日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2019年1月 1級 学科(応用編)の概要
国民年金基金および小規模企業共済制度の仕組みと要件
ライフプランニングと資金計画 · 国民年金基金 / 小規模企業共済
自営業者であるAさんに対して、ファイナンシャル・プランナーのMさんが説明した国民年金基金および小規模企業共済制度に関する文章の空欄①~⑧に入る適切な語句または数値を答えなさい。
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解答
① 全国(国民年金基金) ② 終身(年金) ③ 確定(年金) ④ 付加年金 ⑤ 社会保険料(控除) ⑥ 70,000(円) ⑦ 3,000,000(円) ⑧ 6(回)
解説
国民年金基金は第1号被保険者の上乗せ年金であり、1口目は終身年金が必須で掛金は社会保険料控除となります。小規模企業共済は経営者の退職金積立制度であり、月額掛金は最大7万円で分割受取には一定の金額および年齢要件が定められています。
解き方
- 国民年金基金の組織統合(全国国民年金基金)、年金の種類(1口目は終身、2口目以降は終身または確定)、繰上げ時の付加年金相当減額、所得税上の社会保険料控除を整理します。
- 小規模企業共済の掛金上限額(月額7万円)および共済金の分割受取要件(受取総額300万円以上・60歳以上・年6回支給)を確認して解答します。
答えの内訳
- ①:全国(国民年金基金)
- 平成31年(2019年)4月1日に各都道府県の47地域型国民年金基金と22の職能型国民年金基金が合併して「全国国民年金基金」が設立されました。
- ②:終身(年金)
- 国民年金基金の1口目はA型・B型のいずれかの終身年金から選択して加入することが義務付けられています。
- ③:確定(年金)
- 国民年金基金の2口目以降は、終身年金(A型・B型)に加えて確定年金(I型・II型・III型・IV型・V型)の中から自由に選択できます。
- ④:付加年金
- 老齢基礎年金を繰上げ請求した場合、国民年金基金の終身年金のうち付加年金相当分(年額200円×納付月数)について老齢基礎年金と同率で減額されて支給されます。
- ⑤:社会保険料(控除)
- 国民年金基金の掛金は、税法上、その全額が「社会保険料控除」として所得控除の対象となります。
- ⑥:70,000(円)
- 小規模企業共済の毎月の掛金は、1,000円から70,000円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
- ⑦:3,000,000(円)
- 小規模企業共済の共済金の分割受取りを選択できる要件は、共済金額が300万円以上で、請求事由発生時に満60歳以上であることです。
- ⑧:6(回)
- 分割受取りを選択した場合の共済金は、10年間または15年間にわたって年6回(奇数月に2カ月分ずつ)支給されます。
覚えるポイント
- 国民年金基金の掛金上限はiDeCoと合算して月額68,000円、小規模企業共済の掛金上限は月額70,000円です。
- 国民年金基金の掛金は社会保険料控除、小規模企業共済の掛金は小規模企業共済等掛金控除となる点も重要です。
間違えやすいところ
- 国民年金基金の控除区分を小規模企業共済等掛金控除と混同しないよう注意が必要です。
- 小規模企業共済の掛金上限7万円と、国民年金基金の拠出上限6.8万円を取り違えないようにしましょう。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.2(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
国民健康保険の高額療養費および限度額適用認定証の自己負担計算
ライフプランニングと資金計画 · 国民健康保険 / 高額療養費 / 限度額適用認定証
自営業者であるAさんに対して、ファイナンシャル・プランナーのMさんが説明した国民健康保険の高額療養費の仕組み、および区分イに該当するAさんが総医療費120万円で限度額適用認定証を提示した際の自己負担限度額・現物給付額に関する文章の空欄①~④に入る数値を答えなさい。
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解答
① 21,000(円) ② 4(回目) ③ 173,820(円) ④ 186,180(円)
解説
70歳未満の高額療養費算定基準では、21,000円以上の一部負担金が合算対象となり、直近12カ月で4回目から多数回該当となります。また限度額適用認定証の窓口提示により、本来の3割自己負担額と自己負担限度額との差額が現物給付されます。
解き方
- 70歳未満の合算基準額(21,000円)および多数回該当の支給回数(4回目)を判定します。
- 設例の総医療費120万円を適用区分イの算式「167,400円+(総医療費-558,000円)×1%」に代入して、窓口で支払う自己負担限度額を計算します。
- 本来の3割負担額(120万円×30%=36万円)から自己負担限度額を差し引いて、現物給付される高額療養費の差額を算出します。
答えの内訳
- ①:21,000(円)
- 70歳未満の者の高額療養費の世帯合算では、同一月内に医療機関ごと(医科・歯科別、入院・外来別)の一部負担金が21,000円以上のものが合算対象となります。
- ②:4(回目)
- 高額療養費の多数回該当は、療養のあった月以前の12カ月間に同一世帯で3回以上高額療養費の支給を受けている場合に、4回目から自己負担限度額が引き下げられる仕組みです。
- ③:173,820(円)
- 適用区分イの自己負担限度額は「167,400円+(総医療費-558,000円)×1%」です。総医療費1,200,000円を代入すると、167,400円+(1,200,000円-558,000円)×0.01=167,400円+6,420円=173,820円となります。
- ④:186,180(円)
- 窓口本来の3割負担額は1,200,000円×30%=360,000円です。限度額適用認定証により支払う額は173,820円となるため、その差額である360,000円-173,820円=186,180円が高額療養費として現物給付されます。
覚えるポイント
- 70歳未満の世帯合算の基準額は21,000円以上です。
- 限度額適用認定証を利用すると窓口での立替払いが不要となり、自己負担限度額までの支払いで済みます。
間違えやすいところ
- 多数回該当の対象となる回数を「3回目」と誤認しやすいので「過去12カ月以内に3回以上支給された場合の4回目」と正確に覚える必要があります。
- 現物給付額の計算で、総医療費120万円から自己負担限度額を引いてしまうミスが多く、正しくは窓口負担額36万円から引く必要があります。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.2(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
公的年金の遺族給付の計算
ライフプランニングと資金計画 · 遺族基礎年金 / 遺族厚生年金 / 中高齢寡婦加算 / 長期要件
自営業者であるAさん(50歳、昭和44年1月25日生まれ)が平成31年1月27日に死亡し、妻Bさん(昭和44年4月8日生まれ)が遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権を取得した場合における、妻Bさんに係る遺族給付の年金額について、次の①遺族基礎年金の年金額、②遺族厚生年金の年金額(本来水準による価額)を求めなさい。年金額は平成30年度価額に基づき、計算過程を示して円単位(円未満四捨五入)で解答すること。 〈家族情報〉 ・妻Bさん(49歳) ・長男Cさん(平成10年5月15日生まれ、大学生、20歳) ・二男Dさん(平成14年10月10日生まれ、高校生、16歳) ※家族は同居・生計維持関係にあり、障害状態にはない。 〈厚生年金保険等の条件〉 ・公的年金加入歴:平成元年1月〜平成3年3月(27月)学生未加入、平成3年4月〜平成23年12月(249月)厚生年金保険、平成24年1月以降国民年金第1号(保険料納付済)。 ・厚生年金被保険者期間:総報酬制導入前144月、総報酬制導入後105月(要件を満たす場合は300月みなしを適用)。 ・平均標準報酬月額(導入前):280,000円、乗率:1,000分の7.125 ・平均標準報酬額(導入後):393,000円、乗率:1,000分の5.481 ・中高齢寡婦加算額:584,500円(要件を満たす場合のみ加算)
