融機関が外貨を売るレート(TTS)、満期時(外貨→円)に金融機関が外貨を買うレート(TTB)が適用されます。満期時の外貨元利合計に満期時TTBを乗じて受取円貨額を算出し、当初投下円資金(預入時TTS)に対する収益率を求め、運用期間(年数)で除すことで年換算利回り(単利)を算出します。
解き方
- 預入時の適用レートTTS(109.50円)と満期時の適用レートTTB(110.20円)を正しく選定する。
- 1外貨あたりの満期時外貨元利合計[1 × (1 + 0.012 × 0.5) = 1.006]に満期時TTBを乗じて満期時円貨額を求める。
- 満期時円貨額と預入時円貨額(TTS)との差額から収益額を算出し、預入時円貨額で除した率を期間(0.5年)で割って年率換算し、四捨五入する。
覚えるポイント
- 顧客が円から外貨へ交換するときはTTS(Telegraphic Transfer Selling rate)
- 顧客が外貨から円へ交換するときはTTB(Telegraphic Transfer Buying rate)
間違えやすいところ
- 預入時や満期時に仲値(TTM)や逆のレート(預入時にTTB、満期時にTTS)を適用してしまう誤り
- 半年(0.5年)満期の利息計算において、年利率に0.5を掛けずに全額加算してしまうミス
- 利回りを年換算する際に、預入期間の0.5年で割る(または2を掛ける)処理を忘れるミス
出題の前提:2019年4月1日現在施行の諸法令および出題条件に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.9(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
法人税の別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の調整
タックスプランニング · 法人税別表四 / 交際費等の損金不算入 / 減価償却超過額 / 役員給与
製造業を営むX株式会社(資本金3,000万円、中小企業者等)の2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)に係る確定申告の資料に基づき、略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の空欄①~⑦に入る最も適切な数値を求めなさい。
解答・解説を表示
解答
① 3,300,000 ② 150,000 ③ 2,000,000 ④ 450,000 ⑤ 1,000,000 ⑥ 257,292 ⑦ 12,800,000
解説
法人税の別表四では、会計上の当期純利益を出発点として税務上の加算項目および減算項目を調整し、課税所得金額を算出します。中小企業者等の交際費等の損金不算入額の計算においては、定額控除限度額(年800万円)と接待飲食費の50%損金算入のいずれか有利な方を選択適用します。
解き方
- 各取引項目における税務上の取扱い(加算・減算・不算入・認容額等)を整理・計算する。
- 当期利益の額に加算項目を加え、減算項目を差し引いて所得金額を算出する。
小問ごとの答え
- 小問 ①:3,300,000
- 損金経理をした納税充当金の加算額は、貸借対照表に計上された当期確定申告分の未払法人税等(見積納税額)の3,300,000円となります。
- 小問 ②:150,000
- 機械装置の会社計上減価償却費5,600,000円から償却限度額5,450,000円を差し引いた減価償却超過額150,000円を加算します。
- 小問 ③:2,000,000
- 代表取締役Aさんからの土地買取り(時価11,000,000円、買入価額13,000,000円)における時価超過額2,000,000円は役員に対する経済的利益(役員給与)とみなされ、事前確定届出給与等の要件を満たさないため損金不算入として加算します。
- 小問 ④:450,000
- 1人当たり5,000円以下の飲食費300,000円を除いた税法上の交際費等の支出額は8,450,000円(うち接待飲食費6,300,000円)です。中小法人等の特例により、定額控除限度額(年800万円)方式を選択すると不算入額は8,450,000円-8,000,000円=450,000円、接待飲食費の50%損金算入方式を選択すると不算入額は8,450,000円-3,150,000円=5,300,000円となるため、有利な定額控除限度額方式を選択して450,000円となります。
- 小問 ⑤:1,000,000
- 構築物の当期償却不足額は5,700,000円-4,500,000円=1,200,000円です。前期からの繰越償却超過額1,000,000円の範囲内で認容されるため、当期認容額(減算)は1,000,000円となります。
- 小問 ⑥:257,292
- 法人税額から控除される所得税額および復興特別所得税額の合計は、252,000円+5,292円=257,292円となり、別表四で加算(留保・社外流出等)されます。
- 小問 ⑦:12,800,000
- 所得金額は、当期利益8,362,708円+加算小計(①3,300,000円+②150,000円+③2,000,000円+④450,000円=5,900,000円)-減算小計(⑤1,000,000円+720,000円=1,720,000円)+⑥257,292円=12,800,000円と計算されます。
覚えるポイント
- 中小法人の交際費課税は定額控除限度額(年800万円まで全額損金)と接待飲食費50%損金算入の有利選択が可能。
