日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2016年1月 1級 学科(応用編)の概要
健康保険の傷病手当金および介護保険の保険給付
ライフプランニングと資金計画 · 傷病手当金 / 公的介護保険 / 特別養護老人ホーム
MさんがAさんに対して説明した健康保険の傷病手当金および公的介護保険の保険給付等に関する以下の文章ⅠおよびⅡの下線部①~③のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選び、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。 Ⅰ 「仮に、Aさんが私傷病による療養のため連続して4日以上労務に服することができず、その期間について事業主から給与が支払われない場合、Aさんは、休業した4日目以降の日について、加入している全国健康保険協会の都道府県支部に対して、傷病手当金の支給を請求することができます。 傷病手当金の額は、1日につき、Aさんの①標準報酬日額の6割相当額です。また、傷病手当金の支給期間は、同一の疾病または負傷およびこれにより発した疾病に関しては、②その支給開始日から起算して1年6カ月が限度となります。 なお、傷病手当金の支給要件を満たした者に対して事業主から給与が支払われる場合であっても、その支払われる給与の額が傷病手当金の額より少ないときには、③その差額が傷病手当金として支給されます」 Ⅱ 「介護保険の被保険者が、当該制度から保険給付を受けるためには、①市町村(特別区を含む)から要介護認定または要支援認定を受ける必要があります。ただし、40歳以上65歳未満の第2号被保険者については、初老期における認知症や脳血管疾患などの特定疾病が原因で要介護状態または要支援状態となった場合に限り、保険給付を受けることができます。 要介護認定を受けた被保険者は介護給付を受けることができ、要支援認定を受けた被保険者は予防給付を受けることができます。ただし、介護給付の施設サービスのうち、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を新たに利用することができる要介護被保険者は、原則として、②要介護状態区分が4以上の者に限られます。 介護保険の介護サービス(または介護予防サービス)を利用した被保険者は、費用の一部を負担する必要があります。介護保険の自己負担割合は、③第1号被保険者本人の合計所得金額が160万円以上、かつ、同一世帯の第1号被保険者の年金収入とその他の合計所得金額の合計が一定額以上の場合は2割、それ以外の場合は1割です」
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解答
Ⅰ:①(適切な内容:標準報酬日額の3分の2に相当する額)、Ⅱ:②(適切な内容:要介護状態区分が3以上の者)
解説
健康保険の傷病手当金は私傷病による休業補償として標準報酬日額の3分の2が支給されます。また、介護保険の特別養護老人ホームは制度改正により新規入所基準が原則要介護3以上と定められています。
解き方
- 文章Ⅰの下線部①~③の記述を精査し、給付日額の割合が6割ではなく3分の2相当額であることを確認して不適切な箇所を特定する。
- 文章Ⅱの下線部①~③の記述を精査し、特別養護老人ホームの新規入所要件が原則要介護3以上である点を確認して誤りを訂正する。
答えの内訳
- Ⅰ:不適切なもの:① 適切な内容:傷病手当金の額は、1日につき原則として標準報酬日額の「3分の2」に相当する額である。
- 健康保険法において、傷病手当金の1日当たりの支給額は、標準報酬日額の「3分の2」に相当する額と規定されています(労使折半である雇用保険の基本手当等と混同して6割とするのは誤りです)。
- Ⅱ:不適切なもの:② 適切な内容:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に新たに入所できる者は、原則として要介護状態区分が「3以上」の者である。
- 介護保険制度の改正(2015年4月施行)により、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)への新規入所対象者は、中重度の要介護者を優先するため原則として「要介護3以上」に限定されています。
覚えるポイント
- 傷病手当金・出産手当金の給付日額は標準報酬日額の「3分の2」相当額。
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の新規入所は原則として「要介護3以上」。
間違えやすいところ
- 雇用保険の基本手当(所定給付率50~80%や高年齢雇用継続給付の60歳到達時賃金61%未満時の15%等)と健康保険の「3分の2」を混同しないようにする。
- 特別養護老人ホームの要件を「要介護4以上」や「要介護2以上」と誤答しないようにする。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の健康保険法および介護保険法
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.4(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
公的年金制度における障害給付の仕組み
ライフプランニングと資金計画 · 障害基礎年金 / 障害厚生年金 / 障害手当金 / 加給年金
MさんがAさんに対して説明した公的年金制度の障害給付に関する以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を解答用紙に記入しなさい。 Ⅰ 「国民年金の被保険者期間中に初診日のある傷病によって、その初診日から起算して( ① )を経過した日、または( ① )以内に傷病が治ったときはその治った日において、国民年金法に規定される障害等級1級または2級に該当する程度の障害の状態にあり、かつ、一定の保険料納付要件を満たしている場合は、障害基礎年金の支給を請求することができます。 障害基礎年金の額は、障害等級2級に該当する場合は( ② )円(平成27年度価額)、障害等級1級に該当する場合は( ② )円の( ③ )倍相当額です。また、受給権者によって生計を維持している一定の要件を満たす( ④ )があるときは、障害基礎年金の額に加算額が加算されます」 Ⅱ 「厚生年金保険の被保険者期間中に初診日のある傷病によって、その初診日から起算して( ① )を経過した日、または( ① )以内に傷病が治ったときはその治った日において、厚生年金保険法に規定される障害等級1級から3級までのいずれかに該当する程度の障害の状態にあり、かつ、一定の保険料納付要件を満たしている場合は、障害厚生年金の支給を請求することができます。 また、厚生年金保険の被保険者期間中に初診日のある傷病が、初診日から( ⑤ )年以内に治った日において、その傷病により障害等級3級の障害の程度より軽度の障害の状態にある者は、一定の要件を満たすことにより障害手当金の支給を受けることができます。 障害厚生年金の額は、原則として、老齢厚生年金と同様に計算されます。ただし、受給権者の被保険者期間が( ⑥ )月に満たない場合は、( ⑥ )月とみなして計算されます。また、受給権者によって生計を維持している一定の要件を満たす( ⑦ )があるときは、障害等級1級または2級に該当する者に支給される障害厚生年金の額に加給年金額が加算されます。 なお、障害等級3級に該当する者に支給される障害厚生年金は、障害等級2級に該当する者に支給される障害基礎年金の額の( ⑧ )相当額が最低保障されます」