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解答
① 1,003,600円、② 385,090円
解説
公的年金の遺族給付において、遺族基礎年金は18歳到達年度末日までの子(または障害等級1・2級の20歳未満の子)がいる配偶者等に支給されます。遺族厚生年金は、短期要件による死亡時には被保険者期間が300月未満の場合に300月みなし計算が適用されますが、被保険者でない者の長期要件(保険料納付済期間等が25年以上)による死亡では実月数で計算されます。
解き方
- 遺族基礎年金の受給権と子の加算対象を確認する。長男C(20歳)は対象外、二男D(16歳)は対象となるため、基本額に第1子の加算額を合算して1,003,600円を算出する。
- 遺族厚生年金の要件を判定する。現在厚生年金被保険者ではなく、受給資格期間25年以上による長期要件となるため、300月みなし保証は適用せず実月数(249月)を用いて本来水準の報酬比例部分の4分の3を計算し、円未満を四捨五入して385,090円を求める。
答えの内訳
- ①:1,003,600(円)
- 遺族基礎年金は「子の加算」の対象となる高校生以下(18歳到達年度末日まで)の子がいる配偶者に支給されます。20歳の長男Cさんは対象外ですが、16歳の二男Dさんは対象となるため、基本額779,300円に子1人分の加算額224,300円を加算して、779,300円+224,300円=1,003,600円となります。
- ②:385,090(円)
- Aさんは死亡時に国民年金第1号被保険者ですが、合算対象期間を含め受給資格期間が25年以上あるため長期要件による受給となります。長期要件による死亡の場合、300月みなし計算は適用されず実月数(144月+105月=249月)で計算します。報酬比例部分の計算式は、(280,000円×7.125/1,000×144月+393,000円×5.481/1,000×105月)×3/4=(287,280円+226,173.465円)×3/4=385,090.098…円となり、円未満を四捨五入して385,090円となります。また、遺族基礎年金を受給している間は中高齢寡婦加算は加算されません。
覚えるポイント
- 遺族基礎年金の子の対象は「18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子」であること。
- 被保険者でない者の死亡による遺族厚生年金(長期要件)には、300月のみなし計算は適用されないこと。
間違えやすいところ
- 死亡時に被保険者でないため短期要件を満たさないにもかかわらず、300月みなし計算を適用してしまう誤り。
- 遺族基礎年金を受給している期間中であるにもかかわらず、中高齢寡婦加算を併せて加算してしまう誤り。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等および平成30年度価格に基づく公的年金制度の規定による。
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.2(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
つみたてNISAの仕組み
金融資産運用 · つみたてNISA / 株式数比例配分方式 / ドル・コスト平均法 / 非課税投資枠
つみたてNISA(非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度)の仕組みに関する次の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を解答しなさい。 「つみたてNISAは、金融機関で非課税口座を開設し、その口座内に設定するつみたてNISA勘定を通じて購入した公募株式投資信託などについて、本来は課税される分配金や譲渡益等が非課税となる制度です。 つみたてNISAの対象となる金融商品は、長期の積立・分散投資に適した一定の商品性を有する公募株式投資信託やETF(上場投資信託)とされています。なお、つみたてNISA勘定を通じて購入したETF(上場投資信託)の分配金を非課税とするためには、分配金の受取方法として( ① )方式を選択する必要があります。 つみたてNISA勘定を通じて購入することができる限度額(非課税枠)は、年間( ② )万円です。また、その購入方法は累積投資契約に基づく定期かつ継続的な買付けとされています。定額購入による積立投資方法は( ③ )平均法と呼ばれ、同じく投資時期の分散を図る定量購入による場合に比べて、平均購入単価を抑える効果が期待できます。 つみたてNISAにおける非課税期間は、当該つみたてNISA勘定が設けられた日の属する年の1月1日から最長で( ④ )年間となります。」
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解答
① 株式数比例配分(方式)、② 40(万円)、③ ドルコスト(平均法)、④ 20(年間)
解説
つみたてNISAは少額からの長期・積立・分散投資を後押しするための非課税制度であり、年間40万円を限度に、最長20年間、定期継続買付け(ドル・コスト平均法)によって得た運用益や分配金を非課税で享受できます。上場株式やETFの分配金を非課税で受領するためには株式数比例配分方式の事前登録が要件となります。
解き方
- ETFや株式等の分配金・配当金を非課税口座内で非課税処理するための受取方式(株式数比例配分方式)を特定する。
- 制度上の年間非課税枠(40万円)、定額積立による買付手法の名称(ドル・コスト平均法)、最長非課税期間(20年)の規定数値をそれぞれ当てはめる。
答えの内訳
- ①:株式数比例配分(方式)
- NISA口座(つみたてNISAを含む)において上場株式やETFの配当金・分配金を非課税とするためには、証券会社の取引口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選択する必要があります。
- ②:40(万円)
- つみたてNISA勘定を通じて新規投資できる年間の非課税投資枠の上限は40万円です。
- ③:ドルコスト(平均法)
- 定期的に一定の金額で継続して同一商品を買い付ける手法を「ドル・コスト平均法」と呼び、価格が高いときは少なく、安いときは多く買い付けることで平均購入単価を平準化・抑制する効果があります。
- ④:20(年間)
- つみたてNISAの非課税期間は、購入した年の1月1日から最長で20年間となります。
覚えるポイント
- つみたてNISAの年間投資枠は40万円、非課税期間は最長20年間であること。
- ETFや上場株式の配当等を非課税とするには「株式数比例配分方式」を選択しなければならないこと。
間違えやすいところ
- 一般NISAの枠(120万円・5年間)とつみたてNISAの枠(40万円・20年間)を取り違えてしまうこと。
- 分配金の受取方式について「登録配当金受領口座方式」や「配当金領収証方式」等と混同すること。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の租税特別措置法に基づく非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度の規定による。
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
ROE(自己資本当期純利益率)およびインタレスト・カバレッジ・レシオの計算
金融資産運用 · 財務諸表分析 / ROE / インタレスト・カバレッジ・レシオ