- 役員からの資産の高額買入れによる時価超過部分は役員給与(賞与等)として損金不算入となる。
間違えやすいところ
- 減価償却超過額の認容において、当期の償却不足額全額を認容できると誤認し、繰越超過額の限度を忘れること。
- 源泉徴収された所得税・復興特別所得税を控除税額として加算調整し忘れること。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.11(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.12(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
中小法人の法人税額の計算
タックスプランニング · 法人税額の計算 / 中小法人の軽減税率 / 税額控除
《問57》の計算結果(所得金額12,800,000円)に基づき、X社が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、100円未満を切り捨てて円単位で答えること。
解答・解説を表示
解答
1,756,300(円)
解説
資本金1億円以下の中小法人については、年800万円以下の所得金額に対して軽減税率15%が適用され、年800万円を超える部分には本則税率23.2%が適用されます。算出税額から各種税額控除や源泉徴収税額を控除した後に、100円未満の端数を切り捨てて納付すべき税額を算出します。
解き方
- 所得金額を年800万円以下の部分と年800万円超の部分に区分し、それぞれ15%・23.2%を乗じて合算し法人税額を算出する。
- 算出法人税額から特別税額控除額(300,000円)および源泉所得税等控除額(257,292円)を減算し、100円未満を切り捨てる。
覚えるポイント
- 中小法人の法人税率は所得800万円以下が15%、800万円超が23.2%。
- 確定申告による納付税額は各種税額控除および所得税額控除を差し引いた後の金額で、100円未満切捨てとなる。
間違えやすいところ
- 所得税額等控除(257,292円)や税額控除(300,000円)の差し引きを忘れること。
- 端数処理(100円未満切捨て)を行わずに1円単位のまま解答してしまうこと。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.11(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.12(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
法人税における保険金等の圧縮記帳および所得拡大促進税制
タックスプランニング · 保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳 / 給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の特別控除
製造業を営む中小企業者等であるX株式会社(資本金3,000万円)の2020年3月期の確定申告に関して、保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳(Ⅰ)および給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除(Ⅱ)に関する下線部①~③のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選び、その適切な内容を簡潔に説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
Ⅰ:② 保険金等の圧縮記帳における圧縮限度額は 24,000 千円となる。 Ⅱ:② 雇用者に対する当期の教育訓練費の額が前期の教育訓練費の額の 110%以上であること等が要件となる。
解説
法人が保険金を受け取り滅失資産の代替資産を取得したときは、課税の繰延べとして差益割合に応じた圧縮限度額まで帳簿価額を減額して損金算入できます。また、中小企業向け賃上げ税制の上乗せ措置では、教育訓練費の前期比増加要件が大企業(20%以上)と異なり10%以上(110%以上)に緩和されています。
解き方
- Ⅰの圧縮限度額について、差引保険金額(50,000千円-5,000千円=45,000千円)および保険差益(45,000千円-15,000千円=30,000千円)から差益割合(30,000÷45,000=2/3)を求め、取得価額36,000千円に乗じて圧縮限度額24,000千円を算出して誤りを特定する。
- Ⅱの特別控除について、X社が中小企業者等である点に着目し、上乗せ要件の教育訓練費前期比増加割合が120%以上ではなく110%以上であることを確認して誤りを特定する。
答えの内訳
- Ⅰ:② 保険金等の圧縮記帳における圧縮限度額は 24,000 千円となる。
- 火災保険金による代替資産取得時の圧縮限度額は、「代替資産の取得価額(差引保険金額が上限)×差益割合」で計算します。差引保険金額は保険金50,000千円-経費5,000千円=45,000千円、差益割合は(差引保険金45,000千円-滅失直前帳簿価額15,000千円)÷差引保険金45,000千円=30,000千円÷45,000千円=3分の2となります。代替資産の取得価額36,000千円は差引保険金以下であるため全額が対象となり、圧縮限度額は36,000千円×(2/3)=24,000千円となります。したがって下線部②の「30,000千円」は誤りです。
