日本FP協会・金融財政事情研究会の公式問題・模範解答を、級・学科/実技・公開年度に分けて収録しています。CBT公開問題は1セットの公表問題で、全受験者への出題を網羅するものではありません。
2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月13日 PartI PartII・PartII)の概要
相談者に対する最適アドバイスに必要な収集情報の整理
不動産・相続 · 情報収集 / 意向確認 / 不動産調査
Aさん(80歳)は、自宅(乙土地・乙建物)から長男Bさん宅近くの介護付き有料老人ホームへの入居を予定しており、所有する甲土地および乙土地について大手ドラッグストアX社から3つの事業提案を受けている。現預金3,000万円を極力減らさず、地代の手取り収入からホーム年間費用(360万円)の支払いや長男への暦年贈与(年間110万円)を行いたい意向がある。Aさんに対して最適なアドバイスを行うために、示された情報のほかに収集・確認すべき情報を「①Aさんから直接聞いて確認する情報」および「②FPであるあなた自身が調べて確認する情報」に整理して説明しなさい。
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解答
①Aさんの意向・健康状態、長男Bさんの相続・土地利用に関する考え、保有資産の全体像等の確認。②公法上の規制や道路状況等の現地・役所調査、周辺賃料・地価相場、X社の信用力・事業採算性、税務上の特例適用の可否等の調査。
解説
不動産の有効活用や相続対策では、法規制・経済性・税務面の実現可能性を総合的に確かめることが欠かせません。そのためには、まず相談者と関係者の意向や希望をよく聞きます。さらに、公的書類や現地・役所での調査、客観的な市場調査に基づいて確認・検証します。
解き方
- 設例の記述から、Aさんと長男Bさんの意向や気がかり(先祖伝来の土地、資金の用意、贈与)を整理し、本人から直接聞くべきことを洗い出します。
- 不動産の物的・法的な現況、X社の信用力、周辺相場、税務上の特例の要件など、専門家が自分で調べて確かめるべき事項を洗い出して分類します。
答えの内訳
- ①Aさんから直接聞いて確認する情報:・先祖伝来の土地(甲土地・乙土地)に対する愛着や手放すこと(売却)への抵抗感の有無 ・老人ホーム入居後の生活設計や想定される医療・介護追加費用の見通し ・長男Bさんの将来的な意向(土地を相続して維持・管理したいか、金銭等での相続を希望するか) ・他に保有している金融資産や負債、推定相続人の有無(他に親族・推定相続人がいないかの再確認)
- 相談者本人の心情(土地承継への愛着)や老人ホームでの将来費用、推定相続人である長男Bさんの意向・将来の管理負担に対する考え方、他の資産状況を直接ヒアリングして確認します。
- ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報:・甲土地および乙土地の登記記録(権利関係、抵当権等の有無)、公図・地積測量図の確認 ・都市計画法・建築基準法上の公法規制(用途地域、建蔽率・容積率、道路幅員・接道要件、セットバックの要否等)の役所調査および現地調査 ・周辺の商業地域における地代水準、事業用定期借地権の市場相場、および乙土地の適正な実勢売却価格 ・X社の企業財務状況・信用力・出店実績および中途解約リスク ・居住用財産譲渡の特例や小規模宅地等の減額特例の適用要件の確認
- 不動産取引や法規制に関する客観的なデータ(権利関係、都市計画規制、現地状況、適正賃料・地価水準)、提案先であるX社の信用力、税務特例の適用可否を公的資料や役所調査等を通じて独自に調査・精査します。
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覚えるポイント
- 顧客からのヒアリング事項とFP自身が調査する外部客観情報を明確に区別して整理する。
間違えやすいところ
- 登記記録や公法規制の確認など、自分で調べて確かめられる事項を「顧客に直接聞く情報」として答えてしまう誤りです。
出題の前提:FP実技試験における資産相談業務の面接・記述実務基準に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月13日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
老人ホーム入居後および相続後における乙土地等の譲渡所得課税の特例
不動産・タックス · 居住用財産の3,000万円特別控除 / 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例 / 老人ホーム入居
Aさんが所有する自宅敷地(乙土地)について、①Aさんが介護付き有料老人ホームに入居した後に売却する場合の課税関係、および②老人ホームに入居したAさんが死亡した後に相続人である長男Bさんが売却する場合の課税関係について説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