設例の〈X社の財務データ〉に基づき、①X社の平成30年3月期の自己資本当期純利益率(%)および②X社の平成30年3月期のインタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)を求めなさい。なお、自己資本当期純利益率の計算にあたっては平成29年3月期と平成30年3月期の自己資本の平均値を用い、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入して小数点以下第2位まで解答すること。
解答・解説を表示
解答
① 5.45(%) ② 12.17(倍)
解説
自己資本当期純利益率(ROE)は株主資本等の自己資本を用いてどれだけ効率的に利益を上げたかを表す収益性指標です。インタレスト・カバレッジ・レシオは事業活動から得られる利益(事業利益=営業利益+受取利息・配当金)が支払利息等の金融費用をどれだけカバーできているかを表す財務健全性指標です。
解き方
- ROEの計算に必要な各期の自己資本(純資産合計から新株予約権と非支配株主持分を除いた額)を算出して期中平均値を求め、当期純利益を期中平均自己資本で除してパーセント表示にします。
- インタレスト・カバレッジ・レシオの分子(営業利益+受取利息+受取配当金)と分母(支払利息)を財務諸表から抽出し、除算して倍率を求めます。
答えの内訳
- ①:5.45(%)
- 自己資本=「純資産の部合計-新株予約権-非支配株主持分」(または「株主資本合計+その他の包括利益累計額合計」)で求められます。前期(平成29年3月期)自己資本=51,000-700-3,000=47,300百万円、当期(平成30年3月期)自己資本=52,000-800-3,000=48,200百万円となります。期中平均自己資本は(47,300+48,200)÷2=47,750百万円です。親会社株主に帰属する当期純利益は2,600百万円であるため、自己資本当期純利益率=2,600÷47,750×100=5.4450…%となり、小数点以下第3位を四捨五入して5.45%となります。
- ②:12.17(倍)
- インタレスト・カバレッジ・レシオは、金融費用の支払能力を示す指標であり、「(営業利益+受取利息+受取配当金)÷支払利息」により算出します。平成30年3月期の営業利益7,000百万円、受取利息100百万円、受取配当金200百万円、支払利息600百万円を代入すると、(7,000+100+200)÷600=7,300÷600=12.1666…倍となります。小数点以下第3位を四捨五入して12.17倍となります。
覚えるポイント
- 自己資本=純資産合計-新株予約権-非支配株主持分(=株主資本+その他の包括利益累計額)
- インタレスト・カバレッジ・レシオの分子は事業利益(営業利益+受取利息+受取配当金)
間違えやすいところ
- 自己資本の算定で純資産合計をそのまま使ってしまったり、新株予約権や非支配株主持分を引き忘れるミス
- ROEの計算で期末の自己資本のみを用い、問題文にある前期と当期の平均を用いる指示を見落とすミス
- インタレスト・カバレッジ・レシオの分子に経常利益や営業外収益のその他を含めてしまうミス
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
シャープ・レシオおよび2資産ポートフォリオの標準偏差の計算
金融資産運用 · ポートフォリオ理論 / シャープ・レシオ / ポートフォリオの標準偏差
設例の〈Yファンド・Zファンドの実績収益率・標準偏差・相関係数〉に基づいて、①Yファンドのシャープ・レシオおよび②YファンドとZファンドをそれぞれ6:4の割合で購入した場合のポートフォリオの標準偏差(%)をそれぞれ求めなさい。なお、シャープ・レシオの計算にあたっては安全資産利子率を0.10%とし、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入して小数点以下第2位まで解答すること。
解答・解説を表示
解答
① 1.42 ② 3.86(%)
解説
シャープ・レシオはリスク(標準偏差)1単位あたりの超過収益率を示し、数値が大きいほどリスク対比での運用効率が優れていると評価されます。2資産で構成されるポートフォリオの標準偏差は各資産の分散に加えて共分散(相関係数)を考慮して算出され、相関係数が1未満であれば分散投資によるリスク低減効果が得られます。
解き方
- シャープ・レシオの算式に収益率、無リスク金利、標準偏差を代入してリスク1単位あたりの超過リターンを算出します。
- 2資産の投資比率、それぞれの標準偏差、および相関係数を用いてポートフォリオの分散(σ^2)を計算します。
- 求めたポートフォリオの分散の平方根を計算し、四捨五入指定に従って小数点以下第2位まで整理します。
答えの内訳
- ①:1.42
- シャープ・レシオは「(ポートフォリオ(資産)の収益率-安全資産利子率)÷標準偏差(リスク)」で求められます。Yファンドの実績収益率10.75%、安全資産利子率0.10%、標準偏差7.50%を代入すると、(10.75-0.10)÷7.50=10.65÷7.50=1.42となります。
- ②:3.86(%)
- 2資産(Y、Z)のポートフォリオの分散は、σp^2=wY^2×σY^2+wZ^2×σZ^2+2×wY×wZ×ρYZ×σY×σZで求められます。投資比率wY=0.6、wZ=0.4、標準偏差σY=7.50、σZ=10.25、相関係数ρYZ=-0.60を代入すると、σp^2=0.6^2×7.50^2+0.4^2×10.25^2+2×0.6×0.4×(-0.60)×7.50×10.25=0.36×56.25+0.16×105.0625-0.288×76.875=20.25+16.81-22.14=14.92となります。ポートフォリオの標準偏差は平方根をとって、σp=√14.92=3.8626…%となり、小数点以下第3位を四捨五入して3.86%となります。
覚えるポイント
- シャープ・レシオ=(リターン-安全資産利子率)÷標準偏差
- ポートフォリオの分散=w1^2×σ1^2+w2^2×σ2^2+2×w1×w2×ρ×σ1×σ2
間違えやすいところ
- シャープ・レシオの計算で分子から安全資産利子率を引き忘れるミス
- 相関係数が負(マイナス)の場合の符号処理で足し算にしてしまう符号ミス
- ポートフォリオの分散を求めた後に平方根(√)を取り忘れて分散のまま解答してしまうミス
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の作成
タックスプランニング · 法人税の申告調整 / 別表四 / 益金不算入 / 損金不算入 / 繰越欠損金の控除
製造業を営むX株式会社(資本金3,000万円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社、中小企業者等)の平成31年3月期(当期)における確定申告資料に基づき、〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑦に入る適切な金額(円単位)を求めなさい。 〈資料〉 1. 減価償却費:機械装置4,800千円(償却限度額3,900千円)、工具器具備品6,400千円(限度額6,700千円、前期からの繰越償却超過額なし)。いずれも損金経理済み。 2. 役員退職金:退任取締役Aさんに70,000千円支給(損金経理)。功績倍率方式による適正額(最終報酬月額1,000千円×在任10年×功績倍率3.0倍)を上回る部分を自己否認。 3. 受取配当金:上場会社Y社(非支配目的株式等)より1,500千円(源泉所得税控除前)受領。 4. 繰越欠損金:前々期発生の青色欠損金29,000千円の繰越しあり。 5. 税額控除:賃上げ促進税制に係る税額控除額1,000千円。 6. 税金等:損益計算書上の「法人税、住民税及び事業税」は16,745,040円(利子源泉税15,315円、配当源泉税229,725円、当期確定申告見積納税額16,500千円)。貸借対照表の「未払法人税等」は16,500千円。源泉税額は法人税額から控除する方式を選択。 〈略式別表四〉 当期利益の額:21,654,960円 損金経理をした納税充当金:( ① ) 減価償却の償却超過額:( ② ) 役員退職給与の損金不算入額:( ③ ) (小計) 受取配当等の益金不算入額:( ④ ) (小計) (仮計) 法人税額から控除される所得税額:( ⑤ ) (合計) 欠損金又は災害損失金等の当期控除額:△( ⑥ ) 所得金額又は欠損金額:( ⑦ )