- Ⅱ:② 雇用者に対する当期の教育訓練費の額が前期の教育訓練費の額の 110%以上であること等が要件となる。
- 中小企業者等における「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除(所得拡大促進税制)」の上乗せ措置(控除率25%)の適用要件は、継続雇用者給与等支給額が前期比1.5%以上増加していることに加え、教育訓練費の額が前期比10%以上増加(110%以上)していること等です。大企業向けの要件である「120%以上」とは異なり、中小企業者等の教育訓練費要件は「110%以上」となります。したがって下線部②は誤りです。
覚えるポイント
- 保険金等の圧縮限度額の差益割合は「(差引保険金-滅失資産簿価)÷差引保険金」で算出する。
- 中小企業者等の賃上げ税制の上乗せ要件における教育訓練費は前期比110%以上(10%以上増)である。
間違えやすいところ
- 圧縮限度額の計算で、差益割合を乗じる対象を差引保険金そのものと混同し、取得価額に乗じることを失念する。
- 大企業向けの給与等引上げ税制の要件(教育訓練費20%増=120%以上)と中小企業向け要件(10%増=110%以上)を混同する。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令等(法人税法第47条、租税特別措置法第42条の12の5)
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.13(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
不動産の取得に係る税金および固定資産の交換の特例
不動産 · 不動産取得税の税率 / 登録免許税(交換による所有権移転) / 固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例(所得税法第58条)
不動産の取得に係る税金(不動産取得税・登録免許税)および「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」(所得税法第58条)に関する説明文の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。
解答・解説を表示
解答
① 3(%) ② 2(%) ③ 1(年) ④ 種類 ⑤ 20(%) ⑥ 交換差金等
解説
不動産の取得時には不動産取得税と登録免許税が課されますが、登記原因が売買か交換か等によって軽減措置の適用可否が異なります。また、所得税法上の固定資産の交換特例では、同種の固定資産を1年以上所有していたことや時価差額が20%以内であること等の要件を満たすことで譲渡所得の課税繰延べが認められます。
解き方
- 不動産取得税(土地の特例税率3%)と交換による所有権移転登記の登録免許税(本則税率2%)を確認する。
- 所得税法第58条の交換特例の要件(所有期間1年以上、同一種類の資産、時価差額がいずれか高い方の20%以内、一部売買時の売買代金は交換差金等として処理)を適用して空欄を埋める。
答えの内訳
- ①:3(%)
- 不動産取得税の標準税率は原則4%ですが、土地および住宅の取得に対しては特例措置により3%に軽減されています。
- ②:2(%)
- 土地の売買による所有権移転登記には登録免許税の軽減税率が設けられていますが、交換による所有権移転登記には軽減措置が適用されないため、本則税率である2%(1,000分の20)が適用されます。
- ③:1(年)
- 所得税法第58条の固定資産の交換特例の要件として、交換譲渡資産および交換取得資産のいずれもが1年以上所有されていた固定資産であることが定められています。
- ④:種類
- 交換特例の適用を受けるためには、交換譲渡資産と交換取得資産が同一の種類(土地と土地、建物と建物など)であり、かつ取得後も譲渡資産と同一の用途に供する必要があります。
- ⑤:20(%)
- 交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、いずれか高いほうの価額の20%以内でなければ、特例の適用を受けることができません。
- ⑥:交換差金等
- 一つの資産について一部を交換、残りを売買とした場合、全体を一つの交換とみなし、売買代金として授受された金銭等は「交換差金等」として取り扱われ、譲渡所得の課税対象となります。
覚えるポイント
- 土地の交換による移転登記の登録免許税には売買のような軽減税率はなく2%となる。
- 交換特例の要件は「所有期間1年以上」「同一種類・同一用途」「時価差額が高い方の20%以内」である。
間違えやすいところ
- 交換による土地の移転登記の登録免許税を、売買時の軽減税率(1.5%)と混同してしまう。
- 時価差額要件の基準を「低い方の20%以内」と誤認してしまう(正しくは「いずれか高いほうの20%以内」)。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令等(地方税法、登録免許税法、所得税法第58条)
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.16(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
建築基準法(建蔽率・容積率・セットバック・特定道路緩和)