Aさん本人が売却する場合は、老人ホーム入居後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」が適用可能。Aさん死亡後に長男Bさんが売却する場合は、空き家特例の要件(1981年5月31日以前建築、耐震基準適合または解体更地渡し等)を満たせば「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」が適用可能。
解説
自分が住んでいた家や土地を売ると、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。住まなくなった日から3年目の年末までに売る場合に使えます。また、相続した故人の住まいについても、古い耐震基準の建物を耐震基準に合わせるか取り壊して売るなど所定の要件を満たせば、相続人ごとに最高3,000万円(相続人が3人以上なら2,000万円)を差し引ける特例があります。
解き方
- Aさんが生きている間に老人ホームへ転居した後で売る場合の「居住用財産譲渡の3,000万円特別控除」の期限(転居後3年を経過する日の属する年の12月31日まで)を確かめます。
- Aさんが死亡した後に長男Bさんが売る場合の「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」の要件(建築時期:1980年築で旧耐震、老人ホーム入居の要件、耐震改修または家屋を取り壊した更地の譲渡、売却期限など)を検討・整理します。
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覚えるポイント
- 本人売却は転居後3年目の年末まで。相続人売却の空き家特例は1981年5月31日以前建築で耐震改修または更地渡し等が要件。
間違えやすいところ
- 老人ホームに入居して空き家になっても、本人の居住用財産の特例はすぐには使えなくなると誤解しがちです。
- 故人の空き家の特例で、建物をそのままの状態で耐震補強せずに売っても特例が使えると誤解すること(取り壊して更地にするか、耐震基準に合わせる必要があります)。
出題の前提:租税特別措置法第31条の3(居住用財産の譲渡所得の特別控除)、第35条第3項(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月13日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
土地有効活用における事業用定期借地権等の提案比較と選択
不動産 · 事業用定期借地権 / 土地有効活用 / 収支シミュレーション
Aさんの希望(現預金3,000万円を維持したい、老人ホーム入居一時金2,000万円と年間費用360万円および長男Bへの年110万円の贈与を地代手取りから賄いたい、空き家となる自宅等の管理負担を解消したい)を踏まえ、X社からの提案①・提案②・提案③の得失を比較した上で、いずれを推奨すべきか理由とともに説明しなさい。
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解答
提案②または提案③を勧める。提案②は、前払地代2,000万円を入居一時金に充てることで手元現預金を減らさず、毎年の手取り地代(約519万円)で老人ホーム費用と贈与(計470万円)を賄えて黒字化でき、乙建物の解体費をX社負担としつつ先祖伝来の土地をすべて残せる利点がある。提案③は、乙土地建物を相場以上の2,300万円で売却して入居一時金を賄い、毎年の手取り地代(約550万円)で支出を十分に賄え、空き家管理の責任から完全に解放される利点がある。
解説
不動産の有効活用の提案を比べるときは、所有者の希望にどれだけ合うかを総合的に評価することが大切です。希望には、自己資金を守ること、必要な現金収入の確保、先祖伝来の資産の保全、管理の負担からの解放などがあります。収支の計算だけでなく、数値とそれ以外の両面から確かめます。
解き方
- 設例の条件から、各提案ごとの初期費用の手当て(前払地代や売却代金で入居一時金2,000万円を用意できるか)と、毎年の手取り地代と年間支出(施設費用360万円+贈与110万円=470万円)の収支を試算して比べます。
- 資産の維持・保全(先祖伝来の土地を残したいかどうか)や、空き家になる乙土地建物の解体の負担・将来の管理責任の観点を整理し、おすすめの案とその理由を示します。
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覚えるポイント
- 事業用定期借地権の前払地代や売却代金と入居一時金の相殺関係、および毎年の維持管理費・税引き後キャッシュフローを計算して整合的な根拠を述べる。
間違えやすいところ
- 提案①を選ぶと、前払地代2,000万円を受け取った後の毎年の地代手取り(410万円)が年間支出(470万円)より少なくなり、資金が足りなくなることや、空き家になる乙建物がそのまま残る危険を見落としがちです。
出題の前提:設例の記載条件(固定資産税・都市計画税、見込み手取り額の計算前提、老人ホームの諸費用、売却相場等)に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月13日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