解答・解説を表示
解答
① 16,500,000円、② 900,000円、③ 40,000,000円、④ 300,000円、⑤ 245,040円、⑥ 29,000,000円、⑦ 50,000,000円
解説
別表四は、企業会計上の当期純利益から税法上の所得金額を算出するための申告調整明細書です。税務上の損金と認められない費用(加算)や益金と認められない収益(減算)を調整し、税額控除される源泉所得税等の加算を経て、繰越欠損金を控除して所得金額を算定します。
解き方
- 企業会計の当期利益21,654,960円に、損金経理をした納税充当金(16,500,000円)、機械装置の減価償却超過額(900,000円)、役員退職金の過大役員給与(40,000,000円)を加算する。
- 非支配目的株式等に係る受取配当金の益金不算入額(1,500,000円×20%=300,000円)を減算する。
- 法人税額から税額控除を受ける源泉所得税・復興特別所得税の合計額245,040円を加算して合計額(繰越欠損金控除前所得79,000,000円)を求める。
- 繰越欠損金29,000,000円を全額控除して、最終的な所得金額(50,000,000円)を算出する。
小問ごとの答え
- 小問 ①:16,500,000
- 当期の損益計算書で費用計上した法人税等のうち、当期確定申告見積納税額として貸借対照表の未払法人税等に繰り入れた金額である16,500,000円を別表四で加算(留保)します。
- 小問 ②:900,000
- 減価償却超過額は資産区分ごとに計算します。機械装置は会社計上額4,800千円-償却限度額3,900千円=900千円(900,000円)が償却超過額として加算されます。工具器具備品は限度額未達ですが前期繰越超過額がないため認容額は発生しません。
- 小問 ③:40,000,000
- 功績倍率方式による適正額は1,000千円×10年×3.0=30,000千円です。支給額70,000千円との差額である超過額40,000千円(40,000,000円)が損金不算入となり加算(社外流出)されます。
- 小問 ④:300,000
- 持株比率5%以下の非支配目的株式等に該当する上場株式の配当金は、20%相当額が益金不算入となります。したがって、1,500,000円×20%=300,000円を減算(社外流出)します。
- 小問 ⑤:245,040
- 預金利子から源泉徴収された所得税・復興特別所得税(15,000円+315円=15,315円)と受取配当金の源泉税(225,000円+4,725円=229,725円)の合計245,040円を、法人税額から控除するため別表四で加算(留保)します。
- 小問 ⑥:29,000,000
- 資本金1億円以下の中小法人等であるため、控除前所得金額(79,000,000円)の100%を限度として繰越欠損金を全額控除できます。したがって控除額は29,000,000円となります。
- 小問 ⑦:50,000,000
- 合計額79,000,000円(当期利益21,654,960円+加算小計57,400,000円-減算300,000円+加算245,040円)から繰越欠損金当期控除額29,000,000円を減算し、所得金額は50,000,000円となります。
覚えるポイント
- 非支配目的株式等(保有割合5%以下)の受取配当金等の益金不算入割合は20%であること。
- 中小法人等(資本金1億円以下など)は繰越欠損金を控除前所得金額の100%まで控除できること。
間違えやすいところ
- 減価償却超過額の計算において、別々の資産の超過額と限度未達額(不足額)を合算相殺してしまうミス(資産ごとに個別判定する)。
- 受取配当等の益金不算入割合を他の区分(関連法人株式等の50%など)と混同してしまうミス。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の税法に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.9(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.10(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
中小法人の納付すべき法人税額の計算
タックスプランニング · 法人税額の計算 / 中小法人の軽減税率 / 税額控除 / 所得税額控除
問57で算出した所得金額(50,000,000円)に基づき、X社が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、100円未満を切り捨てて円単位で解答すること。 〈資料〉 ・所得金額:50,000,000円 ・法人税率(資本金1億円以下の中小法人):年800万円以下の部分15%、年800万円超の部分23.2% ・賃上げ促進税制に係る税額控除額:1,000,000円 ・所得税額控除(復興特別所得税含む):245,040円
解答・解説を表示
解答
9,698,900円
解説
普通法人の法人税額は、課税所得金額に規定の税率を乗じて算出法人税額を計算し、そこから試験研究費や賃上げ促進税制等の税額控除、源泉所得税額控除を差し引いて確定納付税額を計算します。端数処理は通則法に従い100円未満を切り捨てます。
解き方
- 所得金額50,000,000円を年800万円以下の部分と年800万円超の部分に区分し、軽減税率15%および本則税率23.2%を適用して算出法人税額を計算する(8,000,000×15%+42,000,000×23.2%=10,944,000円)。
- 算出法人税額から賃上げ促進税制の税額控除額1,000,000円および所得税額控除(復興特別所得税含む)245,040円を差し引く(10,944,000-1,000,000-245,040=9,698,960円)。
- 得られた金額の100円未満を切り捨てて確定納付税額(9,698,900円)を導く。
覚えるポイント
- 資本金1億円以下の中小法人の軽減税率は、年800万円以下の所得に対して15%(租税特別措置法上の特例税率)であること。
- 確定申告による納付税額の計算では、税額控除を控除した後の金額に対して100円未満の端数を切り捨てること。
間違えやすいところ
- 年800万円以下の軽減税率(15%)を適用せず、所得金額全額に23.2%を乗じてしまうミス。
- 所得税額控除(復興特別所得税を含む)の差し引きを忘れてしまうミス。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の税法に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
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交際費等の損金不算入および青色申告欠損金の繰越控除
タックスプランニング · 交際費等の損金不算入 / 青色申告欠損金の繰越控除