不動産 · 建蔽率の制限緩和 / 特定道路緩和 / 2項道路(セットバック)
甲土地(420㎡、南側が幅員6m公道、西側が幅員3m公道に接面)を東西均等に2分割し、西側を乙土地(210㎡:間口10.5m・奥行20m)、東側を丙土地(210㎡:間口10.5m・奥行20m)とする。西側の幅員3m公道は建築基準法第42条第2項道路(中心線は道路中心、反対側は宅地)であり、南側の幅員6m公道を進んだ延長63mの地点に幅員18mの特定道路がある。乙土地(近隣商業地域、指定建蔽率80%、指定容積率400%、防火地域、前面道路幅員による容積率低減係数6/10、角地指定なし)に耐火建築物を建築する場合の、①建蔽率の上限となる建築面積、および②容積率の上限となる延べ面積をそれぞれ求めなさい。
解答・解説を表示
解答
① 200㎡ ② 792㎡
解説
建築基準法第42条第2項道路に接する敷地は道路後退(セットバック)部分が敷地面積から除外されます。また、防火地域内の耐火建築物で指定建蔽率が80%の地域では建蔽率が100%(制限なし)となり、幅員12m以上の特定道路から70m以内にある敷地では前面道路幅員に一定値が加算緩和されます。
解き方
- 西側2項道路の中心線からの後退幅(2m-1.5m=0.5m)を求め、乙土地のセットバック面積(20m×0.5m=10㎡)を算出し、有効敷地面積(210㎡-10㎡=200㎡)を求める。
- 指定建蔽率80%の地域かつ防火地域内で耐火建築物を建築するため、建蔽率制限の適用除外(100%)により建築面積の上限(200㎡×100%=200㎡)を算出する。
- 特定道路緩和の計算式から加算幅0.6mを求め、有効前面道路幅員を6.6mとし、道路幅員制限(6.6m×6/10=396%)と指定容積率(400%)を比較して容積率上限396%を特定する。
- 有効敷地面積に適用容積率を乗じて延べ面積の上限(200㎡×396%=792㎡)を算出する。
答えの内訳
- ①:200(㎡)
- 西側の幅員3m公道は建築基準法第42条第2項道路であり、道路中心線から2m後退(セットバック)する必要があります。中心線から道路境界までの幅は1.5mであるため、後退幅は2m-1.5m=0.5mとなります。乙土地が接する奥行20mにわたり0.5m後退するため、セットバック面積は20m×0.5m=10㎡となり、乙土地の有効敷地面積は210㎡-10㎡=200㎡となります。また、指定建蔽率80%の地域かつ防火地域内において耐火建築物を建築する場合、建蔽率の制限は適用されず100%となります。したがって、建築面積の上限は、200㎡×100%=200㎡となります。
- ②:792(㎡)
- 南側前面道路(幅員6m)から63mの距離に幅員18mの特定道路があるため、特定道路による容積率緩和(建築基準法第52条第9項)を適用します。加算される数値は、(12-6)×(70-63)/70=0.6mとなり、算定上の前面道路幅員は6m+0.6m=6.6mとなります。道路幅員による容積率制限は、6.6m×6/10=396%となり、指定容積率400%より低いため、容積率の上限は396%となります。したがって、延べ面積の上限は、有効敷地面積200㎡×396%=792㎡となります。
覚えるポイント
- セットバック部分は敷地面積・建築面積・延べ面積の算定基礎となる敷地面積から除外される。
- 防火地域内で指定建蔽率80%の土地に耐火建築物を建てる場合、建蔽率制限は適用除外(100%)となる。
- 特定道路緩和の計算式:(12-Wr)×(70-L)/70(Wr:前面道路幅員、L:特定道路までの距離)。
間違えやすいところ
- セットバックによる有効敷地面積の減少(10㎡減)を反映し忘れて210㎡で計算してしまうミス。
- 建蔽率緩和について角地指定がないにもかかわらず角地加算をしてしまう、または100%緩和を失念するミス。
- 容積率制限で指定容積率(400%)と道路幅員制限(396%)の比較を行わず、指定容積率を採用してしまうミス。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の建築基準法に基づく出題。
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.15(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.16(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
固定資産の交換の特例による譲渡所得税および住民税の計算
不動産 · 固定資産の交換の特例 / 課税長期譲渡所得金額 / 譲渡所得税・住民税
Aさんが、所有する借地権(時価4,000万円、取得費不明、取得時期2003年10月)と地主Bさんの所有権(底地:時価3,600万円)を交換し、交換差金として400万円を受領した。交換費用が100万円(譲渡と取得の費用区分は不明)生じた場合において、「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」(所得税法第58条)の適用を受けたときの、①課税長期譲渡所得金額、②所得税および復興特別所得税の合計額、③住民税額をそれぞれ求めなさい。なお、計算過程を示し、答は100円未満を切り捨てること。
解答・解説を表示
解答
① 3,750,000円 ② 574,300円 ③ 187,500円
解説