解答・解説を表示
解答
① 1年6カ月(1年6月) ② 780,100 ③ 1.25 ④ 子 ⑤ 5(5) ⑥ 300 ⑦ 配偶者 ⑧ 4分の3(3/4)
解説
障害給付は、障害認定日(初診日から1年6カ月等)における障害状態で判定されます。1級・2級の障害基礎年金には子の加算があり、厚生年金の1級・2級には配偶者加給年金、3級には300月みなし計算や2級基礎年金の4分の3相当の最低保障が設けられています。
解き方
- 障害基礎年金の障害認定日(初診日から1年6カ月)、2級の満額(平成27年度価額780,100円)、1級の乗率(1.25倍)、加算対象(子)を順次穴埋めする。
- 障害厚生年金の障害手当金の治癒期間(5年以内)、短期加入時の月数みなし(300月)、加給年金対象(配偶者)、3級の最低保障額(2級基礎年金の4分の3)をそれぞれ特定する。
答えの内訳
- ①:1年6カ月(1年6月)
- 障害認定日は原則として初診日から起算して「1年6カ月」を経過した日、またはその期間内に傷病が治った(症状固定)日とされています。
- ②:780,100
- 平成27年度価額の障害等級2級の障害基礎年金額は、老齢基礎年金の満額と同額の「780,100」円です。
- ③:1.25
- 障害等級1級の障害基礎年金額は、2級の額(780,100円)の「1.25」倍相当額です。
- ④:子
- 障害基礎年金において、受給権者により生計を維持されている一定の要件を満たす「子」がいる場合に子の加算額が加算されます。
- ⑤:5(5)
- 障害手当金(一時金)は、初診日から「5」年以内に治った(症状固定した)日において、3級より軽度の一定の障害状態にある場合に支給されます。
- ⑥:300
- 障害厚生年金の報酬比例部分の計算において、被保険者期間の月数が「300」月に満たない場合は300月とみなして計算する最低保障があります。
- ⑦:配偶者
- 障害等級1級または2級の障害厚生年金には、受給権者によって生計を維持されている一定の要件を満たす「配偶者」があるときに加給年金額が加算されます。
- ⑧:4分の3(3/4)
- 障害等級3級の障害厚生年金には最低保障額が設定されており、障害等級2級の障害基礎年金の額の「4分の3」相当額(平成27年度価額:585,100円)が保障されます。
覚えるポイント
- 障害基礎年金の加算対象は「子」、障害厚生年金の加算対象は「配偶者」。
- 障害等級3級の障害厚生年金の最低保障額は「障害基礎年金2級の4分の3相当額」。
間違えやすいところ
- 障害基礎年金の加算対象を「配偶者」と誤記したり、障害厚生年金の加給年金を「子」と混同しないこと。
- 障害手当金の治癒要件期間である「5年」を初診日からの認定日(1年6カ月)と混同しないこと。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の国民年金法および厚生年金保険法
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.5(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
遺族厚生年金の受給額の計算
ライフプランニングと資金計画 · 遺族厚生年金 / 中高齢寡婦加算 / 短期要件 / 300月みなし
在職中の会社員Aさん(39歳)が平成28年1月24日に死亡し、妻Bさん(42歳、子なし)が遺族厚生年金の受給権を取得した場合に受給できる年金額を求めなさい。なお、平成27年10月時点の本来水準の価額に基づき、計算過程を示して円単位(円未満四捨五入)で答えること。 〈条件〉 ・厚生年金保険の被保険者期間:平成10年4月~平成15年3月(60月)、平成15年4月~平成27年12月(153月) ・平均標準報酬月額:240,000円、平均標準報酬額:350,000円 ・給付乗率:平成15年3月以前の新乗率7.125/1000、平成15年4月以後の新乗率5.481/1000 ・中高齢寡婦加算額:585,100円(加算要件を満たす場合のみ加算)
解答・解説を表示
解答
418,423円
解説
被保険者が死亡したときの遺族厚生年金(短期要件)では、被保険者期間が300月に満たない場合は300月とみなして報酬比例部分を計算し、その4分の3が支給されます。また、子のない妻に対する中高齢寡婦加算の適用には、夫の厚生年金被保険者期間が原則20年(240月)以上必要となります。
解き方
- 平成15年3月以前と平成15年4月以後の報酬比例部分の基準額をそれぞれ計算して合算する。
- 被保険者期間が213月で300月未満のため、300/213を乗じてさらに4分の3を乗じ、円未満を四捨五入する。
- 厚生年金保険の被保険者期間が20年(240月)未満であるため、中高齢寡婦加算は加算されないことを確認して最終年金額を算出する。
覚えるポイント
- 遺族厚生年金の短期要件(在職中死亡等)では被保険者期間が300月未満のとき300月みなし計算が行われる。
- 遺族厚生年金の中高齢寡婦加算を子のない40歳以上の妻が受けるには、夫の厚生年金期間が原則20年(240月)以上必要である。
間違えやすいところ
- 妻の年齢が40歳以上65歳未満で子がないという条件だけで中高齢寡婦加算を加算してしまうミスが多い。
- 300月みなしの乗率(300/213)や4分の3(3/4)の掛け忘れに注意する。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.3(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.6(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
ジュニアNISAの仕組み
金融資産運用 · ジュニアNISA / NISA / 非課税枠 / 株式数比例配分方式 / 払出し制限
ジュニアNISAの仕組みに関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 「20歳以上の者を対象としたNISA口座に平成28年中に受け入れることができる上場株式等の限度額(非課税枠)は( ① )万円であるのに対して、ジュニアNISA口座に平成28年中に受け入れることができる上場株式等の限度額(非課税枠)は( ② )万円です。なお、ジュニアNISA口座に受け入れた上場株式の配当金を非課税とするためには、配当金の受取方法として( ③ )方式を選択する必要があります。 子や孫の将来に向けた長期投資というジュニアNISAの制度趣旨などから、ジュニアNISA口座に受け入れた上場株式等の配当金等や売却代金は、原則として、口座開設者が3月31日時点で( ④ )歳である年の前年の12月31日まで口座外に払い出すことはできません」
解答・解説を表示
解答
① 120 ② 80 ③ 株式数比例配分 ④ 18
解説