長男への暦年贈与計画における相続税制上の留意点
相続・事業承継 · 生前贈与加算 / 定期金給付契約(連年贈与) / 名義預金 / 相続時精算課税制度
長男Bさんに対する毎年110万円の暦年贈与計画について、将来の相続税の課税関係を踏まえて留意すべき点を説明しなさい。
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解答
相続開始前贈与の加算期間(生前贈与加算)が3年から段階的に7年へ延長されているため、相続開始前7年以内の贈与分が相続税の課税価格に持ち戻される点に留意が必要である。また、連年贈与(定期贈与)とみなされないよう毎年贈与契約書を作成すること、長男Bさん名義の口座管理を徹底し名義預金と認定されないようにすること、基礎控除110万円が持ち戻し対象外となる相続時精算課税制度の活用も検討することが重要である。
解説
相続人への暦年課税の贈与は、相続が始まる前の一定期間分が相続税の課税価格に足し戻されます。また、形だけの贈与と見られると、名義預金や定期金給付として税金のトラブルになります。そのため、きちんと形式を整え、改正された税制の適用関係を確かめることが欠かせません。
解き方
- 令和5年度税制改正による生前贈与加算の期間の延長(3年から7年へ順次拡大)と、Aさんの年齢(80歳)をふまえ、加算されるリスクを整理します。
- 贈与契約書の作成、受贈者本人による口座の管理(名義預金を防ぐ)、相続時精算課税の年110万円の基礎控除(持ち戻しが不要)との比較検討など、具体的な注意点を示します。
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覚えるポイント
- 2024年1月1日以降の贈与から生前贈与加算が最長7年に段階的延長される点、および相続時精算課税の年110万円基礎控除は持ち戻し不要である点をセットで押さえる。
間違えやすいところ
- 毎年110万円以下の非課税の範囲なら相続税にまったく影響しないと誤解しがちですが、相続人への相続開始前の贈与は加算の対象になることを見落としがちです。
出題の前提:設例の記載状況および令和5年度税制改正(生前贈与加算の見直し・相続時精算課税の基礎控除創設)の施行法令に基づく。
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月13日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
土地活用・資産承継事案に関与する専門職業家
不動産・相続・事業承継 · 専門職業家の役割 / 事業用定期借地権 / 関連士業
設例のAさんの土地有効活用計画(大手ドラッグストアX社への事業用定期借地権設定や乙土地建物の売却等)、老人ホーム入居、長男への生前贈与、将来の相続税対策等を実施するにあたり、本事案に関与する専門職業家とその主な業務内容を説明しなさい。
解答・解説を表示
解答
公証人、司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁護士など。
解説
不動産の有効活用や権利の移転、資産の承継では、各専門分野の法令を守りながら、適切な士業や専門家と連携して進める必要があります。関係する法令には、弁護士法、司法書士法、税理士法、土地家屋調査士法などがあります。
解き方
- 設例にある法律行為や手続き(事業用借地契約、登記、測量、税務申告など)をもれなく洗い出します。
- それぞれの業務に対応する公証人・司法書士・税理士・土地家屋調査士などの専門職業家を特定して整理します。
関連する分野を学ぶ
覚えるポイント
- 事業用定期借地権の設定契約は必ず公正証書によって行わなければならないため、公証人が必須となる点に留意する。
間違えやすいところ
- 登記申請を代理できる司法書士・土地家屋調査士と、税務相談・税務申告を独占業務とする税理士の業務の範囲を混同しないように注意します。
出題の前提:2026年度第1回FP1級実技試験(資産相談業務・2026年6月13日PartII)設例
出典:金融財政事情研究会『2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月13日 PartI PartII・PartII)』
公式問題 p.1(公式掲載ページ) ↗(www.kinzai.or.jp)
2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月13日 PartI PartII・PartII)
参照した公式資料
金融財政事情研究会が公開した2026年6月 1級 実技(資産相談業務・6月13日 PartI PartII・PartII)の問題・解答資料です。
- 公式問題(公式掲載ページ) ↗ — www.kinzai.or.jp(資料の掲載案内)
金財のPDFは公式掲載ページからご覧ください。古い資料は現在の一覧に掲載されていない場合があります。