固定資産の交換の特例(所得税法第58条)を適用した場合、受領した交換差金等の額に対応する部分についてのみ譲渡所得の課税が行われます。譲渡に要した費用や取得費のうち、交換差金に対応する金額(交換差金/交換譲渡資産の時価)のみが控除対象となります。
解き方
- 交換譲渡資産の概算取得費(時価4,000万円×5%=200万円)および区分不明の交換費用から譲渡費用(100万円×50%=50万円)を算出する。
- 交換差金割合(400万円/4,000万円=10%)を求め、交換差金に対応する取得費・譲渡費用((200万円+50万円)×10%=25万円)を算出し、交換差金から差し引いて課税長期譲渡所得金額(3,750,000円)を計算する。
- 所得税率15%および復興特別所得税率2.1%を適用して合算税額を求め、100円未満を切り捨てる(574,300円)。
- 課税長期譲渡所得金額に住民税率5%を乗じて住民税額(187,500円)を算出する。
答えの内訳
- ①:3,750,000(円)
- 交換譲渡資産の取得費は不明であるため概算取得費を適用し、40,000,000円×5%=2,000,000円となります。費用の区分が不明な交換費用100万円は50%を譲渡費用とするため、譲渡費用の額は1,000,000円×50%=500,000円です。交換差金の割合は、4,000,000円/(36,000,000円+4,000,000円)=10%となります。したがって、課税長期譲渡所得金額は、4,000,000円-(2,000,000円+500,000円)×10%=3,750,000円となります。
- ②:574,300(円)
- 所有期間5年超の長期譲渡所得であるため、所得税率は15%、復興特別所得税率は所得税額の2.1%となります。基準所得税額は、3,750,000円×15%=562,500円。復興特別所得税額は、562,500円×2.1%=11,812.5円。合計額は、562,500円+11,812.5円=574,312.5円となり、100円未満を切り捨てて574,300円となります。
- ③:187,500(円)
- 課税長期譲渡所得に対する住民税率は5%です。したがって、住民税額は、3,750,000円×5%=187,500円となります。
覚えるポイント
- 交換差金を受け取った場合、交換差金部分について譲渡所得として課税される。
- 区分不明の交換費用(仲介手数料等)は、譲渡費用と取得費(取得に要した費用)にそれぞれ50%ずつ按分する。
- 長期譲渡所得の税率は、所得税15%、復興特別所得税(所得税額×2.1%=0.315%)、住民税5%である。
間違えやすいところ
- 交換差金割合を乗じる対象を譲渡費用のみにしてしまい、概算取得費に乗じるのを忘れるミス。
- 交換差金割合の分母を交換取得資産の時価(3,600万円)と誤認するミス(正しくは交換譲渡資産の時価=取得資産時価+交換差金=4,000万円)。
- 復興特別所得税の加算後の100円未満切捨てを忘れるミス。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の租税特別措置法および所得税法に基づく出題。
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.17(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
貸家建付地および小規模宅地等の減額特例の適用要件
相続・事業承継 · 貸家建付地の評価 / 貸家の評価 / 貸付事業用宅地等 / 特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等の併用
Aさんの相続に関する次の文章の空欄①~⑦に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 「Aさんがいわゆる青空駐車場として使用している丙土地は、相続税の課税価格の計算上、自用地として評価するが、丙土地上に賃貸物件を建築し、貸付事業を始めた場合には、( ① )として評価することになる。仮に借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%であるとすると、( ① )として評価した丙土地の相続税評価額は、自用地評価額の( ② )%相当額となる。また、丙土地上に建築した賃貸物件については、貸家として評価することになり、仮に借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%であるとすると、その相続税評価額は、固定資産税評価額の( ③ )%相当額となる。 さらに、貸付事業の用に供することになる丙土地は、所定の要件を満たせば、貸付事業用宅地等として「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(以下、「本特例」という)の適用を受けることができ、相続税の課税価格の計算上、( ④ )㎡を限度面積として評価額の( ⑤ )%を減額することができる。ただし、Aさんが所有する甲土地の全部について、特定居住用宅地等として本特例の適用を受ける場合、丙土地に対する本特例の適用面積は最大( ⑥ )㎡となる。 なお、相続の開始前( ⑦ )年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等については、被相続人が相続開始前( ⑦ )年を超えて事業的規模で貸付事業を行っていた場合等を除き、本特例の適用対象とならない。」
解答・解説を表示
解答