ジュニアNISAは0~19歳の未成年者を対象とした非課税口座制度であり、年80万円の投資枠が設定され、口座開設者が高校卒業年齢(3月31日時点で18歳)に達する年の前年末まで原則払出し制限が設けられています。
解き方
- 平成28年における成人の一般NISAの非課税枠(120万円)を確認する。
- ジュニアNISAの年間非課税枠(80万円)を導く。
- 上場株式の配当金をNISA内で非課税とする要件である受取方式(株式数比例配分方式)を特定する。
- ジュニアNISA特有の払出し制限要件の年齢(18歳)を特定する。
答えの内訳
- ①:120
- 平成28年(2016年)から成年者向けの一般NISAの年間非課税枠は100万円から120万円に拡充されました。
- ②:80
- ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)の年間非課税枠は年間80万円となっています。
- ③:株式数比例配分
- NISA口座やジュニアNISA口座で受け入れる上場株式の配当金を非課税とするには、「株式数比例配分方式」を選択する必要があります。
- ④:18
- ジュニアNISA口座内の資金は、原則として口座開設者が3月31日時点で18歳である年の前年12月31日まで払出し制限が課されています。
覚えるポイント
- 一般NISAは2016年から年間非課税投資枠が120万円となった。
- ジュニアNISAの投資枠は年80万円で、18歳(高校3年生の12月31日)まで原則払出し制限がある。
- 上場株式の配当金を非課税にするには「株式数比例配分方式」の指定が必須である。
間違えやすいところ
- NISA口座の配当金非課税の受取方式を「登録配当金受領口座方式」や「配当金領収証方式」と誤記しやすい。
- ジュニアNISAの非課税投資枠を成人枠の120万円や100万円と混同しないように注意する。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
サスティナブル成長率および使用総資本事業利益率の計算
金融資産運用設計 · サスティナブル成長率 / 使用総資本事業利益率 / 財務分析
《設例》の【財務データ】に基づいて、①X社のサスティナブル成長率と②Y社の使用総資本事業利益率をそれぞれ求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入すること。なお、自己資本の額は、純資産の額と同額であるものとする。
解答・解説を表示
解答
① 4.23%、② 3.52%
解説
サスティナブル成長率は外部調達を伴わず内部留保の再投資のみで持続可能な成長率を示し「ROE×内部留保率」で求めます。使用総資本事業利益率は事業活動全体の総合的な収益力を測る指標であり「事業利益(営業利益+受取利息・配当金)÷総資産×100」で求めます。
解き方
- 設例の財務諸表から当期純利益・純資産・配当金総額を特定し、ROEと内部留保率を求めてサスティナブル成長率を計算する。
- 営業利益に受取利息・受取配当金を加算して事業利益を求め、資産の部合計で除して使用総資本事業利益率を計算する。
答えの内訳
- ①:4.23%
- サスティナブル成長率=ROE×内部留保率、または(当期純利益-配当金総額)÷自己資本×100で算出します。X社のROE=26,000百万円÷400,000百万円=6.5%、内部留保率=1-(9,100百万円÷26,000百万円)=0.65(65%)となります。サスティナブル成長率=6.5%×65%=4.225%となり、小数点以下第3位を四捨五入して4.23%となります。
- ②:3.52%
- 事業利益=営業利益+金融収益(受取利息・配当金)=53,700百万円+50百万円+2,200百万円=55,950百万円。使用総資本事業利益率=事業利益÷使用総資本(総資産)×100=55,950百万円÷1,590,000百万円×100=3.5188…%となり、小数点以下第3位を四捨五入して3.52%となります。
覚えるポイント
- 事業利益には受取利息・配当金を含めるが、為替差益などその他の営業外収益は含めない点に注意する。
間違えやすいところ
- サスティナブル成長率の計算で、配当性向をそのまま掛けてしまったり、事業利益の算出で営業外収益全体を足してしまうミスが多い。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
米ドル建て定期預金の利回り(単利・年換算)の計算
金融資産運用設計 · 外貨預金 / 利回り計算 / TTSとTTB
《設例》の【米ドル建て定期預金の概要】の条件で、為替予約を付けずに円貨を外貨に交換して当該外貨預金に預け入れ、満期時に円貨で受け取る場合における利回り(単利による年換算)を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入すること。また、6カ月は0.5年として計算し、税金等は考慮しないものとする。
解答・解説を表示
解答
1.67%
解説
外貨定期預金の利回り計算では、円を外貨にする預入時にはTTS(Telegraphic Transfer Selling rate)を、外貨を満期時に円に戻す際にはTTB(Telegraphic Transfer Buying rate)を適用します。為替差損益と利息を合算した円貨ベースの収益額を当初投資円貨額で除し、預入期間の年数で割ることで単利ベースの年換算利回りを算出します。
解き方
- 預入時のTTSレートを適用して1外貨単位(または1万米ドル等)を購入するための円貨投資額を求める。
- 利率と預入期間から外貨建ての満期時元利合計を計算し、満期時のTTBレートを乗じて円貨受取額を求める。
- (円貨受取額-円貨投資額)÷円貨投資額÷預入年数(0.5年)×100により年換算利回りを算出し、小数点以下第3位を四捨五入する。
覚えるポイント
- 預入時は顧客が外貨を買うためTTS、満期払戻時は顧客が外貨を売るためTTBを適用する。
間違えやすいところ
- 預入時と満期時の為替レートを取り違えてTTBとTTSを逆にしてしまったり、預入期間が6カ月(0.5年)であるのに年換算(÷0.5)を忘れてしまう計算ミスに注意する。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.7(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.8(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
法人税の略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の作成
タックスプランニング · 別表四 / 減価償却超過額 / 役員給与の損金不算入 / 役員退職金 / 納税充当金