法人税における交際費等の損金不算入および欠損金の繰越控除に関する文章Ⅰおよび文章Ⅱを読み、それぞれの下線部①~③の中から最も不適切なものを1つ選び、その番号および適切な内容を簡潔に説明しなさい。なお、法人は設立後10年以上経過した普通法人であり、大法人に完全支配されている法人等ではないものとする。 〈交際費等の損金不算入〉 Ⅰ 法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出した交際費等のうち、①一定の接待飲食費については、当該法人が中小法人であるかどうかにかかわらず、その額の50%相当額を損金の額に算入することができる。 また、事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円以下の中小法人については、その事業年度において支出した交際費等のうち、②定額控除限度額である年600万円を限度として損金の額に算入することができる。 なお、法人が支出した飲食等のために要した一定の費用であって、③飲食等の参加者1人当たり5,000円以下の費用で所定の事項を記載した書類が保存されているものについては、交際費等から除かれる。 〈欠損金の繰越控除〉 Ⅱ 前事業年度以前に生じた欠損金額を、所得の金額の計算上、損金の額に算入することができる法人は、①欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人とされている。 この欠損金の繰越控除の規定により、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する事業年度において損金の額に算入することができる欠損金額は、事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円以下の中小法人については、繰越欠損金控除前の所得の金額が限度となり、②中小法人以外の法人については、繰越欠損金控除前の所得の金額の55%相当額が限度となる。 なお、③平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は、最長で10年となる。
解答・解説を表示
解答
Ⅰ 下線部の番号:②、適切な内容:定額控除限度額である年800万円を限度として損金の額に算入することができる。/Ⅱ 下線部の番号:②、適切な内容:中小法人以外の法人については、繰越欠損金控除前の所得の金額の50%相当額が限度となる。
解説
法人税法において、交際費等は原則として全額損金不算入ですが、中小法人には年800万円の定額控除限度額または接待飲食費の50%損金算入の選択が認められています。また、青色申告の繰越欠損金控除について、中小法人等は所得の100%まで控除可能ですが、中小法人以外の法人(大法人等)は平成30年4月1日以後開始事業年度より控除前所得の50%が損金算入限度額とされています。
解き方
- 文章Ⅰについて各下線部を確認し、中小法人の交際費等の定額控除限度額が年800万円であることから②が不適切と判断する。
- 文章Ⅱについて各下線部を確認し、平成30年4月1日以後開始事業年度における大法人等の繰越欠損金の損金算入限度割合が50%であることから②が不適切と判断する。
小問ごとの答え
- 小問 Ⅰ:下線部の番号:②、適切な内容:定額控除限度額である年800万円を限度として損金の額に算入することができる。
- 資本金1億円以下の中小法人における交際費等の定額控除限度額は、年600万円ではなく年800万円です。中小法人は「年800万円までの定額控除」または「飲食のために支出した費用の50%損金算入」のいずれかを選択適用できます。
- 小問 Ⅱ:下線部の番号:②、適切な内容:中小法人以外の法人については、繰越欠損金控除前の所得の金額の50%相当額が限度となる。
- 大法人等の控除限度割合は段階的に引き下げられており、平成30年(2018年)4月1日以後に開始する事業年度においては、繰越欠損金控除前の所得金額の「50%相当額」が限度となります(55%相当額は平成29年4月1日~平成30年3月31日開始事業年度の割合)。
覚えるポイント
- 中小法人の交際費損金算入の定額控除限度額は年800万円であること。
- 中小法人以外の繰越欠損金控除限度額は平成30年4月1日以後開始事業年度から50%(繰越期間は平成30年4月1日以後開始事業年度発生分から10年)であること。
間違えやすいところ
- 中小法人の定額控除限度額(年800万円)を過去の数値(年600万円等)と混同しないようにする。
- 大法人等の欠損金控除限度割合の段階的引き下げ(80%→65%→60%→55%→50%)について、適用事業年度の基準を取り違えないように注意する。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.11(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
建築物の高さ制限および特定の事業用資産の買換え特例
不動産 · 建築基準法(絶対的高さ制限・斜線制限) / 特定の事業用資産の買換え特例(譲渡所得)
建築基準法の規定および「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」に関する以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 〈建築基準法の規定〉 Ⅰ 建築基準法では、都市計画区域と準都市計画区域内において、用途地域等に応じて、建築物の高さの制限が定められている。 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域または( ① )地域内における建築物の高さは、原則として、10mまたは( ② )mのうち都市計画で定められた限度を超えてはならないとされている。 また、甲土地が所在する近隣商業地域に建築する建築物に適用される高さの制限には、道路斜線制限と( ③ )斜線制限がある。このうち、道路斜線制限は、用途地域および容積率の限度の区分に応じて定められた一定の範囲内において、前面道路の反対側の境界線からの水平距離に対する高さの比率を定めたもので、その比率は、住居系の用途地域では原則として1.25、その他の用途地域では( ④ )と定められている。 なお、天空率により計算した採光、通風等が各斜線制限により高さが制限された場合と同程度以上である建築物については、各斜線制限は適用されない。 〈特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例〉 Ⅱ 「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」(以下、「本特例」という)は、個人が事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡して、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産(買換資産)を取得し、その取得の日から( ⑤ )年以内に買換資産を事業の用に供したときは、所定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができる特例である。 譲渡資産および買換資産がいずれも土地である場合、原則として、買い換えた土地のうち、譲渡した土地の面積の( ⑥ )倍を超える部分は買換資産に該当せず、本特例の対象とならない。また、長期保有資産の買換え(いわゆる7号買換え)の場合、譲渡した土地の所有期間が譲渡した日の属する年の1月1日において( ⑦ )年を超えていなければならず、買い換えた土地の面積が( ⑧ )㎡以上でなければならない。
解答・解説を表示
解答
① 田園住居(地域) ② 12(m) ③ 隣地(斜線制限) ④ 1.5 ⑤ 1(年) ⑥ 5(倍) ⑦ 10(年) ⑧ 300(㎡)
解説
建築基準法では、良好な住居環境や都市空間の通風・採光を確保するため、低層住居系・田園住居地域における絶対的高さ制限(10m・12m)や各用途地域の斜線制限(道路斜線・隣地斜線・北側斜線)を定めています。一方、租税特別措置法における特定の事業用資産の買換え特例(7号買換え等)では、事業継続を支援するため、所有期間10年超の資産の譲渡、取得後1年以内の供用、面積要件(譲渡面積の5倍以内、買換土地300㎡以上)などを満たすことで課税の繰延べが認められています。
解き方
- 建築基準法の高さ制限に関する条文規定に基づき、低層地域・田園住居地域の絶対高さ限度(10mまたは12m)および斜線制限の種類と勾配(近隣商業地域の隣地斜線・道路斜線勾配1.5)を特定する。
- 租税特別措置法の事業用資産の買換え特例(7号買換え)の各要件(供用期限1年以内、面積限度5倍、所有期間10年超、買換土地面積300㎡以上)を条文に沿って確認し、数値を当てはめる。
答えの内訳
- ①:田園住居(地域)
- 建築基準法第55条における建築物の絶対的高さ制限(10mまたは12m)の対象は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、および田園住居地域です。