① 貸家建付地 ② 82(%) ③ 70(%) ④ 200(㎡) ⑤ 50(%) ⑥ 80(㎡) ⑦ 3(年)
解説
土地所有者が自己所有の敷地に賃貸用建物を建築して賃貸した場合、敷地は貸家建付地、建物は貸家として自用よりも減額評価されます。また小規模宅地等の特例における貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減額されますが、特定居住用宅地等と併用する際には調整算式に従って限度面積が制限されます。
解き方
- 貸家建付地および貸家の評価算式に、指定された借地権割合(60%)、借家権割合(30%)、賃貸割合(100%)を当てはめて評価割合を算出する。
- 小規模宅地等の特例における貸付事業用宅地等の限度面積(200㎡)および減額割合(50%)を確認する。
- 特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等の併用制限算式(特定居住用面積×200/330+貸付事業用面積≦200㎡)から、適用可能な最大残余面積を算出する。
- 駆け込み的な節税を防止するための貸付事業開始後3年以内の宅地等に対する適用除外ルールを確認する。
答えの内訳
- ①:貸家建付地
- 自ら所有する土地に賃貸用の建築物を建てて他に賃貸している土地は、貸家建付地として評価します。
- ②:82
- 貸家建付地の評価額は「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で算出します。1-0.60×0.30×1.00=0.82となり、自用地評価額の82%相当額となります。
- ③:70
- 自ら所有する家屋を他人に賃貸している場合(貸家)の評価額は「固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で算出します。1-0.30×1.00=0.70となり、固定資産税評価額の70%相当額となります(借地権割合は考慮しません)。
- ④:200
- 小規模宅地等の特例において、貸付事業用宅地等の限度面積は200㎡と規定されています。
- ⑤:50
- 小規模宅地等の特例において、貸付事業用宅地等の減額割合は50%と規定されています。
- ⑥:80
- 特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等を併用する場合、合計限度面積の制限算式「特定居住用適用面積×(200/330)+貸付事業用適用面積 ≦ 200㎡」を満たす必要があります。甲土地198㎡をすべて特定居住用として適用する場合、198×(200/330)=120㎡を消費するため、貸付事業用宅地等に適用できる最大面積は「200㎡-120㎡=80㎡」となります。
- ⑦:3
- 小規模宅地等の特例における貸付事業用宅地等は、平成30年度税制改正により、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(事業的規模で行っていた場合等を除く)が適用除外とされました。
覚えるポイント
- 貸家建付地の評価割合:1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合
- 貸家の評価割合:1-借家権割合×賃貸割合(借地権割合は無関係)
- 特定居住用と貸付事業用の併用上限算式:居住用×(200/330)+貸付用 ≦ 200㎡
間違えやすいところ
- 貸家の相続税評価額の計算において、誤って借地権割合まで乗じて減額してしまうこと。
- 特定居住用宅地等(330㎡)と特定事業用宅地等(400㎡)の併用(完全併用で最大730㎡)と混同し、貸付事業用宅地等との併用における按分計算を失念すること。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令等(相続税法、財産評価基本通達、租税特別措置法第69条の4)
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.20(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
相続税の総額および各人の納付すべき相続税額の計算
相続・事業承継 · 法定相続人の数と養子の算入制限 / 基礎控除額の計算 / 相続税の総額の計算 / 相続時精算課税に係る贈与税額控除
仮に、Aさんが現時点(2019年9月8日)において死亡し、長男Cさんに係る相続税の課税価格が1億2,000万円、相続税の課税価格の合計額が2億円である場合、①相続税の総額および②長男Cさんの納付すべき相続税額をそれぞれ求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は万円単位とすること。
解答・解説を表示
解答
① 2,250(万円) ② 1,290(万円)
解説
相続税の計算では、まず法定相続人の数(実子がいる場合の養子制限規定や配偶者の実子を養子にした場合の取り扱い)を正確に確定させて基礎控除額および法定相続分を求め、相続税の総額を算出します。その後、各相続人の課税価格割合で按分して算出相続税額を求め、相続時精算課税制度により過年度に納付した贈与税額を控除して最終納付税額を計算します。
解き方
- 法定相続人を判定する。被相続人Aさんには実子(Cさん・Eさん)がいるため民法上の普通養子は1人のみカウントできるが、妻Bさんの連れ子であるFさんを養子とした場合は税法上実子として扱われるため、法定相続人の数は配偶者Bさん、実子3人(C、E、F)、養子1人(D)の計5人となる。