小売業を営むX株式会社(資本金3,000万円、青色申告法人、中小企業者等)の平成28年3月期の資料に基づき、〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑥に入る最も適切な数値を求めなさい。 〈資料〉 1. 減価償却費計上額9,060千円(全額損金経理)。備品の減価償却費3,300千円(償却限度額3,000千円)。建物の減価償却費5,760千円(償却限度額5,850千円、前期繰越償却超過額200千円)。 2. 取締役Aさんへの役員給与:4月~11月は月額800千円、12月~3月は月額1,000千円に増額。臨時改定事由はなく、事前確定届出給与の届出書は未提出。 3. 退任取締役Bさんへの役員退職金:支給額32,000千円。功績倍率方式(最終報酬月額800千円、在任年数15年、功績倍率2.5倍)による適正額を上回る部分を自己否認。 4. 「法人税、住民税及び事業税」の内訳:預金利子源泉所得税30千円、復興特別所得税630円、利子割10千円、当期確定申告見積納税額(貸借対照表の未払法人税等)2,600千円。 5. 前期確定申告分の事業税等の未払法人税等からの納付額:730千円。 6. 源泉所得税および復興特別所得税は法人税額から控除することを選択。
解答・解説を表示
解答
① 2,600,000、② 300,000、③ 800,000、④ 2,000,000、⑤ 90,000、⑥ 30,630
解説
法人税の別表四は、企業会計上の当期純利益を出発点として税法上の益金・損金の加算・減算を行い、課税所得金額を計算する明細書です。租税公課のうち法人税や納税充当金繰入額、限度額を超える役員給与・退職金・減価償却費などは損金不算入として加算処理されます。
解き方
- 各項目について税務上の適正額・限度額を算定し、損金経理額との差額(損金不算入額・超過額・認容額)を計算する。
- 納税充当金、減価償却超過額・認容額、役員給与超過額、役員退職金超過額、控除所得税額等を別表四の所定の加算・減算区分に当てはめる。
答えの内訳
- ①:2,600,000
- 当期確定申告分の見積納税額として損金経理し未払法人税等に計上された2,600,000円は、損金不算入として加算(留保)されます。
- ②:300,000
- 備品の減価償却費3,300,000円から償却限度額3,000,000円を差し引いた償却超過額300,000円を加算(留保)します。
- ③:800,000
- 事業年度の中途における正当な改定事由のない増額改定であるため、増額部分である(1,000,000円-800,000円)×4カ月=800,000円が損金不算入となり加算(社外流出)されます。
- ④:2,000,000
- 役員退職金の適正額は800,000円×15年×2.5倍=30,000,000円です。支給額32,000,000円との差額2,000,000円が損金不算入となり加算(社外流出)されます。
- ⑤:90,000
- 建物の償却限度額5,850,000円-償却費5,760,000円=90,000円(償却不足額)について、前期繰越償却超過額200,000円のうち90,000円を限度に当期認容として減算(留保)します。
- ⑥:30,630
- 法人税額から税額控除される預金利子の源泉所得税30,000円および復興特別所得税630円の合計額30,630円を所得金額の計算上加算(社外流出)します。
覚えるポイント
- 役員給与の不相当な増額改定は、改定前の給与額を超過する部分が損金不算入となります。
- 前期からの減価償却超過額は、当期の償却限度額に満たない償却不足額の範囲内で当期認容(減算)されます。
間違えやすいところ
- 役員給与の増額改定において、増額後の全額を損金不算入としてしまう誤り(超過分のみが不算入)。
- 前期繰越償却超過額の全額(200千円)をそのまま認容減算してしまう誤り(当期の償却不足枠が限度)。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.9(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.10(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
中小法人の納付すべき法人税額の計算
タックスプランニング · 法人税額の計算 / 軽減税率 / 税額控除 / 所得税額控除 / 所得拡大促進税制
前問《問57》を踏まえ、X社が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めなさい。計算過程を示し、答は100円未満を切り捨てて円単位とすること。 〈普通法人における法人税の税率表(平成27年4月1日以後開始事業年度)〉 資本金1億円以下の法人: ・年800万円以下の部分:15% ・年800万円超の部分:23.9% 〈条件〉 ・所得拡大促進税制による税額控除額:200千円(控除限度額は法人税額の20%) ・源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額:30,630円(法人税額から控除) ・中間申告・中間納税は考慮しない。
解答・解説を表示
解答
1,303,900円
解説
資本金1億円以下の中小法人は、年800万円以下の所得金額に対して15%の軽減税率、年800万円超の所得金額に対して本則税率(当期は23.9%)が適用されます。算出税額から特別控除等の税額控除および所得税額控除を控除し、100円未満を切り捨てて確定申告による納付税額を算出します。
解き方
- 問57で算定された所得金額(9,400,000円)に基づき、800万円以下(15%)と800万円超(23.9%)に区分して算出法人税額を計算する。
- 所得拡大促進税制の税額控除限度額を確認し、特別控除額(200,000円)を算出税額から控除する。
- 法人税額から控除される所得税額及び復興特別所得税額(30,630円)を差し引き、国税通則法に基づき100円未満を切り捨てて納付税額を求める。
覚えるポイント
- 納付すべき法人税額の計算において、100円未満の端数は切り捨てて確定申告書に記載します。
- 中小法人の軽減税率は年800万円以下の所得部分に適用されます。
間違えやすいところ
- 所得金額全体に23.9%を乗じてしまい、年800万円以下の軽減税率(15%)の適用を忘れるミス。
- 所得拡大促進税制の控除限度額(税額の20%)の確認を怠る、または所得税額控除の引き忘れ。
- 最終的な納付税額の端数処理(100円未満切捨て)を忘れて1,303,970円のまま解答してしまうミス。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.9(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.10(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.11(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
法人税における減価償却・交際費等・所得拡大促進税制
タックスプランニング · 中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例 / 交際費等の損金不算入 / 所得拡大促進税制