- ②:12(m)
- 低層住居専用地域および田園住居地域における建築物の高さの限度は、都市計画において「10m」または「12m」のいずれかに定められます。
- ③:隣地(斜線制限)
- 近隣商業地域において適用される斜線制限は、道路斜線制限と「隣地斜線制限」です(北側斜線制限は第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住居地域にのみ適用されます)。
- ④:1.5
- 道路斜線制限の斜線勾配(高さの比率)は、住居系地域では原則1.25、商業系・近隣商業系等のその他の用途地域では1.5と定められています。
- ⑤:1(年)
- 特定の事業用資産の買換え特例において、取得した買換資産は、取得の日から「1年」以内に事業の用に供する必要があります。
- ⑥:5(倍)
- 土地から土地への買換えにおいて、買換資産となる土地の面積は、譲渡した土地の面積の原則「5倍」までが特例の対象となります。
- ⑦:10(年)
- 長期保有の事業用資産の買換え(7号買換え)では、譲渡した年の1月1日において所有期間が「10年」を超えていることが要件です。
- ⑧:300(㎡)
- 長期保有の事業用資産の買換え(7号買換え)により取得する買換資産である土地等の敷地面積は、原則として「300㎡」以上である必要があります。
覚えるポイント
- 低層住居専用地域および田園住居地域の絶対高さ制限は10mまたは12mであること。
- 事業用資産の買換え特例(7号買換え)の土地要件は「所有期間10年超」「買換土地の面積は譲渡面積の5倍以内かつ300㎡以上」「取得後1年以内に事業供用」であること。
間違えやすいところ
- 絶対高さ制限の対象地域に平成30年4月施行の「田園住居地域」が追加された点を見落としやすい。
- 買換資産の土地面積要件である「譲渡面積の5倍以内」と「最低面積300㎡以上」の数値を混同しないよう注意する。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.14(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
建築基準法に基づく建築面積および延べ面積の最高限度の計算
不動産 · 建蔽率 / 特定道路による容積率の緩和 / 建築面積 / 延べ面積
甲土地(敷地面積600㎡、近隣商業地域、指定建蔽率80%、指定容積率400%、準防火地域)に耐火建築物を建築する場合における、次の①建蔽率の上限となる建築面積および②容積率の上限となる延べ面積を求めなさい。なお、甲土地は特定行政庁が指定する角地であり、幅員18mの特定道路から甲土地までの延長距離は63m(前面道路は幅員6mおよび4mの公道)である。特定道路までの距離による容積率制限の緩和を考慮して計算しなさい(計算過程の記載は不要)。
解答・解説を表示
解答
① 540(㎡) ② 2,376(㎡)
解説
建築面積の限度は敷地面積に適用建蔽率を乗じて算出し、延べ面積の限度は敷地面積に適用容積率を乗じて算出します。特定道路(幅員12m以上)から70m以内にある敷地の前面道路(幅員6m以上12m未満)については、特定道路までの距離に応じた幅員の加算緩和措置が適用されます。
解き方
- 建蔽率について、指定建蔽率80%に特定行政庁指定の角地による+10%の緩和を加え、適用建蔽率を90%(80%+10%)とし、建築面積 600㎡ × 90% = 540㎡ を算出する。
- 特定道路(幅員18m)までの延長距離Lが63m、前面道路幅員W2が6mであることから、加算値 Wr=(12-6)×(70-63)/70=0.6m を計算する。
- 緩和後の前面道路幅員 6.6m に近隣商業地域の容積率低減係数 6/10 を乗じて道路制限容積率 396% を求め、指定容積率400%と比較して小さい方の396%を採用する。
- 敷地面積 600㎡ に容積率上限 396% を乗じて延べ面積の上限 2,376㎡ を算出する。
答えの内訳
- ①:540(㎡)
- 指定建蔽率は80%です。特定行政庁が指定する角地であるため+10%の緩和が受けられます。準防火地域内の耐火建築物に対する緩和(+10%)は、2018年10月1日時点の法令基準では「防火地域内の耐火建築物」のみが対象であったため適用されません(※2019年6月改正前)。したがって適用建蔽率は80%+10%=90%となり、建築面積の上限は 600㎡ × 90% = 540㎡ となります。
- ②:2,376(㎡)
- 前面道路幅員は広い方の6mを用います。特定道路(幅員18m)から甲土地までの距離が70m以内(L=63m)であるため、特定道路緩和の加算値Wrは (12-6)×(70-63)/70 = 6×7/70 = 0.6m となります。基準となる前面道路幅員は 6m+0.6m = 6.6m です。近隣商業地域の法定乗数は6/10(0.6)であるため、前面道路制限容積率は 6.6 × 6/10 = 39.6/10 = 396% となり、指定容積率400%より低いため396%が上限となります。したがって延べ面積の上限は 600㎡ × 396% = 2,376㎡ となります。
覚えるポイント
- 特定道路緩和の計算式:Wr = (12-W2)×(70-L)/70(適用条件は特定道路幅員12m以上、敷地の前面道路幅員6m以上12m未満、特定道路からの距離70m以内)。
- 前面道路が2つ以上ある場合、幅員の広い方の道路幅員を基準として計算する。
間違えやすいところ
- 2018年10月1日施行時点の法令では「準防火地域内の耐火建築物」に対する建蔽率10%緩和措置はまだ施行されていないため、防火地域の緩和と混同して100%にしないこと。
- 特定道路緩和の計算式において、分子の引き算(70-L)や(12-W2)の数値を誤って代入しないこと。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令(建築基準法第52条、第53条等)
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.13(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.15(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
特定の事業用資産の買換え特例適用時の課税長期譲渡所得および税額の計算
不動産 · 特定の事業用資産の買換えの特例 / 課税長期譲渡所得金額 / 概算取得費 / 復興特別所得税 / 住民税
Aさんが事業用資産である土地(貸駐車場用地)を8,000万円で譲渡し、甲土地を1億2,000万円で取得して「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」(課税の繰延割合80%)の適用を受けた場合の、①課税長期譲渡所得金額、②課税長期譲渡所得金額に係る所得税および復興特別所得税の合計額、③課税長期譲渡所得金額に係る住民税額をそれぞれ求めなさい。なお、譲渡資産の取得費は不明、譲渡費用は300万円とし、本問の譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。〔計算過程〕を示し、100円未満を切り捨てて円単位で解答しなさい。
解答・解説を表示
解答
① 14,600,000(円) ② 2,235,900(円) ③ 730,000(円)
解説
事業用資産の買換え特例において、買換資産の取得価額が譲渡価額以上の場合、譲渡価額の20%(課税繰延割合が80%のとき)に相当する金額を収入金額とし、取得費・譲渡費用の合計額のうち同割合に対応する金額を必要経費として控除して課税譲渡所得金額を計算します。
解き方
- 譲渡資産の譲渡価額(8,000万円)に対して繰延割合(80%)を差し引いた課税対象収入金額(8,000万円 × 20% = 1,600万円)を算出する。
- 概算取得費(8,000万円 × 5% = 400万円)と譲渡費用(300万円)の合計額(700万円)に対応割合(20%)を乗じて、必要経費(140万円)を算出する。