- 遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×5人=6,000万円)を差し引いて課税遺産総額(1億4,000万円)を算出する。
- 法定相続分(妻Bが1/2、子4人が各1/8)に応じて仮定取得金額を配分し、速算表を適用して各人税額を求めたうえで合算し、相続税の総額(2,250万円)を算出する。
- 相続税の総額を長男Cさんの課税価格割合(1億2,000万円/2億円=60%)で按分し、長男Cさんの相続税額(1,350万円)を求める。
- 長男Cさんが過去に相続時精算課税制度で納付した贈与税額((2,800万円-2,500万円)×20%=60万円)を控除し、納付すべき相続税額(1,290万円)を算出する。
答えの内訳
- ①:2,250(万円)
- 法定相続人の数は、配偶者Bさん、実子(長男Cさん、長女Eさん)に加え、実子がいるため養子は1人のみ算入できます(配偶者Dさんまたは子Fさんのいずれか1人)。また、被相続人の配偶者の連れ子(子Fさん)を養子とした場合は実子として扱われるため、いずれにしても法定相続人の数は「妻B、長男C、長女E、DまたはF、F」の計5人となります。遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×5人=6,000万円。課税遺産総額=2億円-6,000万円=1億4,000万円。法定相続分に応じた取得金額と税額は、配偶者B(1/2):7,000万円×30%-700万円=1,400万円。子4人(各1/8):1,750万円×15%-50万円=212.5万円(4人分合計で850万円)。よって、相続税の総額=1,400万円+212.5万円×4=2,250万円となります。
- ②:1,290(万円)
- 長男Cさんの算出相続税額=相続税の総額2,250万円×(課税価格1億2,000万円/課税価格の合計額2億円)=1,350万円。長男Cさんは5年前に事業用資産2,800万円の贈与を受け、相続時精算課税制度を適用しているため、納付済みの贈与税額を控除します。既納付贈与税額=(2,800万円-特別控除2,500万円)×20%=60万円。したがって、長男Cさんの納付すべき相続税額=1,350万円-60万円=1,290万円となります。
覚えるポイント
- 基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 被相続人に実子がある場合、法定相続人の数に含める養子は1人まで(ただし配偶者の連れ子である養子は実子扱い)
- 相続時精算課税制度の納付済贈与税額は、相続税額から控除される(控除しきれない金額は還付)
間違えやすいところ
- 養子が2人いることから、実子がいる場合の養子制限(1人まで)を画一的に適用して法定相続人を4人(配偶者、実子2人、養子1人)と誤認してしまうこと(配偶者の実子で被相続人の養子となった者は実子として扱われる)。
- 長男Cさんの納付税額計算において、相続時精算課税に係る既納付贈与税額(60万円)の税額控除を失念すること。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令等(相続税法第15条、第16条、第17条、第21条の9〜第21条の18)
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.20(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
民法(相続法)改正に伴う遺留分および遺言制度
相続・事業承継 · 遺留分制度 / 遺留分侵害額請求権 / 自筆証書遺言の方式緩和 / 遺言書保管制度
設例のAさんの相続関係および遺留分・遺言に関する次の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 〈遺留分〉 遺留分とは、相続財産の一定割合を一定の範囲の相続人に留保するものである。Aさんの相続において、仮に遺留分算定の基礎となる財産の価額が2億円である場合、子Fさんの遺留分の額は( ① )万円となる。なお、遺留分権利者は、( ② )の許可を受けることにより、相続の開始前において遺留分の放棄をすることができる。 改正相続法により、2019年7月1日以後に開始した相続から、被相続人が相続人に対して生前に行った贈与については、特別受益に該当する贈与で、かつ、原則として相続開始前( ③ )年以内にされたものが、遺留分算定の基礎となる財産の価額に算入される。また、従来の遺留分減殺請求権は( ④ )請求権に変更され、遺留分権利者は、受遺者等に対し、遺留分に関する権利の行使によって( ④ )に相当する金銭の支払を請求することができる。 〈遺言〉 民法に定める遺言の方式には普通方式と特別方式があり、普通方式には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がある。このうち、公正証書遺言は、証人( ⑤ )人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成するものである。 他方、自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに押印して作成するものである。ただし、改正相続法により、自筆証書に添付する( ⑥ )については、自書でなくてもよいものとされ、他人による代筆やパソコン等によって印字する方法も認められる。また、改正相続法とともに成立した「( ⑦ )における遺言書の保管等に関する法律」により、2020年7月10日から自筆証書遺言の保管制度が創設される予定である。( ⑦ )において保管された自筆証書遺言については、遺言者の相続開始時に( ② )における( ⑧ )の手続が不要とされる。