法人税に関する以下の文章Ⅰ~Ⅲの下線部①~③のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選び、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。 Ⅰ 「平成27年中に法人が有形減価償却資産(鉱業用減価償却資産等を除く)を取得して事業の用に供した場合、原則として、定額法または定率法のいずれかを選択して減価償却するが、『減価償却資産の償却方法の届出書』を所轄税務署長に提出しなかった場合、①償却方法は法定償却方法である定率法となる。また、いったん選択した償却方法を変更しようとするときは、原則として、②新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、『減価償却資産の償却方法の変更承認申請書』を所轄税務署長に提出して承認を受けなければならない。なお、建物(鉱業用のものやリース資産を除く)の償却方法については、定率法は選択できず、定額法となる。 ただし、中小企業者等が取得した減価償却資産については、一定の要件のもと、事業の用に供した事業年度において、その取得価額の全額を損金の額に算入することができる。この『中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例』の対象となる減価償却資産は、③取得価額が50万円未満のものとなる」 Ⅱ 「法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出した交際費等のうち、接待飲食費については、当該法人が中小法人であるかどうかにかかわらず、その額の50%相当額を損金の額に算入することができる。 また、事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円以下の中小法人(大法人に完全支配されている法人等を除く)については、その事業年度において支出した交際費等のうち、①定額控除限度額である年800万円を限度として損金の額に算入することができる。 X社の場合は、②定額控除限度額に接待飲食費の額の50%相当額を加えた金額がその事業年度における交際費等の損金算入限度額となる。 なお、法人が支出した飲食等のために要した一定の費用であって、その③飲食等の参加者1人当たり5,000円以下の費用で所定の事項を記載した書類が保存されているものについては、交際費等から除かれる」 Ⅲ 「所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)とは、青色申告法人が国内雇用者に対する給与等の支給額を基準事業年度の給与等の支給額より一定割合以上増加させるなどの要件を満たした場合に、①当該支給増加額の10%相当額を法人税額から控除することができる制度である。ただし、当該税額控除は、X社の場合、法人税額の20%相当額が限度額となる。 平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度について本制度の適用を受ける場合は、②雇用者給与等支給額が基準雇用者給与等支給額と比較して5%以上増加していることが要件となる。 なお、同一事業年度において、本制度と雇用促進税制(雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除)は③重複して適用を受けることができない」
解答・解説を表示
解答
Ⅰ:③ 取得価額が30万円未満の減価償却資産が対象となる。 Ⅱ:② 定額控除限度額(年800万円)までの損金算入と接待飲食費の50%損金算入のいずれかを選択適用し、併用はできない。 Ⅲ:② 平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度における増加要件は、3%以上である。
解説
法人税法および租税特別措置法において、中小法人には様々な特例や軽減措置が設けられています。少額減価償却資産の損金算入特例の金額要件、交際費等の損金算入における選択適用のルール、各種税額控除制度の適用要件や重複適用の可否について正確な理解が求められます。
解き方
- 文章Ⅰについて:少額減価償却資産の特例における上限価額が30万円未満であることを確認し、③の誤りを指摘する。
- 文章Ⅱについて:中小法人の交際費損金算入特例は定額控除(800万円)または接待飲食費50%の「選択適用」であり併用できないことを確認し、②の誤りを指摘する。
- 文章Ⅲについて:出題基準事業年度(平成27年度)における所得拡大促進税制の基準年度比増加割合の要件が3%以上であることを確認し、②の誤りを指摘する。
答えの内訳
- Ⅰ:不適切なもの:③
- 「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の対象となる資産は、取得価額が30万円未満(年間合計300万円まで)の減価償却資産です。50万円未満ではありません。
- Ⅱ:不適切なもの:②
- 中小法人における交際費等の損金算入は、「年800万円までの定額控除限度額」または「接待飲食費の50%相当額」のいずれかを選択して適用することとされており、両者を合算して適用することはできません。
- Ⅲ:不適切なもの:②
- 所得拡大促進税制において、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度に適用を受けるための給与等支給額増加要件は、基準雇用者給与等支給額と比較して「3%以上」の増加です(5%以上ではありません)。
覚えるポイント
- 少額減価償却資産の特例の上限は「30万円未満」(年300万円限度)。
- 中小法人の交際費は「800万円まで全額」または「接待飲食費の50%」の選択適用(合算不可)。
- 社外の1人当たり5,000円以下の飲食費は一定要件で交際費等から除外される。
間違えやすいところ
- 少額減価償却資産の一括償却資産(20万円未満・3年均等償却)や即時償却特例(30万円未満)の金額要件を混同しやすい。
- 中小法人の交際費について、800万円枠と飲食費50%枠を併用できると誤認しやすい。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.11(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
日影規制および固定資産の交換の特例
不動産 · 建築基準法の日影規制 / 固定資産の交換の特例(所得税法第58条)
建築基準法における「日影による中高層の建築物の高さの制限」(日影規制)および「固定資産の交換の特例」(所得税法第58条)に関する文章の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を答えなさい。 Ⅰ 「日影規制の対象区域は、( ① )地域、工業地域、工業専用地域以外で、地方公共団体の条例で指定された区域となる。ただし、日影規制の対象区域外にある建築物であっても、高さが( ② )mを超え、かつ、( ③ )日において対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、原則として当該対象区域内にある建築物とみなして日影規制が適用される。 日影規制の対象区域である近隣商業地域においては、原則として、高さが( ② )mを超える建築物が高さの制限を受ける」 Ⅱ 「『固定資産の交換の特例』の適用を受けるためには、交換譲渡資産および交換取得資産がいずれも固定資産であり、( ④ )年以上所有していたものでなければならない。また、交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、原則として、これらの時価のうちいずれか高いほうの時価の( ⑤ )%以内でなければならない。 なお、一の資産につき、その一部分については交換とし、他の部分については売買とした場合は、『固定資産の交換の特例』の適用にあたって、当該他の部分を含めて交換があったものとし、売買代金は( ⑥ )として取り扱う」