- 収入金額1,600万円から必要経費140万円を差し引いて、課税長期譲渡所得金額(1,460万円)を算出する。
- 長期譲渡所得の税率(所得税15%、復興特別所得税2.1%、住民税5%)を適用して各税額を算出し、所得税・復興特別所得税合計額の100円未満を切り捨てる。
答えの内訳
- ①:14,600,000(円)
- 買換資産の取得価額(1億2,000万円)が譲渡資産の譲渡価額(8,000万円)以上であるため、収入金額とみなされる額は 80,000,000円 × (1-0.8) = 16,000,000円 となります。取得費不明のため概算取得費(譲渡価額の5%=400万円)を用い、必要経費の合計は 4,000,000円+3,000,000円=7,000,000円 となります。このうち課税対象に対応する経費の額は 7,000,000円 × 16,000,000円 / 80,000,000円(20%)= 1,400,000円 です。したがって、課税長期譲渡所得金額は 16,000,000円 - 1,400,000円 = 14,600,000円 となります。
- ②:2,235,900(円)
- 課税長期譲渡所得金額に対する所得税額は 14,600,000円 × 15% = 2,190,000円 です。復興特別所得税額は 2,190,000円 × 2.1% = 45,990円 となります。合計額は 2,190,000円 + 45,990円 = 2,235,990円 となり、100円未満を切り捨てて 2,235,900円 となります。
- ③:730,000(円)
- 課税長期譲渡所得金額に対する住民税率は5%です。したがって、住民税額は 14,600,000円 × 5% = 730,000円 となります。
覚えるポイント
- 買換資産の取得価額 ≧ 譲渡価額の場合、収入金額=譲渡価額×(1-繰延割合)、必要経費=(取得費+譲渡費用)×(1-繰延割合)。
- 所得税および復興特別所得税の計算では、所得税額を計算した後に基準所得税額×2.1%を計算して合算し、最後に100円未満を切り捨てる。
間違えやすいところ
- 必要経費(取得費・譲渡費用)の全体に20%を掛けるのを忘れ、経費全額を差し引いてしまう誤り。
- 取得費不明の場合に概算取得費(譲渡価額の5%)を計上し忘れる誤り。
- 所得税・復興特別所得税の合算額に対して100円未満端数切捨てを行う処理の失念。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令(租税特別措置法第37条、所得税法、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法)
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.13(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.15(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
類似業種比準方式による取引相場のない株式の評価
相続・事業承継 · 類似業種比準価額 / 取引相場のない株式の評価 / 中会社
設例のX社(会社規模:中会社の大、資本金等の額6,000万円、発行済株式総数120,000株)のデータに基づき、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額を求めなさい。なお、端数処理は各要素別比準割合および比準割合は小数点第2位未満切捨て、1株当たりの資本金等の額50円当たりの類似業種比準価額は10銭未満切捨て、1株当たりの類似業種比準価額は円未満切捨てとすること。また、複数の方法がある場合は最も低い価額となる方法を選択すること。
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解答
1,676円
解説
類似業種比準方式は、類似業種の上場会社の株価をベースに、評価会社と類似業種における配当・利益・純資産の3要素を比準し、会社規模ごとの斟酌割合(大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5)を乗じて1株当たりの評価額を算定する方式です。
解き方
- 資本金等の額を発行済株式総数で除して1株当たりの資本金等の額(500円)を求め、類似業種株価の5つの候補から最も低い株価(前々月254円)を選択する。
- 配当・利益・簿価純資産の各比準割合を計算し、それぞれ小数点第2位未満を切り捨てたうえで3要素の平均(比準割合)を求め、再度小数点第2位未満を切り捨てる。
- 類似業種株価に比準割合、中会社の斟酌割合(0.60)を乗じ、10銭未満を切り捨てて50円当たりの価額を求めた後、X社の1株当たりの資本金等の額の倍率(500円/50円=10倍)を乗じて円未満を切り捨てる。
覚えるポイント
- 類似業種比準価額の計算における斟酌割合は、大会社が0.7、中会社が0.6、小会社が0.5です。
- 比準要素および比準割合の端数処理は、それぞれ小数点第2位未満切り捨てで行います。
間違えやすいところ
- 類似業種株価の選択で前年平均や当月を選んでしまい、最低価額(前々月254円)を見落とすミス。
- 1株当たりの資本金等の額(500円)への換算(500円/50円=10倍)を掛け忘れるミス。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.17(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.18(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
純資産価額方式および併用方式による取引相場のない株式の評価
相続・事業承継 · 純資産価額方式 / 併用方式 / 中会社
設例のX社(会社規模:中会社の大、発行済株式総数120,000株)の概要および財務データに基づき、X社株式の1株当たりの①純資産価額と②併用方式(類似業種比準方式と純資産価額方式の併用)による価額を求めなさい。なお、計算結果は円未満を切り捨てて円単位とし、複数の評価方法がある場合は最も低い価額となる方法を選択すること。
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解答
① 3,639円 ② 1,872円
解説
取引相場のない株式の評価において、中会社は原則として類似業種比準価額と純資産価額を会社の規模に応じた割合(L値:大は0.90、中は0.75、小は0.60)で加重平均した併用方式により評価します。純資産価額の計算では資産・負債を相続税評価額に置き換え、帳簿価額との差額に法人税等相当額(37%)を乗じて控除します。
解き方
- 資産の相続税評価額の合計と帳簿価額の差額(含み益17,900万円)を算出し、37%を乗じて評価差額に対する法人税等相当額(6,623万円)を計算する。
- 相続税評価額による総資産から負債合計および法人税等相当額を控除して正味純資産額を求め、発行済株式数で除して1株当たりの純資産価額(3,639円)を求める。
- 中会社の大に対応するL値(0.90)を用いて類似業種比準価額(1,676円)と純資産価額(3,639円)を加重平均し、併用方式の価額(1,872円)を求める。
小問ごとの答え
- 小問 ①:3,639(円)
- 相続税評価額による総資産価額は94,760万円、負債合計は44,460万円。帳簿価額による純資産価額は76,860万円-44,460万円=32,400万円。評価差額に対する法人税等相当額は(94,760万円-76,860万円)×37%=6,623万円。差引純資産額は94,760万円-44,460万円-6,623万円=43,677万円。1株当たりの純資産価額は43,677万円÷120,000株=3,639.75円となり、円未満を切り捨てて3,639円となります。
- 小問 ②:1,872(円)