解答・解説を表示
解答
① 1,250(万円) ② 家庭裁判所 ③ 10(年) ④ 遺留分侵害額 ⑤ 2(人) ⑥ 財産目録 ⑦ 法務局 ⑧ 検認
解説
民法(相続法)の改正(2018年成立・順次施行)では、遺留分制度の見直しとして遺留分算定の基礎財産に算入される相続人への特別受益贈与を原則10年以内とし、従来の減殺請求権を金銭請求である遺留分侵害額請求権へ一本化しました。また、遺言制度の利便性向上のため、自筆証書遺言の財産目録の自書要件緩和や、法務局における自筆証書遺言の保管制度(検認不要)が創設されました。
解き方
- 法定相続人とその法定相続分を確定し、遺留分算定の基礎財産2億円に総遺留分割合(1/2)および個別法定相続分(1/8)を乗じて子Fさんの遺留分額を算定する。
- 民法及び関係法令における遺留分放棄(家庭裁判所)、相続人への特別受益贈与の期間制限(10年)、金銭債権化(遺留分侵害額請求権)の規定を適用する。
- 公正証書遺言の証人数(2人以上)、自筆証書遺言の方式緩和対象(財産目録)、遺言書保管法に基づく保管場所(法務局)および保管時の検認不要規定を順次適用して空欄を埋める。
答えの内訳
- ①:1,250
- Aさんの法定相続人は配偶者Bさんと子4人(実子C・E、普通養子D・F)の計5人です。全体の遺留分割合は2分の1、子全員の法定相続分は2分の1であり、子1人当たりの法定相続分は8分の1(1/2×1/4)となります。したがって、子Fさんの個別遺留分は「2億円×1/2×1/8=1,250万円」と計算されます。
- ②:家庭裁判所
- 相続開始前における遺留分の放棄は、被相続人等の不当な圧力による放棄を防ぐため、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。また、通常の自筆証書遺言の検認を行う管轄裁判所も家庭裁判所です。
- ③:10
- 2018年民法改正により、遺留分算定の基礎財産に算入される「相続人に対する特別受益としての贈与」の対象期間は、原則として相続開始前の10年間に限定されました。
- ④:遺留分侵害額
- 改正前は物権的返還請求効力を持つ「遺留分減殺請求権」でしたが、遺産共有関係の複雑化を避けるため、金銭債権としての支払を請求する「遺留分侵害額請求権」へと見直されました。
- ⑤:2
- 公正証書遺言を作成するにあたっては、民法所定の欠格事由に該当しない証人2人以上の立会いが必要です。
- ⑥:財産目録
- 自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日施行)により、自筆証書に添付する財産目録については自書の必要がなく、パソコン作成の印刷物や通帳のコピー等で作成することが可能となりました(各葉に署名押印が必要)。
- ⑦:法務局
- 自筆証書遺言に係る保管制度は「法務局における遺言書の保管等に関する法律」に基づき、遺言書保管所である法務局で自筆証書遺言の保管申請を行う制度です。
- ⑧:検認
- 法務局(遺言書保管所)に保管された自筆証書遺言は、外見上の偽造・改ざんのおそれがないため、相続開始後における家庭裁判所での検認手続が不要とされています。
覚えるポイント
- 相続開始前の遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要(相続開始後は自由に放棄可能)。
- 遺留分算定における相続人への特別受益贈与の算入期間は相続開始前10年以内。
- 自筆証書遺言の添付目録は自書不要(要署名押印)、法務局保管制度の利用で家庭裁判所の検認が不要。
間違えやすいところ
- 養子縁組の人数(本問では実子2人に加え普通養子2人で合計4人の子)を見落として法定相続分の分母を誤ること。
- 遺留分算定における第三者への贈与(1年以内)と相続人への特別受益贈与(10年以内)の年数を混同すること。
- 自筆証書遺言の本文・日付・氏名までパソコン作成可能と勘違いすること(パソコンで作成可能なのは別紙添付の財産目録のみ)。
出題の前提:2019年4月1日現在施行の法令等(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律、法務局における遺言書の保管等に関する法律)。
出典:金融財政事情研究会『2019年9月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.21(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2019年9月 1級 学科(応用編)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2019年9月 1級 学科(応用編)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
- 公式模範解答(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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