解答・解説を表示
解答
① 商業 ② 10 ③ 冬至 ④ 1(または「1」) ⑤ 20 ⑥ 交換差金(または「交換差金等」)
解説
建築基準法の日影規制は中高層建築物による日照阻害を防ぐ規定であり、用途地域ごとの対象可否(商業・工業・工業専用は非対象)や冬至日を基準とすることが定められています。また、所得税法上の固定資産の交換の特例は、1年以上所有した同種の固定資産を交換し、時価差額が20%以内である場合に課税繰延べを認める制度です。
解き方
- 文章Ⅰについて:日影規制の適用除外地域(商業地域、工業地域、工業専用地域)、近隣商業地域における対象建築物の高さ(10m超)、日影測定の基準日(冬至日)をそれぞれ特定する。
- 文章Ⅱについて:固定資産の交換特例の要件である所有期間(1年以上)、時価の差額許容範囲(いずれか高いほうの20%以内)、交換と売買を併用した場合の金銭の取扱い(交換差金)をそれぞれ特定する。
答えの内訳
- ①:商業
- 日影規制の対象外となる用途地域は、「商業地域」「工業地域」「工業専用地域」の3つです。
- ②:10
- 日影規制において、近隣商業地域・準工業地域等の区域内では高さ10mを超える建築物が対象となり、対象区域外にあっても高さ10mを超え対象区域内に日影を生じさせるものは適用対象とみなされます。
- ③:冬至
- 建築基準法の日影規制は、「冬至日」の真太陽時による午前8時から午後4時(北海道等の指定区域は午前9時から午後3時)までの日影時間を基準に判定します。
- ④:1(または「1」)
- 所得税法第58条の「固定資産の交換の特例」を適用するためには、交換譲渡資産・交換取得資産の双方が固定資産であり、それぞれ1年以上所有していたものであることが要件となります。
- ⑤:20
- 固定資産の交換の特例では、交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、いずれか高いほうの時価の20%以内でなければなりません。
- ⑥:交換差金(または「交換差金等」)
- 一の資産の一部を交換、残りを売買とした場合、全体を一つの交換とみなし、受払された売買代金は「交換差金」として取り扱われます。
覚えるポイント
- 日影規制の除外区域:商業地域・工業地域・工業専用地域。
- 日影規制の基準日:冬至日。
- 固定資産の交換特例:所有期間1年以上、時価差額は高い方の20%以内、同種資産同士の交換。
間違えやすいところ
- 日影規制の除外地域として「近隣商業地域」を除外対象と誤認しやすい(近隣商業地域は対象地域)。
- 交換特例の所有期間要件(1年以上)を、長期譲渡所得の5年超と混同しやすい。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.14(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
耐火建築物建築時の建ぺい率および容積率の上限面積の計算
不動産 · 建ぺい率の緩和 / 特定道路による容積率の緩和 / 2項道路(セットバック)
甲土地を分割した交換後の乙土地(面積220㎡、近隣商業地域、指定建ぺい率80%、指定容積率400%、防火地域、前面道路の幅員による容積率制限6/10)に耐火建築物を建築する場合における、①建ぺい率の上限となる建築面積、および②容積率の上限となる延べ面積(特定道路までの距離による容積率制限の緩和を考慮)を求めなさい。なお、乙土地の東側は幅員2mの建築基準法第42条第2項道路(中心線は道路中心、反対側は宅地)、南側は幅員6mの市道であり、幅員15mの特定道路から乙土地までの延長距離は63mである。
解答・解説を表示
解答
① 200㎡、② 792㎡
解説
建築基準法第42条第2項道路に接する敷地はセットバック部分を敷地面積から除外して有効敷地面積を算出します。防火地域内で建ぺい率80%の指定地域に耐火建築物を建てる場合は建ぺい率が100%(制限なし)となります。また、特定道路から70m以内にある敷地は前面道路幅員に加算数値が認められ、道路幅員制限による容積率が緩和されます。
解き方
- 2項道路によるセットバック面積(20m×1m=20㎡)を計算し、有効敷地面積(220㎡-20㎡=200㎡)を算出する。
- 指定建ぺい率80%かつ防火地域内の耐火建築物であるため建ぺい率100%を適用し、建築面積の上限を算出する。
- 特定道路緩和の算式により加算値(0.6m)を求め、前面道路幅員制限による容積率(6.6m×6/10=396%)と指定容積率(400%)を比較して厳しい方を決定する。
- 決定した基準容積率(396%)に有効敷地面積(200㎡)を乗じて延べ面積の上限を算出する。
答えの内訳
- ①:200㎡
- 幅員2mの法第42条第2項道路に面しているため、道路中心線から2m後退(セットバック)が必要です。中心線から境界まで1mのため、1m後退することになり、後退部分の面積は奥行20m×1m=20㎡となります。これにより有効敷地面積は220㎡-20㎡=200㎡です。指定建ぺい率が80%の地域かつ防火地域内において耐火建築物を建築する場合、建ぺい率の制限が適用除外(100%)となるため、建築面積の上限は200㎡×100%=200㎡となります。
- ②:792㎡
- 乙土地が面する南側市道の幅員は6mで、特定道路(幅員15m)から乙土地までの距離は63m(70m以下)です。特定道路による緩和の加算値は (12-6)×(70-63)÷70=0.6m となり、緩和後の前面道路幅員は6m+0.6m=6.6mとなります。近隣商業地域の法定乗数は6/10であるため、道路幅員制限による容積率は6.6m×6/10=39.6/10=396%です。指定容積率400%より低いため396%が適用されます。延べ面積の上限は、有効敷地面積200㎡×396%=792㎡となります。
覚えるポイント
- 防火地域内で指定建ぺい率80%の地域に耐火建築物を建てる場合、建ぺい率は無制限(100%)となる。
- 特定道路緩和の計算式:(12-前面道路幅員)×(70-特定道路までの距離)÷70 で加算幅員を算出する。
間違えやすいところ
- セットバック前の総敷地面積(220㎡)に容積率や建ぺい率を乗じて計算してしまう誤り。
- 特定道路による緩和幅員(0.6m)を加算した後の前面道路幅員による容積率と、指定容積率の比較を忘れてしまうミス。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の建築基準法に基づく出題条件
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.13(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.14(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
固定資産の交換の特例適用時における譲渡所得税額等の計算