- X社は中会社の大に該当するため、類似業種比準価額の割合(L)は0.90です。併用方式による評価額=類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L)=1,676円×0.90+3,639円×(1-0.90)=1,508.4円+363.9円=1,872.3円。円未満を切り捨てて1,872円となります(純資産価額3,639円よりも低いため有利な1,872円を選択)。
覚えるポイント
- 評価差額に対する法人税等相当額の控除率は37%です。
- 中会社の規模区分に応じたL値は、大会社寄りの「大」が0.90、「中」が0.75、「小」が0.60です。
間違えやすいところ
- 含み益に対する法人税等相当額(37%)の控除を忘れて純資産価額を過大に計算してしまうミス。
- 中会社の大のL値(0.90)を別の区分(0.75や0.60)と取り違えてしまうミス。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.17(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.18(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
事業承継税制(特例措置)および経営承継円滑化法における遺留分の民法特例
相続・事業承継 · 事業承継税制(贈与税の納税猶予特例) / 遺留分に関する民法の特例
平成30年度税制改正により創設された「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」および「遺留分に関する民法の特例」に関する以下の文章ⅠおよびⅡの下線部①~③のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選び、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。 〈非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例〉 Ⅰ 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」(以下、「納税猶予特例」という)の適用を受けるためには、認定経営革新等支援機関の指導および助言を受けて特例承継計画を作成し、平成35年(2023年)3月31日までに都道府県知事の確認を受け、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定を受けなければならない。この特例承継計画には、①後継者、後継者が非上場株式等を取得するまでの期間における経営の計画および後継者が非上場株式等を承継した後5年間の経営計画を定める必要がある。 仮に、Aさんが所有するX社株式10万株のすべてを長男Cさんに贈与により移転し、納税猶予特例の適用を受けた場合、②長男Cさんは、原則として、Aさんの死亡の日まで、贈与を受けたX社株式のうち7万株に対応する贈与税額の全額の納税が猶予される。 また、長男Cさんが、AさんからのX社株式の贈与について納税猶予特例の適用を受けた後、妻Bさんが所有するX社株式の贈与を受けた場合、③贈与の時において長男CさんがX社の代表権を有し、妻BさんがX社の代表権を有していなければ、妻Bさんから贈与を受けたX社株式についても納税猶予特例の適用を受けることができる。 〈遺留分に関する民法の特例〉 Ⅱ 長男Cさんは、Aさんから贈与を受けるX社株式について「遺留分に関する民法の特例」(以下、「民法特例」という)の適用を受けることにより、①贈与を受けたX社株式について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと、または遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を合意の時における価額に固定することができる。 また、長男Cさんが贈与を受けたX社株式について除外合意、固定合意の双方またはいずれかを行う際には、それと併せて、②長男CさんがAさんから贈与を受けたX社株式以外の財産や長男Cさん以外の推定相続人がAさんから贈与を受けた財産について、除外合意や固定合意を行うことができる。 なお、長男Cさんが民法特例の適用を受けるためには、③妻Bさん、長女Dさんおよび二男Eさんと書面によって合意し、経済産業大臣の確認を受けたうえで、家庭裁判所の許可を受ける必要がある。
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解答
Ⅰ:下線部②(適切な内容:贈与を受けたX社株式のすべてに対応する贈与税額の全額の納税が猶予される。)/Ⅱ:下線部②(適切な内容:除外合意を行うことができる(固定合意を行うことはできない)。)
解説
円滑な事業承継を支援するため、税制上は贈与税・相続税を100%猶予する特例承継制度が設けられ、民法上は後継者への株式贈与が遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の対象となるリスクを防ぐ特例合意(除外合意・固定合意)が整備されています。
解き方
- 文章Ⅰの各記述を検討する。一般措置と平成30年度創設の特例措置の相違点(株式数上限の撤廃、猶予割合100%)に着目し、下線部②が誤りであることを特定する。
- 文章Ⅱの各記述を検討する。遺留分特例において、対象株式以外の財産や後継者以外の推定相続人が受けた生前贈与財産について適用可能なのは除外合意に限られる点を確認し、下線部②が誤りであることを特定する。
答えの内訳
- Ⅰ:下線部の番号:②、適切な内容:贈与を受けたX社株式のすべてに対応する贈与税額の全額の納税が猶予される。
- 事業承継税制の一般措置では発行済議決権株式総数の3分の2(上限)までしか対象になりませんでしたが、平成30年度税制改正で新設された特例措置(10年間の時限措置)では、対象株式数の上限が撤廃され、全株式(贈与を受けた株式のすべて)について納税猶予を受けることができます。また、猶予割合も100%です。
- Ⅱ:下線部の番号:②、適切な内容:除外合意を行うことができる(固定合意を行うことはできない)。
- 経営承継円滑化法における遺留分の民法特例では、後継者が旧経営者から贈与等により取得した自社株式等については除外合意および固定合意が認められています。しかし、株式以外の財産や、後継者以外の推定相続人が取得した財産については「除外合意」のみが併せて行うことができ、「固定合意」を行うことは認められていません。
覚えるポイント
- 事業承継税制の特例措置では、対象株式数上限なし(全株式)・納税猶予割合100%(全額猶予)。
- 民法特例において、株式以外の財産や後継者以外の者が受けた贈与財産に適用できるのは「除外合意」のみで、「固定合意」は不可。
間違えやすいところ
- 一般措置(上限2/3、贈与税猶予割合100%・相続税猶予割合80%)と特例措置(上限なし全株式・猶予割合100%)の規定を混同しやすい。
- 遺留分の除外合意・固定合意において、付随して対象に含めることができる自社株式以外の財産にも固定合意ができると誤認しやすい。
出題の前提:2018年10月1日現在施行の法令等(平成30年度税制改正および中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)
出典:金融財政事情研究会『2019年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.19(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式模範解答 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2019年1月 1級 学科(応用編)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2019年1月 1級 学科(応用編)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
- 公式模範解答(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