不動産 · 固定資産の交換の特例 / 課税長期譲渡所得金額 / 所得税および復興特別所得税 / 住民税
借地権(時価5,000万円、取得費不明、取得時期平成15年5月、交換費用100万円・区分不明)と所有権(底地、時価4,500万円)を交換し、交換差金500万円を受領して「固定資産の交換の特例」(所得税法第58条)の適用を受けた場合における、①課税長期譲渡所得金額、②所得税および復興特別所得税の合計額、③住民税額をそれぞれ求めなさい。なお、100円未満は切り捨てること。
解答・解説を表示
解答
① 4,700,000円、② 719,800円、③ 235,000円
解説
固定資産の交換の特例において交換差金を受け取った場合、受領した交換差金に相当する部分については資産の譲渡があったものとして課税されます。課税譲渡所得の計算では、譲渡資産全体の取得費および譲渡費用に「交換差金÷譲渡資産の時価」の割合を乗じた金額を交換差金から控除します。譲渡と取得の費用区分が不明な交換費用は原則として折半(1/2)して譲渡費用とします。
解き方
- 譲渡資産の概算取得費(5,000万円×5%=250万円)および譲渡費用(100万円×1/2=50万円)を求める。
- 交換差金割合(500万円÷5,000万円=10%)を算出し、交換差金に対応する取得費・譲渡費用の合計額(300万円×10%=30万円)を交換差金から差し引いて課税長期譲渡所得金額(4,700,000円)を算出する。
- 課税長期譲渡所得金額に所得税率15%と復興特別所得税率2.1%を乗じ、合計額を求めて100円未満を切り捨てる(719,800円)。
- 課税長期譲渡所得金額に住民税率5%を乗じて住民税額を算出する(235,000円)。
答えの内訳
- ①:4,700,000円
- 概算取得費は譲渡資産の時価の5%より 50,000,000円×5%=2,500,000円、譲渡費用は区分不明のため折半し 1,000,000円×1/2=500,000円 となります。交換差金を受け取った場合の課税される譲渡所得金額は、交換差金の額から対応する取得費および譲渡費用を控除して計算します。課税長期譲渡所得金額 = 5,000,000円 - (2,500,000円 + 500,000円) × (5,000,000円 ÷ 50,000,000円) = 5,000,000円 - 300,000円 = 4,700,000円 となります。
- ②:719,800円
- 長期譲渡所得に対する所得税率は15%、復興特別所得税率は所得税額の2.1%(合計15.315%)です。所得税額 = 4,700,000円×15%=705,000円、復興特別所得税額 = 705,000円×2.1%=14,805円、合計額は 705,000円+14,805円=719,805円 となり、100円未満を切り捨てて 719,800円 となります。
- ③:235,000円
- 長期譲渡所得に対する住民税率は5%です。住民税額 = 4,700,000円×5%=235,000円 となります(100円未満の端数なし)。
覚えるポイント
- 固定資産の交換の特例で受け取った交換差金部分は課税対象となり、取得費・譲渡費用は時価比率で按分控除する。
- 区分不明の交換費用(仲介手数料等)は1/2ずつ譲渡費用と取得費に按分する。
間違えやすいところ
- 交換差金(500万円)全額を課税譲渡所得としてしまい、対応する取得費・譲渡費用の控除を忘れるミス。
- 所得税および復興特別所得税の端数処理において、100円未満切り捨て指示を見落として「719,805円」と回答してしまう誤り。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の所得税法(第58条等)に基づく出題条件
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.13(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.15(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
非上場株式の類似業種比準価額の計算
相続・事業承継 · 取引相場のない株式の評価 / 類似業種比準方式 / 中会社
X社の概要および資料に基づき、同社株式の1株当たりの類似業種比準価額を求めなさい。なお、端数処理は、各要素別比準割合および比準割合は小数点第2位未満切捨て、1株当たりの資本金等の額50円当たりの類似業種比準価額は10銭未満切捨て、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額は円未満切捨てとすること。また、類似業種比準価額の算定にあたり複数の方法がある場合は、できるだけ低い価額となる方法を選択すること。
解答・解説を表示
解答
2,184円
解説
類似業種比準方式は、類似業種の上場会社の株価に、評価会社と類似業種の1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(簿価)の比準割合および会社規模に応じた斟酌割合を乗じて評価額を算定する手法です。
解き方
- 類似業種株価の選定:課税時期の属する月(260円)、前月(280円)、前々月(285円)、前年平均(265円)のうち最も低い260円を採用します。
- 要素別比準割合の計算(小数点第2位未満切捨て):配当は3.8円/3.1円=1.22、利益は23円/18円=1.27、純資産は334円/192円=1.73となります。
- 比準割合の計算(小数点第2位未満切捨て):(1.22+1.27+1.73)/3=4.22/3=1.40となります。
- 50円当たりの類似業種比準価額の計算:260円×1.40×0.6(中会社の斟酌割合)=218.40円(10銭未満切捨て)となります。
- X社株式1株当たりの資本金等の額(80,000,000円/160,000株=500円)による修正を行い、218.40円×(500円/50円)=2,184円を求めます。
覚えるポイント
- 中会社の類似業種比準価額の計算における斟酌割合は0.6(大会社は0.7、小会社は0.5)です。
- 各要素別比準割合および合計の比準割合は小数点第2位未満を切捨てる点に注意が必要です。
間違えやすいところ
- 1株当たりの資本金等の額が50円ではなく500円であることを見落とし、10倍する換算を忘れてしまうミス。
- 中会社の斟酌割合として0.7や0.5を誤って適用してしまうミス。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.17(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.18(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
非上場株式の純資産価額の計算
相続・事業承継 · 取引相場のない株式の評価 / 純資産価額方式 / 評価差額に対する法人税額等相当額
X社の資産・負債の状況に基づき、同社株式の1株当たりの純資産価額を求めなさい。なお、純資産価額の算出に際して適用される「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」の算出にあたっては、平成27年4月1日以後に適用される法人税率等の合計割合(38%)によること。
解答・解説を表示
解答
4,230円
解説
純資産価額方式は、課税時期における会社の各資産・負債を相続税評価額で評価し直した純資産額から、帳簿価額との評価差額(含み益)に対する法人税等相当額を控除した金額を発行済株式総数で除して1株当たりの評価額を算出する手法です。
解き方
- 相続税評価額による純資産額の計算:総資産1,205,000千円-総負債437,000千円=768,000千円(76,800万円)を求めます。
- 帳簿価額による純資産額の計算:総資産965,000千円-総負債437,000千円=528,000千円(52,800万円)を求めます。
- 評価差額(含み益)の計算:768,000千円-528,000千円=240,000千円(24,000万円)を求めます。
- 法人税額等相当額の計算:評価差額240,000千円×38%=91,200千円(9,120万円)を求めます。
- 株式価値合計の計算:768,000千円-91,200千円=676,800千円(67,680万円)を求めます。
- 1株当たりの純資産価額の計算:676,800,000円/160,000株=4,230円を算出します。
覚えるポイント
- 平成27年4月1日以後に取得した取引相場のない株式の評価差額に対する法人税率等相当額の控除割合は38%です。
- 純資産価額の計算では、発行済株式総数から自己株式数を控除した株式数で除します(本問では自己株式なし)。
間違えやすいところ
- 評価差額に対する法人税率等の割合を改定前の40%や42%等で計算してしまうミス。
- 負債の金額を誤認したり、評価差額の計算で資産のみの差額と負債の差額を取り違えたりするミス。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.17(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp) / 公式問題 p.18(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
非上場株式の評価・種類株式・結婚子育て資金の一括贈与
相続・事業承継 · 取引相場のない株式の評価 / 死亡退職金の株価への影響 / 無議決権株式の評価 / 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例
X社株式の評価や種類株式、贈与税の特例に関する次の文章Ⅰ~Ⅲについて、それぞれ下線部①~③の中から最も不適切なものを1つ選び、その適切な内容を簡潔に説明しなさい。 Ⅰ 類似業種比準価額および純資産価額の計算において、配当の抑制や資産の取得、Aさん死亡に伴う死亡退職金の支給による株価引き下げ効果に関する記述。 Ⅱ 種類株式の定款の定め、無議決権株式を同族株主が取得した場合の評価減の割合および拒否権付株式の評価に関する記述。 Ⅲ 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税限度額、対象となる費用、受贈者が50歳に達する前に贈与者が死亡した場合の残額の課税関係に関する記述。
解答・解説を表示
解答
Ⅰ:③(死亡退職金の支給により純資産価額は引き下げられるが、類似業種比準価額は直前期末の数値を基礎とするため引き下げられない)、Ⅱ:②(原則的評価方式による評価額から減額できる割合は10%ではなく5%である)、Ⅲ:③(贈与者が死亡した場合には、その死亡時点における管理残額は相続または遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となる)
解説
取引相場のない株式の評価では、直前期末の実績を基にする類似業種比準価額と課税時期現在の資産負債を基にする純資産価額で、事象が反映されるタイミングが異なります。また、種類株式の相続税評価通達上の取扱い(無議決権株式の5%減額特例)や、直系尊属からの資金一括贈与特例における贈与者死亡時の管理残額の相続税課税ルールを正確に理解しておく必要があります。
解き方
- 文章Ⅰについて、死亡退職金が株価評価に与える影響を確認する。類似業種比準価額は直前期末の数値を基礎とするため直後の死亡退職金支給は反映されないが、純資産価額では課税時期の債務として控除可能であることを踏まえ、③が不適切と判定する。
- 文章Ⅱについて、無議決権株式を同族株主が取得した際の選択による評価減割合が「5%」であることを確認し、10%としている②が不適切と判定する。
- 文章Ⅲについて、結婚・子育て資金の一括贈与特例では、贈与者死亡時の管理残額が相続税の課税対象(みなし相続財産)となる点を確認し、課税対象とならないとしている③が不適切と判定する。
小問ごとの答え
- 小問 Ⅰ:③
- 被相続人の死亡退職金は、相続開始日時点の純資産価額の計算においては負債(債務)として控除できるため純資産価額を引き下げる効果がありますが、類似業種比準価額の計算では直前期末の決算数値等を基礎とするため、類似業種比準価額を引き下げる効果はありません。
- 小問 Ⅱ:②
- 無議決権株式を同族株主が相続または遺贈により取得した場合において一定の要件を満たすときは、納税義務者の選択により、原則的評価方式による評価額から10%ではなく5%を減額した金額をもって評価することができます。
- 小問 Ⅲ:③
- 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例において、受贈者が50歳に達する前に贈与者が死亡した場合は、その死亡時点における非課税拠出額の管理残額について、受贈者が贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。
覚えるポイント
- 類似業種比準価額は直前期末の数値に基づき計算するため、課税時期後に確定する死亡退職金では引き下げられない(純資産価額は債務控除可能)。
- 無議決権株式を同族株主が取得した場合の評価減の選択割合は「5%」である。
- 結婚・子育て資金一括贈与の特例は、贈与者が信託期間中に死亡した場合、管理残額が相続税の課税対象となる。
間違えやすいところ
- 教育資金の一括贈与特例(原則として死亡時残額は課税対象外であった時期がある)と結婚・子育て資金の一括贈与特例(当初より死亡時残額は相続税課税対象)の課税関係を混同しやすい。
- 無議決権株式の評価減割合を、上場株式の配当還元方式や他の類似制度の割合(10%など)と混同して5%と誤認しやすい。
出題の前提:2015年10月1日現在施行の法令等
出典:金融財政事情研究会『2016年1月 1級 学科(応用編)』
公式問題 p.19(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2016年1月 1級 学科(応用編)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2016年1月 1級 学科(応用編)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
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